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2007.02.16
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島田荘司『御手洗潔の挨拶』
~講談社文庫、1991年~

 四編の短編が収録された短編集です。初期の事件が多いですね。以下、簡単に内容紹介と感想を。

「数字錠」1979年の12月。『占星術殺人事件』で知り合った竹越刑事が、御手洗のもとを訪れた。不可解な事件があったという。看板製作会社の社長が密室状態の仕事場で殺されていた。シャッターは鍵がかけられ、その鍵は社長と従業員の一人がもっていただけ。裏木戸には、数字錠がかけられていた。社長と金銭関係のトラブルのあった二人の人物が怪しいと竹越はにらんでいたが、密室という壁が解決できなければ、彼らのアリバイも成立してしまうのだった。

 御手洗シリーズの中で、とても大好きな短編の一つです。ストレートに御手洗さんの優しさが示される事件です。もう三度目か四度目くらいの再読になりますが、トリックの部分はすっかり忘れていたものの、犯人も動機も覚えています。それでも、読むたびに感動できる一編です。

「疾走する死者」1980年秋。「糸ノコとジクザク」という店を営む糸井氏のマンションで、定期的に音楽パーティが催されている。僕―隈能美堂巧(くまのみどたくみ)も、公園で知り合ったアカに誘われてパーティに参加する。そこには、一級のギターの演奏を披露する御手洗潔という男もいた。パーティは、豪雨の夜に行われた。そこで、とつぜん停電になり、男が走って部屋を出て行った。男は、マンション(糸井の部屋は11階)から飛び降りたかと思われたが、下に死体はなかった。間もなく、失踪した男が電車にひかれてしまう。

 島田さんの作品には珍しく、読者への挑戦が挿入されています。おぼろげな話の筋は覚えていましたが、それでも挑戦に応えることができませんでした…。

「紫電改研究保存会」私―関根が七年前に経験した奇妙な出来事。英字新聞部につとめる私のもとに、戦闘機の紫電改について熱弁を振るう男が現れた。四国そばで見つかった紫電改が引き上げられる際、そこにセスナ機が墜落した。そのセスナ機を操縦していた男は関根の遠縁にあたる人物だが、セスナ機に同乗していて男の「自殺」に巻き込まれた人物は、自分の友人の子供だという。はて、ゆすりかと思う関根に、男は頼み事をする。宛名書きを手伝って欲しいというのだ。金品は一切盗まれていない。あれはいったいなんだったのかという関根の話を聞いていた奇妙な男―御手洗潔が、その出来事の真相を語る。

 これは、ちょっとしたほのぼのミステリ(?)ですね。

「ギリシャの犬」1987年6月。実業家・青葉の妹、青葉淑子が御手洗のもとを訪れた。隣にあったタコ焼き屋が店ごと盗まれたという話を聞いたときにはやる気をなくした御手洗だが、聞いてみると、その際、彼女が飼っていた犬も殺されていたという。事件に興味をもった御手洗が動き出したとき、本格的に事件が起こる。淑子が預かっている兄の子供が、誘拐されたのだった。犯人は、青葉に一億円を要求した。身代金に引き渡しに、川を船で移動するように言われた。犯人グループも川で船に乗っていると思われたが、付近には、それらしい船は一切見あたらなかった。石岡は、身代金引き渡しのために船に同乗したが、御手洗はしばらく前から独自に動き、石岡たちに指示を与えていた。

 そういえば、御手洗シリーズで誘拐事件は珍しい気もします。

   *   *   *

 全体的に、謎解きメインのミステリで、最近立て続けに読んでいるような長編に見られる社会派的なメッセージ色も薄いです。最近は、ただの謎解きよりも、なにかしらのメッセージ性がある作品が好きなのですが、その意味で、「数字錠」は素敵な物語です。たまらない気分にもなりますが…。
 今回再読して再認識のは、ミステリでも、トリックなどの部分を私は相当忘れてしまうので、何度でもミステリが楽しめるということです。謎解きのときの「あっ、なるほど」という感動を何度でも味わえる喜び(笑)





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Last updated  2008.02.15 20:00:34
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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