◆◆ 食生活改善で、前立腺がんの再発進行を遅らせることができるか!? ◆◆
前立腺がんで治療中の患者さんは、様々な治療を受けていると思います。
進行前立腺がんや転移性前立腺がんでは、
治療は簡単ではありません。
転移性去勢抵抗性前立腺がんの予後(生存期間)は、
残念ながら、非常に厳しい状況です。
最近の臨床試験の研究での解析結果では、去勢抵抗性前立腺がんとなってからの予後は、中央値、約 3 年といわれています。
一般の病院における実際の治療では、
実はもっと予後は短く、
2
年以内といわれています。
この臨床試験と実際の治療における予後の違いは、
去勢抵抗性前立腺がんになってからの治療が、
前者では2から3種類の治療を受けている一方、
後者では、
1
種類の治療しか受けていない現実があります。
この解析は、世界の解析結果です。
日本では、
もう少し、治療選択そして、新たな選択ができて、
より予後はいいのかもしれません。
しかし、どちらにしても、
転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療は厳しいといわざるをえません。
患者さんとしては、
ただ病院に行って、いわれるがままの治療だけで
本当にいいのか、
毎日言われるがままの薬を飲んでいるだけでいいのか
疑問に思うのは、ごく当たり前の反応と思います。
患者さんには、病院での治療以外に、
確実な選択肢はないからです。
友人からのつてで、
どこかでがんの治療で、ものすごく効果があったと聞けば、
そのサプリメントを試したくなります。
怪しげな民間療法を、試してみたくなるのも、
理解できます。
自分で、情報を集めて、身体にいいものを、
病院の治療以外に取りたいと思うのは、本当に自然なことですね。
このように、薬だけでなく、
何かいい方法を取り入れたいと思う患者さんは多いと思います。
また、食生活や生活習慣にも気を付けている方が多いと思います。
世の中にはさまざまな健康食品やサプリメントであふれています。
どんな食生活をすべきか、あまり指標はありませんね。
前立腺がんの治療中に心掛けるべき食生活とはどのようなものでしょうか。
食習慣に関して、
実は、はっきりした推奨される方法、証拠は、実はないのです。
動物性たんぱく質は身体にいいのだろうか?
加工食品は?
野菜は多く摂った方がいいのか?
治療薬以外で何かできることはないのか?
生活習慣はどうだろうか?
運動は、いいかもしれない。
思い悩むより、お気楽な性格の方が、予後はいいのかも
前立腺がんになりやすさ
という点でも、
生活習慣は、どうもある程度関連がありそうです。
例えば、前立腺がんの発症に関して
遺伝が関係するかもしれない
カルシウムを取りすぎるとよくないかも
加工肉、牛乳、乳製品の取りすぎはよくないかも
トマトなどに含まれるリコピンは前立腺がんのリスクを下げる?
セレン、ビタミン
E
、豆類摂取は、前立腺がんになりにくい
性的活動が活発な人は、前立腺がんになりにくいかもしれない?
いろいろなことがいわれていますが、
前立腺がんの 発症
に、生活習慣のなかで、
『 確実な 』リスク因子や防御因子はないようです。
ただし、
乳製品、カルシウムの過剰摂取、欧米風の食生活は、
どうも前立腺がんの発症を促すようです。
リコピン(トマト製品)の摂取不足、肉のとりすぎや、乳製品の取り過ぎ、カルシウムの取りすぎは、避けたほうがいいかもしれません。
これは、あくまで 前立腺がんの発症 に焦点を当てたものです。
そ れでは、
前立腺がんになってしまったら、
どういう食生活をしたらいいのでしょうか?
実は、よくわかっていません。
前立腺がんになってしまった後に、
食生活を改善する意味はあるのでしょうか?
科学的に、よくわかっていません。
食生活が、
前立腺がん治療効果、予後に影響を及ぼすかどうかはよくわかっていません。
最近少しずつですが、進行前立腺がんにおいて
ある種の食生活が、進行再発に、影響を及ぼす可能性が指摘されています。
簡単に言うと、
1.プラス評価の健康的な植物性食品:
果物、野菜、全粒粉、ナッツ、紅茶、コーヒー、植物油など
2.不健康なマイナス評価の植物性食品:
果汁、精製穀物、芋、加糖飲料、菓子やデザート
3.不健康な動物性食品:
肉、魚、卵、乳製品、動物性脂肪など
健康的な植物性食品は、ある時期の前立腺がんにおいて、
進行再発に、明らかな影響がある事がわかりました。
進行前立腺がんで治療中の患者さんで、自分ができることは限られています。
健康的な植物性食品は、前立腺がん治療にいい影響を与える可能性があることが、
2023
年
2
月
16
日から
18
日にかけて、
米サンフランシスコで
ASCO Genitourinary Cancers Symposium
(
ASCO GU 2023
)で、
カリフォルニア大学サンフランシスコ校から研究結果が報告されました。
健康的な植物性食品を多く摂る食習慣が、
どうもある時期の前立腺がん(
T1-T3a
期の
2,038
人)の進行再発に、明らかに影響を与えることを示しました。
このことが、転移性去勢抵抗性前立腺がんにも当てはまるのであれば、是非取り入れたいものです。
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