読書の部屋からこんにちは!

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2007.06.25
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カテゴリ: 小説



いつもながら、小川洋子さんならではの透明感のある、美しい小説です。
繊細なガラス細工のような描写は、うっかりすると小さく砕けて、私の手に突き刺さりそうです。
読み始めは村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出しました。
非現実的な閉鎖された空間に不条理で不穏なことが進行していきます。
それは、「記憶狩り」。
さまざまなものが消滅していくと共に、人々は何が消滅したのかさえも忘れていきます。
初めは香水とか、バラの花とか、小さなもの。しかし、だんだん大きなものが消滅していくと共に、人間は心さえ空疎になり、体まで失っていくのです。
記憶を失わない人を探し連行していく「秘密警察」や、そういった人を隠れ家にかくまうなど、ナチスのユダヤ人狩りを連想させるところもたくさんありました。


最後には体を失って声だけの存在になってしまった住民たち。
人間の成り立ちにとっていちばん大切なものとは・・・人間の尊厳とは・・・
柄にもなく、そんなことを考えてしまいました。    





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Last updated  2007.06.25 08:44:10
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