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私 : パルムドールを受賞して以降 、 SNS上で「文化庁の補助金を受け取っていながら、日本の恥部を描く反日映画を作った」と攻撃 されたり 、政府の「祝意」を受けることを是枝監督が「公権力とは距離を保つ」と断ったり した。
そんなニュースをマスメディアが拡散することで、映画の知名度が大きく広がった。
是枝監督 、 「芸術への助成を“国の施し”と考える風潮は映画に限ったことじゃない。大学の科研費 もそうだし、生活保護世帯への攻撃も同じです。本来、国民の権利のはずですよね。今回、政府の補助金がどうあるべきかが可視化 されたことが一つの成果だと思っています」 という。
A 氏 :また 、 監督 は 、 「補助金をもらって政府を批判するのは真っ当な態度なんだ、という欧州的な価値観を日本にも定着させたい。いま、僕みたいなことをしたら、たたかれることは分かっています。でも、振る舞いとして続けていかないと。公金を入れると公権力に従わねばならない、ということになったら、文化は死にますよ」 という。
私 :そして、 さらに監督 は 「東京・目黒で少女の虐待死がありました。あの両親は断罪されるでしょう。しかし例えば独りで子育てしている母親は『一歩間違えたら自分も……』と思う時があるんじゃないか。新幹線の殺傷事件もそう。セキュリティーチェックを強化せよという話というよりも、人々を極限まで追い込まないためのセーフティネット を充実させることでしか、こうした犯罪は軽減出来ません」 という。
A 氏 : SNSが浸透した現代社会 では、 意見を同じくする人たちにしか響かない言葉ばかりが勢いよく飛び交っている が、 意見を異にする人たちに伝えるにはどうすればよいか 、 監督 は 「僕は意図的に長い文章を書いています。これは冗談で言っていたんだけど、ツイッター を140字以内ではなく、140字以上でないと送信出来なくすればいいんじゃないか(笑)。短い言葉で『クソ』とか発信しても、そこからは何も生まれない。文章を長くすれば、もう少し考えて書くんじゃないか。字数って大事なんですよ」 という。
是枝監督 は 以前から、現代のメディアが陥りがちな「分かりやすさ至上主義」に警鐘を鳴らしていて、彼の映画も、説明しすぎないことが特徴になっている。
監督 は 「だって、世の中って分かりやすくないよね。分かりやすく語ることが重要ではない。むしろ、一見分かりやすいことが実は分かりにくいんだ、ということを伝えていかねばならない。僕はそう思っています」 といいう。
私 : 是枝監督の著書「万引き家族」 については、 23日の「書評」欄に美術家・横尾忠則氏の書評 がある。
小説や映画の中に描かれている家族を本物だと信じようとしているが、最初から家族は崩壊しているということを隠蔽したうえでの約束事。
つぎはぎだらけの家族を修復しながら、さもここに幸福があると小説や映画は語るが、現実を虚構化して現実の家族から逃避しながら、道徳や倫理をふりかざし、真実から目を逸らすのである と 横尾 氏はいう。
そして、 本書はそんなニセ家族を見事に解体してくれ、そして本物の生き方を示そうとした という。
本書の前半は現実を幻想のように生きる姿 が描かれるが、 後半になるに従って小さな傷口〈亀裂〉が開き始め、その傷を必死にふさごうと、家族は思いっきり幸福と平和を擬態する。
A 氏 :そして 解体された家族はひとりひとりが強烈な感傷と対峙しながら、傷を負った魂と化して自己救済の旅に立とうとする。
人間の悟性がこれほどまでにニヒリスティックに造形された物語は知らない と 横尾 氏はいう。
うそ偽りのヒューマニスティックな〈家族〉は、この「万引き家族」によって封印された という。
私 : 東京・目黒で少女の虐待死 にふれ、 独りで子育てしている母親は「一歩間違えたら自分も……」と思う時があるんじゃないかという是枝監督の言葉の意味 は 深い ね。