北山猛邦『千年図書館』
2019
年~
『
私たちが星座を盗んだ理由』
(講談社ノベルス、 2011
年)の姉妹編といえるような、最後の1行で世界がひっくり返るような作品集です。5編の短編が収録されています。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
―――
「見返り谷から呼ぶ声」
その谷から帰るときには、けっしてうしろを振り返ってはならないという「見返り谷」を調べていたクロミ。学校でも一人で過ごすことが多い彼女は、何を調べていたのか。
「千年図書館」
村の北の湖が凍ったまま溶けなかったとき、いつものように「司書」が選ばれ、島の図書館に送られた―。今回送られたペルは、2年前に送られた「司書」から、仕事や、島での生活について教えられる。しかし、前任者は一切「司書」としての仕事をしていないように見えたが…。
「今夜の月はしましま模様?」
異星人である音楽生命体に自分のラジオをのっとられた大学生の仁科。生命体によれば、異星人が地球侵略を進めているというのだが、そんな中奇妙な殺人事件が発生する。
「終末硝子」
医師のエドワードがロンドンで体調を崩し、故郷で仕事をするため、 10
年ぶりに戻ると、そこには謎の塔が複数たてられていた。宿の主人に聞くと、村に訪れた「船長」が提案した「塔葬」で、それを始めてから村は安定してきているという。一方エドワードは、「船長」の妻から、「船長」の動向に注意してほしいと依頼を持ち掛けられる。
「さかさま少女のためのピアノソナタ」
古本屋で、「絶対に弾いてはならない!」とメモ書きを付された謎の楽譜を購入した聖。調べると、途中で弾くのを辞めたり間違えたりすると、両腕が吹き飛んでしまうと分かったが…。
―――
冒頭作品は比較的分かりやすく、「そうかな」と思っていたとおりですが、比較的優しいエンディングが好みです。
表題作は、『私たちが星座を盗んだ理由』所収「妖精の学校」同様、知らないとピンときませんが、知っていると(知らなくても調べると)ゾワゾワくる作品。多くの方がネットにも書かれていますが、本書をパラパラめくるのには注意が必要です。
第3話はユーモアあふれる作品。音楽生命体と仁科さんの掛け合いが楽しいです。
第4話は好みのラスト。言われてみたらそのとおりなのに、気付きませんでした。
第5話(文庫版ではこちらが表題作になっています)はファンタジーテイストの作品。こちらも好みのラストでした。
前作『私たちが星座を盗んだ理由』が好みだったので、気になっていた1冊。本書も楽しく読みました。
(2023.11.08 読了 )
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