トルーマン・カポーティ(川本三郎訳)『夜の樹』
~新潮文庫、 1994
年~
(Truman Capote, A Tree of Night and Other Stories
, 1973; Truman Capote, The Thanksgiving Visitor
, 1967)
9編の短編が収録された作品集です。
映画館に並んでいるときに出会った少女、ミリアムにつきまとわれることになる女性(ミセス・ミラー)を描く
「ミリアム」
。
寒い冬の夜、カレッジに戻る汽車の中で学生(ケイ)が2人の旅芸人にからまれる
「夜の樹」
。
人々から夢を買う男のもとを訪れ、夢を売ってしまった女性(シルヴィア)の行く末を描く
「夢を売る女」
。
保身のために嘘を重ねた男性(ウォルター)の、成功と転落を描く
「最後の扉を閉めて」
。
主人公、ヴィンセントと、彼のことを(彼が知らない人物である)デストネッリの友人と言い張る女性との出会いを描く
「無頭の鷹」
。
1年前、「ぼく」たちの町に住むことになり、町中の話題をさらうことになる少女(ミス・ボビット)の思い出と最後を語る
「誕生日の子供たち」
。
ライバル店に対抗し、大量の小銭を瓶に詰め、その金額を当てた人に全額をプレゼントするという企画を打ち出したドラッグストアに訪れ、ゲームに挑戦する少年を描く
「銀の瓶」
。
妻の意地悪な親族の家で酷い目に遭った「ぼく」が、言い分を主張する
「ぼくにだって言い分はある」
。
そして、乱暴で「いやなやつ」たるヘンダーソンを、同居している仲よしのミス・スックが感謝祭に招くことになった日の思い出を語る
「感謝祭のお客」
。
冒頭の「ミリアム」や表題作をはじめ、不思議な、悪夢のような味わいの作品が多いです。印象的だったのは「夢を売る女」。ほかの作品もそうですが、どこか、(久しく観ていませんが)「世にも奇妙な物語」を観た後のような読後感です。
そんな中、ややコミカルな「ぼくにだって言い分はある」や、訳者による解説の言葉を借りれば「心暖まる作品」( 285
頁)である「感謝祭のお客」が収録されていることで、重すぎない一冊となっています。
「感謝祭のお客」では、ミス・スックが人を憎んだことがない理由を語るシーンが印象的でした。
(2024.04.24 再読 )
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