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●『新作映画・そして僕自身のためのノート』連載第7回目
次の日から僕は、ゴミ捨て場の麓の知り合いになった人の家の
ひと部屋を借り、住みついた。
1日目 ゴミ捨て場から強烈な悪臭がした。
ゴミ捨て場で捨てられた死体をみて驚いた。
2日目 ゴミ捨て場の斜面の家々を歩き回ってもあまり臭わなかった。
ゴミ捨て場に行く途中の家の前で病気で急死した棺おけに入った
5、6歳の子どもの死体をみた。
3日目 どこを歩いてもゴミの臭いが感じられなくなった。
この街を流れる川にどこかで殺された死体が浮いているのを
見ている僕がいた。
僕はこのように毎日毎日、この街を用もないのにただうろついた。
そしてゴミの悪臭と死体にも慣れてしまい、
何も驚かなくなった僕がいた。
そして、友達を作る目的で、住民たちに、この地では珍しかった
写真を撮ってタダで上げたり、原価で分けてあげたりした。
しかし、住み始めて2週間も過ぎた頃、僕は急に倒れ、
意識もうろうとし、3日間寝込んだ。僕はうまれて初めて
自分の限界を超える体験をした。
もう僕は一刻も早くこの国を離れたかった。
そして、しばらく安宿で休養することにした。
そして僕はある日、街の安酒場でウエイトレスのバイトをしていた
現在の妻である女性と出会った。
彼女の家庭も裕福ではなかったので彼女は働かざるをえなかった。
その日から僕たちは毎日会い、いろいろなことを話し合った。
フィリピンの貧しさの事、日本の豊かさの事、理想の生き方とは。
僕はいつしか彼女の実家にまで行き、彼女の家族とも
仲良くなっていた。
彼女の母は、家の土地に入った泥棒に銃殺されていた。
僕たちは二人で孤島まで出かけたこともあった。
そして彼女に言われた。
「あきらめないでフィリピンの貧しい子どもたちのためになる
映画を撮って・・・」
僕は彼女に元気をもらい、初めてこの国が好きになりかけていた。
~以上、四ノ宮浩監督手記、
『新作映画・そして僕自身のためのノート』より転載~
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★『(仮題)天国の子どもたち』公式HP
http://sensotoheiwa.office4-pro.com/
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