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2006.10.21
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筒井康隆『にぎやかな未来』
~角川文庫、1972年初版(1979年26版)~

 41編のショートショートが収録されています。中には1頁だけの作品もあり、さくさく読み進みました。以下、いくつか印象に残った作品について感想を。
 解説の星新一さんによれば、 「お助け」 という作品が筒井さんの商業誌第一作とのこと。これは面白いと思いながら読みましたが、そんな背景があったのですね。子供の頃から道徳観に乏しかった男が、宇宙航空士となり、厳しい訓練を受けます。最初の試験でも、その過酷さに耐えることができたのは彼だけだったのですね。ところが彼は、世界に違和感を抱いてきます。自分以外の時間の進み方が遅くなっているように感じるのです。
 これを読んでいて、ジョジョの世界を連想しました。とくに、 第六部・プッチ神父のラストの方と、第五部・ジョルノ対ブチャラティ編 などをです。そう考えると、筒井さんの作品は発表されたのはずいぶん前ですが、発想はいまでも新鮮に感じられるのだな、と思いました。
 さて、この作品集の中には、マスコミ批判をうかがえる作品がいくつかあり、面白く読みました。 「幸福ですか?」 は、「幸福ですか?」という質問に対してゆっくり答えようとすると、質問者が回答者を相手にしようとせず、あるいは怒り出す、という話。痛烈な皮肉が快かったです。 「地下鉄の笑い」 も、最初はマスコミ批判とまでは言えませんが、考えなしに他人に同調することの滑稽さとでもいいましょうか。地下鉄の車内につられた抽象的な模様の描かれた広告を見て爆笑する男。その笑いが、どんどん広がっていく、という話です。
「亭主調理法」 も面白かったです。ラストが無茶苦茶で、笑えました。

 先に挙げた「お助け」もそうですが、いわゆる(狭義の?)SFと聞いて連想するような作品がけっこうあります。私はどちらかといえば「SFは読みません」という立場でしたが、案外面白いなぁ、と思いました。





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Last updated  2006.10.21 07:57:26
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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