三角猫の巣窟

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2023.10.12
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おっさんになるとたまに膝が痛くなって関節は消耗品だと思い知るのだけれど、若くて膝が丈夫だった頃に夜な夜なダンスしていた日々を思い出すのだった。というわけでダンスについて考えることにした。

●ダンスとは何か

ダンスとは音に合わせて体を動かすことである。喜んだ時に手を叩いて足踏みして小躍りするように楽器はなくてもダンスはあるし、アルタミラ洞窟の壁画に人が踊る様子が描かれているので、原始時代から人間は踊ってきたと思われる。
機械がなくて人力で労働していた時代は皆で同じペースで作業をしたほうが効率が良いので、歌を歌って音頭をとって鍬を振ったり船を漕いだりしてきて、歌と動作は日常生活とも結びついていて、それがダンスの動作にも取り入れられたと思われる。例えばコンゴのダンスは日常の動作をダンスの振付にしている。島根県のどじょうすくいもザルでどじょうをすくう動きがダンスになっている。楽器が発明されてからは見世物や祭りで踊るようになって、音楽のジャンルごとに違うスタイルのダンスがあって、一人で踊るか、男女ペアで踊るか、グループで踊ったりする。
民族舞踊のような伝統的なダンスやバレエのように芸術の域に達したダンスは流行と関係なくずっと続いているけれど、ポップダンスの流行は音楽の流行と一緒に推移していて、たいてい若者が流行の発信源になるけれど、歳をとると踊れなくなるし、若者はおっさんたちの真似をするのをダサいと感じて他の流行を追い始めるので、10年程度で流行が終わる。

●ダンスの目的

・儀式としてのダンス

盆踊りは平安時代の踊念仏が死者を供養する行事として定着して、やぐらの周りをまわりながら踊っている。今は宗教色が薄れて地域の夏祭り的な位置づけになっているけれど、もともとは宗教的儀式である。

・社交としてのダンス

宮廷の社交ダンスだと男女がペアになって一曲ごとにパートナーを交代して、パーティー参加者の顔を覚えてちょっと会話して社交する目的があった。
ヨーロッパの民族舞踊はマイムマイムみたいに皆で輪になったり手をつないだりして踊る形式が多い。手をつないだり肩を組んだりして身体的接触をすることで愛情ホルモンを分泌させて、皆で同じ動きをすることで同調して結束を高める効果があったと思われる。踊りの主役がいないのが社交としてのダンスの特徴である。世界各地のたいていの民族に民族舞踊があるけれど、文化人類学的にみるとダンスが民族の結束を高めるのに不可欠だったのだろう。
アメリカだとblock partyという街区(ブロック)の住民の野外ダンスパーティーが1970年代から行われている。ジャマイカだと同様にpassa passaとして野外でダンスホールレゲエを踊っていて、地域の住民たちが交流している。


・求愛としてのダンス

女性がスカートをひらひらさせたり腰を振ったりするのは性的アピールになる。タンゴなんかは極端で、女性が体をのけぞらせたり足を高く上げたりして色気がムンムンしている。ベリーダンスはスルタンのハレムの女性の教育としてダンスを学ばせていたそうで、へそを見せて腰を振って扇情的である。ダンスホールレゲエは男女が腰を密着させるワイニーというダンスがある。鳥でも極楽鳥が求愛のダンスをしたりするし、ダンスでたくましさや美しさを誇示して性的アピールをするのは生物学的には理にかなっている。

・仕事としてのダンス

日本の職業ダンサーとしては舞妓がいて、座敷で芸を披露している。バレエやミュージカルはショービジネスとして大きな劇場に大勢の客を呼ぶ形で興行している。ヒップホップとかのトップダンサーはコンテストに出て賞金を稼いだり、クラブでパフォーマンスして出演料をもらったり、バックダンサーとしてMVに出たり、振付師になったり、ダンス教室を主宰したりして生計を立てている。トミー・ザ・クラウンのTSquadはブロックパーティーや誕生日パーティーで踊って盛り上げるのをビジネスにしているようである。ダンサーは体力的な限界もあって活動期間も短いし、作詞家や作曲家みたいに著作権料ももらえないので、コンテストで優勝したりして世界のトップレベルのダンサーになってもあまり稼げないようである。AyaBambiというレズビアンの二人組のダンサーはマドンナのバックダンサーをして話題になったものの、破局してダンサーとしての活動を休止しているようである。

