よんきゅ部屋

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Dec 31, 2006
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今年もついに大晦日。このコーナーはどうやら年20回ペースになる感じらしい(なかなか書けないなあ)。昨年の最後に取り上げたのがこの第九。昨年はこんなことを書いていた。

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今さら自分がいろいろと言うまでもない名作。年末になると、日本の各地で演奏会が開かれるだけでなく、CMのBGMで飽きるほど流れてくる。さすがにうちの子供たちも「第九」のメロディは覚えた。が、変奏の部分でも「これも第九?」と聞いてくるあたりはなかなかやるなと思う。将来、楽しめる聴き手に(弾き手に?)なれるかなと、少しだけ期待がふくらんでくる。私が幼少期に経験した音楽の時間における「クラシック音楽アレルギー」にはならないだろう。

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どうやら子供たちはクラシック音楽に見事に馴染んだようだ。娘は第九の歓喜の歌をピアノで弾いて遊ぶようにもなった。以下、昨年の「第九」の記事。セコバイ魂という話を書いたが、その考え方にのっとって書いていた。

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オケでは日頃地味な作業をしている2ndVnを弾く立場から見ると第九はどう見えるのかを書いてみたいと思う。第九はかれこれ14回本番で弾いている。1stも2ndも複数回経験しているが、どちらも弾いていて楽しい。2ndを先に経験したので、余計に1stが楽しかったように思う。それは、2ndの音の大切さがわかって弾くからだと思えてならない。

第九で2ndVnはやはり派手に表に出てくる場所は少ない。しかし、実はさりげなくメロディに顔を出していたりする。あとはとにかく性能のいい、しかも長持ちするエンジンであり続けることが大事だ。ベートーヴェンの交響曲での2ndVnの扱いはずっと一貫している。とにかく細かいリズムを高い温度を保ちながら刻み続けることだ。この「刻み」の出来によって、演奏の推進力がまるで変わってくる。聴く人にとっては、メロディに耳が行きがちだが、刻みを抜いて演奏すると恐ろしく間が抜けてしまう。格好いいボディなのにエンジンが弱くて走らせても面白くない車のようになってしまうのだ。では、第九はどうなのだろうか。

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第1楽章:
冒頭、指揮棒が上がる前は緊張感のかたまり。6連符の刻みしかないので、2nd、特にトップは責任重大、指揮者はたいていそこを見て指揮棒を振り始めるからだ。その後調が分からない宙ぶらりんの状態からニ短調に変わる音もやっているので、ここも間違えるわけにはいかない。ffでやっと安心する(さすがに一息はつけないのだが)。それからしばらくはシンコペーションのオンパレード。楽譜を見るだけで細かくて目が痛くなりそうな場所だ。途中、しばらくしてからハ短調の部分で旋律登場。たまにしか旋律が来ないので、アマチュアの場合後ろで弾く人はかなりドキドキするらしい。

展開部分も6連符のオンパレード、いったい何小節続けていくのだろう。その上を涼しい顔で1stの旋律が駆け抜けていく感じ。クライマックスでは、冒頭の旋律(というかほぼ断片)が登場するが、ここが派手な割に実は意外とオケの音は分厚くない。むしろ空虚な感じさえする。そこからさらにテンションが上がると和音はさらに歪みを増して、不協和音になり、ここでやっと厚みが出る。そこを越えるとニ長調のさわやかな世界。しかし、それも長くは続かない。

最後は半音階で不気味に音を重ねていき、高揚すると冒頭の断片が登場、最後はぶった切る感じで終わる。第2楽章もそうだが、どうしても弾き終わる姿はチャンバラシーンの最後に敵をぶった切るようになってしまう。「これは違う!」などと終楽章を暗示するような気持ちなのだろうか。

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第2楽章
これも冒頭は緊張感で破裂しそうな感じ。ティンパニが主要リズムを決めるといきなりppで2ndの旋律となってしまう。その前がffだけに、力のいれ具合を調節するのがきわめて難しい。しかし、たいていここを張り切っても次のパートが2小節後に出てくるので、指揮者は「そこから抑えて!」というのだ。頭では分かっていても心を抑えるのは難しいぞ...。

ffになるとそこからは援軍がいっぱいやってくるので、安心して弾ける。しかし、ずーっと同じ音(和音は変わっても結局含まれてしまうので)とリズムを弾き続けるのはこれまたしんどいその後にも他の弦楽器と1小節あるいは2小節ズレの追いかけっこをやったり、これまた大変である。「何小節休んだかわからんぞ」とまたきこえてくる。休む小節数が奇数だったりするとかなり混乱する人が多発する。

中間部はニ長調の明るい世界なのだが、最初は旋律の重なり合いで進行していくのと、リズムを打つ楽器がないということで、これまた少しスカスカな感じがする。よく言えば、「さわやか」なのかもしれないが。ちなみに途中から2ndVnは全音符のレをずーっと弾き続けている。こういうところは他のパートの旋律をいかに楽しむかがポイントだろう。必死にレを弾いたところで面白くないのだから。

その後また冒頭から繰り返し。どこをどう繰り返すのかは指揮者によって違うので、これまた混乱する。そして最後は拍子が変わって(2分の2拍子がいきなりはさまっている)。8回斬って最後に1回斬っておしまい。気分は暴れん坊将軍?

