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◆◆ ゾーフィゴ治療の問題点 ◆◆前立腺がんが進行した場合に起こる遠隔転移で最も多いのは、骨転移です。また、前立腺がんによる死亡の主因は、骨転移によると考えていいでしょう。 骨転移が悪化し、痛み、疼痛が出れば、生活に支障が出ます。予後(生存期間)の延長だけでなく、いかに健康寿命を延ばすか、強い痛みや活動の制限を少なく、長く元気に生活できるかは、大事な問題ですね。 骨転移による症状は、著しく生活の質QOLを落とし、筋肉量も低下し、さらに生活の質QOLが落ちるといった、悪循環に陥ります。骨転移部位が痛めば、転移部位に放射線療法を行う必要が出てきます。医療費が増えるだけでなく、病院に頻回に受診しなければならなくなります。 痛み止めや、程度が強ければ医療用麻薬が必要になり、身体を動かすことの制限が出たり、安眠できなくなって身体が弱ってしまいかねません。また、血液の各成分は、骨髄で作られます。多発骨転移が進行すれば、貧血が進行して、普通の治療はできなくなってしまいます。 ゾーフィゴ治療の問題点を、列挙すると1. どのような患者さんで、治療のどの時点で行えばいいかが、はっきりしない2. 前立腺がん自体への治療ではない 骨転移以外に直接的効果がない3. 一般のクリニックや病院では、できない放射線同位元素を用いた治療である4. 効果をPSA低下では、見ることができない5. 骨折などの副作用が起きやすい!? 患者さんのみならず、泌尿器科医も、ゾーフィゴ治療の時期や患者さんの選択に、実は困っているのが現状です。 つまり、適切な時期にゾーフィゴ治療を選択するのは、簡単ではありません。 8月、9月の電子配信で、ゾーフィゴ治療の問題点を含めて、現時点でわかる範囲で解説しています。興味のある方は、参考にしてください。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2024年09月09日
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◆◆ PSMAを利用した診断と治療 ◆◆PSMAを利用した診断と治療が、世界中で行われています。PSMAを利用した画像検査であるPSMA PET/CTも、PSMAを標的とした177Lu-PSMA治療も、日本では、まだ、保険収載されていません(健康保険で利用できない)。そのため、多くの日本人が、海を渡ってこのPSMA治療を主に、オーストラリアまで出向いて、治療を受けています。歌手で俳優の西郷輝彦さんが、コロナ下にオーストラリアにわたって治療を受けたのは、みなさんもご存じかもしれません。PSMA PET/CT画像検査とPSMA治療とは、PSMA (prostate specific membrane antigen;前立腺特異的膜抗原) というタンパク質を標的とした画像検査と治療です。PSMAは、前立腺がん細胞において発現している(細胞表面にある)膜タンパクです。前立腺がん細胞の9割以上で、発現しているといわれています。がん細胞のみならず、正常の唾液腺、涙腺、交感神経節、腎臓にも発現しています。PSMAが高発現している前立腺がんは、悪性度が高いこともわかっています。グリソンスコアが高いがん細胞には、多くPSMAが発現しています。PSMAの発現と予後(生存期間)には、大きな相関があるともいわれています。前立腺がん細胞にPSMAが多く発現していることで、過去10年間 PSMAを標的とした診断と治療が、世界中で、用いられています。PSMAを前立腺がん細胞が、特異的に発現しているとすれば、体内でのPSMAの存在がわかれば、どこに前立腺がん細胞が存在するかがわかることになります。PSMA PET/CTといわれる画像検査で、鋭敏に前立腺がんの局在(存在部位)を他の画像検査より早期に、詳しくわかるようになりました。PSMA治療は、前立腺がん細胞のPSMAにくっつく物質(PSMA617が以前から用いられてきた)が開発され、その物質に放射線同位元素(放射線を出す物質)を結合させて、その放射線で、PSMAを発現しているがん細胞をやっつけようという機序です。PSMAにくっつく物質は、様々なものが今は開発されています。つまり、PSMAは診断上、治療上、理想的なターゲットといわれています。もちろん前立腺がん細胞がこのPSMAを発現していることが大前提です。前述のように、前立腺がんがPSMAを発現していれば、このPSMAを標的にして、治療ができるようになり、すでに世界中で治療が行われています。特に、ドイツとオーストラリアで、たくさんのPSMA治療が行われています。ドイツとオーストラリアでは、過去1年3ヶ月の間に500人以上の治療を行ったということです。日本で、あらゆる治療を受けたのち、病状が進行していれば、患者さんは、PSMA治療に自然と目は向けられ、たどりつきます。日本でPSMA治療ができないため、多くの日本人がオーストラリアに治療を受けに行っています。そうはいっても、渡航する体力が必要ですし、渡航費、滞在費、治療費に1000万円前後かかるようで、一般の患者さんでは、簡単に受けられる治療ではありません。PSMA治療を受けるためには、前立腺がん細胞が、PSMA陽性であることが大前提です。PSMA PET/CTで、PSMA陽性であることを確認してから、177Lu-PSMA治療が始まります。PSMA治療はある意味プレシジョンメディシン(個別化医療)ともいえます。新規抗アンドロゲン剤も抗がん剤治療も済んだのちの、最終治療の位置づけではなく、より早期のPSMA治療がいいのかもしれません。抗がん剤治療や新規抗アンドロゲン剤を使う前に、PSMA PET/CTで調べておくというのがいいのかもしれません。PSMAの発現が、既存の全身治療前後で、変化するということであれば、診断、治療の時期選択も難しい問題となります。例えば、全身治療後に出てくるといわれている前立腺神経内分泌がんでは、PSMAの発現は低下しているといわれています。そうであれば、神経内分泌がんに対して、PSMA治療は効果は期待できません。一方、オリゴ転移(転移の数が少なくて~4個)の時期に、放射線療法を用いたMDT(転移巣に対する治療)を行うことが今盛んに検討されています。オリゴ転移を見つけるために、PSMA PET/CTの感度がいいといわれています。PSMA PET/CTで見つけたオリゴ転移の時期に、PSMA治療をMDTとして用いる考え方も理論的に当然出てくると思われます。PSMA PET/CTを行う時期、PSMA治療を行う時期というのは、今後の検討課題でしょう。今年4月に横浜で開催された日本泌尿器科学会総会で、日本人のオーストラリアでのPSMA治療に関する報告がありました。今までの70人を超える日本人が、オーストラリアで治療を受けています。オーストラリアでのPSMA治療がどのような結果だったかは、皆さんも私も、大変興味があります。宣伝になりますが、電子配信で『オーストラリアにおける日本人に対するPSMA治療の効果は?』という題で、解説しています。興味のある方は、今日の電子配信をチェックしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2024年06月16日
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◆◆ 前立腺がんのオリゴ転移に対する治療戦略 ◆◆久しぶりの、ブログ更新です。申し訳ありません。前立腺がん治療は、今激動期です。Uromasterも、最新の情報を提供し、何とか、本当に効果がある治療を、患者さんに提供したいと考えています。今日は、『オリゴ転移』についてお話します。<オリゴ転移前立腺がんとは>『 オリゴ転移 』という言葉があります。オリゴというのは、ギリシャ語で「少ない」という意味です。オリゴ転移前立腺がんというのは、『転移が少ない前立腺がん』ということです。オリゴ転移は、臨床上、数が限られた転移が検出され、転移の数が、一般的には1~5個の場合をそう呼びます。<MDTとは>オリゴ転移の患者さんに対し、オリゴ転移部位を、放射線などで叩くことにより、全身治療開始を遅らせ、全身治療の副作用を軽減することができる可能性があります。転移部位への治療を、 MDT (転移に対する治療)と最近よぶようになりました。M はmetastasis、 D はdirected、 T はtherapy(またはtreatment)です。MDT:Metastasis-directed therapy日本語にすれば、『転移指向性治療』とでもよぶのでしょう。前立腺がんのオリゴ転移に対しての治療の中心は、MDT転移部位への放射線療法でした。オリゴ転移の、手術による転移巣切除の効果は、どうなんでしょう?私Uromasterは、まぐまぐの配信を毎月4回行っています。2024年3月は、オリゴ転移に対するMDT治療について、詳しく最新情報を紹介しました。2024/03/10 去勢感受性前立腺がんへのMDT(転移指向性治療)2024/03/17 去勢抵抗性前立腺がんへのMDT(転移指向性治療)2024/03/24 オリゴ骨転移に対するゾーフィゴ治療とMDTの併用今まさに、オリゴ転移に対するMDTの効果の検証が行われています。<腎臓がんの場合は?>唐突ですが、『腎臓がん』の話をします。腎臓がんも泌尿器科で扱う悪性腫瘍、がんです。転移を伴う形で見つかる場合も多いです。患者さんがお元気であれば、たとえ転移があっても、おおもとの腎臓の摘出手術をすることが一般的です。腫瘍が小さければ、腎臓を部分的に切除します。腫瘍が大きければ、まるごと腎臓を摘出します。転移があっても、腎臓を摘出することで、転移部位が小さくなったり、消失することが、稀ですが起こることがあります。転移があっても、状況が許せば、腎臓摘除を行います。手術により、実際の腎臓がんの組織を確認することもできます。腎臓がんの転移で多い部位は、肺と骨です。腎臓がんは比較的ゆっくり進行するものも多くあります。転移部位で多い肺への転移は、1~2個であれば、手術を勧めることも多く、手術による転移の切除でいい効果がでることが多いです。腎臓がんの場合、進行がゆっくりで、患者さんの体調が良ければ、そして、転移部位が手術できる場所であれば、積極的に手術を推奨します。進行腎臓がん診療の中では、免疫チェックポイント阻害薬などで効果がある患者さんも多く、転移の数が少なく、進行もゆっくりしたものは、免疫チェックポイント阻害薬で落ち着いた時点で、手術でのオリゴ転移の摘除が考慮されます。転移巣摘除、英語ではmetastasis(転移)を摘除という意味で、Metastasectomyメタスタセクトミーという言葉が、診療の場で用いられます。腎臓がんでの肺転移は、肺における転移場所が末梢(端)、肺の端っこにあれば、比較的安全に手術ができることから、手術が可能で、患者さんが麻酔・手術に耐えられる状態であれば、積極的に患者さんに勧める治療です。もちろん、あちこちに転移がある場合は、メタスタセクトミーは、効果は期待できません。腎臓がんと違い、今行われている、前立腺がんのオリゴ転移に対する治療の中心は、MDT、放射線療法でした。手術による、Metastasectomyメタスタセクトミーは、前立腺がんでは、標準治療とはまだいえない状況です。高齢者が多い前立腺がんで、転移部位にもよりますが、手術による、メタスタセクトミーは患者さんの負担が大きすぎます。診断時でのオリゴ転移の場合は、前立腺自体への放射線療法や前立腺全摘術の効果が期待されています。ともあれ、前立腺がんのオリゴ転移のメタスタセクトミーは簡単ではありません。理由の1つとして、前立腺がんの転移部位として、骨転移が多いことがあげられます。骨転移部位を手術で摘出すると、それが手であれ足であれ、生活の質QOLが落ちてしまいます。摘出部位が、手であれ、足であれ、切除すれば、手は使えなくなりますし、自由に歩けなくなります。まして、背骨(脊椎)の転移を切除摘出は、不可能に近いですね。但し、オリゴ転移の数が1~2個で、手術が可能な部位で、完全に摘出可能であれば、そして、生活の質QOLに影響を与えない部位であれば、患者さんによっては、考慮してもいいかもしれません。こういうケースは、前立腺がんでは、実は、まれです。しかし、進行前立腺がんで、そしてオリゴ転移の患者さんで、メタスタセクトミー(Metastasectomy)を受けることが可能な患者さんがいることは、皆さんに知ってほしいと思います。そして、メタスタセクトミー(Metastasectomy)で、完治に近い恩恵を受けることができる患者さんがいることも、知っていただきたいと思います。まぐまぐの配信で、果敢にメタスタセクトミー(Metastasectomy)にトライした患者さんFさんを紹介しています。Fさんは、去勢抵抗性前立腺がんの診断でした。DWIB法で、リンパ節転移が判明しました。主治医からタキソテールの化学療法を勧められていたようです。相談を受けたUromasterは、メタスタセクトミーを強く勧めました。メタスタセクトミー後、手術後、上昇したPSAが、劇的に、低下しました。メタスタセクトミーにより、明らかに、予後(生存期間)を改善したと考えられる患者さんです。Fさんが、メタスタセクトミーした部位は、病理診断で、やはり、前立腺がんの転移でした。Fさんは、PSAも低下し、今後の治療に、今後の生活に、非常に前向きになれたと、連絡してくれ、感謝していただけました。もちろんPSAが劇的に低下したことは、明らかにメタスタセクトミーの効果でした。 前立腺がんは、比較的高齢者の疾患です。手術を含め、強い治療は、身体を傷めることから、メタスタセクトミーの選択の判断は、簡単ではありません。しかし、できる治療を、適切な時期に行う判断、選択は、非常に重要です。 まぐまぐでは、果敢に挑戦した横浜のFさんの詳細を紹介しています。私Uromasterも、患者さんを通して、勉強させていただいていることを、強く実感させていただきました。興味がある方は、是非、まぐまぐに目を通していただければと思います。お勧めしたメタスタセクトミーを受ける決心をした、Fさんの勇気には、正直、びっくりしました。そして、Uromasterの意見を素直に耳を傾けてくれたことには、感謝しかありません。今後の治療で、Fさんがますます前向きに前立腺がんに向き合えることを、切に願います。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2024年04月08日
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◆◆ 患者さんの相談を受けました ◆◆ 前立腺がんの情報発信をしている関係で、ときどき、患者さんの個人的相談を受けることがあります。先週も、福岡のZさんと東京のTさん、お二人とお会いしました。福岡でお会いしたZさんは、初めてお会いした方でした。東京でお会いしたTさんは、実は4年前に相談を受けた方です。Tさんに関しては、このブログでも、紹介したことがあります。『東京で患者さんのTさんとお会いしました。その1』https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201907010000/ 『東京でTさんとお会いしました。その2』https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201907150000/Tさんは、50代の方で、40代後半に転移性前立腺がんと診断され、今後の治療法についてのご相談を前回4年前に、受けました。診断時PSAは240と急上昇していました。生検を行いグリソンスコア4+5=9画像診断で、転移性前立腺がんの診断でした。去勢術を開始し、半年で軽度PSA上昇し、当時、去勢術に加えて、ザイティガ+プレドニンを併用しています。転移性前立腺がんの5年生存率は、約65%、10年生存率は45%ぐらいでしょうか。Tさんの再度のご相談ということで、先週お会いしました。治療開始から、すでに5年、転移性前立腺がんで、そして転移性去勢抵抗性前立腺がんでザイティガ治療開始時から約4年ほどになります。PSA240の高値でみつかった40歳代の転移性前立腺がんで、グリソンスコア4+5の悪性度の高いものでした。予後(生存期間)は、はっきり言って、厳しいといわざるをえません。診断治療から約5年の時点での相談ですから、かなり悪化した状態での治療の相談と、覚悟してお会いしました。つまり、てっきり、ザイティガ治療も効果がすでに無くなっていて、今後の相談と思ったのです悪性度の高い転移性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療は、簡単ではありません。根治治療もまだない状況です。Tさんと、私Uromasterが投宿しているホテルでお会いしました。お会いしてびっくりしました。4年前と変わりがないしっかりした足取りで、来られました。話を聞いてみると、あれから、去勢術とザイティガ+プレドニンを今も継続していて、再発の徴候ははないとのこと。画像検査でも、明らかな異常は見つかっていません。PSAも2024年1月の時点で、0.003未満と測定限界値以下と完全に低下しています。ザイティガ+プレドニンの追加治療継続で、約4年間再発なく、最初の治療から5年間経過していますが、私Uromasterにとって、実は予想外の良い知らせでした。Tさんの前立腺がんとザイティガ+プレドニン治療の相性が抜群に良かったと思います。このように長期間効果が持続するのは、言い方はわるいですが、かなりの幸運だと思います。最初の去勢術開始後半年でPSAが軽度上昇した時点で、転移性去勢抵抗性前立腺がんといってもいい状態でした。去勢術治療開始後短期間(半年)でのPSA上昇は、良好な予後(生存期間)は、期待できない状況です。Tさんの場合、当時の治療選択肢としてザイティガ+プレドニン以外に、イクスタンジ、ドセタキセルの化学療法、転移性去勢感受性前立腺がんと判断すれば、アーリーダも選択肢に入るでしょう。この中で、ザイティガ+プレドニンを選択して、このような5年もの良好な結果が得られるとは、たぶん誰も、予想できないでしょう。私Uromasterとしては、よくて、2~3年でザイティガの効果がなくなるのではと、当時は考えていました。Tさんにも、今後、悪化すれば、ドセタキセルの化学療法などを早急に考慮すべきことをお話したと思います。今回の相談は、1.FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル検査を今すべきかどうか。2.ザイティガを休薬、もしくは減量できないか。3.今後の見通しを知りたい。以上の3点でした。私Uromasterのわかる範囲で、お答えしました。詳細は、まぐまぐで紹介しています。興味がある方は、のぞいてみてください。『2024/02/18 ステージ4のTさんにお会いしました。お元気な姿にびっくりしました』https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/164205494?share=12019年当時でも、様々な治療選択肢がある中で、ザイティガ+プレドニン治療を選択し、現時点までほぼ完全に、前立腺がんを制御できています。前述したように、転移性前立腺がんの5年生存率は65%、10年生存率は45%と、厳しい統計結果があります去勢術開始後早期に、PSA再上昇する場合は、予後(生存期間)は、あまり期待できないというのが、昨今の解析結果です。しかし、この解析結果は、あくまでも統計上の全体としての結果です。Tさんのように、ザイティガ+プレドニン治療をたまたま選択し、ほぼ完全に長期間制御できるということは、当時想像できませんでした。ザイティガ+プレドニンではなく、イクスタンジ、タキソテールの化学療法、転移性去勢感受性前立腺がんとして、アーリーダも使えたかもしれません。Tさんの前立腺がんとザイティガ治療が、たまたま、うまくマッチしたとしか、考えられません。他の治療の効果に関しては、使っていないので、実際わかりません。様々な臨床試験、臨床解析がなされています。平均点の高い治療が求められている現状です。プレシジョンメディシン、個別化医療の解析が不十分な現状です。近い将来、Tさんからの、再度のいい報告を期待しています。大変勉強になりました。Tさん、相談してくれて、ありがとうございました。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2024年02月18日