・戦いとしてのダンス

ヒップホップはギャングたちが抗争するのをやめて音楽で戦おうぜというコンセプトで発展してきたので、二つのチームがバトルしてどっちがすごい技をぶちかませるかという勝負の形式になっている。ニュージーランドのハカはマオリ族の戦士が戦いの前に力を誇示して相手を煽るための民族で、今ではラグビーの試合で踊るのが有名になっている。カポエラはブラジルの黒人奴隷が看守にばれないようにダンスのふりをして格闘技を練習していたことから発展して、他の格闘技と違って音楽があるのでダンスともいえる。アルメニアの民族舞踊のYarkhushtaは男性同士が向き合ってハイタッチするように手を叩いているけれど、これは疑似的な力比べをするダンスに見える。ヤギがけがをしない程度に頭をぶつけあって群れの中の優劣をつけるようなものだろう。



ジャズが流行した20世紀初頭はダンスホールで夜遊びするのが庶民の娯楽になって、アメリカにはサヴォイ・ボールルームという大きなダンスホールがあったし、日本では大正時代にダンスホールが作られてナウでヤングなモダンボーイ・モダンガールたちが集って私小説作家もネタ作りに遊びに行ったりしていた。ジュリアナ東京のお立ち台でボディコンを着た女性がもさもさしたうちわを振るのはバブルのシンボル的なダンスになっている。しかしダンスホールが買売春の取り引きに使われているという認識から風営法の規制対象になって、現代でもクラブは不良のたまり場として偏見で見られたりする。
2000年前後にはゲームセンターで「Dance Dance Revolution」(DDR、ダンレボ)が流行した。音楽に合わせて上下左右の矢印を踏む音ゲーだけれど、フリースタイル要素もあって華麗なステップを踏む人たちが話題になった。

・注目を集めるためのダンス

ニコニコ動画がサービスを開始してから踊ってみた系が流行し始めて、「ハレ晴レユカイ」とかのアニソンの振付やアイドルの曲の振付を一人で踊って動画を投稿するようになった。TikTokも同様で、数秒の簡単なダンスを踊って動画を投稿することで流行に敏感でイケてる自己像を周囲にアピールしている。いわばカラオケのダンス版で、プロダンサーとして稼ぐつもりはないけれど注目を集めたい人たちが踊っている。ペンライトを振るオタ芸も推しアイドルを応援するためのダンスというよりは自分に注目を集めるための自己満足のダンスで、歌の邪魔になるのでアイドルのコンサート会場ではオタ芸が禁止されたりする。

・教育としてのダンス

幼児教育ではリトミックでリズムに合わせて体を動かす練習をする。2012年からは「心と体を一体としてとらえること」を目標にして中学校でダンスが必修化されて、文化祭でダンスを披露したりしている。ダンスはどこでも踊れて道具が要らないという点では自己表現としては手軽で、SNSに振付の解説がわんさかあるので教師も教えやすい。登美丘高校ダンス部のバブリーダンスがバズったりして、部活動としても人気のようである。


●ダンスの技術

ダンスはジャンルによって体の動かし方が違うし、必要になる技術や筋肉も違う。

・全身の動き
バレエは動作を美しく見せるためのダンスで、つま先立ちでバランスを取ったり片足立ちで回転したり高くジャンプしたり女性を抱えたりするための高い身体能力が必要とされるので、バレエダンサーは柔軟性が高いうえに筋肉質である。
社交ダンスは社交を目的にしているので、好き勝手に踊るのでなくてパートナーをリードしたり、同じフロアで踊っている他の人とぶつからないようによけたりして周りを見て気配りする技術が必要になる。
ヒップホップは他のダンスが足を床につけて踊るのと違ってウインドミルやヘッドスピンとかで足を床から離して頭を下にして回転するパワームーブがあるのが特徴的で、体を腕だけで支えたりするので体操選手並みの身体能力が必要になる。
クランプはヒップホップに似ているけれど全身を痙攣させるような激しい動きをしていて、細かく音を拾っていて動いたり止まったりする緩急が大きい。
エアロビクスやズンバは他人に見せるためのダンスというよりもエクササイズ的な側面が強いので、全身を大きく動かす有酸素運動で心肺や筋肉に負荷がかかるようになっていて振付の技術はあまり求められていない。

・腕の動き
パラパラは腕の動きに特化したトランス系のダンスで、足は左右に足踏みする程度で技術的には簡単で体力も必要ないのでとっつきやすい。顔の周りで手をひらひらさせることで自分に注目を集めて盛ることができるので、ギャルやギャル男とかのチャラい人たちに人気だった。アムラーやシノラーとかがブーツを履いていて複雑なステップを踏めなくても踊りやすくて、当時の服装と振付が合っていたのも流行った理由だろう。

・足の動き
シャッフルは足の動きに特化したEDM系のダンスで、足をシャッフルするといかにも楽しく踊っていてイケてる感じが出るので、SNSで踊ってみた動画を投稿する若者に人気が出た。スウィングやロカビリーでもツイストして足の動きを強調していた。アイルランドのステップダンスは16世紀にダンスが禁止されたときに窓から見られても踊っていることがわからないように上半身を動かさずに下半身だけで踊るところから発展したようで、つま先やかかとで床を鳴らしてリズムを取っている。

・腰の動き
ダンスホールレゲエは女性の腰と尻の動きを強調しているのが特徴的で、ダンス衣装もセクシーで女性の性的アピールになってクラブで注目を集めやすいので若い女性ダンサーに人気が出た。フラダンスは腰を左右に動かすけれど、激しい動きではないのでハワイ好きの女性の習い事として人気のようである。アフリカのンドンボロはレゲエに似たような足を開いて中腰で腰を振る動きをしているけれど、腰を振るのが卑猥だとして一部の国では禁止されているそうな。

・アイソレーション
アニメーションというジャンルはステップや振付よりも表現力に特化していて、アイソレーションで体の各部位を個別に動かしてユニークな動きをする。ロボットダンスとかが典型的である。

●ダンスとフィクション

小説だとダンスの複雑な動きを描写しにくくて相性が悪いせいか、ダンス自体をテーマにした有名な小説があまりない。しかし『伊豆の踊子』や『舞姫』のように登場人物としてダンサーが出てくることはある。漫画だと音は描けないもののある程度動きを描けるので、ダンス自体をテーマにした作品がある。特にバレエは女性に人気のテーマのようで、バレエ漫画が1970年代から現在までに16作品あるようである。映画だとより直接的にダンスを描けて派手なダンスシーンを見どころにできるので人気の作品が多い。『フラッシュダンス』、『ワイルド・スタイル』、『ブレイクダンス』、『フットルース』、『グリース』、『サタデーナイトフィーバー』、『リトル・ダンサー』、『shall we ダンス?』とかは面白かった。『サタデーナイトフィーバー』のジョン・トラボルタはスカした感じがちょうどよくてはまり役である。ダンス自体をテーマにしなくても、『マスク』で警察官に囲まれたときに踊ってごまかしたようにダンスシーンを入れて盛り上げることができるし、ストーリー自体はたいしたことがなくてもすごいダンスシーンがある映画は楽しめる。インド映画だとストーリーと関係なしにやたらと踊っていて賑やかである。ドキュメンタリー映画だとオペラ座のバレエ団を特集した『パリ・オペラ座のすべて』、トミー・ザ・クラウンの活動を特集した『RIZE』が面白かった。
ダンス系フィクションのストーリーはたいていは若者の青春を描いたもので、練習して上手くなってダンスコンテストに出たり、ライバルと勝負したり、ダンスパートナーと恋愛したりするような展開になる。映画『ヘアスプレー』は太っちょの女子がダンスで人気者になる話で、コンプレックスを克服するサクセスストーリーにもできる。コンテストの結果や恋の行方をオチにしてきりがいいところで物語を終わらせることができるので、フィクションとしては作りやすいテーマといえるけれど、そのぶんストーリー展開は似たようなものになるので、登場人物の個性や演出で差別化できるかどうかが重要になる。日本舞踊や盆踊りとかをテーマにしたフィクションがないような気がするけれど、たぶん勝負や恋愛とかの展開にできなくてストーリー性を持たせにくくてオチをつけにくいしダンスの超絶技巧みたいな見せ場もないのでテーマにならないのだろう。
ファンタジーなら『マクロス』で歌で敵と戦ったようにダンスで戦う展開があってもよいと思う。例えば踊りを踊らないと魔法が発動しない世界設定ならダンスバトルの展開にできるだろうし、映像化したときに見栄えもするだろう。
マイケル・ジャクソンは「スリラー」で今までなかったホラー系のゾンビダンスをしたのがユニークで、ホラー系のダンスは他にあまりない。タランテラという舞曲はタランチュラに噛まれた毒の苦しさに踊り狂って死ぬ説が由来になったように、踊る幽霊にとりつかれるとか踊るゾンビに噛まれると踊らずにはいられなくなるとかのホラー系のフィクションを作ったら面白そうである。幽霊は貞子みたいに関節をごきごき曲げてぎこちなく追いかけてくるどんくさいイメージがあるけれど、たまには幽霊も華麗なステップで踊るとよい。
『踊る大捜査線』は「踊る」がタイトルに入っているのにダンスシーンがないのはもったいないので、日本の俳優はもっと踊ると良いと思う。

ちなみに私はイギリスのJungleというバンドとアメリカのFresh P The Clownというダンスクルーのダンスがかっこよくて好きである。








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最終更新日  2023.10.12 07:53:07
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