のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2007.09.12
XML
筒井康隆『メタモルフォセス群島』
~新潮文庫、1981年~

 筒井さんの短編集です。11編の短編が収録されています。印象に残った作品について、感想を書いていくことにします。

 まず、冒頭に収録された 「毟りあい」 。サラリーマンのおれが帰宅すると、その家に暴漢がたてこもっていた。暴漢は、妻と会うために脱獄してきた男。暴漢に会って説得する気のないその妻の家を訪れ、おれは暴漢の妻と子供を人質にとり、たてこもる…という話です。幸い、私自身は、大きな事件に巻き込まれたことはいまのところないのですが、ある事件の被害者に対して、マスコミ(時に警察)が加害者的な存在となるということは感じています。本作は、そうした風潮に対する風刺とともに、被害者が加害者になっていく過程が興味深かったです。

「走る取的」 は、解説で、三浦雅士さんが深く論じておられるので、ここではとりたてて書きませんが、二人のサラリーマンがお相撲さんに追いかけられる話です。三浦さんほど深く考えながら読んだわけではないのですが、解説も、共感できる指摘もあって、興味深かったです。

「定年食」 は、印象的な話でした。定年を迎えた課長が帰宅すると、多くの親族が迎えてくれます。…それから、思ってもいなかった方向に話が進んでいくのですが、これはホラーですね。

「こちら一の谷」 は、源義経たちが、史料や、NHKの大河ドラマや、地元の伝説などにつじつまをあわせるように動いていくというどたばたもの。面白かったです。

 最後に収録された、表題作の 「メタモルフォセス群島」 には、水爆実験への非難の意味もあるのでしょうか。生態学者の俺と助手が、水爆実験によって生態系が狂ってしまった島を訪れ、動植物について調査するという話なのですが、ラストがやりきれませんでした。

 …などなど、楽しく読めた短編集でした。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.09.12 06:53:07
コメント(0) | コメントを書く
[本の感想(た行の作家)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: