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2024.10.16
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长相思 lost you forever
第38話

塗山璟(トザンケイ)への未練に我ながら戸惑う小夭(ショウヨウ)。
ひたすら石段を登って振り切ろうとしても思いは募るばかりだった。
するといつの間にか西炎瑲玹(セイエンソウゲン)が現れ、そっと外套を掛けてくれる。
「…人生はやるせない、時々、思うの
 自分の生死も手に負えないのに、それ以外のことで争ったり悩んだりする必要がある?
 何の意味もないんじゃないかって」
「誕生と死は手に負えないから他のことを掌握するんだ」

瑲玹は登り疲れたという小夭の手を引き、峰の頂上まで連れて行った。
「塗山璟!嘘つき!あなたは約束を破った!」
小夭はようやく鬱憤を吐き出すと、瑲玹に自分の婿を選んで欲しいと頼む。
「一緒に暮らせる人なら誰でもいい、ただ他に女子を持てば去勢する」
確かに祖父の戒めは正しい。
相手を間違えさえしなければ、敬い合いながら添い遂げることはできるだろう。
「もう自分の目は信じられない、哥哥に頼むわ」

(  ̄꒳ ̄)うん、その方がいいw

その頃、西炎では五王・西炎徳岩(セイエントクガン)と七王・西炎禹陽(セイエンウヨウ)が瑲玹を弾劾する山のような奏状を父王に届けていた。
辰栄(シンエイ)を併呑して以来、西炎王は中原の氏族が団結しないよう分割統治してきたが、瑲玹は曋(シン)氏を娶って徒党を組み、勢力を伸ばしているという。
これに西炎ばかりか中原の氏族からも不満を訴える上奏文が続々と届いていた。
「父王、このままでは瑲玹を支持する氏族らが割拠の野望をもちかねません」

西炎王は紫金(シキン)宮の修築の完成を機に中原を巡視、紫金頂で祭祀を行なうと決めた。
朝臣たちは謀反を心配して反対したが、西炎王はならばこの機に一掃すればいいという。
西炎徳岩は東巡特使(トウジュントクシ)として父王に同行することになったが、西炎禹陽は応龍(オウリュウ)将軍と共に留守を任された。

西炎王は巡視を強行し、沢(タク)州の行宮に入った。
瑲玹は中原での近侍を務めたいと願い出たが、謁見すら叶わず、門前払いされてしまう。
西炎王が瑲玹を避けているのは明らか、一報は皓翎(コウレイ)王の耳にも届いた。
蓐収(ジョクシュウ)の話では各氏族が招かれた百花宴にも瑲玹は招待されなかったという。
事態を重く見た皓翎王は直ちに小夭と阿念(アネン)を迎えに行かせた。
しかし瑲玹は小夭が阿念だけ帰して残ったと知る。
「師父が迎えを寄こしたのになぜ帰らなかった?!」
「約束したはずよ?私たちは進むも退くも一緒だと…
 私は爺爺に育てられた恩はないもの、哥哥には手を下せないでしょう?私に任せて」

Σ(⊙∀⊙)ヒャーーーッ!

百花宴が終わったその夜、西炎王が刺客に襲われた。
しかし五王と衛兵が駆けつけ刺客を包囲、すると刺客は自害してしまう。
検死の結果、刺客の背中には若木(ジャクボク)の樹液を使った入れ墨があり、彫ってから30年は経っていると分かった。
若木と言えば瑲玹の母の一族である若水族が神木とあがめ、神聖な場所ゆえよそ者は近づけない。
すると西炎王はすぐ瑲玹を呼ぶよう命じた。

西炎徳岩の目論見通り父王は瑲玹の反逆を疑った。
徳岩は警備を厳重にする傍ら密かに精鋭部隊を忍ばせ、瑲玹を決して生きて帰すなと釘を刺しておく。
すると宮道の暗闇から防風邶(ボウフウハイ)が現れた。
「お前が狙うべきは瑲玹の命だ」
「分かっています」
一方、紫金宮には西炎岳梁(セイエンガクリョウ)が瑲玹を迎えにやって来た。
岳梁の口振りでは祖父の襲撃の黒幕が瑲玹だと疑われているらしい。
曋淑恵(シンシュクケイ)はもちろん、側近たちも留まるよう懇願したが、瑲玹は拒めば辰栄山が包囲されてしまうと分かっていた。
「辰栄山が陥落すれば犬死にとなる、お前たちの命を無駄にしたくない」

瑲玹は鈞亦(キンエキ)だけ連れて宮殿を出た。
しかし小夭が一緒に行きたいとついて来る。
「何かあれば足手まといになる、迷惑だと分からないのか?」
「それでも行く、私は皓翎王姫よ?手なんか出せないわ、もし止めるなら勝手に行くから」
一方、知らせを聞いた塗山璟(トザンケイ)が辰栄府に駆けつけた。
赤水豊隆(セキスイホウリュウ)は瑲玹が刺客を放つとは思えなかったが、塗山璟は真実より瑲玹が疑われていることが問題だという。
そこへ瑲玹と王姫が沢州へ向かったと報告が来た。
「小夭も一緒だと?!」

瑲玹と小夭は夜半に行宮に到着、正殿で祖父を待ったまま朝を迎えた。
すると身支度を終えた西炎王の元に塗山璟と赤水豊隆が謁見を願い出ていると知らせが来る。
西炎王はひとまず2人を脇殿で待たせ、正殿に入った。

塗山璟と赤水豊隆は脇殿から正殿の様子に耳を澄ませた。
その時、瑲玹と小夭が西炎王に挨拶する声が聞こえて来る。
五王や老臣たちは瑲玹と中原の氏族が結託していると糾弾、しかし瑲玹は親交を深めたに過ぎないと否定した。
すると西炎王は五王と瑲玹に中原の氏族をどう扱うべきか意見を聞きたいという。
徳岩は飴と鞭を使い分けて威厳を示すべきと答えたが、瑲玹は違った。
「西炎氏は中原の主です、軹邑(シユウ)城と西炎城に何の区別が?
 辰栄山も西炎山も同じこと、いずれも国土の城と神山に違いありません」

徳岩は瑲玹が失言したと確信し、刺客の入れ墨から瑲玹の仕業だと訴えた。
すると黙って聞いていた小夭が祖父に発言したいと申し出る。
「瑲玹と若水族の関係は周知の事実、まるで刺客が胸に″瑲玹″と彫ったようなもの
 入れ墨は阿爺に疑念と殺意を抱かせるきっかけに過ぎない、簡単なことよ
 瑲玹も五王も阿爺の血を引く者、王位を望むのは当然
 五王?あなたも陰で努力しているのでしょうね?」 
小夭から遠回しに疑われた徳岩は激怒、西炎の朝政に女子が干渉するなと声を荒らげた。
「だったら娘(ニャン)が出征した時、何をしていたの?!
 あの時、女子は干渉するなと止めてくれたら私は孤児にならずに済んだわっ!」
小夭は思わず感情的になったが、そこで西炎王が話を止めた。
「瑲玹、お前は辰栄山で何をしてきた?」
「私は宮殿の修築だけでなく、爺爺の教えに従って王孫としての勤めを果たしています」
西炎王にはその答えで十分だった。
「分かった、お前を信じよう、刺客を放ったのはお前ではない、帰るが良い」

脇殿で話を聞いていた赤水豊隆は小夭の雄弁さに感心していた。
普段は人当たりの良い小夭だが、まさかあの五王をやり込めるとは…。
しかし塗山璟は瑲玹たちがこのまま無事に沢州城を出られるとは到底、思えなかった。
その時、脇殿に西炎王が現れ、2人は足止めされてしまう。

瑲玹は小夭と鈞亦を連れて城門に続く長い宮道を歩いていた。
すると城楼に潜んでいた射手が一斉に矢を放ち、瑲玹たちが身動き取れなくなったところで精鋭部隊が現れる。
その頃、西炎王は塗山璟と赤水豊隆を引き止め、碁の腕前が天下一という塗山璟と一局、手合わせしていた。

瑲玹は小夭を守りながら神剣の力で精鋭部隊に応戦した。
すると小夭が弓を招喚、城楼の射手を見事に射抜いて瑲玹を援護する。
その時、外套をすっぽり被った防風邶こと相柳(ソウリュウ)が瑲玹に狙いを定めて弓を構えた。
しかし小夭が瑲玹にぴったり張り付いているため、矢を放つ頃合いがつかめない。
「ふっ、弟子が師父の仕事の邪魔をするとはな」



瑲玹たちは精鋭部隊に邪魔され前進できず、いよいよ追い詰められた。
「哥哥、あと1射よ…そうだ、阿爺の寝宮が近い」
「それしかないな」
そこで瑲玹は小夭の矢に術をかけた。
すると西炎王の寝宮に向かって放った矢は空中で何百本にも増えて前庭に降り注ぐ。
「刺客だっ!」
将軍は直ちに西炎王に刺客が現れたと報告したが、西炎王は全く動じなかった。

西炎王は瑲玹が叔父たちの力を利用して脱出したと分かった。
一方、慌てて下がった塗山璟と赤水豊隆は、道すがら将軍から瑲玹たちが無事だと聞いて胸をなで下ろす。
2人は瑲玹が五王の罠を逃れた上、逆に罪を被せたと気づき、その策謀に舌を巻いた。

塗山璟たちは瑲玹たちに追いつき、帰り道の途中でひとまず水で乾杯した。
赤水豊隆は瑲玹の脱出作戦に関心したが、実は小夭の策だったと知る。
しかし小夭に合わせる顔がない塗山璟はどこか上の空だった。

瑲玹と小夭は駆けつけてくれた2人に感謝して先に帰って行った。
赤水豊隆は塗山璟の気持ちを分かっていたが、実は自分も小夭が好きだとほのめかす。
すると塗山璟は小夭への想いが本当なら反対しないと言った。
「璟、小夭を想うたび後ろめたさを覚えるのだな…だがもう妻子を持った」
「分かってる」



小夭は瑲玹の岳父・曋淑同(シンシュクドウ)が婿たちの無事を確認して帰ったと聞いた。
存亡の機でも様子を見にきてくれた曋氏、これが婚姻の力なのかもしれない。
「いつ馨悦(ケイエツ)を娶るの?」
「私に会いにも来ない、私に嫁ぎやしないさ」
瑲玹は無条件に力を貸してくれるお人好しは小夭だけだと笑った。
この苦しい世の中では誰でも自分が一番、愛情では飢えを満たせず、暖も取れない。
瑲玹は馨悦の判断に理解を示し、自分にとって要求を満たし合える公平な関係が理想だと話した。
「割り切っているのね?」
「お前も割り切れ」
「哥哥の言う通りだけど、それで心が満たされる?」

瑲玹は久しぶりに小夭をおぶって帰ることにした。
辰栄山に赤々と広がる鳳凰樹、かつて小夭が自分をおぶって鳳凰樹林を歩いてくれた日が昨日のことのように思い出される。
「哥哥…必ず生き抜くわよ」
「はお」



つづく


( ˙꒳​˙ )おんぶ…必要?w





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最終更新日  2024.10.16 16:08:02
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