EMDR(眼球運動による脱感作と再処理/Eye Movement Desensitaization and Reprocessing)は、PTSDに対して最も効果的とされ、注目されている治療方法です。EMDRは、外傷的な出来事を考えてもらいながら、治療者がクライエントの眼の前で指を一定の速度で動かし(縦、横、斜めなど、その人に合った動かし方です)、それを眼で追いかけてもらうといった比較的単純な治療技法です。眼球運動は脳を直接的に刺激し、脳が本来持っている情報処理プロセスを活性化できるのです。よって、5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを非常に短時間に進めることができます。そして、その過程はクライエントの脳の本来の力を引き出すので、マインドコントロール(洗脳)される、治療者に操られるというような心配は全くありません。催眠療法とも異なります。また、止めたいときにはいつでも止めることができ、これまでの治療方法では起こった出来事の全てをこと細かく治療者に語ることが必要とされることが多かったのに比べ、大変ストレスの少ない技法とされています。しかしまだ日本では一般的に認知されておらず、PTSDを抱え苦しんでいる人たちが多い(と推測される)にも関わらずあまり知られていません。