りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月15日
XML
カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ10>



結局、フジサワくんに問い質すことができなかった。

今更聞いても、多分嫌な気持ちになるだけだろう。
結婚式場を見てまわったりしているうちに、
もういいかって、忘れようって気持ちになった。

サークルでも、あまり二人が話してる様子は無い。
そのうち男性側は、
彼女を連れてくる人が出てくるようになったので、
私達はその人たちと付き合うようになっていった。


フジサワくんの合鍵を使って、
部屋の中に入る。
今日は残業になるって言ってたけど、
明日はお休みだから、家で待ってて、と。

私は、フジサワくんが帰ってきた時にすぐ食べられるように、
シチューを作っておいた。

今日は寝坊したみたいで、ベッドがグチャグチャになってる。
ちょっとだけ整えた。
あんまりイジるといけない気がして。

そしたら、ベッドのマットから、何か紙が出ていた。
ひっぱってみたら、雑誌だった。
何かヤラシーっぽいやつ。

私なんかよりすっごい胸が大きかったり、
ウエストがくびれてて、
足がキレイな女の子たちが、
すっごいポーズとって、
これでもか!ってくらいたくさん載ってた。

こんなにカワイイ子たちが、どうしてこんなもんに載ってるんだろう?
私は不思議になる。
あ、でもだからお金になるのかな。

でも何だか笑っちゃう!
自分の部屋なのに、わざわざ隠してるなんて。
あ、私が来るせいか?

私は男の子のイタズラをみつけたような気分になって、
微笑ましくなる。

元通りにしようかな。
出しておいちゃおうかな…。
どんな反応するだろ?

迷っていると電話が鳴った。
留守電に切り替わる。
フジサワくんかな?

ぴーっ。

「あの…。イイダです。
ちょっと話したいことがあって…」

私は咄嗟に受話器を取っていた。

「あの。ごめんなさい、私、ヤマグチです。
良かったら伝えますけど、どんな御用ですか?」

心臓が鳴っていた。
でも、もう取ってしまったから仕方ない。
イイダさんが戸惑っているのが伝わってきた。
でも、もうかけてきて欲しくない。
特にこの人にだけは。

「あ…ごめんね。
うん、結婚するって聞いたから、お祝いを言いたくてかけたの。
フジサワくんは残業なの?」

「あ、はい。そうなんですよ~。
今日は週末だから、待ってるんです。
ありがとうございます。伝えますね。
何時まで起きてますか?」

私はワザと明るい声を出した。
何でもないことのように。
でも、私が出るってわかったら、多分もうかけてこないだろうと思った。
私は嫌な女だ。

「ううん、いいのよ。ヤマグチさんに伝えておいてもらえれば。
ごめんね、こんな遅くに。」

彼女はフジサワくんと同級生だから、
年下の私に余裕をみせている感じがした。
それでも、申し訳ない気持ちが伝わってきた。

何だか悪いことをした気がしてきた。
自分がすごく嫌な人間になったことに追い討ちがかかるような…。

「いいえ、いいんです。
あの…
イイダさんは、彼氏と御結婚とかって話は…」

私は気になって聞いた。
そんな話があれば安心する。

「ううん。私は結婚なんてまだまだ…。
まだ、やりたいことが沢山あるのよ。
最近、二輪に乗りたくて教習所に行き始めたし、
かなり楽しくてね…」

彼女は二輪の話や、他にも何か習ってる話を聞かせてくれた。
そういえば、フジサワくんが同じようなことを言っていた。
気になる。

「イイダさんは…」

もうブッっちゃけ言っちゃえ!

「フジサワくんのこと好きなのかと思ってましたよ~。」

「ええっ?私がぁ~?」

イイダさんが笑い出した。

「そんなことないよ。
それにね、同級生って興味無いって言うか。
子供っぽいって言うか。
私ね、付き合ってるってワケじゃないけど、
気になる人がいるんだよね、年上で…」

それって、私が付き合ってる人は魅力無いってこと?
何だかちょっとムカついた。

「遊びに来たことあるって、フジサワくんのお母さんが言ってたんで…」

つい言ってしまった。

「ああ…、アレは…」

ちょっとイイダさんが言葉に詰まった。
でも、言う決心をしたかのように続ける。

「流れでって言うか。
お母様に勧められて泊まったっていうか…。
だから心配しないで、ね。」

私も立ち聞きで聞いた話だから、
これ以上つっこむことができない。
何、流れでって?
お母様?
やっぱりかなり親しかったんだ?

「あ、ううん、大丈夫です。
ごめんなさい、変なこと言っちゃって…。
あの…、
その人とうまくいくといいですね。」

私は自分の声に寒気がした。
私は何をしているの?
私は何をやっているの?

