のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2006.02.16
XML
占い師はお昼寝中
倉知淳『占い師はお昼寝中』
~創元推理文庫~

 昼寝が大好きの占い師・辰寅叔父のもとに、見習いアルバイトとして通う美衣子。占いでは嘘八百を並べ、口先で客をまるめこむ。それでいて、事件(事態)は解決、あるいは良い方向に向かっていく-。叔父のぐうたらぶりにあきれながら、その洞察力や要領のよさに一目置き、そして訪れてくる「お客さん」を観察して社会勉強をする-。そんな美衣子が関わった、六つの事件。
「三度狐」一番目の「お客さん」は、一流会社の課長補佐。引っ越しをし、また社内で昇進の話が出た頃、身の回りで不審なことが起こった。ゴルフクラブの紛失、書類紛失、そして、枕もとにおいていた本の紛失。
「水溶霊」二番目の「お客さん」は、かっこいい女性。彼女のマンションで、ポルターガイスト現象が起こったという。
「写りたがりの幽霊」三番目の「お客さん」は、軽薄な男子学生。彼が写っている三枚の写真は、いかにも心霊写真のようであった。
「ゆきだるまのロンド」四番目の「お客さん」は、明るい主婦。自分が二人いるのではないか、そう疑問を感じずにいられない出来事が起こっているという。
「占い師は外出中」五番目の「お客さん」たちは、二人の老人。片方の老人の家に、血まみれの幽霊が出るという。
「壁抜け大入道」六番目の「お客さん」は、小学生の男の子。父親に盗難の疑いがかけられているが、自分は事件の夜、現場に、一つ目の大入道を見たという。

 面白かったです。辰寅さんの口調が、どこか猫丸先輩に似ているなぁと感じてしまうのは仕方ない…?
 まったく予備知識のないままに読みました。「三度狐」の真相編で、そうとう引き込まれてしまいました。話を聞きながら、漠然と答えを導き出す。その後考えると、論理的な思考の道筋が見える。こういう、辰寅さんのやり方が面白いなぁと思ったのも大きいですが、彼の心配りもよいですね。「三度狐」があたたかいお話で、この短編集は私にとって当たりだ、と思いました。
 第四話「ゆきだるまのロンド」も、あたたかくて素敵な物語でした。
 お客さんたちが語る事件は、日常離れした、不思議な事件、現象。それこそ幽霊だの、ドッペルゲンガーなど、超自然的なものを感じるからこそ辰寅さんのところへ相談にくるわけですが、当の辰寅さん自身は一切そういうものを信じておらず、さらに占いさえも信じていない。このギャップ。そして、非日常が、生臭い、あるいはあたたかい、ともかくあまりにも「日常」のこととして説明されていく過程。面白くて、わくわくしながら読みました。
 好奇心いっぱい、ちょっと直情的なところもある美衣子さんと辰寅さんのやり取りも、ほのぼのしています。ものすごく面倒くさがりの辰寅さんですが(客が長居しないために、冷暖房も設置せず、ソファを粗雑にするなんて)、ときどきかっこよく思われるのです。
 あたたかい物語を読みたい気分だったのもあり、良い読書体験でした。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.02.16 21:07:16
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(か行の作家)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: