ぶるどっぐロンディ＆にゃんこの部屋

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たまには本格的に（でも少々手を抜いて）クッキング～♬

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April 2, 2008

母が倒れたと言う知らせを聞いたのは夫の友人の伊豆の別荘に逗留中。
折りしも風接近中　翌朝出発する事にしたが前夜より嵐の中！
然し学生時代　鈴鹿でレーシングドライバーのバイトをしていた夫。
当時はグロリアのAT車でしたが伊豆のサボテン公園の上から実家まで
僅か1時間10分！ヒール＆トウでぶっ飛ばして呉れました。
翌日　母は入院。胆嚢炎と言われましたが開けてみたら末期の癌。
実はその５年前にオペを希望したのに心電図の不整脈が酷い為　外科医が
「オペは出来ない」と断られたのです。

オペ室の灯りが予定より半分の２時間で消えた時　私は悟りました。
即　父と兄達が執刀医に呼ばれました。
姉は呑気に皆の食事にとハンバーガーを買いに出て居て不在。
父が青ざめた顔で私を呼びました。兄達が「親父　やめろ」と。

「母さんの傍に付き添うのは　この娘だ。隠しては置けない」
「父さん　判ってるよ。で　先生は何ヶ月持つと仰ったの？」
「さ・三ヶ月だと」「判った・告知するかしないか皆の意見は？」

告知をした方が良いと言ったのは私一人。告知しない　と決まった。
私はオペ時間の長さ　取り出した石の数　色　総てをでっちあげた。
全員が同じ説明じゃ無いと勘の良い母の事・直ぐに見破る。
辛いシナリオを2時間で書き上げた。コピーして全員に。
母の麻酔が覚める前に全員が暗記した。

幼い頃から母は入退院を繰り返しては居たが　これが最後の入院。
「親孝行させて欲しい」と夫に頼むと週に4日泊り込んでも良いと
快諾してくれた。３ヶ月と言われたら半分だと思わねばならない。

私が小学校3年生の時に長男が盲腸になり　続いて母・三男　と立て続けに
入院した時　付き添いの家政婦さんの仕事を見て色々覚えた私。
「変だな　こうすれば患者はモット楽なのに」幼い頭で色々考えた。
途中から小学生の私の方が患者に親切な介護をすると病院中で話題に。

○大病院にはサソリ先生と言う名物外科医が居て　顔なじみ。
「次はお前さんの番だぞー」っとメス持って追いかけられたっけ。

痛み止めが効いているのは一日の内の数時間。看護士に言っても
麻薬中毒になるから一日に一錠しか処方できませんと・なんてこった！
退院出来る患者と違う・私は別ルートで痛み止めを入手して母に見せた。
冷蔵庫に一杯あるから何時でも言ってね。母はとびっきりの笑顔で涙した。

日が経ち普段愚痴を言わぬ母が「しんどい・早く楽になりたい」
と漏らした時　先生と一緒に傍に居たのは姉と私。

　　　　言葉に詰まった私と違い・・姉はそっと言った。
　　　　　「母さん　もう直ぐ楽になるから。」

母の顔が一瞬　宙を彷徨い・・何もかも悟ったのだと思う。
母が「言っておきたい事が在る」静かに口を開きかけたけど意識が消えた。
血圧は40に下がった。私は涙で一杯で何も言えなかった。
先生が「どうなさいますか？今なら血圧上げて意識戻せますよ」

「いいえ　このまま静かに旅立たせてやりたいです」姉は言い切った。
「何故なの　お姉ちゃん！」と言いたかったが言葉にならなかった。
　姉も泣いていた。

私もセーターの袖を噛みながら泣いた　　　

　　　　　そして５時間後　不整脈の母の心臓が眠りについた

一連の忙しさが過ぎた後　姉に聞いた。どうして意識を戻さなかったのと。
姉は「母さんは僕に私に　こう言いたかったのかな？と皆が考えれば良い」と。

母が最後に残す言葉が誰かの重荷になる様な事は避けたかったのか？

　　　　姉の意見ももっともだと納得はしたけれど・・・　
　　然し・・今でも矢張り告知はすべきだったと思う私です。

　　律儀な母はキッチリとオペ後４５日目に旅立ちました。
母の好きな薄紫のアヤメ