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私 : EUからの離脱(ブレグジット)交渉の期限を来年3月末 に控え 、英政府は8月23日、「EUからの合意なしの離脱」に備える対応策を発表。
交渉の最大の障害は、北アイルランドとアイルランドとの間の国境管理問題 で、 先行きの不透明感から、本社機能をEU側に移転する企業が相次ぐ。
この欄の記事の筆者の石合力 氏は、 イベリア半島の南端の英領ジブラルタルに赴く 。
ジブラルタル は、 18世紀初めのスペイン 継承戦争の際に英海軍が押さえ、300年以上、英国の統治が続く 。
広さは東京23区の100分の1強の6・8平方キロ、 人口約3万3千人。
英国がEU加盟国と地続きなのは、英領北アイルランドとここだけ である
EUと国境を接するのはジブラルタルも北アイルランドと同じ だが、 ジブラルタルの自治政府のトップ、ピカード首席閣僚 に 石合力 氏が 聞くと、 離脱後の行方には極めて楽観的。
ピカード首席閣僚 は 「離脱後も人の移動の自由を維持し、ビジネスに悪影響が出ないようにする。それはスペイン、英国、我々、ブリュッセル(EU本部)も同じ考えです」 という。
A 氏 : アイルランドと英領北アイルランドの間には検問所がなく、共通旅行区域(CTA)制度で旅券の審査なしに往来できる ため、 離脱後の人とモノの管理の方法を巡る交渉が難航。
これに対し 、 スペインとの間にもともと検問所があるジブラルタル では 、人とモノの管理が可能 というわけだ。
フランコ独裁体制下の70年代には国境を完全に封鎖していたスペインだが、現在は関係も良好で管理は緩やか。
スペイン側に歩いて渡った際には旅券の審査があった が、 石合力 氏が 車で越えてみると旅券、荷物ともチェックなしだった。
外交、防衛以外の自治権を持つジブラルタル自治政府 は、 法人税の優遇 などで 英国の金融、保険、オンラインのカジノ会社などを呼び込んでい て、 英国の1人当たり国内総生産が約4万ドルであるのに対し、ここでは、その倍以上。
私 : 住民はスペイン、イタリア系など多様で、法制度やビジネス慣習は英国式 だが、 温暖な気候のもと、豊かな食事で人生を楽しむ。
市内を走る2階建てバスは左ハンドルだ。スペインとの共同主権案には住民の9割以上が反対 する一方、 国民投票の際には96%がEU残留に投じた 。
ジブラルタル人は、原則と実利の絶妙なバランスを保ち、ピカード首席閣僚がいう「 地中海 的な英国人」なのだろう と 石合力 氏は 指摘 する 。
私 : 英国の「EUからの合意なしの離脱」が現実味を帯びる なか、 当地ジブラルタルの事情から学ぶ点があるとすれば、違いにこだわるより、互いの利益を実現するための方策を優先させることだろうか と、 石合力 氏はいう。
英首相府とも緊密に連絡をとる首席閣僚ピカード 氏は、 EUとの交渉の行方 を 「英国とEUは主要部分で合意に近づいている。互いの努力と善意があれば、相違を埋めることは可能だ。ニュースにはならなくなるかもしれないが、『EUからの合意なしの離脱』は実際には起きないと思う」 と 見る という。
英国政府は 石合力 氏のいう ジブラルタルの 「地中海的な英国人」に学んで、 「EUからの合意なしの離脱」を避けることができるだろうか。