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第3楽章
「天上的な」などと評されることもあるこの楽章だが、本当にその気分でいられるのは1stVn。2ndVnの譜面と並べてみると、黒い部分の多さがまるで違う。冒頭の旋律が変奏されていくと1stは相当忙しくなる。というのも、2ndは伴奏がほとんどでしかもピチカートだらけなのだ。譜面を一見しただけではほとんどあの旋律は浮かんでこないし、低い音のピチカートが多いので、だんだん右腕が疲れてくるのだ。

2ndがオケの中で存在をはっきりさせられるのは、この楽章で言うとほぼ2箇所だけ。冒頭の旋律が終わった後に出てくる4分の3拍子(ニ長調)の場所と、最後の方で変奏が盛り上がり、トランペットのファンファーレが2回出てきたすぐ後(変ニ長調)だ。

前者は、冒頭の旋律がおさまってきったところからいきなり拍子が変わって出てくるので、かなり緊張してしまう。最初にタイミングがつかめないでいると、指揮者に必ずにらまれる場所である。ベートーヴェンはこの曲では特に2ndに対して意地悪だと思ってしまう(被害妄想か?)。もちろん、うまくいけば気持ちのいい場所であることも間違いない。冒頭の変ロ長調が雲の上にある天国だとすれば、このニ長調はそのさらに上に広がるどこまでも青い空のようだ。

後者は、非常に単純な音型で、旋律とはほとんど言えず、むしろ断片だろう。しかも指定はppなのだが、ほとんどの指揮者はここをもっと弾いて欲しいと言う。それでも勇気がないような音だったりすると、「じゃ、mfにしましょう。mfですよ、いいですね。」などと言われてしまうのだ。確かに、これをやっているのは2ndだけで、あとは低弦が旋律、背景を木管楽器がやっているので、下手をすると埋もれてきこえないのだ。

と書いてしまうと、「2ndってやっぱり面白くないんじゃないの?」などと言われそうだが、そんなことはない。いい曲は伴奏もやっぱりいいのだ。面白い音が書いてあるし、伴奏もいい流れで音が動いていくのだ。そして、たまに旋律が出てくるだけに、それを大事に弾こうと思えるところもよい。アクセルをいっぱいに踏んでいなくても、安心していられるエンジンでなければいけないのは、ゆっくりした楽章でも変わらないと思う。

あと、さらにマニアックな難しい場所は、後半の方にあるクラリネットが冒頭の旋律を穏やかに吹き始める場所(変ホ長調→変ホ短調→変ハ長調→変ロ長調という流れ)。ここでは、ピチカートの伴奏は2連符と3連符の間を弦楽器のいろいろなパート間で行ったり来たりする。切り替わる場所を担当する楽器は「げっ!」と思う場所だ。おまけに拍の頭が休符だったりするのでなおさらやりにくい。その後3連符で最初の調(変ロ長調)に戻すのも、2ndVnがやっている。この部分は視界がぱーっと開ける感じで実にうまくできている。最後はやっぱりこれもあっけなく終わる。そして...

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第4楽章
嵐が吹くような冒頭。いきなり音がぶつかる和音でスタート。そして、最初の旋律はいきなりチェロとコントラバスに出てくる。コントラバスがここまで表に出てくるケースは珍しい方なので、弾いているのを見ているとやはりやりにくそうだ。ふだん人前でしゃべらない人がいきなりスピーチをさせられているような気まずさが、特に初めの頃の合奏でよく見られる(もちろん、そういう人ばかりではないが)。

独唱が出る前に、コントラバスとチェロから歓喜の歌がリレーされてくる場所は弾いていても快感のある場所だ。ヴィオラがいい音で入ってくるともう鳥肌が立つ。旋律は1stがやるのだが、2ndは1拍目からではなくその前(アウフタクト)から伴奏を始めなければならない。ここもびびっていると指揮者ににらまれるポイントだ。おまけにここの伴奏はかなりこっているために非常に難しい。それだけにできると気持ちいいのだが、一度は1stを経験しておきたい場所である。あのさわやかな音楽の気持ちよさにはさすがに負けてしまう。

その後はしばらく伴奏が続く。この伴奏をしながら、歌付きはいいなと思うのがこのあたりを演奏しているときだ。そして、最初のクライマックスがやってきた後のトルコ風マーチ、ここが曲者である。この部分自体は好きだし、ベートーヴェンの映画(不滅の恋)の中でベートーヴェンが森の中を走るシーンがまさにぴったりな感じの場所。

それを抜けると最も有名な場所。合唱による歓喜の歌が全開の場所である。このあたりから合唱もエンジンが全開になる。人間の声を集めることのすごさを感じる場所だ。ここから先は合唱や独唱においしいところを持って行かれようが、伴奏がいかに難しかろうが、私は許せてしまう。「運命」のようにがっちりした曲もいいが、第九のようなハチャメチャぶりも素晴らしい。とはいえ、コントラバスにあの音型はちょっとひどいが...(4分の6拍子の場所、CDを聴いても難しいことがわかる)。

最後の方で3回ゆっくりになる場所があるが、私は1回目が大好きである。合唱があたたかく包んでくれるように歌われるこの場所は弾くたびに幸せな気分になる。最後の1ページ(Vnが沈黙の中から出てきてスピードを増して盛り上がるところから)は呼吸していることを忘れるほどテンションが上がってしまう。最後の一音を弾くときは短い音だがホール中に響けと思って出している。

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やっぱりこの曲は何度弾いてもいい曲。日頃はあまりない合唱とのコラボレーションがたまらない。楽器の音も素晴らしいが、やはり歌は声から始まったものだと実感するのがこの曲。合唱を聴きに来ている人にとっては「第3楽章まではいらんから(確かに45分ぐらいあるし)早く第4楽章をやって」などという声も聞かれるが、やはりこの曲は全部やってはじめて完結する曲だと思う。「これも違う!あれも違う!やっぱり違う!」と言ってから「そう、それ!」ということなのだ。





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Last updated  Dec 31, 2006 01:20:43 PM
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