よんきゅ部屋

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Jan 9, 2007
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ドヴォルザーク後期の作品をさらに取り上げておくことにしたい。この加筆と再録の作業は、フリーページにリンクを張るための作業の一環としてやっているのだが、さらに考えたことを足していきたいと思ったときにもやっている。

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チェロ協奏曲の代名詞とも言えるこの曲は、チェロを弾く人が一度はソロで弾いてみたい曲のようだ。この協奏曲は、ヴァイオリンのいろいろな協奏曲のようにアマチュアでは手も足も出ないようなカデンツァがないこともあって、そこそこ長くやっている人なら弾くマネはできるようだ(もちろん、そこから深めたような音を出すことは難しいにしても)。所属オケでこの曲を練習していたとき、初日の合奏中にチェロパートの人がこぞってソロを弾き始めて笑ってしまった。誰も伴奏のチェロパートを弾かないので練習にならない...。

この曲はドヴォルザークの作品の中ではかなり終わりの方に位置する曲だ。「新世界」や「アメリカ」など、ドヴォルザークを代表する作品よりも後になる。上に挙げた2曲はアメリカ生活の中で書かれたもので、そこで知った音階などを使っているのだが、この作品はその色はあまり濃くない。むしろ、それまでに獲得してきた手法がうまくブレンドされている感じがする。

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第1楽章:
ソロが出てくる前からすでにいい雰囲気を作り出している。特に第2主題(ニ長調の歌うような主題)の扱いは絶品だ。ソロが出てくる前ではホルンが演奏し、乾いた雰囲気の中で遠くから鳴ってくるような感じであるのに対して、チェロのソロが同じ旋律を演奏するときには、もっと近くでみずみずしさのある音になっている。楽器の組み合わせ次第でそこまで雰囲気を変えることができるのだ。途中、最初に提示された主題がいろいろと展開されていく部分では、転調も面白い。特に嬰ト短調で静かに演奏されるチェロの「泣き」の節が印象深い。最後の部分では、最初にロ短調で提示された旋律がロ長調で帰ってくるのだが、このあたりの構成も感心してしまう。ロ長調という調は、あか抜けた感じのしない独特の明るさを持っている。古い建物の中にある金色の壁のような明るさを感じるのだが、この調に合った旋律の展開になっているように思う。重厚なオーケストレーションで結ばれる最後はスキッとした気分になる。

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第2楽章:
自然の中にいるような感じがするト長調の音楽。ドヴォルザークの使うゆっくりとしたト長調の音楽(例えば交響曲第8番の第4楽章など)は独特の雰囲気を持っていると思う。常に遠くの風景を見ているような感覚だ。この曲の場合だと、オケが遠くの風景で、ソロはその中にたたずむ人を表すような感じなのだろうか。ここでも途中でいろいろな調への転調を繰り返す(ト短調、変ニ長調、ヘ長調、ロ短調などと自由自在)のだが、多くはト長調の世界が占めている。あくまでも基本は穏やか路線という感じである。特に冒頭主題がホルンで戻ってきた後、この楽章を終えるのがもったいないとでも言いたげなソロの動きがたまらない。ドヴォルザークの作品に懐かしさを感じてしまうのは、きっとこういう作りなのだからだろう。

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第3楽章:
踊りの要素を感じる音楽。最初のチェロとベースの「ズン・ズン・ズン・ズン」という開始からして何かありそうな感じ。チェロのソロが始まるとそこから後はリズムがいきいきしている。その後に出てくるニ長調の穏やかな部分がまたいい感じ。そこからまた勢いを取り戻していく部分もうまくつながっている。その後冒頭の主題に戻るが、すぐに別の旋律が登場。最初はト長調でチェロの穏やかな感じのソロ(これも第2楽章と同じ雰囲気)があり、フルートがさらに軽やかさを演出、そこを抜けるとロ長調でヴァイオリン・ソロとチェロのソロとの掛け合いとなる。

ちなみに、ここは二重奏だと思いがちだが、どちらにも実は2ndヴァイオリンのサポートが入っているのだ。よーくCDを聴いてみると、完全なソロではないことが聴き取れるはずだ。このソロはいうまでもなく、個人的に大好きである。この部分が終わり、金管楽器が登場するといよいよ最後のお話となる。ここでもやはりこの曲が終わりたくないかのようにゆっくり時間をかけて音楽が穏やかになっていく。ロ長調が使われているだけに、よりいっそう回想シーンの色が濃くなる。ちょうどセピア色の写真を見ているかのような感じだ。そして、第1楽章の主題の断片が登場、まさに回想だ。ほとんど音が無くなりかけたところで、最後に向かってクレッシェンド、突っ走って終わりとなる。このあたりの構成は「新世界」と共通のものを感じる。

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まさにドヴォルザーク作品の集大成となる作品(もちろん、その後に書かれた一連の交響詩も魅力的だが)であると言っていいと思う。この曲に伴奏として参加できた経験をとても幸せに思う。





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Last updated  Jan 9, 2007 09:31:21 PM
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