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私 : 今週の読書欄 でたまたま、 地方経済に関係する表題のもの、2冊 があったのでとりあげよう。
『復興の空間経済学』の 副題は、 「人口減少時代の地域再生」 で、 藤田昌久氏、浜口伸明氏、亀山嘉大氏の共著。
もう一つの 『福岡市が地方最強の都市になった理由』は木下斉〈著〉のビジネス書 。
『復興の空間経済学』の 導入部 には、 「津浪後の復興は目覚ましく、たちどころに失われた戸数、人口の満たされてしまう状態にある」 という 「引用」 があるが、 「引用元」は1933年に起きた昭和三陸地震の10年後に、地理学者 が書いた本の一節 という。
東日本大震災後に見てきた光景とは、随分違う。
本書はこの対照をもたらした要素として、人口の動き――被災地域だけでなく、日本全体の人口の増減や分布の変化に着目。
かつての津波被害のとき は、 日本の人口は増え続けており、豊かな漁場といった資源の希少性は高まる一方 で、それゆえ 「三陸沿岸部には、復興を自然に成し遂げる条件があった」 という。
では、 日本全体が人口減少 に転じたいま、復興のあり方はどのような影響を受けるのか、何に注意すべきなのか。
本書は、「空間経済学」を用いて、その分析を試みている と 評者の石川尚文氏はいう。
A 氏 : 「空間経済学」 とは、難しそうだね。
「空間経済学」は、都市や産業の集積がどのように生まれるのか、といった「地理的空間における経済学の一般理論を目指す」分野 とされ、共著者の一人、藤田昌久氏は、この領域を切り開いてきた第一人者。
極めて抽象度の高い理論 が、 被災地の複雑な現状にどこまで適用できるのか。
ハードルの高いテーマを前に、論の運びがやや錯綜している印象も受ける と 評者 は言う。
だが、 人や産業を吸引する「集積力」 と、 反対に流出を招く「分散力」 による論点の整理や、 人口が増えるときと減るときの都市の盛衰 は、単純に逆の過程をたどるわけではないといった指摘は、腑に落ちるところが多く、 現状の厳しさを描きつつも、理論的にあり得る復興の糸口を探る視点も貫かれている という。
私 :それに対して 『福岡市が地方最強の都市になった理由』 のほうは具体的だね。
「地方消滅」の次は「地方創生」が流行語となっているが、その中で福岡市 の存在感が急上昇中 。
2016年に政令指定都市の人口で、神戸市を抜いて5位にランクイン し、 人口増加率では東京をしのいで1位、人口増加数も2位の川崎市に大差をつけて1位。
しかも 10代、20代の若者人口数が多い……と、記録ラッシュ。
A 氏 : 躍進の理由 を、 著者は「都市経営」というビジネスの視点で読み解く。
福岡の優位性は、学校数が多く、まちのど真ん中に空港があり、有名企業とともに、新規起業家が集積し、市域がコンパクトで職住接近可能……というもので、それらが雇用と人口増につながり、正の循環を描く。
しかし、 福岡市は高度成長時代に独自の「常識破り」を行った。
すなわち、 行政ではなく民間主導で、工場誘致から早々と撤退し、開発抑制を徹底、といった「打ち手」だ。
そこには、水不足 で工場誘致も市街地拡大もできなかったという、都市としてのハンディキャップがあった。
会社も都市も弱みを乗り越える時に、生き残りの知恵がつく。
私 : 「お金がない」「時代が悪い」と思うなら、むしろ今こそチャンスを手にしている、と考えるべきなのだ と 評者のジャーナリスト・清野由美氏はいう。
それにしても東京集中はますます進み、 「地方創生」のスローガンはどうなったのかね。
税金を投じているのだから経過報告 がほしいね。