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まず、 AIと人間の棋士の対決
で、 昨年には、囲碁で韓国人の世界トップ棋士相手にAIが4勝1敗で勝利した
ことをとりあげ、現時点でいえば、この 種の能力に関しては、AIは人間よりもはるかに上
で、ゲームに限らず、 将来、AIは人間の頭脳をはるかにしのぐ仕事をするだろう、とも思えてくる
と 佐伯
氏はいう。
A
氏
: 最近の
AI
は、 ディープラーニングと呼ばれる自らの学習機能
を持っていて、 思わぬことを「考えだす
」らしく、たとえば、 囲碁での対決においてAIは一度だけ敗北
したが、その時には、 思わぬ「奇策」を考えだし、そのあげくに自滅していった
そうであると 佐伯氏は問題を指摘
して、これが囲碁であればよいが、 仮にわれわれの日常生活に入り込んだAIが、あまりに独創的なことを考えだすとすれば、果たして、われわれ人間はそれについていけるのであろうかと危惧
している。
私
: 今日の科学・技術の展開は、イノベーションの速度の高度化
というだけではなく、 医療も従来とは大きく異なった医療を可能
としつつあり、根 本的に新たな段階に突入しようとしている
のではないか、果たして、 こうした技術の展開を、これまで同様の科学・技術の延長上において理解してもよいのだろうかと問題提起
している。
A 氏 :もともと、 近代の合理的科学 は、 人間という理性的主体が自然や世界を対象化し 、そこに 理論的で普遍的な法則 を見いだし、 その法則を利用して、人間が自然や世界(社会)を変えていった。
人間はあくまで、 この自然や世界の外
から、これらに働きかけ、 技術の力を使って、自然を管理し、社会を便利にするところに「進歩の思想」もうまれた
と 佐伯
氏はいう。
私 :しかし、 今日の脳科学 にせよ、AIにせよ、生命科学にせよ、それが働きかける、もしくは分析する対象は人間自身 。
AIも人間の頭脳の代替で、」すくなくとも、それは、人間が、自らの外にある自然や世界(社会)に働きかけるものではなく、
ちょうど、 フランケンシュタイン博士
の生み出した怪物が、 外界の自然や世界を作り変えるのではなく、いわば人間自身のシミュレーション
であり、 その技術的創造であるのと同様である
と 佐伯
氏はいう。
A
氏
:しかし、それを言えば 科学技術の歴史
で、 コンピュータの登場
は、すでに 今までの自動車、航空機の発達と異質
のもので、 人間の頭脳労働の機械化
であり、 原子爆弾などの核技術も科学技術の歴史では異質
といえるね。
私
:しかし、われわれが 理性的
にそれを使えば、それは、 従来の技術同様、人間に大きな可能性と幸福をもたらすであろう
と、 多くの技術者もエコノミスト
がいうように、 ただ便利にそれらを使えばよい
、というものではないと思うと 佐伯
氏は「 異論
」を呈している。
A 氏 :そして 理由を2つ あげている。
第一の理由 は、人間は、確かに新たな技術を有効利用するが、また 同時に他方では、「悪魔と取引する」もの だからで、 物理学の発展が生み出した核融合技術 をみればこれは明らか。
第二の理由
は、もしも これらの技術が高度に展開すれば、人間自身が、これらの技術に取り込まれてゆくだろうと想像される
からであるという。
私
:こうした 先端技術
は、 こちらに人間という確たる「主体」
があって、 それが「客体」としての対象に働きかけるという近代の合理的科学の前提を大きく逸脱してしまった
とし、ここでわれわれは、 いやおうもなく「人間とは何か」という根源的な問いの前に立たされることになろう
と 佐伯
氏はいう。
A 氏 :こうなれば、 科学と技術の発展が、自然や社会を支配する人間の力を増大させ、ほぼ自動的に人間の幸福を高める、などとはまったく言えず 、 近代社会の「進歩の思想」は崩壊する だろうと 佐伯 氏はいう。
その時、われわれはそれらが、人間にとってどのような意味を持つかを問わざるを得なくなるが、 それに対する答えを近代社会は準備できていない 。
なぜなら、 近代社会は科学・技術とその意味(価値)を切り離したからである
という。
私 :身近な例で スポーツ選手のトレーニングや肉体をAIや医療技術を使い、従来の記録を更新していくのと似ている ね。
そこには、最早、 人間という価値観は存在しない。
A 氏 :しかし、 佐伯氏のこうした問いとはまったく無関係 に、もっぱら、 それが市場を拡大し、経済的利益を生み出すという期待だけでイノベーションが加速 されており、 これは恐るべき事態 というべきではなかろうかという。
人間同士の将棋で泣いたり笑ったりした時代がなつかしくなるのかも知れないと佐伯氏は最後に皮肉っている
。
私
:今、 北朝鮮の核開発で世界がその開発防止に躍起
となり、 日本はミサイル防衛で、途方に暮れ
、一方で、 核保有国はその処分に苦慮している
のと似ているね。
A 氏 : 俺の近所にいる老夫婦 は、 子ども が結婚して 別居 したとき、 子 どもは パソコンを撤去した という。
老夫婦
が 変な詐欺にかからないようにするためだ
という。
私
:最近、 はやりのウイルスによるスマホ詐欺
も 一番完全な対策はスマホを持たないことだ
という。
佐伯氏のいう不安
は、 近代科学技術で形成された社会に住むわれわれの日常にも影響してきている
ね。
もっとも、 AI研究者たちも倫理規定作成を検討しているようだ。