読書の部屋からこんにちは!

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2011.08.17
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カテゴリ: 小説
大戦中の、中流家庭に女中奉公するタキさんの回想手記という形の物語。
女中とは言っても、現代人がイメージする家政婦とは全然違いますよ。
女中は奉公する家の家族同然で、家族を愛し、誇りとして生懸命尽くす。まさに滅私奉公という言葉がピタッと来ます。彼女にとってそれが生きがいであり、奉公先を終の棲家と決め、奥様も女中をその家からお嫁に出すことを夢見る。
頭の回転もよく愛情深いタキさんは、たぶんその時代にあっても、女中の中の女中。
女中の理想形であったんだろうなと思います。


最後の章では舞台が現代に移されて、タキさんがたった一つ遂行しなかった仕事が明らかにされて、読者の心に余韻を残す・・・という形になっています。
あまり書くとネタばれになるので書きませんが、世間の大多数の書評がタキさんの秘めた想いに触れているけれど、わたしは「ほんとにそうだったのかなあ」と、ちょっと疑わしく思っています。タキさんがそのとき思っていたのはそうじゃないんじゃ・・・???
本は、著者がどういうことを書こうと、読み手が自由に受け取りたいように受け取ってよいものですから、私も勝手に自分の感じたままに受け取りたいと思います。
そして、この本が実にすてきな愛すべき小説であり、私も大好きだと思うことに変わりはありません。


戦争を語り継ぐことが大切であることは、もちろんのことです。
ヒロシマやナガサキは言わずもがな。
悲惨な戦地の話、空襲の話、学童疎開の話・・・いろいろな悲しい話が伝えられています。
でも、この本に書かれているような、戦時下の普通の家庭の話も伝えられてもいいのでは…
戦争のさなかにあっても、人は期待に胸をふくらませたり、恋に胸を焦がしたり、遊んだり笑ったり。だって、それが人間ですもの。


ところで、冒頭に出てくる若い女性編集者。
この人は完全な脇役で、悪役風に登場しているけど、この後どうしたんでしょうかね。
何となく再登場を待ちながら読んでいたんですけどね。



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Last updated  2011.08.17 11:21:58
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