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閑話休題
さて、上江洲先生が「超一流」と称された日比谷高校の英語。上江洲先生は、日比谷高校の入試問題がどれほど素晴らしいのか、それを三流の入試問題と比較しながら、生徒達に説明を始めた。ここまでで3分が経過した。いよいよ日比谷高校の解説に入っていく。
先生が注目されたのは第1パラグラフである。一流の英文は第1パラグラフが濃い。そして、一流の先生は第1パラグラフをじっくり説明する。一流の第1パラグラフを一流の先生が解説することによって起こる化学反応。その化学反応が生徒の頭をビンビン刺激する。そんな光景をこの後、目の当たりにする。
上江洲先生は、この第1パラグラフを丁寧に2回読解するよう指示された。そして、じわじわと第1パラグラフを解きほぐしていく。解きほぐすといっても、SやVを緻密に分析し、正確な和訳を付けていく・・・というのではない。そうではなく、1つ1つの名詞に注目しながら、まるで歌の歌詞でも理解するかのように・・・いや「感じる」かのように第1パラグラフをイメージ化していった。
一方、日比谷高校の英文も、そうした上江洲先生の授業に応えられるだけの奥行きを持っていた。教室は、英語の授業ではなく、まるでコンサート会場や映画館のような感覚に包まれる。いつの間にか、生徒達の頭の中に、第1パラグラフの情景が浮かび上がる。生徒達は「入試英語長文」ではなく、英語で書かれた「小説」の中へ誘われていった。
それは普段、オーソドックスな英語授業を見慣れている私にとって、まるで夢の中にでもいるかのようであった。奇跡と呼んでも言い過ぎではない。英語を苦手とする生徒達が、まるで映画でも観るかのようにスッと長文に入り込んでいる。不思議な時間であった。
随分長い時間が経ったようでもあり、あっという間のような感覚でもあった。 第1パラグラフの数行が終了した。
第1パラグラフ開始から26分が経過した。そう、上江洲先生は、たった数行の第1パラグラフになんと26分間もかけたのだ。
ところで、この「26分間」という数字は私自身が計っていたわけではない。上江洲先生が「第1パラグラフの解説だけで26分間かかってしまいました」と「わざわざ」生徒に伝えたのだ。だから、私の記憶に「26」という数字が明確にインプットされている。25分ではない。26分である。おおまかに「25」ではなく、正確に「26」と言う必要があったのだ。もちろん、これも重要な授業技術のうち。
今回の上江洲先生の授業には、いくつもの「英語の極意」と「授業技術」が混在していた。それを細川先生はブログで「てんこもり」と表現している。
極意の1つに、
もし入試当日、「読めない!つらい!」と思ったら、どのように対処していけばいいか
というものがあった。
その際に必要不可欠なのが第1パラグラフへの対処である。その重要性を強調するために、先生はわざと「26分間」という数字を口に出したのだ。(おそらく)
第1パラグラフを読むに当たって、先生はイメージ力や品詞への注意力を強調された。今年の中3生の国語力と英語力が弱いことは既に述べたが、上江洲先生はそれらを同時に引き上げるための絶好の方法を実演された。
訳すのではない。イメージする。これが先生の授業の特長である。たった1枚の写真や絵からでも、様々なことをイメージできる。先生はビートルズのyesterdayを気持ちよさそうに歌いながら(笑)、イメージすることの重要性を強調された。yesterdayという歌詞に込められた想い。それが英語の持つ特性であり、魔法でもある。
第1パラグラフが終了。先生は、難解な長文読解に立ち向かうための「 極意」を生徒に伝え、それを生徒に印象づけるための「授業技術」を私に伝えた。
そう。この日の上江洲先生は「私の塾生」と「細川先生&私」という二者を相手に授業を行っていた。二種類の相手に対峙し、同時に勝負する。武器は先生の培ってきた経験だけ。まるで、その勝負の先に「新しい自分」が待っているのを知っているかのようでもあった。私は第1パラグラフ終了と同時、今更ながら上江洲先生の覚悟と挑戦心を感じ、震えが止まらなくなった。
上江洲先生特別講義13(最終回) 2013/11/17
上江洲先生特別講義12 2013/11/17
上江洲先生特別講義11 2013/11/17