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Ryu-chan6708

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2006.09.09
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カテゴリ: 読書感想

:東京裁判は勝者が敗者を裁いた裁判だが、 敗者は何故、失敗を反省し、自分たちの責任者を裁かなかったのかという疑問があるね。

A氏 :それが60年以上たった今になっても戦争責任で問題になっている原因だね。

私: ところがこの本によると、 日本自身が自主的に裁判をしようとする動きはあったんだよ

A氏 :戦後、直ぐにかね?

私: そうだよ。
 実は、ポッダム宣言の検討のときに、受諾の条件として、独自の裁判を行う権利を主張していた。
 これは失敗する。
 次に9月11日にGHQが最初のA級戦犯容疑者逮捕を発表すると、政府はこの考えを持ち出してきた。
 当時は 東久邇内閣 だ。
連合国の裁判と関係なく、日本独自の裁判を考えGHQに意向を伝えたが拒否される

A氏 天皇の名で戦争し、今度は天皇の名で裁くのだから、天皇は困惑しただろうね。

:その通りだ。
 しかし、9月18日、東久邇首相は外国人記者に政府は捕虜の虐待やそのほかの戦争犯罪を行った者たちを調査し、罰するつもりであると語っていた。
 そして、 9月から翌年の3月まで政府は8人の下級将校を戦争犯罪人の容疑で裁判にかけたが、GHQがこれに介入して裁判を無効にした

A氏 :日本の一種の逃げを感じたのだろうね。

:事実、この8人は東京裁判でも再度裁かれ、より厳しい判決を受けている。
 敗戦当初数ヶ月間の時点で、 日本独自の裁判についての緊急勅令草案 ができていた。
 それはおおよそ次のような趣旨のものだ。

天皇の命令なくして兵を動かし、みだりに軍事行動を引き起こし侵略的行動を指揮し、 満州事変 支那事変 大東亜戦争 を不可避ならしめたる者。

 明治15年軍人への勅諭にそむき 軍閥政治 の状態を招来し、国体の真髄を破却して専横政治、又はこれに準ずる政治行動を以って 天皇の平和精神 に逆らい、大東亜戦争を必至にならしめたる者


これらに該当する者は 反逆罪 として 死刑又は無期謹慎 に処す

 もちろん、これもGHQから拒否される。

A氏: これを見ると日本が自主的に裁判したとしても、東京裁判と大きく変わらないような気がするね。
 東京裁判が「 平和に対する罪 」などの「 事後法 」でおこなわれたというが、日本案でも「 天皇の平和精神に逆らい 」とあるように、これの反逆罪として裁かれることになるね。

私: このような考えを政府が持っていたということは、当然、東京裁判への「 たれこみ屋 」がいることを示す。
戦時中の「一億一心」とは裏腹に、文民官僚と軍官僚の間、陸軍と海軍の間などに派閥抗争がはこびり、敵に味方を売ることになった
 連合国はサムライの国に足を踏み入れたら、皆、口がかたいと覚悟していたかもしれないが、 事実はヒソヒソ声に満ちた足の引っ張り合いであったんだね。
 ここにも 坂口安吾 がいっていたように、武士道が壊滅した「 堕落 」がみられるね。

A氏 :検察側も情報を集めやすかったかもしれないね。

:検察側の情報収集にもっとも大きな力を発揮した日本人は、 田中隆吉少将 木戸内大臣 だったという。

A氏 :なるほどね。
 東京裁判が戦勝国の一方的な謀略的な裁判だと一概に言えない側面があるね。
A級戦犯は東京裁判の問題で俺たちは知らないと言えないかもね。

私: いずれにせよ、この本で扱っている日本の敗戦は、日本の歴史上ではじめての敗戦であるばかりでなく、日本というものがまさに「 幻影 」からさめて、裸になった時期だね。
 日本人として知っておかなければならない重要な歴史だ。
 この本はその点、偏見なしで、詳細に、事実に基づいて、全体的な視野で書かれた名著だね。
日本人はこのくらいの歴史的な知識を持っていないと正しい判断は不可能だね。

 俺も非常に勉強になったよ。
 日本を愛するのであれば、必読の書だよ。
俺の戦争責任街道はこの本で終点だね
 ここにすべて回答はあるね。
 このような本を書けなかった日本人の学者もアメリカに負けたのかもしれない。

 「美しい国へ」の安部晋三次期総理候補は、読んでいるのかね。

敗北を抱きしめて(上)増補版

敗北を抱きしめて(下)増補版







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Last updated  2006.09.09 06:58:21
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