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A氏 :副題の英語の「 from left to right 」、「 左から右 」というのはどういう意味?
私
:「 本格小説
」は普通の日本の小説のように、「 右から左
」の 縦書き
だね。
ところが「 私小説
」は 英語式の横書きで「左から右」に読む
、ようになっている。
それはときどき、英文がチョコチョコ入るせいだろうね。
本邦初の横書きbilingual長編小説
だそうだ。
図書館ですぐ借りられたが、 文庫本で450頁
ほどあるかなりのボリュームだね。
確かに「 私小説
」というタイトル通り、20代の大学院生の女性である著者をめぐる 個人的なアメリカの生活日誌がブログのように延々と続く。
中心となる生活の場は アメリカの都市にあるアパートの一室
だ。
そこで、 12才で渡米し、20年間のアメリカでの一人暮らしの体験を日常にからめて描写
しているね。
A氏 :それが文庫本で450頁ほどあるというのはかなり読み応えがあるだろうね。
私
:最初は、ちょっと抵抗があったが、次第に飽きないで読み進んだね。
姉が離れた都市で住んでいるんだが、性格が反対なんだが、姉妹の電話の会話が多いね。
その電話の会話でも、ときどき、日本語に混ざって英語が出る。
A氏 :なんで英語を混ぜるのだろうね。
私
:「 私小説
」だから、実際の姉妹の英語会話に使い慣れた英語が混ざるからだね。
しかし、英語でないと感情がうまく表現できないこともあるようだね。
ルー大芝
の英語混ざりは単語レベルだが、この本では 文章レベル
だね。
12才で父親の仕事の都合でアメリカの現実に放り込まれて、 日米の底辺の文化の違い、人種の差別
がなんとなく日常生活の描写にかくれながらも、独特の筆のうまさで先鋭に見えてくるね。
著者は12才で父親の仕事の都合で渡米してから、滞在20年。
しかし、興味あることに、 アメリカの生活では、ヒマがあれば、日本の「近代文学」に読みふけっていた
という。
ハイスクールの休み時間でも読んでいた
という。
著者のその アメリカの生活との対比で得た深い
日本語感覚
が、この本に深みを与えているように思うね。
A氏 :それなのに、著者はアメリカの大学で近代日本文学を教えているのだから、英語もできるのだろうね。
私
:フランス語も勉強したらしいね。
しかし、12才で渡米しているので、 日本語に染み付いた日本文化的な体質
はできているんだね。
この本を読むと 日本語と日本文化の体質は一体不可分
だということが、アメリカ文化との対比で感覚的によく分かるね。
父親の住んだところが、ニューヨークなのでカリフォルニアあたりと違って、 ヨーロッパ優位、白人優位の社会
に入り、 日本では得られない東洋人や日本人という意識
を体験していくね。
A氏
:俺は、君が読んでいるというので、インターネットでアマゾンの読者コメントを読んだよ。
18人くらいのコメントがあったが、よい小説だとほめているのと、読む価値がないと酷評したのと 極端に2極分化
していたね。
もっとも、酷評の方が少なかったがね。
私
:まぁ、俺の方はほめるほうだね。
野間文芸新人賞
を受賞しただけはあると思うね。
それにその後「 本格小説
」を書いただけの力はすでに現れていたから、新人賞は後で考えると正解だったと思うね。
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