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パトリス・ルコント「仕立て屋の恋」
先日、 「メグレと若い女の死」 という新しい作品を パルシネマ で見ながら、 パトリス・ルコント という、今では高齢の監督に興味を持ちました。
さすが、パルシネマ!
「夜パル」
という企画で 「仕立て屋の恋」
という、 ルコント監督
の、 1989年
らしいですが、古い作品を、ほぼ、同時期にやってくれていて、 午後8時45分上映開始
で、終わるのは10時過ぎでという時間設定が問題なのですが、まあ、仕方ありません。やって来ました。 パトリス・ルコント監督
、 「仕立て屋の恋」
です。
殺された若い女性の死体が横たえられた姿が映り、 頭の禿げあがった中年男
が、明りを消した部屋の窓から、通りを隔てて正面にある、隣のアパートの明るい部屋で、 下着になってくつろいでいる若い女性
の姿態をじっと見ているシーンへと画面が変わります。この辺りで、もうドキドキです。
殺されたらしい、最初のシーンの女性と、男が覗いている若い女性が同じ人物なのだと思い込んで見ていましたが、やがて、その二人の女性は全くの別人だと気づいたあたりから物語の輪郭が浮かび始めました。
仕立て屋の男
は、女性殺害事件の容疑者として疑われていて、くり返し警官に尋問されているのですが、アパートの部屋に戻ると覗かずにはいられないのが 二人目の女性
ですね。二人の女性は別人でした。
で、今、 覗かれている女性アリス
は、覗かれていることに気づかないまま、生活のすべてを、もちろん、部屋にやってくる男との情事も含めて、覗いている、今風い言えばストーカー男である 仕立て屋イール
に、すべてさらけ出しててしまっていたことが、この映画の肝でした。
仕立て屋の男は何を見て、何を考えているのか。
先日の メグレ と同じく ジョルジュ・シムノン の推理小説が原作ですから、これ以上筋は追いません。しかし、 「覗き男が見ていたものはなにか?」 という 「謎」 を、 殺人事件をめぐる「謎」をたて糸 として 「愛」の物語 に仕立てたのは、原作者 ジョルジュ・シムノン なのかもしれませんが、一人の孤独な男の哀切な破局を、静かな、しかし、圧倒的な エロスと死の物語 として描いたのは パトリス・ルコント のお手柄というか、才能でしょうね。 傑作ですね。 仕立て屋を演じたミシェル・ブラン 、覗かれた女 アリスを演じたサンドリーヌ・ボネール の二人の表情の演技の応酬、心理戦に 拍手!拍手! 、 監督パトリス・ルコント も 凄い!、拍手! 。イヤハヤ、まったく、納得、満足、 夜の映画の遊び時間 でした(笑)。
で、余談ですが、女が覗かれていることに気づいた雷雨の夜、稲妻の光の中に、 仕立て屋の部屋のガラス窓に男の姿が浮かび上がる のですが、その瞬間に思い出しました。
アッ!この映画見たことある!
ホント、人間の記憶ってどうなってるんでしょうね。そこから、後半のお話に対する。自分自身の呑み込みの良さに(当たり前ですが)、我ながら カンドー!
でした。(笑)
監督 パトリス・ルコント
製作 フィリップ・カルカソンヌ ルネ・クライトマン
原作 ジョルジュ・シムノン
脚本 パトリス・ルコント パトリック・ドゥボルフ
撮影 ドニ・ルノワール
美術 イバン・モシオン
編集 ジョエル・アッシュ
音楽 マイケル・ナイマン
キャスト
ミシェル・ブラン(イール:仕立て屋)
サンドリーヌ・ボネール(アリス:恋人)
リュック・テュイリエ(アリスの恋人)
アンドレ・ウィルム(刑事)
1989年・80分・フランス
原題「Monsieur Hire」
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