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A氏 :日本が植民地化していた中で 台湾は比較的、親日的 だといわれているね。
A氏 : 被害者 と 加害者 との関係は複雑だね。
私 : 1984年 、 ナチスの親衛隊 も埋葬されている 軍人墓地 に訪欧中の レーガン大統領がコール首相と訪問するという計画 で「 ナチスを追悼するのか 」「 国軍に敬意を払うのは当然だ 」という 大議論 になったというね。
A氏 :日本の 靖国問題 と似た問題はドイツにあったんだね。
私
: 韓国の内部
では、 日本帝国主義に協力した人たちは今も憎悪の的で、親日派の子孫はほとんど、カナダ、アメリカ、日本に移住
しているというね。
韓国の歴史教育
で、「 日本は悪、同じ民族でありながら国を売った人=親日派はもっと悪
」の考えが定着しているという。
A氏 :同じ民族内部で「 過去の克服 」でもめているんだね。
私:
この本ではいろいろな人にインタビューしているが、興味があったのは 小倉慶大教授
の「 被害と加害の意識の変遷
」だね。
氏は、 戦後日本での戦争の語り方は1970年前後に大きな変化
があった
という
。
それまで、「 被害
」が強調されてきたのに、アジアへの「 加害
」が問題になってきたという。
A氏 :何故だろう?
私
: ベトナム戦争
だね。
当時の べ平連
代表の 小田実
氏がこれまでの平和運動は 日本人の戦争被害を強調
して平和の大切さを説いてきた。
しかし、 これからは自分たちがベトナム戦争の加害者だという認識が必要だ
と唱えたのが契機だという。
小田氏は、 被害者だから加害者であるという重層性を自覚
すべきだと言う。
A氏 :被害者だから加害者になるわけか。
私
:ベトナム戦争を扱った映画「 プラトーン
」ではジャングルの酷暑や湿気に苦しみながら米兵が行軍していくが、 疲れきってやけくそになった米兵たちが村で残虐行為を働く。
これは 日本兵も同じで食料もなく、重装備で毎日何十キロも歩かされ、すぐ上官から殴られる。
そんな 被害者
だからこそ、 現地の村に入ったら放火したり、食料を略奪したりしがち
だったという。
A氏 :これは 戦争体験者 だと分かるね。
私
:しかし、小倉教授は新 左翼運動の若者たちは戦争の体験がないので、この重層構造が理解できない。
だから、戦争経験がある年長者への反論方法として発見したのが「アジア加害者」の強調
だという。
小田氏
は、 広島の平和集会
で原爆体験を語り始めた老婆をさえぎって「 貴方の体験は皆知っている。問題はあなたが加害者だった事実の認識だ
」と言った若者がいたのを正視できなかったという。
A氏 : 愛国心 と関係するのだね。
私
:敗戦から60年くらいまでは、 革新派
も「 平和な国家を築こう
」という 愛国心
を唱えていたという。
ところが 加害者論を新左翼が強調
すると、同時に革新派の愛国論も滅び、 愛国心と言えば保守派のもので進歩派は愛国心を非難すべきものだという構図を作った
という。
A氏 : 進歩派はアジアへの加害を強調 し、 保守派はあの戦争はアジア解放や自衛のためだと主張 するようになり、固定したようだね。
私
:ホロコーストの 被害者のユダヤ人
は パレスチナ人には加害者
になる。
第1次大戦での過大な賠償で経済が破綻して、被害者となったドイツ国民はナチスを支持した。
現実の社会や歴史は複雑で、天使や悪魔が存在しないように、百パーセントの被害者や百パーセントの加害者はめったにいない。
それは本来大人の常識だがね。
A氏 : 愛国心をもてば 、それが 政府や戦争の支持に直結 するというほど単純ではないね。
私 : 相対思考 が重要だね。