のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2009.07.05
XML

筒井康隆『脳ミソを哲学する』
~講談社+α文庫、2000年~

 筒井康隆さんが、いろんな方面の専門家と行った対談集です。
 まずは構成を示した上で、簡単にコメントを書きたいと思います。

ーーー
第一章 科学哲学者 村上陽一郎さんと「哲学する科学者待望論」のはなし
第二章 解剖学者 養老孟司さんと「脳ミソを哲学する」はなし
第三章 JT生命誌研究館副館長 中村桂子さんと「生命の歴史を読み解く」はなし
第四章 動物行動学者 日高敏隆さんと「動物たちの言いぶん」のはなし
第五章 数学者 森毅さんと「頭のなかの回路」のはなし
第六章 気象学者 根本順吉さんと「地球の百葉箱」のはなし
第七章 理論物理学者 佐藤文隆さんと「星を見ずに星を語る人」のはなし
第八章 イカ学者 奥谷喬司さんと「前衛的なイカの生態」のはなし
第九章 評論家 立花隆さんと「科学の未来を覗く」はなし
ーーー

 本書は、1995年に刊行された単行本の文庫化です。ということで、内容自体はいまからいえば15年も前の話なので、この間にそれぞれの分野でさらに研究が進んでいることは間違いありません。が、いわゆる「理系」の分野になじみのない私には、どの話も新鮮で興味深かったです。そして、たとえ私が「理系」ではないにしても、その一線で活躍する方々の言葉に感銘をうけることがしばしばでした。
 どの対談の内容も興味深いのですが、今回は、特に印象に残った言葉をいくつか引用しておきたいと思います。

 まずは、第3章から。

音楽だったら専門家が楽しんでいればほかの人も楽しめるのに、科学は、専門家は楽しいと思って研究していても、外に出すときはしかつめらしく教育、啓蒙という顔つきをしてしまう。
 わたしは教育と啓蒙という言葉を禁句にしているんです。ロックコンサートをするときに、だれも教育とか啓蒙とか言いませんよね


 東京のとあるカフェでこの一節を読んだのですが、なぜか涙腺がゆるんでしまいました。ここまでゆるいとは…。 とまれ、難しい研究でも、やっぱりそれが研究されるのは楽しいからだと思います。ならば、こんな風に、専門家がその分野の楽しさを、難しい顔をせずに、楽しそうに伝えてくれると良いですね。

 それから、同様の趣旨で興味深かった言葉を第四章から。

なんの役に立つのかと言われたら、産業や技術には全然役に立たない。僕はなにかに役立てようと考えたのではなく、面白いんで一所懸命調べた。けれど、こんなことに興味をもっていてしかも自分では調べることができない人は、僕がやったことを読んで、あ、そうかと思ってくれればそれでもう十分その人の役に立ったはずだし、もう一つは、そんなことを調べていくということが面白いな、自分も調べてみようかなという人が出てきたら、それでもういいんだと思うのです

 こちらも読みながらじわりときました。私自身、西洋中世という、勉強しても社会には直接役立たないような分野を勉強してきているので、こういう言葉はじーんときます。

 というんで、興味深い一冊でした。

(2009/06/29読了)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.07.05 07:27:18
コメント(4) | コメントを書く
[本の感想(た行の作家)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: