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本書は クラウス・コルドン の 「転換期三部作」 の第一作にあたります。原題は 「赤い水兵 あるいはある忘れられた冬」 です。邦題からわかるとおり、 1918年 から 1919年 にかけての 冬のベルリン が舞台になります。 これが、本書 「ベルリン1919」 の大まかなあらすじですが、もう少し捕捉すると、主人公は 「ヘレ」 という愛称で呼ばれる中学生で、ドイツの中学校といえば 「ギムナジウム(中高等学校)」 を思い浮かべる人もいらっしゃるかと思いますが、彼は庶民の子供たちが通う市立中学校の13歳の男の子です。
第一次世界大戦の末期である 1917年11月 、敗色の濃かったドイツ帝国で、水兵が戦争を終わらせるために蜂起し、それがきっかけで ドイツ革命 がおこり、帝政が倒れることになります。しかし革命は成功と同時に歯車が狂いはじめ、ベルリン市街戦へと発展します。そうした目まぐるしい時代のうねりに翻弄される人々の姿が、ベルリンの貧民街に住む ゲープハルト一家 を通して克明に描かれます。
人だかりのなかにとても小柄な女性が立っていて、近くにやって来た水兵たちに親しげにほほえみかけた。その女性は、壁にはられた一枚のポスターの前に立っていた。そのポスターにはこう書かれていた。 もしも、この作品を読む中学生がいたとしても、このくだりを繰り返して読む中学生はいないでしょうね。
労働者諸君!市民諸君!
祖国は崩壊の危機にある。みんなで救おう!敵は外にははいない。内側にいる。スパルタクス団だ。スパルクス団のリーダーを殺せ!リープクネヒトを殺せ!そうすれば、へと羽とパンを手にすることが出来るだろう。
その下には「前線兵士一同」と署名されていた。
「反革命がついに本性をあらわしました」
小柄な女性が大きな声でいった。
「殺人をあからさまに煽るとは、なんという人たちでしょう。(略)」
「あれはローザ・ルクセンブルグだ」 ハイナーがアルノにささやいた。
ローザルクセンブルグ?
ヘレ は小柄な女性を見つめた。青白い顔、白髪まじりの髪、大きな帽子。その名はカール・リープクネヒトとともに語られることが多い。父さんもよくその名を口にする。ローザ・ルクセンブルクは、リープクネヒトとおなじように長いあいだ投獄されていた。そしてベルリンで革命がおこる一日前、ブレスラウの労働者たちによって監獄から解放されたのだ。
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