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2007.05.03
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佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』
~新潮社、2007年~

 佐藤友哉さんの長編・最新作です。いつものように内容紹介と感想を。

 27歳の誕生日に、「僕」―木原は会社をクビになった。彼は、依頼者のためだけに物語を書く、片説家として働いていた。片説家は、小説家のように、不特定多数の読者のために一人で物語を作るのではない。ただ一人の依頼者のために、複数人で物語を作るのだった。
 仕事をやめさせられた彼のもとへ、配川ゆかりという女性が現れる。彼女は、僕に二つの依頼をする。一つは、自分のために「小説」を書いて欲しいということ。もう一つは、失踪した妹―配川つたえが読んだ物語、彼が属していた企業の原稿用紙に記されていた物語を読ませてほしいということだった。しかし、その物語に僕は心当たりがない。これは、企業に、小説家でも片説家でもない、才能はあるのに小説を書かず、小説を笑う存在―「やみ」がまぎれており、やみがその物語を書いたのではないか、と思われることだった。
 僕は、機械オンチの探偵、一ノ瀬の助力を請いつつ、やみを探し始める。同時に、クビになってから文字も書けず、文字も読めないようになってしまったのだが、それでも小説を書こうと試みる。

 …と、こういったところから物語はどんどんふくらんでいきます。『日本文学』なる存在が現れたり、バックベアードという存在が現れたり。途中、やみをあぶりだすために行われる試験が面白かったです。あんまり正解できなかったのが残念でした……。
 なんというか、小説家が、小説とはなんだろう、自分の存在意義はなんだろう、ということを、小説の形で表現した作品だと私は読みました。興味深い話ではあるのですが、作中にも例が示されているように、どこか、私とは関わりのないような部分、いってしまえば、共感できないような部分があり、あまり印象的ではなかったように感じます。『子供たち怒る怒る怒る』の中の諸短編や、『鏡姉妹の飛ぶ教室』の方が印象的だったなぁと思います。
 さて、ずいぶん前から発売が予告されながら遅れている、『灰色のダイエットコカコーラ』はいつ出るのでしょう。5月中に出るのでしょうか。これだけ待っていると、楽しみな気持ちも高まります。





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Last updated  2007.05.03 20:04:12
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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