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◆◆ 期待されるPSMA治療の問題点 ◆◆今、世界中の前立腺がんの専門家の注目を集めているのは、以下のものです。PSMAを応用した、診断と治療遺伝子検査による個別化医療最新の学会や医学雑誌では、この2つが話題の中心といっていいでしょう。それだけ、PSMA治療と遺伝子解析を用いた個別化医療が、進行前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がんの治療で期待されているといえます。<PSMA治療>PSMA治療をみなさんご存じでしょうか?西郷輝彦さんが、コロナ下、オーストラリアに行って、このPSMA治療を受けたことで、知られるようになった治療です。ここでも紹介しています。PSMA (prostate specific membrane antigen;前立腺特異的膜抗原)というタンパク質を標的とした治療法です。PSMA (前立腺特異的膜抗原)は、良性の前立腺組織に比べて、前立腺がん細胞において発現(細胞表面に出てくる)が著しく上昇することが知られています。PSMAは前立腺がんにおける発現の亢進、発現量と悪性度の相関が報告されており、前立腺がんの診断や治療の標的分子として注目されています。PSMAが前立腺がん細胞で強く発現しているとすれば、体内でのPSMAの存在がわかれば、どこに前立腺がん細胞が存在するかがわかることになります。つまり、PSMAは診断目的で理想的なターゲットとなります。また、このPSMAを標的にすることにより、前立腺がん細胞だけを狙う治療も可能です。PSMA-617が開発されました。PSMAにくっつくPSMA-617に放射線同位元素をラベルして、放射能でPSMAを表出しているがん細胞をやっつけようというわけです。日本では、保険診療できないため、多くの方が、海外でPSMA治療を受けています。進行前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんは、最終的には、この治療にたどり着き、日本では受けられないため、日本国内の斡旋のクリニックを通して海外に行って治療を受けることが多いようです。たくさんの方が、大金を使って、この治療を受けに、外国に行かれています。PSMAを応用した画像診断も、盛んに行われています。進行前立腺がん組織では、このPSMAを細胞上に発現しているため、従来のCTや骨シンチなどの画像診断でわからなかった、微小な前立腺がん組織を検出することができるといわれています。 このPSMAにくっつくことを利用したPSMA PET/CTの画像診断、そして、177Lu-PSMA治療が、世界中で行われています。以前、紹介しましたが、少し復習させてもらいます。<PSMA PET/CTによる画像診断>前立腺がんが生検などで診断された時、日本では、胸腹部CTと骨シンチが行われます。施設によっては、生検前後に前立腺MRIも行うと思います。昨今は、DWIB(ドゥイブス)法という全身MRIも施設によっては利用可能です。MRI、胸腹部CT、骨シンチを行うことで、前立腺がんの前立腺周囲への拡がり、リンパ節転移の有無、内臓転移の有無、骨転移の有無を評価します。前立腺がんの診断になれば、前立腺がんが見つかれば、たくさんの画像診断を受けたはずです。日本で受けられないPSMA PET/CTですが、海外では、積極的に診断の道具として用いられてきています。胸腹部CTや骨シンチ、DWIB(ドゥイブス)でわからなかった、前立腺がんの転移や再発が、PSMA PET/CTでわかる可能性があります。PSMA PET/CTは、CTなどより、感度よくリンパ節転移が、見つかるという報告が多くなりました。リンパ節転移があるにもかかわらず、前もってわからなければ、手術や放射線療法を前立腺に対して行っても、早晩再発してしまいます。どうもPSMA PET/CTはより早期に、リンパ節転移を検出できるようです。例えば、放射線療法や手術前に、PSMA PET/CTで小さなリンパ節転移が見つかれば、骨盤リンパ節転移であれば、その部位を手術の時に、ねらって摘出したり、放射線を当てることができます。遠い部位の転移であれば、そこに放射線療法を加えることができます。今までわからなかった、微小転移をPSMA PET/CTで見つければ、治療が追加され、より根治性が高まるのではないかというわけです。手術や放射線療法の前に、PSMA PET/CTを行うことで、今までのCTや骨シンチで見つからなかった微小転移を手術前や放射線療法まえに知ることができれば、治療方針は、まったく変わってしまいます。また、手術や放射線療法後にPSAが徐々に上昇してきた場合に、前立腺や周辺の再発なのか、それとも微小遠隔転移なのかわからない場合があります。PSAが0.4-0.5ぐらいのときに、胸腹部CTや骨シンチではなかなか再発部位を見つけることができません。その場合、このPSMA PET/CTが有用で、CTやその他の画像診断でわかる前に、見つかる場合があって、その場合、その部位への放射線療法を追加することで、無駄な全身療法、内服療法をしないで、済む場合もあるようです。つまり、再発部位が大きくなる前に、身体のあちこちに拡がる前に、PSMA PET/CTで見つけて、早期治療できるかもしれないというわけです。前立腺がんで、内分泌療法や新規抗アンドロゲン剤(イクスタンジやザイティガやアーリーダなど)で落ち着いていた患者さんが、徐々にPSAが上昇してきた場合去勢抵抗性前立腺がんの状態となります。その場合、どこの再発なのかを、このPSMA PET/CTは胸腹部CTや骨シンチより早く検出できるかもしれません。一部の転移部位のみの再発であれば、そして小さければ、そこに放射線をあてることも、部位によれば、手術することも可能となります。このように、前立腺がん細胞がPSMAを発現することを利用して、それをPSMA PET/CTで見つけるというのは、合理的な考えです。<PSMA PET/CTと177Lu-PSMA治療の有効性と限界>オーストラリアからの報告対象は、去勢抵抗性前立腺がんの患者さん 50人 です。すべて、転移性去勢抵抗性前立腺がんであり、様々な全身治療を受けた後です。治療は6週ごとに実施し、治療前後でPSAへの効果、副作用、画像、進行状況、生存期間を評価しています。177Lu-PSMA治療は6週間隔で4回までを基準としています。<PSAの低下>PSMA治療前後でのPSAの変化率です。(論文からお借りしました)治療前のPSAからの治療後の変化をみた図です。下にいくほど、PSAが低下したことを表しています。大部分の患者さんでPSAは低下しています。PSAが治療前に比べて、50%以上低下したのが(青の部分)、64%80%以上低下したのが、44%98%以上低下したのが16%(8人)でした。素晴らしい効果です。<画像上の改善>最後のPSMA治療から3ヶ月後の評価では、骨シンチでの完全緩解率 32% 進行24%Tでの奏効率 56% 進行33%PSMA PET/CTでの奏効率 42% 進行28%進行した場合によくみられるのは、新規骨転移(56%)、肝転移の増悪(19%)でした。次に示す画像は、画像上98%以上低下した8人のPSMA PET/CTの結果です。(論文からお借りしました)赤の部分が転移部位です。上4つ、下4つある合計8つある各区画はそれぞれの8人の患者さんのPSMA PET/CTを示しています。各8つの区画の中の、左が治療前、右隣はPSMA治療後の画像です。赤で示されたほとんどの転移部位が消失しています。様々な治療後に増悪した進行前立腺がんの患者さんですから、この8人では素晴らしい効果がみられたと考えられます。副作用で目立ったのは、ドライマウス(口腔乾燥)、リンパ球減少、血小板減少、疲労感、嘔気などでしたが、深刻なものはほとんどなかったようです。画期的な治療のようにみえます。実際の予後(生存期間)はどうでしょうか? 生存率のグラフをお示しします。(論文からお借りしました)全体の生存曲線です。横軸が、PSMA治療後の月数です。亡くなる方が増えるにつれて、グラフが下に落ちてきます。最後の治療としてのPSMA治療ですので、厳しい結果は予想されていました。解析時に、50人中43人が亡くなられています。生存期間の中央値は、13.3ヶ月でした。PSMA治療後に、PSAが50%以上低下した患者さんでは、生存期間の中央値18.4ヶ月、50%未満の患者さんでは、8.7ヶ月でした。PSAの低下が50%以上だと、生存期間が延び、逆にPSAの低下が50%未満だと、生存期間が短くなります。最終的には、ほとんどの患者さんで、PSMA治療後にPSA再燃しました。50人の患者さんは、様々な治療後の進行前立腺がん、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんで、新たな治療が残されていない患者さんがほとんどだと思います。そのような患者さんでも、このPSMA治療は、十分効果が期待できることがわかります。PSMA治療後に、PSAが98%以上低下した8人のPSMA PET/CTの結果・画像(上に示した)は、衝撃的といってもいいでしょう。ただし、PSMA治療の限界も、この論文で示されています。ほとんどの患者さんで、PSAは再上昇し、解析時に、50人中43人が亡くなられています。生存期間の中央値は、13.3ヶ月でした。様々な治療を行った後での進行前立腺がんでのPSMA治療ですので、効果が限定的なのかもしれません。すべての患者さんで、この8人のように、劇的効果が出て、予後(生存期間)も素晴らしく良くなれば、最高の治療ということになります。<177Lu-PSMA治療の効果が悪い機序は?>カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMasatoshi Hotta博士の報告です。転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さん301人に対し、177Lu-PSMA治療を行っています。PSMAと結合する物質に放射線同位元素をラベルして(くっつけて)放射線で、前立腺がん細胞をやっつけようという機序です。301人中272人は、PSMA PET/CTで、転移部位が確認できました。一方、301人中29人で、PSMA PET/CTで十分検出できなかったとのことです。29人中8人では、PSMAが発現していない転移29人中21人では、PSMAの発現が低い転移との結果でした。前立腺がんは均質な疾患ではありません。このPSMA発現が低く、PSMA PET/CTで写りが悪かった患者さん29人では、PSMA発現がはっきりしている272人に比べて、177Lu-PSMA治療後の治療効果が悪かったと報告しています。177Lu-PSMA治療は、PSMAを発現している前立腺がん細胞を標的にしていますから、PSMAが発現していないもしくは発現が弱い前立腺がん細胞への効き目は悪いことは容易に想像できます。PSMA PET/CTですべての転移部位や再発部位がわかるわけではないことは、知っておく必要があります。どうも、転移性去勢抵抗性前立腺がんにおいて、約10%前後は、PSMA PET/CTで、陽性にならない可能性があります。転移性去勢抵抗性前立腺がんで転移部位に関して、以下の3つの可能性があります。i)転移部位がPSMA陽性ii)転移部位がPSMA陰性もしくは発現が低いiii)転移部位がPSMA陽性とPSMA陰性/発現が低い部位が混在西郷輝彦さんの場合、『iii)転移部位がPSMA陽性とPSMA陰性/発現が低いが混在』していたのではないかと推測できます。そのため、PSMA治療で、PSMA陽性の部分は消失し、PSMA陰性もしくは発現が低い部分は、進行増大した可能性があります。実際のところはわかりません。あくまで推測です。珍しいようですが、177Lu/225Ac-PSMA治療後に、前立腺がんがPSMA陰性化することもあるようです。もし、PSMA陰性化すれば、当然PSMA治療の効果は期待できません。多くの前立腺がん細胞が、PSMAを発現していることはわかっています。論理的には、PSMAをもっている前立腺がん組織は、177Lu-PSMA治療で、効果が期待できるはずです。しかし、実際は簡単ではありません。夢のような治療に思えた177Lu-PSMA治療にも、限界がある事がわかってきました。 <PSMA抵抗性の新たな機序?>177Lu-PSMA治療の限界として、最近考えられているのは、PSMAを発現している前立腺がん細胞にくっつくPSMA-617が、前立腺がん細胞からどうもすぐ離れてしまうからではないかということです。せっかく放射線同位元素をラベルした、PSMA-617が、放射線でがん細胞を攻撃しようと思っても、放射能を持ったPSMA-617が、前立腺がん細胞からすぐ離れてしまえば、治療効果は、落ちてしまいます。PSMAを発現している前立腺がん細胞に、PSMA-617より、しっかりPSMAに強固にくっつく物質の開発が、今進んでいます・期待される薬剤の臨床試験が、米国を中心に行われています。今月のまぐまぐの配信では、今、臨床試験中のPSMA診断・治療の新たな手掛かり、展開、治療効果の一端について紹介する予定です。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年12月17日
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◆◆ 去勢抵抗性前立腺がんに対する前立腺全摘術 ◆◆ 前立腺がんが、前立腺に限局していれば、根治療法として、放射線療法や前立腺全摘術が考慮されます。 進行前立腺がんでは、手術する適応はあるのでしょうか? ふつう、転移性前立腺がんであれば、前立腺全摘術の選択肢はなくなります。 全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)のガイドライン(上の図)最新版では、転移性前立腺がんの推奨度1番の治療として、 去勢術+アーリーダ去勢術+ザイティガ去勢術+イクスタンジもしくは、去勢術+タキソテールの化学療法+ザイティガ去勢術+タキソテールの化学療法+ニュベクオが記載されています。また、転移の量が少なければ、という条件で、去勢術+前立腺への放射線療法が、選択肢としてあがってきます。 転移の量が少なければ、『放射線療法』という選択肢はありますが、『前立腺全摘術』という選択肢は、あがっていません。 つまり、転移性前立腺がんの診断の時点で、前立腺全摘術という選択肢はなくなります。 放射線療法はOKで、前立腺全摘術がだめなのは、身体への侵襲性や手術の合併症が危惧されるからだと思います。前立腺がんの周囲への浸潤癒着、治療後であれば、去勢術によるがん細胞のの死滅による周囲への癒着が予想され、手術の難しさが心配されます。 周囲への癒着などがあれば、出血や直腸などの損傷もリスクが上がります。術後の合併症(尿失禁や、排尿障害など)も心配です。 というわけで、放射線療法はともかく、前立腺全摘術は、お勧めではないということになります。 一方で、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術が全国各地で行われるようになりました。より丁寧で、より安全な手術が行えるようになりました。 今まで、考えられていた、前立腺全摘術の侵襲性や合併症のリスクが和らげば、今後、前立腺全摘術の位置づけが変わる可能性があります。 泌尿器科で扱うがんの1つである、『腎臓がん』では、遠隔転移を有していても、原発巣(腎臓)を摘除すること(Cytoreductive Radical Nephrectomy)は、普通に行われています。原発巣(腎臓)を摘除で、予後(生存期間)が延長するといわれています。 しかし、前立腺がんでは、遠隔転移がある場合、前立腺全摘術はお勧めの治療になっていません。手術する部位が違いますし、手術のリスクや術後の合併症も心配されます。 前立腺全摘術の安全性が向上することにより、進行前立腺がんに対して、行われていなかった、前立腺全摘術に再度光が当たり始めています。 転移性前立腺がんの患者を対象とした、前立腺全摘術の臨床試験が昨今行われていて、結果が待たれます。 前述のように、転移性去勢感受性前立腺がんで、転移の量が少なければ、放射線療法は推奨治療になっているけれど、前立腺全摘術は、お勧めの治療になっていません。 ましてや、去勢抵抗性前立腺がんの治療に、前立腺全摘術は、だれも考えないし、行わない治療です。というより行ってはいけない治療と考えられてきました。 前立腺がんが診断された時点ではなく、去勢術治療後に進行した去勢抵抗性前立腺がんに対する前立腺全摘術は、聞いたことがない治療選択肢です。 去勢抵抗性前立腺がんの場合、前立腺摘除術は、普通治療の選択肢にありません。前立腺以外に遠隔転移がある場合はなおさらです。何をいまさら、前立腺全摘術?というわけです。 よくこのブログでも触れている『個別化医療』『プレシジョンメディシン』は、最近の前立腺がん治療の新しい考え方です。 今までは、100人の転移性前立腺がんの患者さんに、ある治療を行い、予後(生存期間)や再発率を検討して、40人に効果がある治療ではなく、70人に効果がでる平均点の高い治療を選択していました。 問題は、転移性前立腺がんといっても、前立腺がんや個人の状態は様々で一様ではありません。 平均点の高い治療を行うというより、患者さん一人ひとりに適した治療を選びたいという考え方が出てきました。 プレシジョンメディシン、個別化医療とよんでいます。 例えば、BRCA遺伝子変異陽性、MSI high、神経内分泌がんであれば、一般的な治療は、効果が期待できません。その病態に合わせた、特殊な治療が必要となります。 進行前立腺がん、転移性前立腺がんでみつかっても、長期間一般的な治療で、進行が止まっている患者さんがいます。また、転移性前立腺がんでも、去勢術やその他の治療で、画像診断(CTや骨シンチ)で、転移が消失する(見えなくなる)場合があります。そのような患者さんでは、前立腺全摘術は、効果はないのでしょうか。 転移性前立腺がんでみつかっても、前立腺がんは様々。治療の効果そしてその効果の持続期間も治療してみなければわかりません。 また、去勢術の効果が切れた、去勢抵抗性前立腺がんになっても、現在では、ザイティガやイクスタンジで、かなり効果が長続きする患者さんも多くいます。 そのような患者さんの中に、たとえ去勢抵抗性前立腺がんだとしても、前立腺全摘術の効果が期待できる患者さんのグループがあるかもしれません。 去勢抵抗性前立腺がんに対する、前立腺全摘術が、一定の条件下で、研究として行われているようです。 どのような患者さんで、前立腺全摘術の効果がでるのか、大変興味のあるところです。 詳しくは、電子配信で、紹介しています。興味がある方は、是非、目を通していただければと思います。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年12月03日
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◆◆ PSMA治療+免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)は、効果がありそう!? ◆◆ 前回、去勢抵抗性前立腺がんに対する『エンザルタミド(イクスタンジ)+ペムブロリズマブ(キイトルーダ)』の臨床試験について、紹介しました。残念ながら、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんに対して、ペムブロリズマブには、エンザルタミド治療への、明らかな上乗せ効果は認められませんでした。ただし、少数の患者さんでは、効果が認められました。どのような患者さんで、この『エンザルタミド+ペムブロリズマブ』の効果が期待できるかは、よくわかっていません。転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬は、やはり効かないのでしょうか?限定的なのでしょうか? <PSMA治療+ペムブロリズマブ>今日紹介するのは、今年2023年のLancet Oncolという雑誌に発表された臨床試験の結果です(Lancet Oncol 2023; 24: 1266–76)。 表題は『Single-dose 177Lu-PSMA-617 followed by maintenance pembrolizumab in patients with metastatic castration-resistant prostate cancer: an open-label, dose-expansion, phase 1 trial (thelancet.com)』です。訳すと『1回の177Lu-PSMA治療と引き続いてのペムブロリズマブの維持療法:フェーズI スタディ』詳しくは、https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lanonc/PIIS1470-2045(23)00451-5.pdfをみてください。 概要は、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者に対する177Lu-PSMA治療1回+引き続きの定期的ペムブロリズマブ投与の安全性とその効果をみる臨床試験です。この治療を受ける患者さんは、PSMA PET/CTで、前立腺がんの腫瘍部分が、PSMA陽性である必要があります。 ※177Lu-PSMA治療:PSMA (prostate specific membrane antigen;前立腺特異的膜抗原)というタンパク質を標的とした治療。 PSMAは、良性の前立腺組織に比べて、前立腺がん細胞において発現が著しく上昇することが知られています。 前立腺がんにおけるPSMA発現の亢進、発現量と悪性度の相関が報告されており、前立腺がんの診断や治療の標的分子として注目されています。 体内でのPSMAの存在がわかれば、どこに前立腺がん細胞が存在するかが、早期にわかることになります。 つまり、PSMAは、画像診断において、有用と考えられています。PSMA PET/CTという画像診断で、いままでの一般的な画像診断でわからなった、がん、転移の存在が早期にわかるといわれています。 もちろん前立腺がん細胞がこのPSMAを発現していることが大前提です。PSMAの発現陽性をみるために、PSMA PET/CTで確認する必要があります。最初の報告は2012年でドイツからでした。ドイツのハイデルベルグ大学病院でPSMA-617が、開発されました。このPSMA-617は体内に入ると、PSMAを発現している前立腺がん細胞に特異的にくっつきます。PSMA-617を68Gaでラベリングし(くっつける)、PSMA PET/CTにより前立腺がんの存在部位がわかるというわけです。また、診断のみならず、177Lu、225Ac等の放射能を持つ放射性同位元素で、PSMA-617をラベリングすることができます。前立腺がんおよび転移性前立腺がん細胞への放射線同位元素による放射線療法により、治療効果が飛躍的に向上するといわれています。このPSMA-617(昨今はPSMA-11)をもちいての実際の臨床での使用が、世界中ですでに始まっています。『西郷輝彦さんがオーストラリアで受けた治療』といえば、知っている方も多いでしょう。ただ、世界中ですでに診療で利用できるにもかかわらず、日本では、放射線同位元素の取扱いの問題で診断治療は行われていません。一見理想的な画期的な治療に思えるPSMA治療です。ただし、付け加えると、すべての前立腺がんで、このPSMA陽性ではないこともわかってきています。 <PSMA治療+ペムブロリズマブ臨床試験の結果> 今回紹介する臨床試験は、PSMA陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者に対して、PSMA治療+ペムブロリズマブの定期投与を行い、安全性と効果をみたものです。この治療により、25人中14人に、明らかな客観的な抗腫瘍効果が認められました。副作用としては、1人が誤嚥性肺炎で亡くなられています、フェーズIIの試験ですから、まだ少数の患者でしか、検討はなされていません。この結果を踏まえて、大規模な臨床試験フェーズIIIが行われると思います。前回紹介したように、『エンザルタミド(イクスタンジ)+ペムブロリズマブ(キイトルーダ)』では、明らかな上乗せ効果がでず、去勢抵抗性前立腺がんに対するペムブロリズマブの効果は、証明されませんでした。今回のこの報告では、この1回のPSMA治療と引き続いての免疫チェックポイント阻害薬、ペムブロリズマブの定期投与は、効果が期待できるかもしれません。 この研究・報告は、PSMA陽性の患者が治療の対象です。PSMA陽性での転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者では、免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できるかもしれません。 PSMA治療自体は、日本ではまだ、臨床試験段階で、保険収載されておらず、使えない治療です。当初、夢のような治療ではないかと、期待されたPSMA治療にも限界があることがわかっています。免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせで、新しい展開がみられるかもしれません。今後は、大多数の患者での解析が必要です。期待しましょう。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年11月10日
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◆◆ 転移性去勢抵抗性前立腺がんと免疫チェックポイント阻害薬 ◆◆転移性去勢抵抗性前立腺がん:去勢術の効果がなくなった、遠隔転移がある前立腺がん新規抗アンドロゲン剤(商品名イクスタンジ、ザイティガ、アーリーダなど)の効果が無くなって、進行している転移性去勢抵抗性前立腺がんにおいては、次の治療を早急に考え、変更しなければなりません。そのような患者さんでは、一般的には、抗がん剤治療(タキソテールやジェブタナ)が選択される状況です。 進行前立腺がんでは、免疫療法は、効果が期待できないのでしょうか?今年の10月に欧州臨床腫瘍学会が、スペインのマドリードで開催されました。転移性去勢抵抗性前立腺がん、約1,200人の免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)の臨床試験の結果が報告されたので、簡単に紹介します。 特殊な前立腺がん、遺伝子検査にてMSI-Highの遺伝子異常がある場合は、免疫チェックポイント阻害薬、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が、効果があることがわかっています。この免疫チェックポイント阻害薬は、様々ながんで効果が期待できる薬剤です。泌尿器科分野でも、腎癌、尿路上皮癌でも強い効果が認められ、一般の診療で普通に用いられています。2015年末にニボルマブ(オプジーボ)が、わが国ではじめて承認され,その後、2016年にペムブロリズマブ、2017年にアテゾリズマブ、デュルバルマブが承認されました。免疫チェックポイント阻害薬は,がん細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬剤です。簡単に言うと、がん細胞には、免疫系の細胞からの攻撃を抑制する仕組みがあります。この仕組みを解除して、免疫を活性化して、がん細胞の増殖を抑制するという機序です。患者さんは、なんとか自分の免疫力を高めて、がん細胞を撃退したい、免疫療法と聞くと、是非試してみたいといわれる方が多いです。巷には、免疫力を高めると称して、様々な健康食品が宣伝されています。また、たくさんのクリニックで、がん細胞に対する白血球や抗体を増やして、身体に入れる方法などを自由診療で行っています。残念ながら、前立腺がんに関して、有効な免疫療法は、ほとんどありません。きちんとした副作用や効果の評価がなされていないのです。米国で認可されている“Sipuleucel-T”という治療があります。唯一、前立腺がんに対して認められた免疫療法です。転移性去勢抵抗性前立腺がんに対して、たしか、延命効果が約4ヶ月前後だったと思います。高額な医療費がかかります。日本では、認可されていません。高額な医療費に対して、効果が少ないという判断でしょう。前立腺がんは、免疫療法の効果がみられないがんなのかもしれません。しかし、前述のように、MSI-Highの遺伝子異常がある前立腺がんでは、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)が、強い効果を示したという報告が、いくつかなされています。前立腺がんのなかには、免疫療法で効果が出るグループがあるかもしれません。転移性去勢抵抗性前立腺がんで、新規抗アンドロゲン剤を行ったのちに病状が悪化した場合、次は抗がん剤治療となります。<転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験>今年の10月に欧州臨床腫瘍学会が、スペインのマドリードで開催されました。 その中で、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの効果をみた臨床試験の結果が報告されました。対象は、転移性去勢抵抗性前立腺がんの診断を受けた1,244人の患者です。登録は2019年8月から2022年6月までの期間です。抗がん剤治療を受けていないもしくは去勢感受性のときにタキソテールの化学療法(抗がん剤治療)を受けた患者さんが対象です。この治療の前にザイティガを受けている患者や受けていない患者も含まれています。用いた免疫チェックポイント阻害薬は、ペムブロリズマブ(キイトルーダ)です。実際は、ペムブロリズマブ+エンザルタミド 621人偽薬+エンザルタミド 623人同じような患者背景になるように、2つのグループに分けて、再発までの期間全生存率を解析しています。1,200人以上の転移性去勢抵抗性前立腺がんを集めた臨床試験です。日本では、考えられない患者数です。エンザルタミドは、去勢抵抗性前立腺がんに効果が認められている薬剤です。エンザルタミドにペムブロリズマブの注射を加えることによる、上乗せ効果をみています。ペムブロリズマブは3週毎に静脈注射を行い、最高35サイクルまで行います。偽薬グループは、同じように3週毎に偽薬の静脈注射を行います。<結果>表やグラフは、省略しますが、2つのグループで再発までの期間と全生存期間にまったく差が認められませんでした。画像上の進行がみとめられるまでの期間は、ペムブロリズマブ+エンザルタミド 10.4ヶ月偽薬+エンザルタミド 9.0ヶ月全生存期間の中央値は、ペムブロリズマブ+エンザルタミド 24.7ヶ月偽薬+エンザルタミド 27.3ヶ月でした。はっきりしたペムブロリズマブの上乗せ効果は認められませんでした。ペムブロリズマブ+エンザルタミドのグループでより多くの強い副作用を認めました。ただし、(ペムブロリズマブ+エンザルタミド)のグループの、7.4%で、治療後、完全に画像上がんが消失した患者さんがいました。(偽薬+エンザルタミド)のグループでは2.7%でしか、がんが消失した患者さんはいませんでした。逆にいうと、7.4%の患者さんでは、ペムブロリズマブ+エンザルタミドの治療で効果があったということになります。完全に治ったというわけではなさそうですが、一時的に、対象病変が、画像上で消失したということだと思います。問題は、どのような患者さんで、この治療が奏功するのかが、今後の研究の課題という結論でした。1,200人を超える転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんの研究です。生存期間までみていますから、貴重で、重たい解析です。再発までの期間、全生存率で、あきらかな差が出なかったのは、非常に残念な結果です。しかし、免疫チェックポイント阻害薬が、全体的にあまり期待できないことまた、ごく一部の患者さんで効果がありうることもわかりました。効果があった患者さんの解析が進めば、いわゆるプレシジョンメディシンにつながる可能性もありますね。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年11月06日
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◆◆ 本邦の『前立腺癌診療ガイドライン2023年度』が7年ぶりに改訂 ◆◆ 9月に改訂されたNCCNのガイドラインを、先月からまぐまぐ配信で紹介しています。 実は、日本でも今年の9月に『前立腺癌診療ガイドライン 2023年度』が7年ぶりに改訂されました。 アルゴリズム、順々に道筋を立てて『矢印→』を使用して解説しているNCCNのガイドラインとは、少し趣きが違います。 NCCNガイドラインは今年だけで、すでに4回目の改定がなされています。本邦の前立腺癌診療ガイドライン2023年版は7年ぶりの改訂です。ただ、『前立腺癌診療ガイドライン2023年版』は、製本されるガイドラインです。 NCCNガイドラインは、ネット上でどんどん改訂されるわけですから、日本のガイドラインとは、趣が違います。 どちらも信頼できるエビデンス、確かな臨床試験を基に、治療指針の、エビデンスの信頼度を示しています。 日本のガイドライン2023年版は、現時点での日本人の前立腺がん治療の、最新の情報・指針と言えるでしょう。 7年ぶりの改訂というのは、すこし間があいたという印象もありますが・・・・ 日進月歩の医学の進歩を、随時取り入れている、最新のアップデイトという意味では、NCCNガイドラインは大変参考になります。今年だけでも、4回の改訂がなされています。 ともあれ、どちらも、泌尿器科医は、一度は目を通すべきものといえるでしょう。 『前立腺癌診療ガイドライン 2023年度』は、書籍として患者さんでも購入できます。https://publish.m-review.co.jp/book/detail/978-4-7792-2379-2 興味がある方は、一度手にしてみてはいかがでしょう。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年10月16日
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◆◆ 今月9/7に、NCCNガイドライン最新バージョンが発表されました。◆◆ National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は、診療、研究、そして教育に専念する、 32の米国の主要ながんセンターによる非営利団体 です。年に 1 回以上改訂を行い、世界的に広く利用されているがん診療ガイドラインです。9月の改定は、今年になってすでに4回目となります。 このガイドラインは、信用できる臨床試験をもとに作成されています。泌尿器科医、腫瘍内科医は、このNCCNガイドラインを参考にして治療を行います。次々に発表される臨床試験の結果をもとに、頻回に改訂がなされています。最新の信頼できる知見から、最新の標準治療を改訂しながら示しています。 現時点で、もっとも信用できる治療を、『category 1』と表して、推奨しています。 NCCNガイドラインとは別に、European Association of Urology(EAU)のガイドライン、日本泌尿器科学会前立腺がん診療ガイドラインもあります。NCCNガイドラインは、ネットで随時、発表されますが、世界で最も権威あるガイドラインといっていいでしょう。また、前述のように、頻回の改定を行って、最新の知見を取り入れています。電子配信では、『前立腺がんに対する全身治療』について、NCCNガイドラインの推奨治療を解説しています。興味のある方は、前立腺がん治療の最前線の電子配信をみていただければと思います。初回月は無料となっていますので、お試しで結構です。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年09月24日
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◆◆ 米国でイクスタンジの適応拡大 ◆◆8/24に発表されました。アステラス製薬のホームページから引用させていただくと『イクスタンジについて、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から生化学的再発(Biochemical Recurrence:BCR)のリスクが高い非転移性去勢感受性前立腺がん(Castration-Sensitive Prostate Cancer:CSPC、または非転移性ホルモン感受性前立腺がん(Hormone-Sensitive Prostate Cancer:HSPC)としても知られる)の適応追加に関する承認申請(supplemental New Drug Application:sNDA)を受理した旨の通知を受領しました。本申請は優先審査の指定を受け、FDAによる審査終了目標日(PDUFA date)は2023年第4四半期(10~12月)と定められました。』第III相EMBARK試験の結果に基づいています。この申請は、優先審査の指定を受けていますので、早急に、米国で受理される可能性が高いと思います。第III相EMBARK試験で、再発のリスクが高いけれど、転移がない去勢感受性前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がんになる前)の患者さんでのイクスタンジの使用が、病勢進行や死亡のリスクを50%以上軽減することがわかりました。この臨床試験の結果から、アステラス製薬が、適応追加の申請を行ったというわけです。おそらく米国での申請により、今年の年末にも、米国で認可される可能性が高いでしょう。日本でも、申請され、2024年中にも、認可される可能性が高いと思います。イクスタンジの日本での使用の縛り(適応又は効果)は去勢抵抗性前立腺癌遠隔転移を有する前立腺癌です。この申請が日本でも通れば、転移がない、去勢感受性前立腺がんの患者さんにも使えるようになります。去勢抵抗性前立腺がんになる前からイクスタンジを使うことで、病勢進行や死亡のリスクを50%以上軽減できるのであれば、患者さんにとっては朗報ですね。正確には、対象は『生化学的再発(Biochemical Recurrence:BCR)のリスクが高い非転移性去勢感受性前立腺がん』です。認可されれば、明らかな転移がないにもかかわらず、そして、去勢抵抗性前立腺がんにもなっていない状態で、最初からイクスタンジが使えるということになります。そのことにより、結果的に病状進行や、予後(生存期間)を改善できれば患者さんには朗報です。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年08月29日
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◆◆ PSAとは何か ◆◆ PSAは、このブログを読んでくださっている方にはおなじみの検査だと思います。前立腺がんの診断となれば、定期的な診察の時に、必ずといっていいほどPSAの検査があります。PSA検査の値に、患者さんも医師も、一喜一憂してしまいます。 ところで、このブログはたくさんの方に読んでいただいています。記事の更新を怠っているにもかかわらず、毎日500~800ぐらいのアクセスが、この前立腺がんに特化したブログにあります。 本当にありがとうございます。このブログのあまたの記事の中で、毎日読まれている記事のランキングは、私Uromasterは、楽天ブログの管理画面で知ることができます。 読まれている記事の断トツの1位は、2019年11月10日『PSAが1000以上で見つかった前立腺がんの解析』のブログ記事です。 この記事は、ほぼ毎日、このブログの記事の中で、一番読まれている記事です。 読者の方が、PSAの値が1000以上で見つかった前立腺がんだったからでしょうか? それとも怖いもの見たさで、この4年前の記事を読んでくれているのでしょうか? とにかく、このブログのなかで、毎日、たくさんの方に、この記事を読んでいただいています。 PSAの検査は、今では、前立腺がん診療にはなくてはならないものです。 このブログの記事を読んでいただいているのは、ご自分が前立腺がんであるか、もしくはそのご家族だと思います。 今日は、PSAの話です。 皆さんの前立腺がんの診断のきっかけは、ドックやたまたまの採血検査で、PSAが高かったことではないでしょうか。PSAが異常値だったために、前立腺の生検を行い、前立腺がんの診断に至ったのではありませんか? それとも転移性前立腺がんで、骨転移などの痛みなどの症状から見つかった、前立腺がんの診断でしたか? 私Uromasterが泌尿器科医になった頃は、PSA検査はありませんでした。PSA検査の有用性が認められ、PSA検査により、早期に前立腺がんが見つかるようになりました。 それ以前は、前立腺がんの早期診断ができず、ほとんどの患者さんは、進行前立腺がん、転移性前立腺がんで見つかるのが常でした。 PSA検査が普及して、世界中でその有用性が認められ、ドッグや健診でのPSA検査、地域のPSA検診が広まり、早期発見ができるようになりました。米国の前立腺がん死亡の減少の主な原因は、PSA検査の普及によるものといわれています。 ただ、日本では、このPSA検査の暴露率(検査を受ける人の割合)が依然として低く、また、PSA検査の認識が低いことから、いまだに、PSA異常高値の進行前立腺がん、転移性前立腺がんでみつかる患者さんも少なくありません。近年になっても、地域にもよりますが、暴露率は、10~20%ぐらいだと思います。 前立腺がんは、早期では症状が出にくいことが、早期発見を難しくする一因だと思います。どちらかというと、転移性前立腺がんの状態で、転移部位からの痛みなどで見つかる場合が多く、その時は、PSAは異常高値になっていて、手術や放射線療法などの根治治療はできない状態です。 排尿に関する症状がない状態で、前立腺がんを疑うことは、難しい状況です。 高齢になると、前立腺肥大症はよく見受けられる疾患です。前立腺肥大症は、排尿障害(尿勢が悪く、残尿感や切れが悪いなど)や頻尿(尿の回数が多い)で見つかる場合があります。前立腺がんでは、排尿障害や頻尿などは早期ではあまり、症状として出てきません。ただ、前立腺肥大症と前立腺がんは、併存することはよくあります。前立腺肥大症で検査治療中であれば、専門医でPSAを検査することは、最近は多くなって、前立腺がんの早期発見に役立ちます。 このPSAの値というのは、0~4.0は正常とされています。4.1~10はグレーゾーンといわれています。グレーゾーンであったとしても、必ずしも前立腺がんではありません。前立腺肥大症でも10前後になることはよくあります。 ただし、この4.1~10前後で見つかる、前立腺がんは、早期がんのことが多く、この時期に前立腺がんを見つけることは重要です。根治治療が可能だからです。 PSAが100以上であれば、早期がんである可能性はまずありません。皆さんの診断時のPSAの値はどれぐらいでしたか? 前立腺がんは、実は高齢の男性にとっては、ありきたりの病気です。 他の病気で亡くなった方の前立腺を調べると、60歳以上の男性の約半数以上で、前立腺がんが、見つかるといいます。 問題は、悪性度の高い、生き死に関わる前立腺がんをいかに見つけて、治療するかということです。 PSA検査は、前立腺がんの早期発見に有用ですが、実は、放っていてもいいような、がんもどきの前立腺がんを見つけることも多いため、欧米では、PSA検査、検診の見直しがなされています。 具体的には、PSAが高いと、前立腺生検という比較的侵襲の強い検査を強いられることが問題となっています。 PSA検査で異常が出ると、前立腺がんではないかと不安をもたらします。 PSA検査が異常だからといって、必ずしも前立腺がんではないこと、たとえ前立腺がんでも、経過をみていい場合がよくある事も、PSA検査・健診の見直しの一因となっています。 PSA検査が普及していた米国では、最近PSA検査の見直しがされて、検査の暴露率が下がっています。 すると、米国では、転移性前立腺がんの患者さんが増加しているとの報告が最近でてきています。 前立腺がん早期発見するためには、PSA検査は重要です。 例えば、PSA検査で、100以上であれば、ほぼ進行前立腺がん、転移性前立腺がんであることがほとんどです。 私Uromasterが勤務していた地域での、PSA検査の暴露率は約10%ぐらいでした。PSA検診や検査を受けたことがないため、進行前立腺がんで見つかる患者さんが多くいました。 PSA高値で、受診される患者さんがあまりに多かったので、以前、PSA100以上でみつかった前立腺がん患者さんの解析、PSA1000以上で見つかった前立腺がんの解析報告を行ったことがあります。 一部をこのブログで紹介し、前述のように、皆さんに、よく読んでいただいています。 現時点では、PSA100以上で前立腺がんが見つかった場合、根治治療は、はっきり言って困難です。転移性前立腺がんであれば、早期の内分泌療法(去勢術)、新規抗アンドロゲン剤、抗がん剤治療が必要となります。 初期治療の効果が長く続けばいいのですが、初期治療の効果がなくなった場合、いわゆる去勢抵抗性前立腺がんの状態となれば、厳しい状況といわざるをえません。 PSA検査には、診断発見に有用である以外に、別の有用性があります。 進行前立腺がんで上昇したPSAの値は、治療がうまく行けば、顕著に低下します。 PSA推移は、前立腺がんの治療の効果判定にも、有用です。 というわけで、泌尿器科外来では、PSA検査は、前立腺がん患者さんにとって、ほぼお決まりの検査というのが、現状です。 PSA検査は、前立腺がんの診断に有用であることに加え、前立腺がんの治療効果判定に役立つことは、皆さんのよく知ることだと思います。 この数mlの血液検査でわかるPSAは、有用な反面、まだまだ利用価値があるかもしれません。 PSA検査に関しては、特に患者さんにとっては、多くの疑問がつきまといます。 〇PSAとは一体何か?〇また、PSA検査とはどういうものか?〇前立腺がんで、PSAが高いということは、悪性度が高いということか?〇PSAが低い状態で、前立腺がんが見つかれば、すべて、早期がんか?〇治療後にPSAが低下しなければ、治療効果がないということか?〇治療後にPSAが低下しなければ、予後(生存期間)は悪いのか?〇治療後にPSAが低下するとして、どれくらいPSAが下がればいいのか?〇治療後にPSAが低下するとして、どれくらいの期間低下した状態が続けば、今後の治療に、予後にいい影響があるのか? 最近、治療後のPSAの値の動きが、予後(生存期間)を予測できるのではないかという研究が多く出ています。 『前立腺がん治療の基礎の基礎』ということで、まぐまぐの電子配信では、しばらく、PSAにまつわる話題を最新の研究結果をまじえて、解説したいと思います。 また、このブログで多くの方に読んでいただいている記事のPSA100以上、PSA1000以上で見つかった前立腺がんの解析内容も含めて、少し解説したいと思います。 PSAの話、興味がある方は、まぐまぐの配信をのぞいてみてください。 今日6/25のまぐまぐの配信から、PSAの解説を始めました。始めの月は、無料と思います。お試しでいいので、是非仲間になってください。 今日のまぐまぐの内容は、まずは基本の基本です。 以下の項目で、くわしく解説しています。 皆様の前立腺がん診療の手助けになればと祈念します。 今日6/25の配信の内容は、 <PSAとは何か?> <前立腺がん以外でPSAが異常値となる(上昇する)場合> <PSAの値を下げる薬剤> <PSAの値と前立腺がんの発見率> <PSAとTNM分類 > <PSAとN分類> <PSAとABCD分類> <PSA以外の前立腺がんマーカー> <前立腺がんの診断がついている場合のPSA検査> <PSA検査は万能ではない!> 来月のまぐまぐ配信では、治療後のPSAの動きと予後(生存期間)との相関を、解説する予定です。 まぐまぐの配信参加の方には、無料での治療相談にも応じています。お気軽に、私Uromasterを利用してください。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年06月25日
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◆◆ 食生活改善で、前立腺がんの再発進行を遅らせることができるか!? ◆◆ 前立腺がんで治療中の患者さんは、様々な治療を受けていると思います。 進行前立腺がんや転移性前立腺がんでは、治療は簡単ではありません。 転移性去勢抵抗性前立腺がんの予後(生存期間)は、残念ながら、非常に厳しい状況です。 最近の臨床試験の研究での解析結果では、去勢抵抗性前立腺がんとなってからの予後は、中央値、約3年といわれています。 一般の病院における実際の治療では、実はもっと予後は短く、2年以内といわれています。 この臨床試験と実際の治療における予後の違いは、去勢抵抗性前立腺がんになってからの治療が、前者では2から3種類の治療を受けている一方、後者では、1種類の治療しか受けていない現実があります。 この解析は、世界の解析結果です。日本では、もう少し、治療選択そして、新たな選択ができて、より予後はいいのかもしれません。 しかし、どちらにしても、転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療は厳しいといわざるをえません。 患者さんとしては、ただ病院に行って、いわれるがままの治療だけで本当にいいのか、毎日言われるがままの薬を飲んでいるだけでいいのか疑問に思うのは、ごく当たり前の反応と思います。 患者さんには、病院での治療以外に、確実な選択肢はないからです。友人からのつてで、どこかでがんの治療で、ものすごく効果があったと聞けば、そのサプリメントを試したくなります。 怪しげな民間療法を、試してみたくなるのも、理解できます。 自分で、情報を集めて、身体にいいものを、病院の治療以外に取りたいと思うのは、本当に自然なことですね。 このように、薬だけでなく、何かいい方法を取り入れたいと思う患者さんは多いと思います。 また、食生活や生活習慣にも気を付けている方が多いと思います。 世の中にはさまざまな健康食品やサプリメントであふれています。 どんな食生活をすべきか、あまり指標はありませんね。 前立腺がんの治療中に心掛けるべき食生活とはどのようなものでしょうか。 食習慣に関して、実は、はっきりした推奨される方法、証拠は、実はないのです。 動物性たんぱく質は身体にいいのだろうか?加工食品は?野菜は多く摂った方がいいのか? 治療薬以外で何かできることはないのか? 生活習慣はどうだろうか?運動は、いいかもしれない。思い悩むより、お気楽な性格の方が、予後はいいのかも 前立腺がんになりやすさという点でも、生活習慣は、どうもある程度関連がありそうです。 例えば、前立腺がんの発症に関して遺伝が関係するかもしれないカルシウムを取りすぎるとよくないかも加工肉、牛乳、乳製品の取りすぎはよくないかもトマトなどに含まれるリコピンは前立腺がんのリスクを下げる?セレン、ビタミンE、豆類摂取は、前立腺がんになりにくい性的活動が活発な人は、前立腺がんになりにくいかもしれない? いろいろなことがいわれていますが、前立腺がんの発症に、生活習慣のなかで、『確実な』リスク因子や防御因子はないようです。 ただし、乳製品、カルシウムの過剰摂取、欧米風の食生活は、どうも前立腺がんの発症を促すようです。 リコピン(トマト製品)の摂取不足、肉のとりすぎや、乳製品の取り過ぎ、カルシウムの取りすぎは、避けたほうがいいかもしれません。これは、あくまで 前立腺がんの発症に焦点を当てたものです。 それでは、前立腺がんになってしまったら、どういう食生活をしたらいいのでしょうか? 実は、よくわかっていません。 前立腺がんになってしまった後に、食生活を改善する意味はあるのでしょうか? 科学的に、よくわかっていません。 食生活が、前立腺がん治療効果、予後に影響を及ぼすかどうかはよくわかっていません。 最近少しずつですが、進行前立腺がんにおいてある種の食生活が、進行再発に、影響を及ぼす可能性が指摘されています。 簡単に言うと、1.プラス評価の健康的な植物性食品:果物、野菜、全粒粉、ナッツ、紅茶、コーヒー、植物油など 2.不健康なマイナス評価の植物性食品:果汁、精製穀物、芋、加糖飲料、菓子やデザート 3.不健康な動物性食品:肉、魚、卵、乳製品、動物性脂肪など 健康的な植物性食品は、ある時期の前立腺がんにおいて、進行再発に、明らかな影響がある事がわかりました。 進行前立腺がんで治療中の患者さんで、自分ができることは限られています。 健康的な植物性食品は、前立腺がん治療にいい影響を与える可能性があることが、 2023年2月16日から18日にかけて、米サンフランシスコでASCO Genitourinary Cancers Symposium(ASCO GU 2023)で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校から研究結果が報告されました。 健康的な植物性食品を多く摂る食習慣が、どうもある時期の前立腺がん(T1-T3a期の2,038人)の進行再発に、明らかに影響を与えることを示しました。 このことが、転移性去勢抵抗性前立腺がんにも当てはまるのであれば、是非取り入れたいものです。 興味がある方は、詳しくは、まぐまぐの電子配信を参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年05月24日
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◆◆ 前立腺神経内分泌がんは、去勢抵抗性前立腺がんでは要注意 ◆◆ 昨年改訂された、前立腺癌取扱い規約で、病理学的事項の全面的な見直しがなされ、『前立腺神経内分泌がん』もはっきり明記されました。 神経内分泌がんは、前立腺に特有ながんというわけではありません。 神経内分泌がんは、膵臓や消化管、肺など全身のさまざまな部位から発生します。 前立腺由来の神経内分泌がんは、最初に診断された時点では、前立腺がんのなかでは、大変稀れで、特殊な前立腺がんと考えられていました。 前立腺神経内分泌がんは前立腺から発生する腫瘍のうち 0.5ー2%の頻度とされ、非常に稀な疾患と報告されています。 しかし、近年、この前立腺神経内分泌がんが注目されています。実は、珍しい病態でないことがわかってきたからです。 確かに、前立腺がんの診断時には、神経内分泌がんである頻度は非常に少ないものです。しかし、治療後にこの神経内分泌がんに置き換わることが稀れではないことが知られるようになりました。 以前ご相談を受けた、進行前立腺がんの患者さんは、オーストラリアまでいかれて、177Lu/225Ac-PSMA治療を受けられました。 実は、後に『神経内分泌がん』であることが判明し、この177Lu/225Ac-PSMA治療は、結果的に、効果が認められませんでした。 前立腺神経内分泌がんが、もし進行が遅く、治療が簡単で、患者さんも長生きできれば、さほど問題にはなりません。 実際は、前立腺神経内分泌がんは、内分泌療法の効果が期待できず、あっという間に進行して、死に至らしめる手ごわい前立腺がんということがわかっています。 リンパ節転移や内臓転移も多いようです。 通常の前立腺がん治療には、抵抗性です。 報告では、神経内分泌がんの患者さんの平均生存期間は9.8ー17.1カ月と予後(生存期間)不良です。 特別な化学療法が、効果がある可能性があります。 急激に進行悪化するため、早急な治療開始をしないと手遅れになる可能性があります。 前立腺神経内分泌がんの診断時に,以下の3つのパターンに分類できます。 すなわち、1.純粋な神経内分泌がん2.神経内分泌がん/腺がんの混合がん3.初診時腺がんで経過観察中に神経内分泌がんに変化した病態 単純に、神経内分泌がんといっても上の3種類があります。ある報告では、それぞれの頻度は、 35.4%・17.7%・46.9%だったと報告されています。前立腺がんの診断は、生検などで、前立腺がんの存在を確認したときです。 最初の生検で神経内分泌がんの診断になる場合は、非常に低い確率です。 最近の研究では、治療前に神経内分泌がんと診断される例は、かなり低く、1%前後といわれています。 しかし、前立腺がんの治療を受け、去勢抵抗性前立腺がん(去勢術の効果がなくなった)の診断となった患者さんの中で、組織を採取してみると、10%以上で、この神経内分泌がんが見つかることがわかりました。 去勢抵抗性前立腺がんでなくなった患者さんの前立腺がん組織を調べると、高率に、この神経内分泌がんがみつかるというのです。神経内分泌がんは、普通の内分泌療法(去勢術)や新規抗アンドロゲン剤そして、前立腺がんで普通に用いられる抗がん剤治療(タキソテールやジェブタナ)の効果があまり期待できません。 去勢抵抗性前立腺がんになった患者さんで、あらたに前立腺や転移部位の組織検査をすることは、ほとんどありませんから、実は神経内分泌がんの頻度や実態は、よくわかっていないというのが現状だと思います。 前回紹介した、前立腺癌取扱い規約の中で、神経内分泌がんははっきり明記されています。 予想以上に、神経内分泌がんが発生していて、進行が速いので、泌尿器科医に喚起したということだと思います。 去勢抵抗性前立腺がんになった時に、神経内分泌がんの可能性を探ることが重要です。繰り返しますが、神経内分泌がんは、治療中に現れることが多いということです。 最初の生検組織が、いわゆる腺癌であっても、治療中に神経内分泌がんに変化する、神経内分泌がんが目立つ組織になることが多いということを知っておかなければなりません。 診断の手始めは、まずは、神経内分泌がんを疑うことです。 以下の特徴があるようです。 内分泌療法(去勢術)の効果がなくなるのが早い。PSAがさほど上昇しないのに病状が悪化している、痛みや排尿症状が強い急速に進行している。 神経内分泌がんを疑う、もしくはその存在を否定したい場合は、まず、血液検査が有用です。血中の NSEやProGRPやCEA の異常値は、神経内分泌がんの診断に有用です。去勢抵抗性前立腺がんになった時点や、治療の変更時には、これらの検査は有用です。必ずしも100%異常値がでるとは言えないようですが、ただ、どれか、異常を認めれば、神経内分泌がんを疑う根拠になります。 進行の早い場合が多いので、早期の診断が重要です。 進行がはやい状況であれば、可能な限り、組織検査を行います。神経内分泌がんとわかれば、治療法をかえなければなりません。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年05月15日
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◆◆ 前立腺癌取扱い規約(第5版) ◆◆ 昨年、12年ぶりに『前立腺癌取扱い規約』が改訂されました。 患者さんというより、泌尿器科医にとっての前立腺がん診療のバイブルといっていいでしょう。 この規約は、日常の泌尿器科医の診療における、前立腺がん患者さんの所見、診断、治療方法、そして、病理学的事項を、 一定の基準の下に記載または判定する目的で作られたものです。 この規約に準ずることで、共通のルールで討議することが可能となります。 同一の基準で集計・統計を行い、前立腺がんの最善の治療法を探求することが可能となります。 バイブルといいましたが、言い換えると、たとえが正しいかはわかりませんが、競技(前立腺がん診断と治療)のルールブックのようなものです。 前立腺がんに対する診断治療で、共通の言葉、基準がないと、前立腺がん発生の状況や治療効果を調べたり、比べることはできません。 例えば、前立腺がんといっても、組織(病理)所見は、様々です。 前立腺生検や全摘標本から得られた組織所見を、各施設が勝手に診断してしまうと困ります。前立腺がんが正しく診断分類されているのか、基準となる指標が必要です。また、治療の効果を施設間で比較検討できません。 今回の規約は、第5版です。2022年の5月に改訂されました。 前回の改定は、2010年ということですから、実に12年ぶりの改訂となります。泌尿器科医は、この規約をもって、前立腺がんの共通の言語を知ることができます。 日本泌尿器科学会、日本病理学会、日本医学放射線学会の3つの学会が協力して改訂した規約となります。 改訂され新たに記された主な事項として、 1. 病理学的事項の全面的な見直し組織の分類の見直しとグリソンパターンをもとにしたグレードグループ分類という新しい分類方法 2. G8スクリーニング高齢者個々の機能評価 → 治療選択 3. 腫瘍マーカー(その他)として、マイクロサテライト不安定(MSI)検査BRCA遺伝子検査がんゲノムプロファイリング検査を追加 4. MRI検査によるPI-RADS分類を記載 5. 骨転移の解析ソフトとして、BONENAVI、VSBONEを追記 6. 骨治療という項目が追加され、骨治療の分類や骨修飾薬の記載方法を記した。 少し解説すると、 1. 病理学的事項の全面的な見直し組織の分類の見直しと、グリソン分類をもとにしたグレードグループ分類という新しい分類方法生検や手術で得られた組織は、各施設の病理医によって、あるいは外注で、がんの有無が診断されます。がんといっても、1種類ではありません。病理医の診断基準が施設毎で異なれば、どんな前立腺がんなのかがわからなくなってしまいます。腺がん、神経内分泌がん、導管がん、肉腫など、前立腺がんは1種類ではないのです。WHO分類というのがあって、2014年に発表されたものがあります。今回のものは、これに準じた改訂です。グリソン分類に加えて、グレードグループ分類という新しい分類方法が紹介されています。グレードグループ分類すると、予後、治療効果が予測されます。前立腺がんの診断時に、このグレードグループ分類もしておくほうがいいというわけです。 2. G8スクリーニングまぐまぐの配信でもくわしく解説したことがあります。前立腺がんは、高齢者に多い疾患です。高齢者での治療選択は簡単ではありません。さまざまな併存疾患をもっている患者さんが多い中での治療選択は、安易に決められません。高齢者を個人個人で機能評価して、標準治療ができるかどうかを判断するツールです。(参考) 2020/04/26 化学療法(抗がん剤治療)について その7 高齢者はどうするか?https://www.mag2.com/archives/0001605001/2020/この配信に、詳しく記載しています。興味のある方は、参考にしてください。 3. 腫瘍マーカー(その他)として、マイクロサテライト不安定(MSI)検査、BRCA遺伝子検査、がんゲノムプロファイリング検査を追加これは、最近の配信でもたびたび紹介しています。できるだけ個人個人、一定のグループに分けて、効果的な治療選択の参考にしようというものです。遺伝子検査を行うことで、個人個人に適した治療、がん組織それぞれに適した治療を選択できる可能性がでてきました。プレシジョンメディシンとか個別化医療という治療につながる可能性があります。 4. MRI検査によるPI-RADS分類昨今は、PSAが上昇している場合、つまり前立腺がんが疑われた場合、生検をする前に、MRIを取るようになりました。MRIで得られた所見の評価法にこのPI-RADS分類を用います。MRIでがんの疑いが強ければ、前立腺生検を勧めることができます。また、MRIで疑われる部位を選択的に生検して、効率的に、前立腺がんをみつけることができます。疑いがない部位は、生検する必要がありません。最近は、MRIでの所見を、超音波画像に重ねて、標的生検ができるようになりました。また、PSAがグレーゾーン(4~10)などの場合、生検をしないことの根拠に、このPI-RADS分類が使われ出しています。PI-RADS分類で、前立腺がんの可能性が低ければ、生検はやめましょうといえるかもしれません。MRIでがんの疑わしい部位があるかどうかの判断基準になります。 5. 骨転移の解析ソフトとして、BONENAVI、VSBONEを追記骨転移の診断は、以前は、放射線同位元素の取り込みをみて、骨転移疑いの診断をしていました。骨転移の診断、そして個数などは、主観的な判断でした。これらの骨転移解析ソフトにより、より客観的に骨転移の診断ができるようになりました。なんとなく、『骨転移が増えていますね』、『減っていますね』ということでは曖昧でした。ソフトで、骨転移診断を行うことで、主観を取り除いた病状の把握がしやすくなります。このソフトで、骨転移の数、骨転移の診断が、客観的になりました。 6. 骨治療という項目が追加され、骨治療の分類や骨修飾薬の記載方法を記した。骨転移のみならず、骨粗しょう症に対して、治療した場合の治療の内容を記載しなければなりません。骨治療の目的(骨転移に対するものなのか、骨粗しょう症に対する治療なのか)骨修飾薬の投与放射線療法(X線照射、ゾーフィゴなど)手術療法 使用薬剤に関して、ランマーク、ゾメタ、ビタミンD、カルシウム製剤、ゾーフィゴなどの記載を行う。 以上の変更点以外に1.臨床的事項病歴記載法、臨床所見記載法、臨床病期記載法、リスク評価、治療方法記載法 2.病理学的事項組織分類と診断基準、前立腺材料に関する取扱いおよび検索方法 3.治療効果判定基準臨床効果判定基準、前立腺癌組織学的治療効果判定基準 の基本的な事項が詳細に解説されています。この規約により、患者さん個々の臨床所見、臨床診断、治療方法、病理学的事項を、一定の基準の下に記載、判定することができます。 5/7の電子配信では、この取り扱い規約の中の『病理学的事項の全面的な見直し』について解説しています。https://mypage.mag2.com/ui/view/magazine/163839150?share=1 興味がある方は、是非参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年05月07日
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◆◆ 神戸で日本泌尿器科学会総会が開催されました。 ◆◆私Uromasterも参加してきました。前立腺がんに関しては、ゲノム診断(遺伝子診断)、そしてその結果から治療への応用に関する報告が多い印象でした。ゲノム診断が、近年可能となったため、各施設からゲノム診断の結果が報告されています。遺伝学用語が飛び交っていました。ゲノム診断(遺伝子診断)とは、BRACAnalysis診断、前立腺がんの生検標本や転移組織、そして循環腫瘍細胞のゲノム診断を行い、前立腺がんに、どんな遺伝子異常があるかを解析するものです。まだ、ゲノム診断結果が、なかなかいい治療に結び付きませんが、プレシジョンメディシンへの足掛かりとして、今、世界中で、解析、臨床試験が行われています。現時点で、実際の治療に結び付くのは40%前後のようです。BRCA遺伝子変異陽性であれば、リムパーザ(一般名オラパリブ)が、他の治療より有効というのが、わかっています。1つのプレシジョンメディシンとして、実際の医療に使えるようになりました。MSI-Highのゲノム診断(遺伝子診断)であれば、キイトルーダが、効果的といわれています。プレシジョンメディシン、個別化医療と大袈裟ですが、一般的な治療に抵抗性で、悪性度が高く、進行がはやいものが多いため、治療で、遠回りしないという意味では画期的です。問題は、必ずしも、根治治療とまではいかないことです。今まさに、端緒についたばかりという状況です。その他に、私Uromasterの目をひいたのは、神経内分泌がん(小細胞がん)に関する発表、講演、解析結果の報告です。今年は、神経内分泌がんの報告が多かった。神経内分泌がんが、稀な疾患ではないことが、再認識されたためと思います。特に去勢抵抗性前立腺がんの中で、神経内分泌がんが占める割合が少なくないことがわかってきています。本日4/23の電子配信で、神経内分泌がん(小細胞がん)について解説しています。また、過去の配信でも、2019年8月、9月『前立腺小細胞がんとは? その1~その3』2020年1月、11月『前立腺小細胞がんは、去勢抵抗性前立腺がんでは、実際多くて、急激に悪化する!?』『日本癌治療学会総会と日本泌尿器腫瘍学会 内臓転移とNSEと前立腺小細胞がん』で、解説しています。興味がある方は、参考にしてもらえればと思います。その他には、AI、Artificial Intelligence(人工知能)の医療への応用も、今回話題になっています。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年04月23日
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◆◆ 前立腺がん治療における相加作用、相乗作用 ◆◆ 前立腺がんに対する治療には、様々なものがあります。 前回お話したように、私Uromasterが泌尿器科医として働き始めた頃は、前立腺がんは、大半が進行前立腺がん、転移性前立腺がんでみつかることがほとんどでした。しかし、治療法は、今と違い、去勢術のみ。 去勢術といえば、内科的去勢術と外科的去勢術がありますが、当時は、外科的去勢術つまり、両方の睾丸を取り出すことでした。 やがて内科的去勢術(リュープリン、ゾラデックス、ゴナックス)が開発され、外来でも去勢術ができるようになりました。 やがて、去勢術に抗アンドロゲン剤(カソデックス、オダイン)を加えるMAB療法が広く行われるようになりました。 MAB療法の良し悪しはともかく、次いで、去勢術に様々な治療が組み合わせられていきました。 転移性前立腺がんで見つかった場合には、最近では、最初からの去勢術+イクスタンジ去勢術+ザイティガ去勢術+アーリーダ去勢術+タキソテールの効果が、明らかとなりました。 Aという治療法がいいとします。そして、Bといういい治療がでてきたとします。次に、自然と思いつくのは、A+B2つ組み合わせるともっと効果がでるのではないかと誰でも考えます。相加作用、相乗作用という言葉があります。A+Bつまり、1+1=2A+B>AA+B>Bとなれば、効果がある治療となります。1+1>2となれば、相乗効果といって、相加作用以上の効果があるといいます。 但し、治療には、副作用がつきものです。効果において相加作用、相乗作用がたとえあったとしても、副作用も倍になって、辛いものになってしまえば、いい治療とは言えませんね。 転移性去勢感受性(転移がある去勢術の効果がある)前立腺がんにおいては、去勢術+イクスタンジ去勢術+ザイティガ去勢術+アーリーダ去勢術+タキソテール去勢術+タキソテール+ニュベクオは効果があって、副作用が少ない相加作用のある治療といえます。 去勢抵抗性(転移がある去勢術の効果がなくなった)前立腺がんに対しては、簡単ではありません。世界中で、相加作用のある治療を探している段階です。イクスタンジとザイティガは、去勢抵抗性前立腺がんに、効果が認められている治療です。 去勢術+イクスタンジ+ザイティガは相加作用はあるでしょうか?今年3月30日に発表された論文に関して、今日の配信で解説しています。https://www.mag2.com/m/0001605001 興味がある方は、参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年04月09日
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◆◆ 前立腺がんの診断治療の今昔 ◆◆私Uromasterが、大学卒業後、出身大学の泌尿器科に入局したのが、医師としてのスタートでした。私が、医者になりたての頃は、前立腺がんに対する診断、治療というのは、画一的で、ほとんどの患者さんは、進行前立腺がんで見つかっていました。 PSA検査なども普及しておらず、根治できる状態で患者さんが見つかることはほとんどありません。つまり、あちこちに転移した状態で、転移からの痛みなどで、進行前立腺がん、転移性前立腺がんという状態で、病院そして、泌尿器科に来られていました。直腸診(肛門からの前立腺の触診)では、石のように固い前立腺をふれ、前立腺周囲ががちがちの状態でした。KUBといって、腹部のX線写真を撮ると、脊椎や骨盤の骨は、真っ白になって、明らかに多発骨転移の状態。前立腺がんの骨転移は、造骨性転移が多く、腹部のX線写真では、転移部位が真っ白になってしまいます。治療に関しても、当時は、内科的去勢術(リュープリン、ゾラデックス、ゴナックス)などの注射はなく、外科的去勢術が中心の内分泌療法(去勢術)でした。憶えているのは、泌尿器科の外来に、丸い球状の物体がありました。恐らく外科的去勢術のあとに、精巣(睾丸)があった場所に、偽睾丸として挿入するのだと思います。去勢術の効果がなくなれば、あっという間に、終末期医療、緩和医療という流れです。女性ホルモンを使った時期もありました。 現在は、PSA検査により、早期に前立腺がんを見つけることができるようになりました。それでも、進行前立腺がんで見つかれば、治療は簡単ではありません。進行前立腺がんに対する根治療法は、残念ながら、まだありません。しかし、年々、いろいろな治療薬が登場し、以前とは比べられないほどの治療選択ができるようになりました。 逆に言うと、現在は、どの治療を選べばいいのかという問題が生じています。多種多様な治療がある中、転移性去勢抵抗性前立腺がん(内分泌療法の効果がなくなった前立腺がん)の患者さんでは、ある治療を行ったあとで、次の治療(2次治療)に移行できるのは、約半数、そしてその次の治療に移れるのは、さらにその半分といわれています。理由としては、病状の進行や体調の悪化がその理由の大半だと思います。時間がない状況での、治療選択は、難しい。 個人個人に適した『個別化医療』が、治療の理想です。『プレシジョンメディシン』ということばがあります。これは、個別化医療をもう少し、拡大した考え方です。 理想的には、個人個人で、適した治療を選択できるのがいいのです。プレシジョンメディシンでは、あるグループを拾い上げ、そのグループに適した治療を選択しようというものです。医師の間でも、個別化医療とプレシジョンメディシンの意味を混同している現状です。 現状は、あるグループを見つけ出し、そのグループに適した治療を行おうというプレシジョンメディシンが、端緒についたばかりだと思います。 様々な治療を試して、いい治療を選ぶのであれば、身体がいくつあっても足りませんし、時間もありません。効率的に治療を選びたいものです。そうはいっても、プレシジョンメディシンとよべるものは限られています。例をあげれば、 BRCA遺伝子変異陽性 → リムパーザ(一般名オラパリブ) MSI-High → キイトルーダ 神経内分泌がん(小細胞がん) → 肺小細胞がんに準じた抗がん剤治療 PE療法(シスプラチン/エトポシド)など などが代表的です。詳しくは、BRCA遺伝子変異陽性の前立腺がん、MSI-Highの前立腺がんの詳細は、以前の配信(2021年10月と11月分)を参考にしてください。 神経内分泌がんの詳細は、配信(2019年8月と9月、2020年11月分)を参考にしてください。 これらのプレシジョンメディシンは、他の治療に比べれば、より効果が期待できるというものです。根治とはいきません。しかし、回り道をせずに、効果が期待できる治療を選択できる可能性があります。なかには、長期間、効果が持続して、幸運な経過が得られる患者さんがいるのも事実です。 これらの特殊な病態では、一般的な治療では、進行ははやく、進行再発の抑制は、簡単ではありません。これらの病態であることを疑うこと、診断することが、治療の足掛かりとなります。これらの異常を見つけるためには、血液やがん組織の検査が必要です。 去勢抵抗性前立腺がんの状態で、進行がはやい場合は、血液検査または組織検査を、転移部位からでもいいですので、検討が必要です。患者さんは、一人ひとり、併存疾患や、副作用の出方、薬物の代謝は異なります。一方、前立腺がんも一様ではありません。がんの顔つきも様々ですし、前立腺内に、いくつかの異なったがん組織が存在することも、よくある話です。様々な治療後に、生き残った前立腺がん組織は、最初とは異なる性格を持っていることは、容易に推測されます。ともあれ、治療の初期には、様々な画像診断を駆使して、前立腺がんの状態を把握、診断することが、最初の一歩でしょう。治療は、その後に始まります。『個別化医療』や『プレシジョンメディシン』におけるAI:Artificial intelligence(人工知能)の活用も、近い将来、始まるものと思われます。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年04月02日
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◆◆ ニュベクオに新たな効能が追加 ◆◆最新のニュースです。2023年2月1日付で、バイエル薬品のニュベクオに『遠隔転移を有する前立腺がん』の効能が、日本で追加されました。1回600mgを1日2回、食後に服用します。 ARASENS 試験という臨床試験の結果が評価されたものです。<ARASENS 試験>『ARASENS 試験は、転移性去勢感受性前立腺がん患者さんを対象とした、ニュベクオ(ダロルタミド)+去勢術+タキソテールの化学療法と去勢術+タキソテールの化学療法を比較検討するために、前向きにデザインされた臨床試験です。1,306人の転移性去勢感受性前立腺がん患者が、去勢術+タキソテールの化学療法に加えてニュベクオ 600 mg を 1 日 2 回投与するニュベクオ 群と、去勢術+タキソテールの化学療法に加えてプラセボ(偽薬)を投与するプラセボ群に、1:1 で無作為に割り付けました。 ARASENS 試験では、去勢術+タキソテールの化学療法に加えてニュベクオを加えた併用療法が、去勢術+タキソテールの化学療法と比較して死亡リスクを有意に 32.5%低減することが示されました。』 転移性去勢感受性前立腺がんの患者さんの治療を、最初に、去勢術+タキソテール+ニュベクオで、スタートすることで、以後の治療にかかわらず、生存期間を延ばしています。 『去勢術+タキソテール+ニュベクオ』の効果が無くなった場合、当然別の治療を行いすね。 『去勢術+タキソテール』のみでも同じです。 それでも、スタートの治療の違いで、あとの治療と関係なく、生存期間を延ばしています。 早めに、この『去勢術+タキソテール+ニュベクオ』を行うことに意味があるという結果です。この臨床試験の結果をもとに、あらたに効能がニュベクオに追加されました。 そういうわけで、今回追加承認された対象の患者さんは、転移性去勢感受性(去勢術の効果がある)前立腺がんの患者さんです。実際の治療としては、去勢術+タキソテールの化学療法+ニュベクオという形になります。 副作用を含めた、詳細は、電子配信を参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年02月26日
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◆◆ 気を付けましょう、冬の熱中症 ◆◆ 厳しい寒さが続いています。年を重ねると、寒さがつらくなってきます。 外に出るのが億劫になります。コロナ感染やインフルエンザ感染も怖いですね。必然、自宅で過ごすことが多くなってきます。 年を重ねると、寒さがつらくなってきます。代謝も落ちてきているからかもしれません。 一方で、神経系の老化で、暑さを感じにくくなっています。 暖かい、お風呂でゆっくり長風呂はいいですね。日本人に生まれてよかったと思う瞬間ですね。 しかし、 しかし、日本人が大好きなお風呂場には、危険が潜んでいます。 私Uromasterには、家族を入浴中に失った経験があります。日本人が大好きなお風呂場には、実は、危険が潜んでいます。 私Uromasterが務めていた病院で、亡くなった患者さんの調査をしていました。冬の期間に多いのが、風呂場での高齢者の溺死でした。 救急車で運ばれてくるのですが、すでに亡くなっていて、死亡確認となってしまいます。 昨今、風呂場での『ヒートショック』がいわれています。急激な温度変化が、心血管系の異常で、身体に悪影響を及ぼすことを、いいます。ヒートショックは、実際は、入浴中に体調悪化した高齢者の1割未満との報告があります。 なぜ、入浴中に、溺死するのか、そして、冬に多いのか?その理由として、入浴中の熱中症がクローズアップされています。 千葉科学大の黒木尚長教授(法医学・救急救命学)の調査では、入浴中の体調悪化の原因、溺死などの事故の8割以上が、熱中症かその疑いであることが調査でわかりました。 黒木氏によると、『体温37度の人が全身浴をした場合、湯温が41度だと33分、42度だと26分で体温が40度に達する。この結果、入浴中であっても重度の熱中症の症状が出て、意識障害を生じるリスクが高まる。そのまま入浴を続け、体温が42・5度を超えれば意識を失い、溺死、突然死することもある。』 入浴中に溺死した場合の死因については、解剖しても原因がわからないことが多いため、ヒートショックとして扱われることが多かったようです。実際は、大半が熱中症による死亡だった可能性が高いといわれています。 高齢者は、温度上昇による発汗量が若い人と比べて少なく、循環血液量も少ないため、身体に熱がたまりやすく、体温が上昇しやすくなります。お風呂の中では、末梢血管が開いても、汗をかいても、下熱作用は期待できません。また、体温が上がれば、皮膚に血液が多く流れ、脳への血流低下、血圧低下が起きやすくなります。高齢者の循環血液量の低下も、この状況に拍車をかけます。 さらに、老化によって、皮膚の感覚が鈍化していて、暑さを感じにくくなっています。 真夏でも、エアコンをつけずに、暑い中でも平然と暮らすお年寄りが多く、そのため、夏の熱中症で体調悪化や死亡するケースが多いのは皆さんもご存じと思います。 一方で、寒さには敏感で、ついつい熱いお風呂で、長風呂したくなるのはよくわかります。 通常お風呂や温泉では、41~42℃ぐらいで、温度の設定がなされていることが多いです。お風呂の温度設定は、何度にしていますか? 私Uromasterも、すぐに入らないこともあって、41℃に設定しています。お風呂の機能にもよりますが、温く感じて、ついつい『追い炊き』までしてしまいませんか? 黒木先生の研究にもありました。お湯の温度が41℃だと33分、お湯の温度が42℃だと26分で体温が40℃に達する。そのまま入浴を続け、体温が42.5℃を超えれば意識障害、意識を失い、溺死、突然死の危険がでてきます。 実際、湯温を41~42℃に設定することが多くないですか? ヒートショック予防に、お風呂の内外の温度差をなくす(お風呂場の温度を上げる)ことは、よく強調されています。 しかし、お風呂場での熱中症に関しては、あまり話題に上りません。 夏の気温が40℃になる日は、ものすごく暑い日と感じるでしょう。お風呂の40℃はどうでしょうか。お風呂の40℃で長風呂すれば、体温が40℃になってもおかしくありませんね。 高齢者は、容易に熱中症になりやすい。 熱いお風呂の長風呂は、要注意です。本人が気を付けることも大事ですが、ご家族の入浴中の声掛けも重要です。 熱いお風呂での長風呂 → 熱中症 → 意識障害 → お風呂から出られない → さらに体温上昇 → 意識消失 → 溺死予防策として、1. お風呂場・脱衣所は、温めておく(寒いとお風呂から出たくなくなる、長風呂防止)。2. 湯温は41℃で10分前後の入浴。3. 入浴前に家族に一言。4. お風呂場に手すり、できれば、呼び出しブザー設置。5. 食後すぐの入浴は控える(血液が胃腸に集まり、入浴中の脳への血流低下、血圧低下が起こりやすい)6. サウナも、高齢者にはお勧めできません。日本人の大好きなお風呂、うまく利用して、お風呂での熱中症、是非、気を付けましょう。 参考https://www.sankei.com/article/20190708-XF6UFG2CIRNNLOBWZ7ACFHAL2A/ https://www.med.or.jp/dl-med/people/plaza/549.pdf https://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1588248245730/index.html https://news.1242.com/article/397530 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年02月12日
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新年あけましておめでとうございます。 2023年の初日の出 海はいいですね 寄せては返す波どれ1つ同じ波はない どれ1つ同じ海はない とどろく風、海鳴り いつまでもながめていたい 本年もよろしくお願いいたします。 @唐津 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2023年01月02日
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◆◆ 骨転移に効果があるゾーフィゴ治療 ◆◆ 進行前立腺がんで見つかった場合の遠隔転移、そして、前立腺がんが進行した場合に起こる遠隔転移で最も多いのは、骨転移です。 前立腺がんによる死亡の主な原因は、骨転移による全身状態の悪化と考えていいでしょう。 骨転移が進行すれば、骨転移による症状、痛みが出てきます。骨転移による症状は、著しく生活の質QOLを落とし、筋肉量も低下し、さらに生活の質QOLが落ちるといった、悪循環に陥ります。骨転移が悪化しているうちに、他の転移、内臓転移などが発症進行し、深刻な状況になりかねません。 このように、骨転移を有する進行前立腺がんの骨転移進行に対する治療が、中長期的には、大変重要です。 進行前立腺がんにおける骨転移の治療は、生活の質QOL改善からいっても、治療という点からいっても、大変重要です。 昨今、新規抗アンドロゲン剤、プレシジョンメディシンなどの医療の進歩により、さまざまな治療が、少しずつですが、患者さんに使えるようになってきました。いろんな薬剤が出てくるのはいいですが、いつ使えばいいのかは、治療法が増えるたびに、主治医は、頭を悩まします。 この文章を読んでくれている患者さんも、いろんな治療法がある事は、ある程度勉強されているかもしれません。そして、今使っていない治療法が自分に合っていないか、そして、新しい治療をいつ使ってもらえるかと考えてしまいます。 患者さんは、自分から、こんな治療はどうだろうかと考えても、主治医自体が迷えば、なかなかその治療に踏み切れませんね。 ゾーフィゴ治療は、そしてその開始時期は、泌尿器科の専門医にとっても、難しい問題です。 最初にお話ししたように、進行前立腺がんの進行悪化の中心は、骨転移の進行です。 最近は、がんが発生した前立腺自体からというより、骨転移からのがん細胞のあちこちへの転移増殖が、患者さんに深刻な状況を引き起こすのではないかと考えられています。 となれば、進行前立腺がんの治療の中心は、やはり骨転移悪化に対する治療となります。 去勢抵抗性前立腺がんとなり、新規治療薬による効果が、明らかで持続している場合は、その治療を継続することには、抵抗はないと思います。 しかし、新しい治療が、患者さんに非常に適したとしても、根治につながるかといえば、残念ながら、不可能です。進行前立腺がんでは、いずれ悪化する可能性大です。根治とまではいかなくとも、共生できている状態で、悪化がない状態が続くことが、現時点での、目標といってもいいかもしれません。 前置きが長くなりましたが、骨転移に対して、効果があるゾーフィゴ治療について、頭の整理をしたいと思います。骨転移がある患者さんでは、ゾーフィゴ治療のタイミングは重要です。 <ゾーフィゴ治療とは>ゾーフィゴ(ラジウム-223)は、カルシウムと同族のアルカリ土類金属であり、骨転移部位などの骨代謝の亢進した部位に集積する特性を有します。生体内ではカルシウムと類似の挙動をとります。投与したゾーフィゴ(ラジウム-223)は、骨転移部位などの骨代謝の亢進した部位にカルシウムと同様に取り込まれ、骨塩(ヒドロキシアパタイト)複合体を形成することで集積します。取り込まれたゾーフィゴは、アルファ線を放出することで抗腫瘍効果を発揮します。アルファ線を放出し、隣接する腫瘍細胞のDNA二重鎖切断を引き起こします。DNA二重鎖切断の修復は困難であり、骨微小環境内において、前立腺癌細胞、骨芽細胞、破骨細胞は細胞死に至ります。 ゾーフィゴは、バイエル薬品が、日本での販売元です。バイエル薬品のホームページに詳しく解説がありますので、興味がある方は、目を通してください。https://www.xofigo.jp/patients<ALSYMPCA試験>という臨床試験が行われました。ゾーフィゴという放射線同位元素による治療が開発され、その効果を、たくさんの患者さんで検討解析したものです。 骨転移があって、骨転移の症状がある、去勢抵抗性前立腺がんの患者さん921人で、ゾーフィゴの治療効果を検討した臨床試験です。無作為に分けて、ゾーフィゴ治療のグループ614人と偽薬のグループ307人で比較しています。ゾーフィゴ治療とは、4週間隔で、ゾーフィゴを6回(約6ヶ月間)静脈投与します。 骨転移がある患者さんですから進行前立腺がんです。 経過を見ていく上で、亡くなる方が出てきます。この臨床試験で、ゾーフィゴ治療グループの方が、生存している数が多いという結果です。統計上は、あきらかに、ゾーフィゴ治療群のほうが、有意に生存期間を延ばしていました。全生存期間の中央値(患者さんのそれぞれの生存期間を並べての中央の値、患者さんの数が偶数であれば、真ん中の2人の結果を足して、2で割ったもの)は、ゾーフィゴ治療群:14.9ヶ月対照群:11.3ヶ月でした。生存期間の延長が、たった3ヶ月半と思うかもしれませんが、これはあくまで全体の結果です。さらに、ゾーフィゴ治療群では、骨転移の痛みなどが出るのを遅らせることも、わかりました。 ゾーフィゴ治療の恩恵を受ける患者さんは、解析の結果、ある程度分かってきました。 ゾーフィゴ治療は、4週毎の6回の投与、約半年間です。あまり病状が悪化した状況では、ゾーフィゴ治療の恩恵は得られないかもしれません。痛みを取るといった、緩和医療目的ではなく、治療目的のゾーフィゴ治療です。 ゾーフィゴ治療で、生存期間を延ばす患者さんの条件として、ゾーフィゴ治療4週毎の6回の投与が完遂できることだと、この臨床試験では、結論付けています。 この6回完遂できるかどうかの因子も検討されています。● ECOG-PS 0-1 ある程度活動ができる健康状態である事が必要です。 下に、解説しています。● ヘモグロビン値≥10g/dL● 疼痛は軽度以下● PSA値≤141ng/mLなどが挙げられており、また化学療法の既往の無い方で6回投与完遂率が高く報告されています。 ※ECOG-PS 0-1とはECOG-PS 0: 全く問題なく活動できる。 発病前と同じ日常生活が制限なく行える。ECOG-PS 1: 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。 例:軽い家事、事務作業ECOG-PS 2-4とはECOG-PS 2: 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。 日中の50%以上はベッド外で過ごす。 ECOG-PS 3 限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか 椅子で過ごす。 ECOG-PS 4 全く動けない。 自分の身の回りのことは全くできない。 完全にベッドか椅子で過ごす。 あまり、ゾーフィゴ治療を後回しにすると、いい条件でゾーフィゴ治療が受けられず、6回の治療前に頓挫する可能性があります。 <ゾーフィゴ治療の副作用、安全性>ゾーフィゴ投与中に認められた有害事象(副作用)ですが、94人の患者さんの報告があります。グレードの数字が低いほど軽症と考えていいです。グレード3の貧血が4人、グレード3の白血球減少症が2人、グレード3の好中球減少症が1人報告されました。骨髄で、赤血球や白血球や血小板が作られます。ゾーフィゴは、骨髄に作用しますから、副作用としてこのようなことが起こりやすいと考えられます。副作用に関しては、ゾーフィゴ治療の前治療に影響を受けます。抗がん剤治療(タキソテールやジェブタナ)は骨髄抑制という副作用があります。ゾーフィゴ治療の副作用に、骨髄抑制があります。骨髄抑制の状態が、ゾーフィゴ治療継続に影響を及ぼします。<骨転移の進行と内臓転移は相関する>2003年6月〜2011年12月に去勢抵抗性前立腺がんの患者(442例)のうち、死亡が確認された359例について、骨転移・内臓転移出現の時期を調査しています。去勢抵抗性前立腺がんの初期には90%以上の患者さんが骨転移のみを有しますが、病勢の進行に伴い内臓転移の発現割合が増加しています。.内臓転移が出現すると、生存期間は急激に短くなります。骨転移部位から、内臓転移部位にがん細胞が供給されている可能性があります。その考えから、骨転移を抑制できれば、内臓転移も抑えられて、生存期間が延長するのではないかと推測されています。骨転移の部位から、内臓転移など全身への転移が起こっているのではないかと最近、推測されています。つまり、骨転移をうまく制御することで、他の部位への転移拡大が抑えられないかという考え方が生まれてきています。 <ゾーフィゴ治療をいつ始めるか?>ゾーフィゴ治療が、骨転移部位、骨髄に働くとすれば、治療前の骨髄の状態を知ることが重要です。副作用が骨髄に出やすいからです。骨転移が進行してしまうと、骨髄機能は低下します。大半の骨髄が前立腺がん細胞に置き換わってしまうからです。骨髄の状況が悪ければ、つまり、貧血が進行した状態(Hbが低下している)では、ゾーフィゴ治療は、開始も完遂もできません。白血球数、血小板数などが低下している場合も、ゾーフィゴ治療も困難です。ゾーフィゴ治療によりそれらの値が悪化し、副作用が強く出る恐れがあります。抗がん剤治療、タキソテールやジェブタナの化学療法後では、これらの骨髄機能が低下してしまっている可能性があります。ゾーフィゴ治療ができるタイミングを逃す可能性が出てきます。 ゾーフィゴ治療は、4週毎の6回の投与、約半年間です。ゾーフィゴ治療の効果は、この6回の投与が完遂できるかどうかが大きいようです。6回投与できるためには、簡単に言うとある程度、体調がいい患者さんである必要があります。これは、生存率などへの影響を考えた場合です。 最後になりますが、ゾーフィゴ治療は、生存率を延長することがわかっています。特に骨転移の痛みなどの症状がある人には、痛みが取れて、生活の質QOLもよくなります。やはり、いつ使い始めるかということが問題になります。骨転移の悪化がある場合は、ゾメタやランマークも使います。ゾーフィゴ治療をおこなうばあいには、ゾメタやランマークを併用することで、治療効果が上がることがわかっています。 <ゾーフィゴ治療での留意点>1.前立腺がん細胞自体への治療ではないこと骨転移以外への直接的な治療効果はない(前立腺や内臓転移やリンパ節転移への効果は期待できない)。 2.4週1回の投与が6回なので、約6か月かかる。 3.治療する前と治療中の体調に一定の条件がある。ゾーフィゴ治療は、治療前、治療中に体調が悪い(貧血、白血球減少、血小板減少など)と受けられない。 4.非常に高額な治療 5.同時の、他の併用薬の選択が難しい。 6.治療の時期の選択が難しい。 ゾーフィゴ治療は、前立腺がんの骨転移に対する治療です。骨転移がある状態というのは、進行前立腺がんの状態です。進行前立腺がんは骨転移のみではなく、他の部位へも進展します。急激に悪化している前立腺がんでは、全身治療が優先されます。去勢抵抗性前立腺がんとなれば、治療法の選択は簡単ではありません。骨転移のみへの治療では、骨転移以外の病気の進行を抑えきれない可能性があります。 また、非常に高額で1回に治療に60万円以上かかります。6か月で400万円近くかかる計算です。「高額療養費制度」で患者さんの負担は軽減されます。心配な方は、治療前に病院で相談してください。 骨転移のある患者さんにゾーフィゴ治療は有効で、うまく使えば生存率を延ばすことは説明しました。私Uromaster自身、骨転移の痛みひどかった患者さんにゾーフィゴ治療を行い、劇的に痛みが消え、普通の生活ができた経験があります。 また、ゾーフィゴ治療の開始が遅れれば、骨転移が悪化してしまい、貧血や血小板減少などの骨髄抑制が起きてしまい、結局、ゾーフィゴ治療ができない、間に合わないという状況にも陥りかねません。タキソテールやジェブタナの化学療法などの治療後であれば、すでに骨髄抑制が起きてしまっていて、ゾーフィゴ治療を行いたいにも、患者さんの体調が悪くてできないことがよくあります。 なかなかゾーフィゴ治療のタイミング、選択は、判断が難しいですね。骨転移の症状が出てきたり、骨転移による血液でのALP(アルカリフォスファターゼ)の値の上昇が明らかな場合は、検討していいと思います。但し、6ヶ月間の治療期間が必要で、この間の骨転移以外の病気の進行が心配ということになります。新規抗アンドロゲン剤の併用の効果は明らかではありません。私Uromasterは、ゾーフィゴ治療に、プロセキソールなどの女性ホルモンを併用しています。プロセキソールには、前立腺がんに対する治療効果がある程度期待でき、骨塩量増加などの利点もいわれています。すごい効果はないですが、使わないよりいいのではないか、ある程度骨転移以外の部位にも効果があるのでは、骨折予防にもいいのではないかと期待して使っています。ゾーフィゴ治療の開始時期に関しては、なかなか専門医にとっても、判断が難しいというのが本音です。 ゾーフィゴ治療に併用する治療はどうするかという問題も解決されていません。イクスタンジの併用は、いい可能性があります。 骨転移がある、進行前立腺がんの患者さんで、ゾーフィゴ治療に興味がある方は、10月の電子配信で、詳しく解説していますの、是非参考に、してください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年10月16日
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◆◆ エクササイズは、進行前立腺がん患者さんの寿命を延ばす! ◆◆ 昨今、エクササイズが、全身的な健康増進のみならず、前立腺がんの治療に好影響及ぼすことに注目が集まっています。 エクササイズとは、一般的に健康の維持・増進を目的とした運動全般を意味します。特にこれと指定される運動はなく、幅広い運動に使用される言葉です。 運動の量、強さとがん特異的生存率(がんがある中での生存期間)の相関は、前立腺がんのみならず多くのがんで、認められています。 もし、担がん患者さん(がんを患っている患者さん)が、身体的に活動的であれば、あらゆる原因の死亡率を下げることは容易に想像できます。慢性疾患のリスクや進行を抑え、特に心血管系の疾患のリスクを下げ進行を抑え死亡率を下げることは驚くべきことではありません。 <ミオカイン>エクササイズによる心肺機能などの向上だけでなく、筋肉が強化され筋肉量が増え、筋肉で産生されるミオカインが免疫機能を向上させることで、前立腺がんに対していい影響を及ぼすようです。 ミオカインは1つではありません。ミオカインは,筋収縮に伴い骨格筋から放出されるサイトカインです。 現在300種類以上のミオカイン候補が同定されています。このミオカインが、免疫系を整え、慢性炎症を抑え、前立腺がん細胞の増殖抑えるという報告が多くなされています。ミオカインの効果かどうかはさておいて、進行前立腺がんの治療において、世界中で今注目されているのは、エクササイズによる治療効果の向上作用です。 前立腺がん治療において、新規治療が開発され、そのことで治療効果が上がって、長生きすることだけが、目的ではありません。 もちろん治療効果が長続きすることは重要です。 ただし、治療には、副作用がつき物です。内分泌療法(去勢術)や新規抗アンドロゲン剤(ザイティガやイクスタンジ)は、副作用として、筋肉量の低下と脂肪の増加を、治療開始早期から引き起こします。前立腺がんは高齢者に多く発症し、高齢者は、この副作用が早期に認められます。筋力の衰えは、生活の質を落とし、転倒や骨折なども起こしやすくなります。フレイルという言葉があります。筋肉量の低下した状態をフレイルと呼びます。フレイルは、健康人でも年齢とともに増加し、内分泌療法(去勢術)や新規抗アンドロゲン剤の使用はさらにフレイルを助長します。 進行前立腺がんであっても、治療による延命効果だけではなく、生活の質を落とさない、元気な時間を確保したいものです。治療に加え、生活様式の重要性が、今、いわれています。 その一つが、エクササイズです。 エクササイズにより、前立腺がんに対して、治療効果が上がり、生活の質が上がるのであれば、いいことずくめですね。 前立腺がん治療の筋肉脂肪骨への影響や副作用、治療中のエクササイズの効果について、さまざまな臨床試験が行われています。 エクササイズとして重要なのは、有酸素運動と負荷運動(筋肉トレーニング)の組み合わせです。 有酸素運動 :軽~中程度の負荷を継続的にかける運動です。筋肉を収縮させる際のエネルギーに、酸素を使う運動のことをいいます。ジョギングや水泳、エアロビクス、サイクリングといった、ある程度の時間をかけながら、少量から中程度の負荷をかけて行う運動が代表的です。 負荷運動(筋肉トレーニング) :筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動です。 運動する人の状態や目的によって自分の体重(自重)やゴム製のチューブ、ダンベルなどで負荷量を調整して行うことができます。 実際のエクササイズの処方箋や実践に関しては、電子配信で解説しています。興味のある方は、電子配信で解説しています。月4回の発行で、最初の月は、無料です。お試しで是非読んでください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年09月25日
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◆◆ 前立腺がんとコーヒー ◆◆ 9/4の電子配信で以下のような内容の解説をしました。前立腺がん患者さんにとって、『エクササイズ、定期的な運動は、そして筋肉量の維持と増強は、、前立腺がんの治療中に行う価値がある』 前立腺がんの治療中であっても、いいことは、どんどん取り入れたいものです。 人間は誰しも、健康的な生活をして、長生きしたいと思います。さらに健康に良い生活様式や食べ物やサプリメントがあれば、生活に取り入れたいと思うのは、自然です。 私Uromasterは、毎日乳酸菌製剤を服用し、ココナッツミルクを飲用しています。これもできるだけ、身体にいいものを取りたいということから行っています。 ただ、どこまで身体にいいかは、どれが身体にいいかは、なかなかわかりません。 それでも、健康にいいものは摂って、悪いものには手を出したくありません。できるだけ、きちんとしたエビデンス(証拠)があるものを選ばないと、健康食品やサプリメントでお腹いっぱいになってしまいます。そして、結果として、何がよくて、何が悪かったかわかりませんね。身体は1つきりです。人生も1回きりです。お試しするには、時間も限られています。 できるだけ信用できるものを摂りたいものです。よくないものは、生活から取り除きたいです。 例えば、喫煙は、身体によくないことはよくわかっていて、発癌性や心臓病の原因であることは、衆知のことです。今は、たばこは吸わない、吸っているのなら禁煙するのがいいということは、様々な研究からわかっています。 がんの発症と喫煙が強く関連していることから、喫煙はしないほうがいいという推奨・結論が導きだされています。 食べ物や生活様式と前立腺がんの発症との関連に関する研究は、たくさんあります。しかし、担がん患者さん(がんを患っている患者さん)、前立腺がん患者さんにとって、どういう生活を行うことがいいのかという研究は、あまり多くありません。 前立腺がんであれ、他のがんであれ、なってしまうと、いい治療を受けることは重要です。しかし、患者さんにとっては、どういう生活をしたらいいのか、身体にいい食生活とは何かということも興味があると思います。 つまり、がん治療にいい影響をあたえる生活をしたいと誰しも願います。どういうサプリメントを摂ればいいのか、お茶はたくさん飲んだ方がいいのか、いけないのか。コーヒー、紅茶はどうだろうか。 例えば、毎日コーヒーを3杯から5杯飲んでいるけれど、前立腺がん治療にいいだろうか?悪影響を及ぼすだろうか?飲む量を少なくした方がいいだろうか、飲まない方がいいのだろうか、今のままでいいだろうかという疑問があります。毎日の生活で、日本茶、紅茶、コーヒーは普通に、取り入れられています。朝のコーヒーや紅茶、日本茶から生活がはじまる方も多いでしょう。緑茶に含まれるカテキンが健康にいいと一時期もてはやされましたね。紅茶もいいという話もあります。 イギリス人は、紅茶が大好きです。紅茶はどうでしょうか?Tea Consumption and All-Cause and Cause-Specific Mortality in the UK Biobank : A Prospective Cohort StudyMaki Inoue-Choi他. Ann Intern Med 2022 Aug 30. Online ahead of print. イギリスからの498,043人の研究報告では、1日2杯以上紅茶を飲む習慣のある人は、がんや心臓病や呼吸器疾患を含むすべての疾患による死亡率を下げることがわかりました。日本人は、コーヒーが大好きです。街のカフェはどこも盛況です。朝のコーヒーがないと、1日が始まらない方も多いと思います。 コーヒーはどうでしょうか?前立腺がん患者さんにおけるコーヒーの飲用は、治療に影響するのでしょうか?コーヒーに含まれているカフェインは前立腺がんにいいのでしょうか? <前立腺がんの発症とコーヒー飲用との関連>前立腺がんの発症、つまり、なりやすさとコーヒーは、以前から研究がなされています。例えば、Coffee consumption and prostate cancer risk and progression in the Health Professionals Follow-up StudyKathryn M Wilson 他 J Natl Cancer Inst 8;103(11):876-84, 2011. 47,911人を研究対象にしています。前向きに経過をみて、コーヒー飲用と前立腺がんのなりやすさを研究しています。コーヒー飲む量が多い人は、致死的前立腺がん(悪性度が高く、死亡リスクが高い前立腺がん)には、なりにくいという結論です。非進行性の前立腺がんや悪性度の低い前立腺がんと、コーヒー飲用量との関連はみられなかったとのことです。つまり、コーヒーをたくさん飲む人は、前立腺がんとくに悪性度の高い前立腺がんにはなりにくいという結論です。 <監視療法を行っている前立腺がん患者さんとコーヒー飲用との関連>Coffee, Caffeine Metabolism Genotype and Disease Progression in Patients with Localized Prostate Cancer Managed with Active SurveillanceJustin R Gregg他 J Urol 201:308-314, 2019グリソンスコア6もしくは7で、監視療法(無治療で厳重にみている)を行っている411人でコーヒーと前立腺がんの進行を研究しています。少量から中等量のコーヒー(1日~3.9杯)を飲んでいる患者さんでは、進行が少ない、安全という結果です。ただ、1日4杯以上コーヒーを飲むのは、前立腺がんの進行が多いとのことです。この研究では、少量から中等量のコーヒーはいい効果があるけれど、飲みすぎはよくないかもという結論です。 実際に前立腺がんの治療中の患者さんで、コーヒー飲用の影響はどうでしょうか? 前立腺がん患者さんに、焦点を当てたコーヒーの影響に関する研究は少ないようです。 すでに前立腺がんと診断を受けて治療している患者さんにとって、コーヒーを飲むことがいいことかどうかという研究が、今年2022年の8月に発表されました。対象は、5,727人の前立腺がん患者さんで、コーヒー飲用の効果を調べています。 興味のある方は、電子配信で解説しています。月4回の発行で、最初の月は、無料です。お試しで是非読んでください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年09月11日
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◆◆ 8/5米国で、新たな対象でニュベクオが認可されました! ◆◆前回8/7のまぐまぐの配信で紹介した商品名ニュベクオ(一般名ダロルタミド)。1週間前、8/5に米国で認可されました!数日前に気が付きました。 アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)で、ニュベクオの使用が認められました。対象は、転移性去勢感受性前立腺がんの患者さんで、タキソテールの化学療法との併用です。FDA approves darolutamide tablets for metastatic hormone-sensitive prostate cancer | FDA 早晩、転移性去勢抵抗性前立腺がんにも使えるようになりそうです(あくまで期待です)。 現時点でも、日本でニュベクオ(ダロルタミド)は前立腺がんの患者さんに使えるわけですが、この薬剤の使用には、制約があります。 遠隔転移がない去勢抵抗性前立腺がんの患者さんが、対象です。M0CRPCともいいますが、遠隔転移がない去勢抵抗性前立腺がんの患者さんでないと、この薬剤は、日本では、今は使えないのです。 今回の米国の認定では、転移性去勢感受性前立腺がんの患者さんに対して、去勢術+タキソテールの化学療法にニュベクオ(ダロルタミド)が併用できるとの認定です。 あちこちに転移した状態の前立腺がんは、ステージIVともいわれ、生存期間は、ステージI~IIIに比べて、非常に短いことがわかっています。最初から、去勢術に加えて、イクスタンジ、アーリーダ、ザイティガ、もしくはタキソテールの化学療法を併用することで、治療効果が上がり、生存期間も延長されます。 去勢術にタキソテールの化学療法を併用することで、去勢術のみに比べて、治療効果が上がります。 配信で紹介した臨床試験により、タキソテールの化学療法にニュベクオ(ダロルタミド)の併用は、さらに、治療効果を上げ、死亡率を下げました。 今後は、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者さんへの使用ですね。 詳細は、まぐまぐの電子配信を参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年08月14日
