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2008.08.12
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島田荘司『帝都衛星軌道』
~講談社ノベルス、2008年~

 2006年5月に単行本として刊行された作品のノベルス化です。「帝都衛星軌道」という中編を前後編に分け、間に「ジャングルの虫たち」という中編が挿入されているという構成です。  ではでは、内容紹介と感想を。

ーーー
 1999年3月。紺野貞三、美砂子夫婦の、中学生三年生になる息子・裕司が誘拐された。貞三からの通報で駆けつけた捜査一課の田所は、犯人の様子が通常の誘拐犯とは異なっていることに気付く。犯人は、警察に通報するなとも言わず、要求する金額もたったの15万だという。
 犯人は、美砂子に身代金を持ってくるように指示。携帯電話は駅のコインロッカーに入れさせ、その後の指示はトランシーヴァーで行われることとなる。美砂子は、犯人の指示に従い山手線に乗り、捜査員も乗り込んだが、圏外になるはずの場所まで来ても、犯人からの指示は伝わってきていた。そして、美砂子の反応に変化が見え始める…。
ーーー

 この手の話は、内容紹介が書きにくいですね…。単純な誘拐事件と思われた事件は、どうにも不可解で。そしてさらに、貞三にとってはもっと大きな謎が起こります。
 一方、「ジャングルの虫たち」は、一人のいわゆるホームレスの回想がメインの物語です。
 タイトルからもうかがわれますが、島田荘司さんが随所で展開しておられる「都市論」が本作でも大きなテーマとなっています。もう一つ大きなテーマはありますが、ここではふれません。

 冒頭で、中編に別の中編が挿入されている構成だと書きましたが、あるいは、全体で一つの長編ともいえるのかもしれません。
 本作の原案はデビュー前のものだそうです。改訂した版に、最新の中編「ジャングルの虫たち」を挿入してみると、「新作とぴったり呼応しあう部分が生じた」とのことです。おそらくあの部分かなぁと思うところはあるのですが、はてさて…。
 それはとまれ本書の「ジャングルの虫たち」は、たとえば、 『摩天楼の怪人』 で挿入された不思議な節などのようにも読めるので(島田さんの長編には、しばしば不思議な節が挿入されます)、その意味で、一つの長編ともいえると思いました。

『都市のトパーズ』 など同様、日本の都市の秘密が明かされる部分では、ますますこの国への残念な思いが強くなってしまいますが、そこはそれ。後編、特にラストは良かったです。
(2008/08/09読了)





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Last updated  2008.08.12 07:12:33
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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