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2005.06.11
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今野國雄『西欧中世の社会と教会』
~岩波書店、1973年~

 本書は、日本語の著書や論文を読むと、しばしば引用されており、ずっと気になっていた。たしか、五月くらいから読み始め、ようやく本日読了した。
 細かい節は省略するとして、目次は以下のとおりである。
 序章 研究の課題と方法
 第一章 西欧教会の形成とその性格
 第二章 修道院改革運動の諸相
 第三章 聖堂参事会の改革運動
 第四章 教会改革の理念と現実

 第一章では、カトリック世界の成立から、西ヨーロッパにおける修道制の起源、展開などが述べられている。第四節では、『聖ベネディクトゥス会則』の成立と、その内容が紹介されていて、私にとっては非常に有益だった。
 第二章で主に語られるのはシトー修道会についてである。一次文献である『シトー修道会生誕小史』、『カリタ・カリターティス』の試訳がなされており、ここも有益である。本書の紹介とはずれるが、先日、朝倉先生の『修道院』の紹介を書いたときにもふれたことであるが、現在、ジャック・ド・ヴィトリによる修道会への見方に関する論文を読んでいるところで、具体的な修道会の性格を知ることができたのはよかった。
 第三章は、これまた私にとっては分かっているようで分かっていない聖堂参事会に関する問題である。とりわけ、第二節「『聖アウグスティヌス会則』の成立について』は、『聖アウグスティヌス会則』の内容が紹介されていて、勉強になる。朝倉先生の『修道院』では、修道会を『聖ベネディクトゥス会則』に従うものと『聖アウグスティヌス会則』に従うものに分類されるのだと私は解したのだが、これで、それぞれの会則に関する内容が勉強できたことになる。前者に従うクリュニー修道会もシトー修道会も、当初は会則の遵守をかかげながら、しだいにその理念から遠ざかってしまうようであるが…。
 第四章で、興味深かったのは、中世における「人民主権の理念」についての言及である。近代の産物だというイメージをもっていた「人民主権の理念」が中世にも見いだされるというのは、意外だった。ここでは、特にマネゴルトという人物の思想を扱い、さらにその思想が生まれた背景が考察されている。同じく本章で、自分の研究にも関わってきそうなのは、フィオーレのヨアキムを扱った節である。私が目下の所研究対象としているジャック・ド・ヴィトリも、フィオーレのヨアキムの影響を受けている、という指摘を論文で読んでいたので、ヨアキムについては関心があったのだった。それでなくとも、ヨアキムの名前は、12世紀以降の中世のキリスト教について勉強する際には目にする。また、托鉢修道会に関する言及もある。
 これで、ベネディクト派修道会、聖堂参事会、托鉢修道会と、主要なところは概観できた。それどころか、前二者については一次文献の詳細な検討もあり、本書は私にとって、研究を進める上で重要なものとなるだろう。

研究室でネットがつながったので、研究室でこれを書いています。やったネ☆





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Last updated  2005.06.11 08:17:19
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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