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◆◆ 薬品名、医学用語は難しい! ◆◆ この文章を読んでいただいているのは、前立腺がんの患者さんもしくはそのご家族かと思います。 医学の進歩は、急速で(そう感じていない方もいるかもしれませんが・・)、新しい薬剤の理解や医学用語の定義理解は、簡単ではありません。 進行前立腺がんの治療は、基本的には、病状に合わせての治療です。保険上、薬剤を用いる場合、『転移性』や『去勢抵抗性』など縛りがある場合が多いです。一方で、前立腺がんの診断さえつけば、使える薬剤もあります。(古くからある薬剤が多いですが) 前立腺がん治療でつかう薬剤は多く、言葉が難しい。(選択も難しいですが)この文章を読んでいる皆さんは、自分が受けている治療薬の種類や自分の状況、立ち位置はわかるでしょうか?例えば 去勢術は受けていますか何を使っていますか 抗アンドロゲン剤を使っていますか新規抗アンドロゲン剤を使っていますか 抗がん剤治療は、行っていますか抗がん剤治療は何を使っていますか 去勢感受性前立腺がんですか去勢抵抗性前立腺がんですか 最初の診断は転移性前立腺がんですか限局性前立腺がんですか 初発ですか、再発ですか 骨転移はありますか 骨修飾薬は使っていますか 自分の状態をなんとか理解したいものです。 そして、自分で使われている薬剤をチェックしてみてください。 私Uromasterは、薬剤に関しては、商品名を使うようにしています。実際の病院では、商品名で使うことが多く、患者さんにもなじみがあるかと思います。 例えば、内科的去勢術で用いる薬剤は、ゴナックス、リュープリン、ゾラデックスがあります。これらは、すべて商品名です。一般名で表すとゴナックス → デガレリクスリュープリン → リュープロレリンゾラデックス → ゴセレリン 商品名 → 一般名となります。 医学の学会や研究会では、商品名は使わずに、一般名を用います。前立腺がんの治療薬がたくさんあるわけですが、その分、それぞれに商品名と一般名があって、専門の泌尿器科医にとっても、薬剤名の使い分け、名前を覚えるのは大変です。 最近は、商品名にも、後発品名が加わって、さらにわかりにくい状況です。 前立腺がん治療の勉強をされている患者さんも混乱しやすいのではないでしょうか。 というわけで、Uromasterとしては、配信やブログでは、薬剤は、できるだけ商品名で統一しています。まだ、日本での商品名が決まっていないものは、一般名で表すしかありませんが・・・ また、前立腺がん治療の中で、使われている去勢術去勢感受性前立腺がん去勢抵抗性前立腺がんなどの言葉・医学用語は、一般の方には、初めは、ちんぷんかんぷんだと思います。 まだ、転移性前立腺がん進行前立腺がん限局性前立腺がんのほうが、イメージがわきやすいですね。 ことばの難しさを、少し、軽く見ていたかもしれません。言葉の使い方も、気を付けなければなりません。 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 6月、7月は、福岡と札幌に行く機会があります。また、電話やZoomの相談も始めました。お気軽に連絡ください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年06月19日
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◆◆ お気軽に相談してください ◆◆ 昨日、電話相談をお受けました。関西の方です。進行前立腺がんで、抗がん剤治療の選択で悩まれていた患者さんでした。 相談は、いままで、たくさんの方からお受けしました。ほとんどが直接お会いしての相談でした。昨日の相談の方は、電話での相談で、電話相談は初めての試みでした。前もって、経過やデータをみせていただいた後での相談です。 10年近く前から、このブログとまぐまぐ電子配信に、私Uromasterは、『前立腺がん』に最大限の力を注入しています。 『少しでも参考になれば』的なものも作ってきました。当時は、製本されたものを配布していました。ありきたりの初歩的な患者さん向けの本ではなく、最新の知見を載せたと自負しています。 残念ながら、現時点では、手に入らない状況です。本屋に行って前立腺がんの本を探したことがありますか?満足できる前立腺がんに関する書籍は見つかりますか?きちんと情報発信していない、私Uromasterの責任大ですね。近いうちに、再発行したいと考えています。 前立腺がんと診断を受ければ、そして、転移性前立腺がんといわれればショックは想像を超えます。進行前立腺がんの患者さんは、根治が難しく、悩みが尽きません。 出張時には、できるだけ患者さんの相談にのっています。大半は、まぐまぐの読者の方です。皆さんの状況は、かなり深刻です。多くの患者さんとお会いして相談を受けることで、患者さんの悩みを知ることができ、とても光栄で、勉強になります。 1. 自分の状態、病気の進行ぐあいを知りたい2. 他のいい治療はないか3. 主治医の勧める治療は期待できるか4. 今後どうなるのか 私Uromasterにすぐにでも相談したい方は、メールでお知らせください。 急ぐ方は、まぐまぐの有料配信で送られるメールに返信してください。 以前まぐまぐの配信を受けていた方や、現在配信を受けている方は、メールアドレスをご存じと思います。配信をいままで受けていなければ、いったん登録(初月無料です)してもらえれば、連絡できるようになります。 ぜひUromasterを利用してください。力の限り、応援します!!! 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年05月30日
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◆◆ 主治医は、一緒に戦ってくれる、コーチ その2 ◆◆8年前に『主治医は、一緒に戦ってくれる、コーチ』https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201405110000/と題して、このブログで書いています。そのため、今日のお題は、その2です このブログに来ていただいている方は、前立腺がんの治療中の患者さん、もしくはそのご家族と思います。 治療中であれ経過観察中であれ、定期的に病院を受診され、検査と治療を受けている。 朝早めに病院に行って、おそらくまずは、採血検査。 PSAを測るので、結果まで、小1時間かかります。 採血結果がそろえば、主治医の先生の診察室に呼ばれます。 PSAの結果が心配です。 採血結果などが変わりなければ、『変わりありませんね。 PSAも上がっていません。それでは、〇ヶ月後に来てください』 という会話で、あっけなく終わってしまいます。 時間を測ってください。3分間かかりますか?採血結果がでるまで、1時間近く待っているのに、実際の診察は、あっという間です。 少し時間を取ってくれるのは、PSAが上昇していた時や、画像で悪化している時、治療方針が変わる時ぐらいでしょうか。 患者さんは、いつもドキドキして検査結果を待っています。 悪化なければ、ほっとします。 『しかし、今後はどうなるのだろう?』『PSAが上がってきたら、どういう治療があるのだろうか。副作用は強いのだろうか』『あとどれくらい元気でいられるだろうか』『治療は止められないだろうか』『内分泌療法(去勢術)は中止できないか』 主治医は忙しそうで、『たらればの相手をしている暇、現状が問題なければゆっくり相手をしている暇はなさそうです。』 患者さんも、主治医の機嫌を損ねたくはありません。命を預けているわけですから。大病院であればあるほど、多くの患者さんが詰めかけます。前立腺がんに詳しい先生がいれば、前立腺がんの患者さんが多いかもしれません。もちろん他のがん(腎臓、腎盂尿管膀胱、副腎、精巣、後腹膜など)の患者さんもみないわけには行きません。がん以外の病気も、結石、前立腺肥大症、透析、腎移植、先天性疾患、神経因性膀胱、過活動膀胱、尿失禁の患者さんもいます。たくさんの病気の中の1つが前立腺がんです。もちろん、昨今、前立腺がんの患者さんが増えていますので、たくさんの患者さんがいるのも事実です。 勉強熱心な患者さんは、様々な治療法を勉強しています。当然です。命がかかっていますから。 新しい治療は受けられないのだろうか、自分にはもっといい治療があるのではないか、今後はどうなるのだろう、内分泌療法(去勢術)は止めれないのか、放射線療法は受けられないのか、重粒子線治療はどうか、丸山ワクチンなどの民間療法は、受けていいか、他の病院の先生の話を聞きたい、あとどれくらい生きられるのか 主治医とゆっくり話したい、時間を取ってもらいたいこれが、皆さんの願いのように、私Uromasterは感じています。 泌尿器科医は、かなり広い範囲の手術を受け持っています。また、前立腺がんの治療のように、内科的な治療も受け持っています。医師としては、大変やりがいのある分野で、興味は尽きません。米国のように、分業制で、手術をすれば、それで終わり、あとは腫瘍内科へというわけにはいきません。 1人の患者さんに外科治療、放射線療法、内科的治療から、一番いい選択肢を見つけることができるという点では、釣り合いのとれた、偏らない治療選択肢を、日本の泌尿器科医は、患者さんに提示できるという利点があります。 ただ、泌尿器科医は忙しいという現実があり、これが、患者さんとのコミュニケーション不足を招く1因になっています。 また、扱う疾患が、前立腺がんだけではなく、一人一人の泌尿器科医の得意分野は、さまざまです。必ずしも、前立腺がんが専門とは限らないのです。 そうは言っても、主治医は、コーチです。 スポーツなどでは、いいコーチ、いいトレーナーの存在が、結果を左右するといわれています。医療の現場では、主治医は、一緒に戦ってくれるコーチのような存在です。命がかかっていますから、いいコーチを選びたいというのが、本音ですね。 言い換えると、患者さんは、いい主治医を選びたいというのが、本当のところだと思います。 あなたの主治医は、いいコーチですか?あなたが選んだ、いいコーチですか? 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年05月08日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 追伸 ◆◆ 私Uromasterは、2~3ヶ月毎に歯石のクリーニングをしてもらっています。3、4日前、定期の私Uromasterの歯医者受診。 歯医者の先生が、診察の後『Uromaster先生、歯茎がピンク色できれいです。歯周ポケットも悪化なく問題ありません。昔、抜歯を勧めていた左奥の歯も、以前ぐらぐらしていたのに、今日はびくともしません。すごい!』 抜歯して残った隣の左側奥歯の調子が以前から悪く、痛みもあって、しばらく、左側では十分咀嚼できなかったのが、最近では全く気にならなくなって、快調です。 歯医者の先生には、私Uromasterの呼吸法や口腔内管理については、なにも話していません。もちろんこのブログの存在も知る由もありません。 自分の方法が間違いないことが実感できます。 泌尿器科医である私Uromasterが、『呼吸法と口腔内管理』をブログで解説しているのはなぜか?https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/ctgylist/?ctgy=7 最初は、2014年にさかのぼります。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201408100000/ 8年前の状況を一部引用すると、当時、歯医者の先生は、 ¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥ 『このままでは、あちこちの歯が抜けるのは時間の問題です。 レントゲン写真をみると分かりますが、歯の根元が溶けてしまっています。 こんな土台ではインプラントもお勧めできません。』 ときどき歯茎が腫れたり、膿をもったりして、鎮痛剤や抗生剤で紛らわす状態が続いていました。 ボロボロの状態です。医師が他の医師にボロカスに言われるのは、残念で、最低ですね。左奥歯は抜歯しました。その隣の歯も抜歯を勧められていた状況でした。 ¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥ 私Uromasterの研究魂に火が付きました。自分のことですからね。 様々な方法を試してみました。 なにしろ、全部歯が抜けてしまったら、美味しいものも味がしなくなるでしょう。2014年8/10の記事です。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201408100000/歯医者の先生から『私の初めての経験です。歯ぐきがパンパンに張りつめて、以前あった歯周ポケットが、なくなっています。 溶けて土台が腐ってグラグラしていた歯も、歯茎がしっかりして微動だにしません。マッサージしても以前のような膿がでてきません。』 自分の経験から、『鼻呼吸と口腔内管理の重要性』を認識しました。当時は、電子書籍まで発行した覚えがあります。 ある日の歯科受診のことです。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201512190000/歯石をクリーニングしたあと、歯医者の先生の診察の後、『Uromaster先生は、私のこころの支えです』 突然言われた私は、びっくり!どっきり(女医さんです)そうはいっても なんで私が歯医者さんの心の支えなんでしょう!? 先生の話では、 『頑張れば、こんなに歯茎が良くなることを証明してくれたからです。』 歯周病が改善することは、簡単ではないのでしょう。心の支えというぐらいですから、よほど歯周病の克服は簡単ではないのでしょう。 鼻呼吸と口腔内管理は、生きていくうえで、重要な道しるべです。私Uromasterの方法を実践すれば、歯科医は困ってしまうのではないかと自負します。 ほとんど、このブログで秘密を公開しています。 ぜひ参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年05月01日
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◆◆ 内分泌療法(去勢術)はいつまで続けるの? やめられます! ◆◆ 『内分泌療法(去勢術)はいつまで続けるの? 死ぬまで?』 やめられます! 実は簡単。 死ぬまで続ける必要はありません! もちろん条件付き。 前立腺がん細胞は、男性ホルモンを餌にして、増殖進展します。 それが、内分泌療法(去勢術)を行う理由です。 去勢術には、 1. 外科的去勢術2. 内科的去勢術i) アゴニストii) アンタゴニスト 大きく分けて2種類の方法があります。外科的去勢術は文字通り、手術です。男性ホルモンの90%を産生する両側の精巣を摘除します。 外科的去勢術をした後では、精巣由来の男性ホルモン産生は元に戻りません。 つまり、後戻りできません。 一方、内科的去勢術には、アゴニスト(リュープリン、ゾラデックス)アンタゴニスト(ゴナックス)があり、これらは、いずれも注射薬です。 内科的去勢術を継続するためには、定期的に注射を打つ必要があります。 進行前立腺がんの患者さんの大半の方は、この治療を続けていると思います。 定期的に注射を打つのは、男性ホルモンを常に低下(去勢状態)させるためです。 もし、内科的去勢術を継続しているなら、 内分泌療法(去勢術)をやめるのは簡単です。 注射を打たなければいいだけです! 内科的去勢術の外科的去勢術に対する利点・長所は、内科的去勢術を止めると、男性ホルモン産生能が戻る可能性があることです。(『戻る』ではなく、可能性があると書いたのは、高齢者では、男性ホルモン産生能の回復に時間がかかるからです)外科的去勢術では後戻りできません。ただし、死ぬまで去勢術状態を続ける必要がある患者さんでは、外科的去勢術を受ければ、定期的な注射は受けなくていいし、経済的にはメリットはあります。去勢術には、様々な副作用を引き起こす可能性があります。 生活の質にも多大な影響・悪化を来たします。 私Uromasterの患者さんで、内科的去勢術をやめた方は、実はかなりいらっしゃいます。 私Uromasterは、常日頃、内分泌療法(去勢術)は、なんとか止められないかと考えているからです。 止めれそうな患者さんをみれば、すぐに中止を勧めます。 すべての患者さんで、内分泌療法(去勢術)をやめられるかというと、そうはいきません。 内分泌療法(去勢術)をやめられるかどうかは、主治医の判断が重要です。 もともとが進行前立腺がんだからという理由で、疑問を持たず、内分泌療法(去勢術)を延々と継続する泌尿器科医がいるかもしれません。 『内分泌療法(去勢術)はやめることができるか、できないか?』 という問題意識、考え方が主治医にあるかどうかです。 止めることができそうなら、内分泌療法(去勢術)はやめる、もしくは休止しましょう。 私Uromasterはそう思います。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年03月18日
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◆◆ 内分泌療法(去勢術)はやめられない? 死ぬまで? ◆◆ 一般的な診療、一般的ながん治療において ある種の治療の効果が無くなれば、その治療は、中止して、新たな治療を開始するのが、普通の対応です。 私Uromasterが泌尿器科、前立腺がんの診療を始めたとき、 最初の疑問は、 『内分泌療法が効かなくなっているのに、そして、新たな治療を始めるのに、 なぜ、延々と内分泌療法を継続しなければならないのか?』 効かなくなった、すなわち去勢抵抗性前立腺がんになっているのに、 なぜ、内分泌療法(去勢術)を継続しなければならないのか。 前立腺がんでは、内分泌療法は中止できないのか? 内分泌療法(去勢術)を行っているにもかかわらず、病勢が進行すれば、 内分泌療法(去勢術)は効いていない、効果がないということではないのか? 効かない治療をなんで、継続しなければならないのか? 実は、いまだに、疑問に思っています。 新規抗アンドロゲン剤、タキソテール、ジェブタナの化学療法ゾーフィゴ治療緩和医療 を新たに始めたとしても、延々と内分泌療法(去勢術)は継続されます。 進行前立腺がんとして治療中の皆さん、去勢抵抗性前立腺がんになっても、延々と内分泌療法(去勢術)を続けていませんか? なぜ効かなくなった、内分泌療法を継続しなければならないのかと、疑問に思ったことはないでしょうか。 決して、安価な治療ではありません。 注射のために、定期的に(クリニックによっては1ヶ月毎) 診療所に延々と通わなければなりません。 どうも内分泌療法(去勢術)の効果が無くなっているらしいにもかかわらず・・・ 今までも、そしてこれからも・・・ 死ぬまで?? 主治医の先生から、内分泌療法(リュープリン、ゾラデックス、ゴナックス)を中止しましょうという勧めや説明はありますか? 内分泌療法(去勢術)には、様々な副作用があることが知られています。 内分泌療法は命を削る治療です。ある意味サイレントキラー(静かに命を削る治療)です。 健康な人には、行ってはいけない行為です。 男性ホルモンは人間の生活・営みに重要な役割を果たしています。 昨今は、男性ホルモン(テストステロン)が低下した患者さんに対する補充療法まで、泌尿器科医の診療・治療分野に入ってきています。 内分泌療法(男性ホルモンの低下)の副作用、リスクとして、以下のものはすぐ思いつきます。 1)性機能への副作用2)ほてり、顔面紅潮、女性化乳房3)骨への副作用4)糖尿病や心血管病(脳梗塞、心筋梗塞など)の悪化5)肥満とメタボリック症候群6)精神神経症状(うつ状態、易疲労感、活力低下、認知症) 男性ホルモン低下による副作用は、内分泌療法が継続され、長期になればなるほど増加し、顕著になります。性機能障害、骨粗しょう症、易骨折(骨折しやすくなる)、ほてり、のぼせ、顔面紅潮、肥満、糖尿病、脂質代謝異常(高脂血症)、心血管病(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞)など多岐にわたります。これらのリスクは、内分泌療法を始める前に知っておくべきですし、きちんと管理していかなければなりません。昨今は、認知症との関連もいわれています。副作用で生活の質が落ちたり、身体を壊せば、治療どころか、何をしているかわかりません。 これらの副作用を凌駕する利益を、『内分泌療法(去勢術)』で、患者さんにもたらさなければなりません。 果たして、内分泌療法(去勢術)は、全体的に総合的に、患者さんの利益になっているのでしょうか? 病状が進行していれば、 我々泌尿器科医は、新たな治療は試みますが、内分泌療法をやめる選択を、標準治療として、実は選ぶことができません。 病状が落ち着いていれば、勇気ある泌尿器科医は、内分泌療法をストップすることができるかもしれません。 内分泌療法中止!間欠療法?! 男性ホルモンは、人間にとって、重要な働きを担っています。 男性ホルモンは、社会的ホルモンといわれています。 男性ホルモンを除去する生活を、延々と続けて果たしていいのでしょうか? 正しい答えを私Uromasterは持ち合わせていません。 たとえ、進行前立腺がんの診断を受けて、内分泌療法(去勢術)が、今は、現時点では必要だとしても、 将来的には、『生活の質・QOL』に配慮した、副作用の少ない治療、プレシジョンメディシンが望まれます。 前立腺がんの治療はうまく行っているのに、副作用からくる心血管病で命を縮めたり、認知症が発症して、生活の質が落ちてしまったら、何をしているかわかりません。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年03月14日
