りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年07月19日
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カテゴリ: ある女の話:ユナ
今日の日記



<ユナ14>




実は、転勤で…と言う前に、
課長はニコやかに言った。

「あ、そうなんですか。
はい、わかりましたよ。今までお疲れ様でした。
来月ね。
う~ん、手配しなきゃな。
ま、今は忙しく無いし何とかなるでしょう。」

私はその態度に拍子抜けする。

「すみません、急で。
転勤が決まったんで。」

マヌケだな…と思いながら付け足す。

「あ、そうなんだ?
いや、もう結婚したからね。
いつ辞めてもおかしくないって思ってたから。
まあ、気にしないで。
こっちは大丈夫だから。
いい家庭作って下さい。あと一ヶ月ヨロシク!」

そう言って、課長は会議室を後にした。
課内会議の終わりに引き止めての、簡単なやりとりだった。

もう少しガッカリしてくれたり
…ってことは無いんだな。
私は自分の存在の必要無さを思い知った気分だった。
私の代わりはいくらでもいる。

早速仕事引き継ぎの手配がされた。
私がいなくなっても大丈夫なのかな?って位、
私の仕事の後を継いでくれることになった先輩は、
メモも取らずに、適当に話を聞いていた。

ま、いいか。
この人仕事できるんだろうし、
私どうせ辞めちゃうんだし。

送別会がされて、
「淋しくなりますよ~。」って、後輩の女の子が言ってくれた。
「遊びに行ってもいいですか?」
「遠いよ~。ホントに来る気があったら連絡してね~。」

私は社交辞令と思って軽く流す。

「オレ、ファンだったのになぁ~。」

ウケ狙いなのか男性社員が言って、
他の男性社員に頭を叩かれている。
いきなり先輩の男性社員が酔っ払ったのをいいことに抱きついてきた。

「うお~!!!」

絶叫し、みんながゲラゲラ笑う。
突然のことだったのでコーチョクしてしまった…。

最後って面白い。
いろいろあったけど、楽しい職場だったな…と振り返る。

帰るとサトシが珍しく先に帰ってて、
お帰りって迎えてくれた。
何だか涙が出てきて、
それをサトシがぬぐって抱き締めてくれた。

送別にもらった花を花瓶に刺して、
辞めてからの手続きを済ませる。
引越し荷物をまとめる。
気付くと花は枯れて、引越しの日。

引越後は荷物を片付けたり、役所へ行ったりで、なかなか慌しかったけど、
今こうして全てが片付いて、一人で部屋にいると、
何だか落ち着かなくて困る。

サトシが家を出ると、部屋が広く感じる。
シンとした部屋に一人でぼんやりとテレビを見ていると、
こんなことしてていいのかな…って気持ちになった。

のんびりした空気に溶け込めない。
サトシは早速会社に馴染むために、歓迎会やら、残業やらを引き受けて、
やっぱり帰りが遅くなることが多かった。

酒に強いワケでも無いのに、飲んでくるからか、
会社には馴染んできたらしい。

私は一人、テレビとお友達になる。
もう朝の情報番組も、昼メロも、午後の再放送も、
何がいつやるのか知っている。
パソコンもゲームもお友達。

暇だな~。
一日が長いので、困ってしまう。
即次の仕事をみつけようと、一応派遣会社に登録したけど、
時間的にも、時給的にも、通勤先も、
良いと思えるものがなかった。
せっかくだから、失業給付金をもらってから働くことに決めた。

何となく、今の自分の状況に焦る。
正直、今は、あまり楽しみも無い。
休日は誰も来ることも無いし、
ひたすら疲れてバテてるサトシは家で転がってゲームしてた。

時々会社の人に、バーベキュー的なものに呼ばれるけど、
みんな子供のいる家族ばかりで、
年上ばかりなせいか、疲れる。
子供はまだなのか聞かれる。

早く作った方がいいわよ~。
育児は体力いるわよ~。

お洒落して行くと何だか浮く。
もう、お洒落する必要は無いんだよって、
告げられてる気がした。

奥様の会話にはついていけず、
小さな子の子守をするフリで自分の居場所を確保。
終わると、男達は飲みへ。
奥様方は子供と共に家に帰って行く。
私は、何となく遠慮して、一人で家に帰ってサトシを待つ。
録画した私の好きな俳優が、私を待っていてくれる。

「あんなヤツやめろよ。オレにしろよ。」

きゃ~!またそんなこと言ってる~!
うんうん。
私ならキミにする、する~!

一人で言って、一人で笑う。
そして、友達にドラマを観終わるとメールする。

  カッコ良かったよね~!

返事が来る。

  ふふ。ユナってばあの子好きだよね~!
  いつか主演になるかね?

そんなやりとりをちょっとしてると、
友達が側にいるように感じた。
この歳になると、近所で友達って無いんだろうな…。


せめてもの救いは社宅じゃないことだった。
それから、そういった会社の集まりは滅多に無いこと。

淋しくなって、何となく、
友達へのメールや、手紙を書くことが増えた。
メールがこんなにありがたいと思ったことはない。
お母さんには、つい電話をしちゃうので、通信費がかさむ。

今はとりあえず、
次の仕事に就くまでの間お金をもらうために、
職業安定所に指定された日にちに行くことになっていた。
それ以外、私に用事なんて無い。

せっかく賑やかな街まで行くのだからと、
私は久しぶりにお洒落をして出かけた。
電車も何だか久しぶり。

職業安定所、ハローワークは、いろんな歳の人が集まっていた。
話を聞いて、
手続きを済ませて、
どんな仕事を募集してるかを見て、
私は街をブラついて帰ることにした。

新しい洋服でも買っちゃおうかな。

でも、すぐに止めることにした。
買ってもどこに着ていくんだろ?

そう思ったから。

これからは、特にどこかにお洒落して行く場所も無いだろうし、
家で過ごすことが多いから、部屋着くらいしか必要無さそうだな…。
早く仕事みつけた方がいいかも。
でも、また転勤があるだろうから、パートとかのがいいのかな。
フルで働けるとこあるのかな…。

働いてないから、何だかサトシのお金だと悪い気がして、
今は給付金が私のささやかな楽しみ。

一度目が出た時は嬉しくなった。
働かないのにお金がもらえるなんて、給付金バンザイ!

それでもまたハローワークに行くために街に出ると、
何かが欲しくなった。

本屋に入る。
ファッション誌を立ち読みする。
あ、もう私には関係無いか…。
雑誌を置いて、話題になってる小説を買った。
電車で読んでみよう。

駅へ向かうと
ピコピコとうるさい音が聞こえた。
パチンコ屋から人が出てきたところだった。

ちょっと入ってみようかな。
ふとそう思った。






続きはまた明日

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最終更新日  2009年07月19日 18時52分40秒
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