不信感でいっぱいなのに、
大人な相手の対応に同じように返している。
聴くべき相手はイイダさんじゃない。
フジサワくんなのに。
私は卑怯だ。

「ありがとう。
じゃあオヤスミなさい。
フジサワくんにヨロシクね。
今度良かったら、いっしょに食事でもどう?」

食事?
何で食事なんかしなきゃいけないの?
でも、そうは言えなかった。
自分が子供みたいな気がして…。
それに社交辞令かもしれない。

「はい。宜しくお願いします。」

明るく振舞って、電話を切った。
抑えた感情が心の中でグルグルと回っている。
手が痙攣したみたいに震えてる。

Hな雑誌の中の女の子たち。
全部が憎らしくなった。
彼が好きなのは、こういう女の子なんだ。
イイダさんや、こういう女の子なんだきっと。

雑誌を投げつけた。

スタイルのいいイイダさん。
悲しい。
私じゃない。きっと。

そう思ったら涙が出てきた。
ポロポロと。

悔しい。
悲しい。
私が一番好きなはず。
だから結婚するはず。

以前聞いたことがある。
イイダさんはモテそうって言ったら、
うん…まあね。って。
あの中じゃ一番かな、って。

なのに、その女は、私が結婚する相手をバカにしてた。
そして、彼が好きなタイプはその女なんだ…。

どうして私を選んだの?
ますます涙が出てくる。
だって、今の私には誰も言い寄ってくる人さえいないんだから。
だからお手軽だったんだろうか…。

涙をふこうと思ったら、
いきなりフジサワくんが帰ってきた。

「ただいま…
どうしたの?」

私の顔を見て驚いたように言う。

すぐに雑誌に気付いたらしい。

「あ、ゴメン!それはさ、別に、オレじゃなくてさ。
先輩がくれたんだよ!
後で返せって言われると困るから隠したって言うか…。」

なんか勘違いして、懸命に言い訳してる。

違う。
違うの…。

でも、心の中をうまく言えない。
留守電聞いたら、私が電話取ったってわかっちゃうだろうけど。

「胸、大きい子が好きなの?」

フジサワくんが涙をぬぐってくれて、
私が冗談みたいに言った。
何とか冗談にしてしまいたい。
ホントは、笑いながら、こんな会話するはずだったのに…

「ううん、そんなことないよ。ユナくらいの大きさが好きだって!」

何言ってんだろ。
笑ってしまう。

口から出たのはやけっぱちな言葉だった。

「イイダさんから電話来たよ。
結婚おめでとうだって。
電話してあげれば?」

「何か言われたの?」

フジサワくんの顔が緊張した感じに見えた。

「ううん、何も。いい人だったよ。
今度食事いっしょにしようねって。
イイダさんの彼と。」

「ああ、そうなんだ。」

笑顔を作ってたけど、ちょっと悲しそうに見えた。
私の思い込み?

「会えたから、もういいや。今日はもう帰るね。」

私はバッグを持って玄関で急いで靴を履いた。

「ちょっと、待てよ、ユナ!」

フジサワくんが私の腕をつかんでくる。

「帰っちゃうの?」

「うん。帰るよ。」

「イイダとは何にも無いよ。」

呼び捨てだ。
何言ってるんだか。
聞きたくない。

「実家に遊びに来たのに?!」

フジサワくんが驚いた顔をしてた。
何で知ってるの?って顔。

腕を強く振り払って外に出る。
ああ、とうとう言っちゃったんだ。
もう、嫌われちゃったのかもしれない。

振り返るけど、追いかけて来ない。
当然なのかも。
アレじゃあ、勝手に電話出て、部屋をあさったみたいだもんね。

現実私はそんな子なんだ。
そんな子だったんだ。
あんな自分は見たくなかった。
きっとひどい顔してるに違いない。
最悪だ…。

駅の方に向かって真っ暗な中を歩いてたら、
涙がどんどん出てきた。

悔しい。
悲しい。

早足だった足が遅くなる。
このまま帰っていいのかな…。
謝った方がいいのかも。
でも、何に?

やっぱりもう帰るしかない。
バカだな、私。

でももういい。
フジサワくんなんか嫌い。
嫌いになる。

後ろの方から走ってくる足音が聞こえて振り向く。
腕をいきなり掴んだのは、
フジサワくんだった。

「ゴメン。
ホントにゴメン。
でも、今はもうホントに何でもないから。
オレのこと信じてくれる?
結婚するのはユナだからだよ。」

涙が出てきて止まらない。
別れたいのに、別れたくない。
フジサワくんが私を強く抱き締める。
ウン。ウン。って頷く。

それでも、この日、
私の中で、
何かが一つ無くなったような気がした。

それが何なのかは、わからないけど。








続きはまた明日

前の話を読む

目次





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年07月15日 18時54分21秒
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

プロフィール

りらっくままハッシー!^o^

りらっくままハッシー!^o^

カレンダー

コメント新着

千菊丸2151 @ Re:アカデミー賞授賞式(03/11) りらっくママさん、お久し振りです。 「君…

バックナンバー

2024年06月

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: