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「もう! 最近、雨ばかりじゃん! マジ、ダルいんだけど」「つうかさ、昨日のロンハー観た?」「マジ、アイツ調子乗ってるよね!」 昼休みの時間なのか、いつものように他愛のない会話が教室にあちらこちらで飛び交っている。 教室の窓は大体、廊下側は開いている事もあるが、雨の日になると廊下側と反対のグラウンドに面している窓や校舎裏側の窓は、当然のように雨が入らないように閉め切っているのが普通である。だが、そんな雨の薄暗い日に限って、どこからともなく得体の知れない怨霊が、教室に入り込むことも希にないこともない。 新学期が始まって間もなく、ここ二、三日の間、じめじめした雨の日が続いていた。 そんなある日、ある男子学生の視界に無数の白い筋の光が一瞬、横切るのが感じ取れた。『うんー少し目が霞んでいるのかな。ちぇ、昨日、麻美とやりすぎたからかな』 次の瞬間、目をこすっている男子生徒の心臓が、「ドク!」 とした衝撃と共に目の前の視界が真っ白になった。 教室の雰囲気が徐々に異様な違和感へと変わってくる。「えっ」、「えっ」、「えっ……」「おい! お前、何持っているんだ!」 右手にはシャープペンシルや無数のボールペンを強く握りしめながら、突然、机に叩きつけた!「ガシャン! ガシャン!……」「キャー!」 次第に鈍い音に変化していくと、机が血の色に染まりつつある。「お前! 正気か! 止めろ!」 ある体格の良い男子学生が、ひたすら机に固く握りしめた拳を殴り続けている男子生徒の右腕を押さえた。 そのはずだった。 しかし、何度も右腕を掴もうと試みても、右腕を掴めない。いや、素通りする、または通り向けるといったらいいのだろうか…… 激しく机を打ち続ける右腕を取り押さえようとした男子生徒の腰が一瞬で砕けた。 教室には悲鳴と恐れ泣き叫ぶ女子や男子で溢れかえった。 その衝撃的な光景に耐えかねた女子の一人が、教室の後ろの黒板の扉から飛び出し、怖さのあまり無意識にその扉を勢いよく閉めた。 すると、あれだけ血に染まっていた机が元通りになっていた。 机を激しく打ち続けていた男子生徒は、気を失いその場で倒れ込んだ。 今までのことが何もなかったかのように。 授業開始のチャイムが鳴り響き、数学担当の教師が教室に入ってきた。 なぜ扉を閉めた瞬間、悪夢が終わったのだろうか? ある女子生徒は冷静な眼差しで、白い筋のような光を目で追いかけていた。 机を激しく打ち続けていた生徒は、ほぼ教室の真ん中に位置していて、廊下側に開いている正面の黒板の位置する扉から、反対側の後方の開いている扉、そして、ターゲットの中心部に位置する机へと高速回転で、ぐるぐる、ぐるぐるとひたすら回っていたのであった。 はるか昔、この付近では無実の罪を着せられ、熾烈極まりない鞭打ちの刑により無念の死を遂げた言い伝えが残っているのだが、時の流れにより、いつのまにか資料、文献もなくなり、また人々の記憶からも消え去っていた。 一人、一際、冷静であったある女子は静かに印を結び、ゆっくりと丁寧に心の中で静かにお経を唱えていた。 それ以来、同じようなケースは、なくなったと聞いている。
2009.03.14
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「まず最初に言っておく!」 教室中に神崎 信の野太い声が響き渡る。「いいか! お前らに俺は何一つ期待はしていない!」 神崎はまだ自己紹介もしていないにもかかわらず、大声で吐き捨てるように言い放った。 教室は一瞬にして静まり返っている。右側前方に座っている茶髪ロンゲの宮本が噛み付いた。「はぁ? つーか、お前さ、いきなりムカつくんだよ! つーか、なめてんのかよ!」「お前、威勢がいいな。宮本か、よろしく! まあ、予想していた返答だ。そういうと思った。人の話は最後までちゃんと聞け! いいか! お前らには何も期待はしていない、と心の中で思っているような、他の連中と一緒にするな! 俺はそんな連中とは違う。もし俺がお前らを見捨てたり途中で諦めたりしたら、教師失格以前に人間として失格だ! すぐにでも退職届を提出してここを去る。いいか、お前ら! 俺のことを鬱陶しいと思えば、策を講じて罠を仕掛けろ! 頭を使え。だがな、俺もそう簡単には罠に掛からないから、そこんとこよろしくな! まあ、仲良くやろーぜ」 神崎が一気に勢いよく捲し上げたため、またさらに、教室中が沈黙した。 その時、「ガシャン!」と椅子が倒れる音と同時に、「ふあー」と大きな欠伸をして、教室を立ち去ろうとする男がいる。「今から出席取るぞ!」 神崎は何事もないように「青木 徹」と言う。 教室が再びざわめいて来る。 その男が後ろの扉から退室しようとした時、「おい! 名無し! 名前を告げてから出て行け」 神崎は教卓を蹴り上げて叫ぶ。「あー俺か! 根岸 對馬だ! 腹減ったから出て行くぜ!」「カッコわりーな!」 ボソッと囁く。「はあ?」「格好悪いって言ってるんだよ!」「ふん、てめーぶっ殺すぞ!」「面白い」「はあ! 何が」「おもしれーって言ってるんだよ」 二人のやり取りは完全に子どもの喧嘩である。 予想通りと言うべきか、怒りに肩を震わした根岸が、ゆっくりと神崎の元へ歩み寄る。すかさず胸倉を取り、鋭い眼光で睨み付けた。 神崎は自分の胸に食い込んでいる拳を左肘でおもいっきり叩き落とした。 根岸は負けじともう一方の片方の手で、再び胸倉を取ったと同時に神崎も根岸の胸倉を取る。こういう場面はお互いの目から火花が飛び散るという表現がぴったりなのであろう。いつ殴り合ってもおかしくない緊迫感が二人の間にキーンと張り詰めていた。「まあ、初日だ。今日はここまでにしようぜ」神崎のドスの利いた低い声で言う。「あーいいぜ。腹減ってるしな! 次はきっちしやるから。ここ(自分の頬を軽く人差し指で突く)おもいっきり殴るぜ! じゃーな」「ああ、じゃーな。次、お前と再会するのが楽しみだ。最近、派手な喧嘩はしていないからな。遠慮なくいつでも掛かって来い!」 それを聞いていた根岸は、無表情の笑みを浮かべながら教室から出て行った。「井上 和佳」 神崎は何事もなかったかのように、出席確認を再開した。
2008.10.31
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そして、間も無く五分後に一人の女性兵士が現れた。 その女性兵士は深々と一礼して大きな兜を取り、美しい長いブロンドの髪を靡(ナビ)かせながら、ローレライの前に緊張の面持ちで敬礼した。「今回の度重なる激務お疲れ様」 ローレライはにこやかな表情で言った「えっ……」 目の前のその女性は一瞬、戸惑いの表情を見せた。「まあまあ、リラックスして、貴殿に頼みたいことがあるのだが、よろしいでしょうか?」「勿体ないお言葉、私、死ぬ覚悟で任務を遂行します」「いや……先程、ある少女に出会ったのだが、クマのぬいぐるみを持っている少女の護衛を貴殿に任せたいのだが」「少女の護衛……ですか?失礼ながら閣下の御親族でございますか?」「いや、先程、偶然出会い親友になった」 目の前にいた女性兵士の顔は混乱した面持ちになっていた。しかし、次第に緊張が解れ、自然な笑顔を魅せた。「貴殿にはその笑顔がとても似合う」「あの……は、はい――」 みるみるうちにその女性の顔が耳まで真っ赤になっていた。「貴殿の名は?」「クリステル・ロセットと申します」「申し遅れました。私はローレライ・フェデラルと申します」 ローレライは軽く微笑みを浮かべながら、戦火に塗れた薄暗い灰色の空をゆっくりと見上げた。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.27
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※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ◆ローレル国バチエタ平原第182号指令本部◆「ローレライ大将軍閣下に申し上げます」「んっ」「バロニア敵軍はアッカス渓谷を北東に陸空軍総数約120万、バチエタ平原に約50万、第二次援軍予想200万余りの勢力です」「数字的には我が軍は劣勢になっていることは確かだ。だが、最終防衛ラインのアッカド城を決して突破させてはいけない。そこに全レッド、イエロー(上級魔戦士)を集結させよ」「御意」「ホワイトはユーロ海峡に配置、一斉凍結攻撃により海軍の侵攻を遅らせる。空聖団は敵空母艦隊、並びにその他敵の空軍撃破を第一目標とせよ」「御意」「魔弓団は渓谷の中間地点に配備、敵のヘリ部隊だけに集中攻撃」「御意」「バチエタ平原に5万の一般兵並びに魔戦士100を残す。そして、アッカド城から若干数のエルフ強弩隊、並びに一般弓矢隊を、敵軍侵攻予想の道筋に沿って、大木や岩石に隠れるように待機させよ」「…………」「貴殿、何か不服でも?」「失礼ながら、お言葉をお返ししますが……ここリレッタは敵の奇襲に遭いほぼ壊滅状態であり、残りの兵をアッカド城に集結させるのが得策かと……」「貴殿は敵の中距離弾道ミサイルを知らないのか?ここを拠点としてミサイル配備されたらどうする?もしここを失えば未来永劫に失地回復はないであろう」「このたびの失言、お許しを」「では、この作戦を皆に伝えよ」「御意」「あっ、それから、誰でもいい一人の女性……一般兵をここに連れて来てくれ」「あ、はい……了解です」 副司令官はその意図が理解できず、一瞬、戸惑いの表情をみせた。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.24
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「久々に人殺しが出来るぜ……わくわくしてきたぜ……たまんねーな」 ローレル領土内バチエタ平原で機関銃を乱射しているバロニア兵は、バロニア帝国で死刑が確定していた元囚人達である。 戦時中は敵国の人民を数多く殺せば殺すほど階級が上がってくるのである。つまり、無差別殺戮において良心による殺戮の躊躇は、こと侵略戦争にはタブーと言っても過言ではないのである。 確かにロエスレル十五世が崩御される前は、積極的に周辺各国に平和協定を締結して領土拡大路線からの脱却を国家指針にしていた。 しかし、十六世が即位すると同時に、未成年である現皇帝バッジオ・ロエスレル十六世の摂政として頭角を現してきた、首脳兼軍最高司令官ロッドにより、中央集権強化、治安維持法、言論統制を与党多数の議会で強行採決を繰り返した。 バロニア帝国は世界一の石油産出国であり、ここ一、二年、未曾有のオイルマネー投機による好景気が続いていた。そこで、国民の石油税負担軽減を大義名分としてM7師団の予算増、権限強化を議会で取り決めた。 ついには石油に次ぐ水利権を掌握し、核兵器開発による全世界統治が国家戦略として掲げられたのであった。 後にローレル侵略戦争は「水と油の戦い」と呼ばれるようになった。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.23
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また、さらにバロニア帝国は南方へ領土拡大を進めた。 その目的として南南西に存在確認されているヴィラブ国境付近のウラン鉱石の獲得、すなわち、核兵器開発の目的で南伐を進めていた。 ちなみに、ヴィラブ国は知能獣が全人口の9割を占める元全世界統一国家である。 先の第四次世界大戦には、暗黒王ゾイドの封印により急激に弱体化し、現在は南方付近を支配している。 さらに、南東に位置しているバッカス国はクローン獣の技術も研究開発が進められ、現在、強力な兵器としてクローン獣が戦力に加わっている。 クローン獣とは戦時に倒した知能獣やモンスターから採取したDNAにより同種生命体を大量複製することができる技術である。 そこに完全複製前の段階で脳内前頭葉又は細胞核に特殊なチップを埋め込む事で、ある一部の司令官の命令にだけ従順させる技術である。 しかし、そのチップの原材料であるレアメタルはバロニア帝国領土内では殆ど採掘されない。 したがって、軍事的にクローン技術や魔術より石油を燃料にした科学技術の研究開発に重点を置いているのである。 そして、次に各国の位置関係に着目してみる。 ライド星はマキャド島を中心に大海を囲む形で、ドーナツ型に北西から東方にかけて二大陸が広がり、北東には大小の列島が点在している。 現時点で独立国家を大きく分けると、バロニア帝国、ローレル国、ヴィラブ国、バッカス国、ラマ連合国の五国に分かれていた。 その北東に位置するラマ連合国は海軍力が他国を圧倒しており、特に世界的に名高い軍師である海軍総司令官カリオスが、軍事の総指揮を務めている。 また、北西に位置したにローレル国にはヘブンブルーという広大な湖がある。 そして、そこから北東へ進むとバレイン山脈の魔鉱石採掘場がある。 そこに隣国のバロニア帝国がそのヘブンブルーを確保するため、ロエスレル歴二十六年七月に電撃侵攻を開始したのであった。 ここに地球から約八十数億光年離れたライド星における、第五次世界大戦が勃発した。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.22
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M7師団軍隊長、マスキレフ・ロッドはローレル国へ北伐を始めた。 ローレル国は自然豊かなレイ山脈に囲まれ、羊などの放牧を主とする数々のコロニーが各地に点在しており、北極に近い北東のバレイン山脈は多く魔鉱石が採掘されている。それらの魔鉱石を身に付けた上級魔戦士と呼ばれる兵士は、魔法力をより一層高めるために鍛錬の日々を送っていて、また、その魔鉱石の力は電力、火力、氷力、を自由に操る事が可能であり、その威力は無限大の可能性を持っている。 その他にローレル国には古来より生息している聖獣と呼ばれる知能獣の一種が、ローレル国領土防衛のために人間と一致団結して、数多く各所の防衛拠点に滞在しているのだ。 一方で、ローレル国より南西に位置しているバロニア帝国は、何万光年離れた地球の科学技術の情報を手に入れた時から、急激な工業化やそれに伴う大気汚染により自然環境の悪化や水質汚染が深刻となり、それらを契機に国家的戦略として水源の確保が急務となった。 果てしなく遠い地球からの膨大な科学技術情報は、ある一つのマイクロチップに記録されていた。 その記録の一部には、日本という国が生体反応を感知する最新型マイクロカプセルを宇宙空間に約一億個のカプセルを放出し、平和利用を目的とした地球外異種生命体への科学技術提供……と記されていた。 つまり、ある意味、偶然ではない必然によるマイクロカプセルの発見により、バロニア帝国は急速に強力な化学兵器の開発が進むのである。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.22
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「ぐふっ――」 野原に横たわる死体の数々…… そこに一人の少女が身体を小刻みに震えながら怯えていた。 またさらにそこには、迷彩服に身を包んだ目をギラギラさせている兵士が、機関銃を構えている。 その男は涎(よだれ)をたらしながら…… その男の黒目は地獄を彷徨っている。 まるで野獣のように―― そして、今、まさに銃口を少女の抱えているぬいぐるみにゆっくりと照準を合わせた。 その時だった……「シューン」「……」 その瞬間、迷彩服の兵士は真っ二つに引き裂かれた。 そして、ある男は目を閉じて震えている少女に近づきそっと囁いた。「そのまま目を閉じるんだ。それから、ゆっくりと光の差し込む場所へ歩いて行くんだ」「う、ん」「もう何も怖がらなくてもいい、この俺が悪い大人を消し去ってあげる。今、ここで約束するよ。だから、月の光が真ん丸くなるまで待っていて欲しい」「うん!」「将来、きっと素敵な王女様になるよ。さあ、もう心配はないからね」 少女は斜め上に目線を上げ満面の笑みを男に見せた。 男はゆっくり少女の頭を軽く撫でてから、銃声が轟く場所へと再び歩き出した。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.06.21
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「先輩、ちょっと待ってください」「ごっつん、遅いわね、早く、早く、待ち合わせに遅れちゃうわよ」「すみません~でも、いつも朝寝坊する先輩には言われたくありません」 すみません、の後はボリュームを落としてさり気なく聞こえる音量で言った。『超生意気~ぐやじい~』 綾の一年後輩に当たる後藤 エリカ(23歳)は、東京の美術大を卒業してフリーのカメラマンを目指しながら、ここの東中亜出版社に勤務している。 ボーナスで買った自前の高級ニコンデジタル一眼レフカメラをいつも大事に抱えながら、家には各種の望遠レンズや100万円ほどするライカカメラをコレクションしているのである。 確かにカメラだけはオタク的要素が強いが、その他はネイルやエクステなどに夢中になっているので、給料日前にはいつも綾や複数の恋人候補に食事を奢って貰う生活をしているのであった。「先輩! 今日、取材に行くところはとても楽しみですね」「一般庶民が憧れるセレブの生活を紹介するという、今、流行の……ありがちな企画だよね」「先輩の不満を今度、編集長に報告しますね」「今日はごっつん、とても機嫌が良さそうね――さては昨晩、合コンでも行ってお気に入りのメンズでもゲットしたのかな」『超マジやばい、もしかしたら、先輩には超能力があるかも、目が怖いし……』 流石にこれ以上は危ないと感じたエリカは、綾の肩を揉み出してご機嫌を取ろうとした。「そこは凝ってない、もうちょっと首筋辺り……」『超簡単、楽勝』 二人は白金台駅を降りて、閑静な高級住宅街を一軒一軒見上げるように歩いていた。「将来は豪邸に住めるようにしっかり男を品定めしなくっちゃ」 とエリカが思わず呟いた。「ん~そうかな。私はお金より私を一番愛してくれる素敵な王子様がいいな」「先輩って、まだまだ子どもなんですね。もしかして、まだ、男性経験が少ないとか……」「そんなこと言うんだったら、給料日前はとことん無視!決~めた」「そんなにいじめないでくださいよ~先輩~冗談ですよ――昨日の合コンで」 エリカは自慢げに三本指を立てた。「今から取材なのに何? その派手なネイルは……」「ネイルと違いますよ~三人のエリートぽい男性からメールと電話番号を交換したんですよ。だから、今度、必殺の上目使いでおねだりしようかにゃん」「てゆうかさ、ごっつんと話していると段々頭が痛くなってくるわ、はぁ」「あはぁ、先輩に褒められちゃった」「…………」 綾はエリカに呆れた視線を送った後、目の前に聳え立つ巨大な豪邸にただただ口を開けながら、さらに、目を丸くしながら大きな門を見上げた。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.01.24
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駅の階段を息を切らしながら走っている。そして、ストッキングの伝線も気が付かないままに……彼女はある出版社に駆け込んだ。『どうしよう。昨日も遅れ気味だったのに――』 彼女は髪を乱しながらギリギリ慌ててオフィスデスクに座った。その姿をキーボード打ち込みながら横目で観ているショートボブの髪型の女性が一言つぶやく。 「普段の仕事もそれ位必死だったらね~高島」 極力、目を合わせないように笑顔で誤魔化している女性は、高島 綾である。『今は我慢しなきゃ……編集長の小言にも耐えて……だって、地道に貯めた念願の有給が私を待っているのだから』 綾の部署は主に育児本などの主婦雑誌を扱っている。少し小言が多い編集長は厳しい中にも思い遣りがある田中 美紀、自称年齢29歳である。私生活は謎だらけで過去の恋愛話はどれだけ酔っ払っても決して口を開かないのであった。「早くその乱れた髪を整えて、早速だけどこの取材に後藤と行ってきて」 そう編集長が言って昨日会議でまとめた資料を綾に手渡した。「はい……」「返事が小さい!」「はい! わかりました!」「有給を取りたいんでしょ、あなたの考えることはわかってるんだから、ね」『うむ~ぐやじい~必ず良い記事を書いてやる~』「その調子、その調子、久し振りに今回だけはあなたに期待して……はぁ」『その溜息はなんなの~ぐやじい~』 綾はぐやじい~が口癖だが、なかなか口には出せないのであった。宜しければポチッと( ^-^)σ応援よろしくです。とても励みになります。↓
2008.01.23
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