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◆◆ コロナワクチン副反応が心配ですね! ◆◆ 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種、3回目は打たれましたか?まだであれば、副反応が心配かもしれません。 1回目、2回目がファイザー製で、さほど副反応がなかった方は、3回目がモデルナの場合、副反応が心配かもしれません。 私Uromasterは3回ともファイザー製でしたが、3回目だけ、夜中に38度以上の発熱がありました。翌朝には自然に解熱しましたが。 1回目、2回目がモデルナ製で、発熱や倦怠感がひどかった方は、3回目のモデルナワクチンは、打ちたくないですよね。 モデルナ製の場合、大半の方が、2回目に発熱はあるようです。モデルナ製の場合の副反応が、免疫反応ということであれば、3回目も2回目と同じような症状が出る可能性があります。 1回目と2回目の間の期間は短かったわけですが、2回目と3回目の間隔は6ヶ月以上と長いので、副反応も2回目ほどつらくないかもしれません。 個人差もありますし、ワクチンは、結局打ってみないと、わからないということになります。 そうはいっても、副反応がひどいのは、嫌ですね。 それを思うと、ワクチン接種に行きたくなりません。 それではどう対処したらいいでしょう。 発熱などがあれば、早めの解熱鎮痛剤がお勧めです。38度を超えそうなら、カロナール、バファリン、ロキソニンなどを手元に準備してください。もしなければ、ドラッグストアで相談して、『熱さまし』を購入・用意しておいてください。 ワクチン接種後の当日、寝る前に37度後半であれば、就寝後に発熱してつらいので、前もって、これらの解熱剤を内服してもいいと思います。 無理に熱を下げると、免疫ができないのではと心配されるかもしれません。 基本は、症状が出てからの、治療(発熱したら解熱剤)が推奨されています。 最近の研究では、早めの解熱剤の内服でも、抗体は十分上昇するとのことです。https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/734/ https://www.asahi.com/articles/ASQ384S9QQ34TIPE027.html ただし、発熱前の『予防服用』に関しては、まだ検討されていないようです。 モデルナ接種2回目などで、40度近い高熱や倦怠感がとても強かった、私Uromasterの息子の場合、モデルナ3回目のワクチン接種後に、漢方薬の『麻黄湯』を勧めました。打った後の、2時間おきの2回の投与で、発熱はなく、ワクチン後の副反応は注射部位の腫れと痛み以外なかったようです。漢方薬の『麻黄湯』はドラッグストアで市販されています。 検温される街のあちこち、発熱した場合は、ワクチン打った後だと言い訳しなければなりませんね(涙)。 39度の高熱が出たんだよと、周りに自慢?してもいいことは何もありません。37度後半の発熱があれば、解熱剤を使っていいでしょう。 注射部位の痛み腫れに対しては、もんだりしない方がいいようです。冷罨法(れいあんぽう)患部を冷やすのも1つの方法です。毎日筋トレをしている方、接種後のトレーニングはあまり推奨できません(笑)。炎症を長引かせるかもしれません。 副反応は、どうも若い方に多く強い印象です。そうはいっても、個人差があります。 気を付けて、早めのワクチン接種お勧めします。 ところで、3/16~19は宮崎4/7~10は札幌4/13~16は東京に行く予定です。 相談は大歓迎です。もちろん無料です。時間と場所に制限がありますので、早めの連絡をお願いします。皆さんも、ぜひ、私Uromasterを利用してください。私Uromasterも勉強になります。 力の限り応援します。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年03月13日
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◆◆ 西郷輝彦さんの闘い ◆◆ 西郷輝彦さんがお亡くなりになったことをニュースで知りました。 残念でなりません。 謹んで哀悼の意をささげたいと思います。 YouTubeで自らの闘病記を報告されていました。 ―――――――――――――――――――――――――――西郷輝彦最先端治療への挑戦西郷輝彦 緊急渡豪 前立腺がん最先端治療への道 第2弾 隔離編西郷輝彦緊急渡豪 前立腺がん最先端治療への挑戦 第三弾 失速編第4弾 がんが消えた編 衝撃の画像公開 完――――――――――――――――――――――――――― ご冥福を心よりお祈りします。ニュースやYouTubeからしか、西郷輝彦さんの状態・状況・経緯は知ることはできませんが、 世界では、すでに標準治療になりつつあって、有効であるというはっきりしたエビデンスがありながら、日本で受けられないPSMA治療を、コロナ下、オーストラリアまで行かれて、挑戦されました。 素晴らしい効果が出ることを、祈念していました。 西郷輝彦さんの闘い、決して無駄ではありません。 無駄にはできません。 日本では、前立腺がんは死なない病気と喧伝され、さまざまながんのなかで、軽んじられてきました。 前立腺がんにおけるPSMAの診断・治療が世界中で注目を集め、可能となっている中、日本で取り入れへの動きは、小さいものです。 ようやく広まりつつあった、地域のPSA検診さえ、否定的な動きがみられるようになりました。 昨今、米国でもPSA検査に懐疑的な空気があって、最近PSA検査を勧めない風潮がでています。 PSAが異常値だと、生検を勧められ、生検の副作用が問題だし、PSA検査で、大半の人で、生存期間の大きな延長が期待できないということで、米国でもPSA検査が減ってきている状況でした。 そのためでしょう、前立腺がんでなくなる方が順調に減ってきていた米国で、PSA検査が減った時点から、転移性前立腺がんの患者数は増加に転じたという報告もあるようです。 前立腺がんは死なない病気でしょうか 前立腺がんは、放っておいてもいいのでしょうか 前立腺がんとの戦いが厳しいこと、簡単ではないことは、患者さんの皆さんは実感していると思います。 たしかに、前立腺がんが見つかって、病気の拡がりを調べて、 隣接臓器浸潤、リンパ節転移や遠隔転移がないステージ1~3だと、5年生存率は100%と報告されています(下の表参照)。 前立腺がんは死なないがんの代表といわれています。 しかし、下の表でわかるように、ステージ4でみつかったというだけで、急激に5年生存率は下がります。 食道がんと比べれば、良好に見えますが、 ステージ4(病期IV)でみつかった前立腺がん患者さんの全国集計での5年生きる確率は、65.6% (病期IVとは、隣接臓器浸潤、リンパ節転移や遠隔転移があるもの) 少し前の解析ですが、私Uromasterの病院での、PSA100以上でみつかった前立腺がん患者さんの5年生存率は約50%! ほとんどの患者さんで骨転移がありました。 進行した状態で見つかった前立腺がんの寿命は5年と言っていい厳しい状況です。ステージI~IIIの5年生存率が100%だとしても、その先7年、さらに10年ではどうでしょう? 手術後再発し、転移を来し、様々な治療を受けた後の西郷さんが挑戦したPSMA治療は、非常に有望な治療法だと思います。 しかし、まだまだ分からないことも多いのです。 西郷輝彦さんの場合は、手術ができたわけですから、前立腺がんと最初に診断された頃は、転移はなく、比較的早期だったと思います。手術ができたのであれば、最初の病期は、ステージI~II、悪くてもステージIIIの前立腺がんだったのだろうと思います 前立腺全摘後~10年の間に、再発し、転移を来し、内分泌療法(去勢術)はもちろん、様々な治療を受けたと推察できます。 転移性前立腺がんではなくて、根治治療がなされた後でも、 5年経過していても、再発、進行、転移してしまう場合があるのです。 西郷さんは、177Lu/225Ac-PSMA治療を受けたようです。 日本以外の大半の国で、PSMA治療を受けることができます。 PSMAというタンパク質が、大部分の前立腺がん細胞で、発現しているといわれています。 PSMA治療とは、このPSMAを標的に、放射線同位元素で攻撃して、治療する仕組みです。 西郷輝彦さんはYouTubeで、転移の影は消えたと報告されました。 西郷輝彦さんは、PSMA治療を受けた時は、様々な治療がなされた後だと思います。残された治療が、ほとんどない状況で、ここまで効果がでるのは驚きです。 ただ残念ながら、PSAはやや低下したのち、再上昇しています。PSA 480(7/1)→510(7/29)→800(8/16) ここからは、私Uromasterのあくまで推測ですが、 西郷輝彦さんの転移は、PSMAを発現している転移、PSMAを発現していない転移、もしくは、PSMA発現が少ない転移が混在していたのではないかと思います。PSMAの発現が低い、もしくは発現がないがん組織が生き残り、進展、進行してPSAが上昇したのではないかと想像します。PSAが高度に上昇したことより、PSAが上昇しない神経内分泌がん(小細胞がん)への変化(NET化)は考えにくいでしょう。 PSMA PET/CTでは、PSMAを発現していない前立腺がん転移部位は映し出されません。 FDG PET/CTやDWIB法全身MRIなどの別の画像検査で、PSMAの発現が低い転移部位がわかったかもしれません(これらの検査を行ったかどうかはわかりませんが)。 PSMA治療の大前提は、PSMA PET/CT検査でがんが写ることです。 PSMA PET/CTで写らないがんに対しては、PSMA治療は、うまくいかないでしょう。 PSMA治療の問題点は、電子配信でも、何回か取り上げています。 PSMA治療の前の段階で、前立腺がんが、PSMA陽性だけの転移なのか、それとも陽性陰性の両者が混在しているのかを見極める必要があります。PSMA陰性の前立腺がんの再発転移であれば、PSMA治療の効果は期待できない可能性が高いのです。混在していれば、部分的な治療効果となる可能性があります。また、PSMA陽性だった前立腺がんが、PSMA治療後にPSMA陰性に変化したという報告もあります。そういう意味でも、西郷輝彦さんの治療経緯には、不謹慎かもしれませんが、非常に興味があります。それでもPSMA治療は、PSMAを発現している前立腺がんには、強力な武器になることがわかりました。 様々な治療を耐え抜いた転移性去勢抵抗性前立腺がんに、PSMA治療は画像上の効果をはっきり示したからです。 残念なことは、PSMA治療で恩恵を受けることができる患者さんと受けられない患者さんがいることです。 まさしく、プレシジョンメディシンが必要です。 西郷さんの挑戦は、最終的には、成功しませんでした。 しかし、 『前立腺がんは死なない病気』、 『PSA検診なんかいらない』 などの風潮を、少なからず吹き飛ばしていただけました。 西郷さんの闘いは、無駄ではありません。 進行前立腺がんに対する治療の困難さを、身をもって示してくれました。 完治が今のところ困難な『進行前立腺がん』に対し、 このブログを読んでくれている前立腺がんの患者さんと、そして私の患者さん達とも、私Uromasterは一緒に戦っていかなければなりません。 前立腺がんはひとつの病気ではありません。 急激に進行するもの、ゆっくり進行するもの、内分泌療法などで完治にみえるものとさまざまです。 転移性前立腺がん、ステージ4でみつかったにもかかわらず、10年以上一緒に闘っている患者さんをUromasterはたくさんみています。 今でも、一緒に闘っています(笑顔で)。 皆さんも、ぜひ、私Uromasterを利用してください。 力の限り応援します。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年02月27日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 原田康夫先生のお勧めは? ◆◆ 原田康夫先生 私自身は、同じ医師でありながら、原田先生のことは、存じ上げていませんでした。 原田先生は、現在90歳で、現役の医師とオペラ歌手を続けておられます。 日本経済新聞で回想されていて、私Uromasterも、『原田先生』を知ることとなりました。 2021年10月5日 日経新聞声楽・医学 卒寿の進む道:焼け跡の広島で出合ったオペラ、歌手と研究者両立の日々 原田康夫 (2021年10月5日 日経新聞朝刊より引用) 2016年、85歳でオペラ「リゴレット」のマントヴァ公爵を演じた(中央が原田先生) 原田先生は、耳鼻科の医師ですが、オペラ歌手でもあります。 日本経済新聞の記事から引用させていただくと 『広島大医学部に進学後、テノールの阿部幸次先生の門をたたいた。東の藤原義江(藤原歌劇団創設者)と並ぶ大歌手だ。散々聴いた「冷たい手を」を歌うと「発音はムチャクチャじゃのう」と一言。聞き覚えのイタリア語だから当然だ。だが「声はええ」と入門を許された。芸大に行きたい気持ちもあったが「おまえは(歌と医学)両方やれ」と言われ道が決まった。 歌に役立つから、進んだのは耳鼻咽喉科。医局に入った58年、NHK広島局主催のオペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の主役トゥリッドゥに抜てきされた。』 原田先生は、耳鼻科の医師として研修を積んだ後 1965年イタリア・パヴィア大耳鼻咽喉科への留学。 イタリアへの医学留学中、研究の傍ら、ミラノ・ベルディ音楽院でイヨランダ・マニョウーニ氏に師事し、オペラを学ぶ。 帰国後、広大の助教授、教授、病院長、学部長、学長就任。 医師としてだけでも、成功の人生といえるでしょう。医師としても、素晴らしい業績をあげているうえに、オペラ活動も続けています。 素晴らしい才能と業績だと思います。まさに2足のわらじ(草鞋)ですね(2刀流)。 私Uromasterも米国に留学しましたが、研究で結果を出すのが精いっぱいでした。 留学して、医学研究しながら、オペラを学ぶなどというのは、想像を絶することです。 原田康夫をインターネットで検索すると、 『呉市出身。1945年より阿部幸次氏に師事、広島NHK主催のオペラにすべて出演、1957年広島NHK会館杮落しにオペラ椿姫の主役アルフレードを演じる。1965年イタリア留学中、ミラノ・ベルディ音楽院でイヨランダ・マニョウーニ氏に師事し、オペラを学ぶ。帰国後本業の耳鼻咽喉科の助教授、教授の傍ら、カバレリア・ルスティカーナ、椿姫等、多くのオペラに出演。1999年学長として広大移転完了の記念に蝶々夫人のピンカートンを演じた。また2000年には、ラ・ボエームの主役を務める。2003年にはサタケ・メモリアルホールを完成させ、広島大学に寄付し、5月には杮落しに椿姫のアルフレードを演じ、11月には同じく日伊合同オペラ椿姫の総監督兼アルフレードを演じた。その他、多くのオペラに出演。2014年ニューヨーク国連での平和音楽ミッションを果たし、2015年8月6日には、国連合唱団を実行委員長として招聘し、「平和と希望のコンサート」と原爆祈念式典での「広島平和の歌」合唱隊に参加させた。サタケ・メモリアルホール名誉館長、広島大学同窓会長、広島大学支援財団常任理事長。』 医師、研究者としての視点というより、オペラ歌手として紹介されています。 私Uromasterが、原田先生の日本経済新聞の記事で、印象に残った部分を、引用させていただきます。実はこの部分を紹介したかったのです。 原田先生の言葉は、以下で締めくくられています。 『長く歌う秘訣に、耳鼻科医としての健康法がある。寝る際、上顎犬歯の歯茎のところにこんにゃく製のスポンジを挟んで唾液をため、口にばんそうこうを貼って、下顎が落ちないようにする。無呼吸を防ぎ、口内の潤いを保つためだ。』 オペラ歌手であり、耳鼻咽喉科の権威である原田先生は、鼻呼吸と呼吸管理の重要性を大変重要と認識されている。 そのため、口閉じテープと口腔内乾燥予防を励行されています。 長い間、このブログで、鼻呼吸と口腔内管理(口腔内乾燥予防)を勧めています。 原田先生は、まさに実践されている。 90歳の高齢で、お元気に現役で活動されている先生は、鼻呼吸と口腔内管理の重要性を、身をもって証明されています。 鼻呼吸と口腔内管理の重要性を説いている私Uromasterは、間違っていなかったと、大変心強く思ったので紹介させていただきました。 90歳になっても、お元気な原田先生の健康の秘訣は まさに、私Uromasterが勧めている 『鼻呼吸と口腔内管理』 ではないでしょうか。みなさんもそろそろ、鼻呼吸と口腔内管理の重要性を認識され、実践する時期が来たのではと思います。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年02月20日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 鼻呼吸と一酸化窒素と新型コロナウイルス感染症 ◆◆ 呼吸法と口腔内管理について、集中的に解説しています。 呼吸法と口腔内管理は、健康を維持するのに重要です。調べれば調べるほど、奥深く、ウイルス感染、ひいては新型コロナウイルス感染症予防に有望である可能性があります。 Primarily nasal origin of exhaled nitric oxide and absence in Kartagener's syndrome.Eur Respir J. 1994 Aug;7(8):1501-4.この論文で、正常な副鼻腔では、一酸化窒素が産生されており、上顎洞内の一酸化窒素濃度は、20ppmに達していて、十分な殺菌能があり、外界から入ってくる病原菌などから身体を守ります。余談ですが、一酸化窒素は、血管拡張作用があり、ED治療薬のバイアグラは、一酸化窒素の作用を利用しています。血管拡張作用により、鼻腔の繊毛の動きを活発化するという話もあります。上顎洞の一酸化窒素は、感染防止に役立っている可能性があります。動物では、霊長類と象だけが、鼻でこの一酸化窒素を産生しているようです。(Endogenous nitric oxide in the airways of different animal species. Acta Anaesthesiol Scand. 1997 Oct;41(9):1133-41.)鼻呼吸により外界からの空気を上顎洞に通すことで、一酸化窒素の殺菌作用を利用している可能性があります。 新型コロナウイルスが感染経路は、上気道が主だと思います。鼻呼吸は、一酸化窒素によりある程度の感染予防になっている可能性があります。 カナダの研究所で開発された、一酸化窒素の点鼻薬『Enovid』は、新型コロナウイルスを24時間で95%、72時間で99%減少させることが報告されました。感染初期や疑わしい段階でこの一酸化窒素点鼻薬を使用できれば、感染拡大の歯止めになる可能性があり、現在臨床試験中とのことです。 正常な副鼻腔では、一酸化窒素が産生されており、上顎洞内の一酸化窒素は十分な殺菌能があり、外界から入ってくる病原菌などから身体を守ります。これが本当であれば、鼻呼吸は、ウイルス感染の防波堤になっている可能性がありますね。逆に言うと、口呼吸では、空気が上顎洞を通らず直接に咽頭、気道、肺に到達するため、ウイルスや細菌感染になりやすい欠点がありそうです。 夜間睡眠中のみならず、昼間、外出中も、鼻呼吸が推奨されるということになります! 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年02月06日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 実際の方法は? その2 ◆◆ 『鼻呼吸と口腔内管理』について解説していますが、かなり奥が深く、全身の健康に寄与できることがわかります。 前立腺がんに関する話題ではなく、申し訳ありません。前立腺がんに関しては、電子配信で、きっちり最新情報を毎週配信していますので、そちらの方で読んでいただけると嬉しいです。そうはいっても、呼吸法と口腔内管理は、万人に通じる生活の、基本です。前立腺がんの患者さんにとっても他人事ではないはずです。 さて、私Uromasterが行っている『鼻呼吸と口腔内管理』の実際を説明します。 口閉じテープは、以下のものを使っています。東洋化学という会社が作っているようです。いくつか試してみましたが、この会社のを、気に入っています。剝がれにくい素材の通気性がいい口唇の一部だけ閉じるので違和感、不安感が少ない 何より剝がれにくいのがいいですね。朝までしっかり、とれません。夜中に喉が渇けば、テープの下半分を外して水分を取ることができ、再度貼っても朝まで剥がれません。 口唇の一部だけ閉じるので、話もできますし、くしゃみやあくびにも対応できます。夜中に喉が渇けば、テープの横からストローで水などを飲むこともできます。 袋入りでコンパクトなので、旅行にも簡単に携帯できます。 私は、近くのドラッグストアで購入しています。探してみてください。 通販では、まったく同じものは見つけることはできませんでしたが、楽天で、同じ会社のおやすみテープという名前のものが購入できます。 最初不安なら、昼間に貼ってみるのもいいかもしれません。鼻が通っていることが前提です。睡眠時無呼吸症候群で治療中の患者さんであれば、主治医に相談してから使用してください。大いびきをかく人は、口呼吸で気道が狭くなっています。私Uromasterもいびきをかかなくなったと家族に言われて喜んでいます(笑)。 ただし、あくまでも自己責任と言っておかなければなりません。 朝、両鼻腔が通って大きく鼻呼吸できれば酸素が美味しいことが実感できます。鼻呼吸によって、酸素が身体の隅々までいきわたっている感覚があります。口呼吸ではないので、口腔内が乾燥しにくくなるため、虫歯や歯周病対策、感染症予防に十分期待できます。 鼻腔内は、除塵のみならず殺菌作用があることがわかっています。花粉症対策にも、いい可能性があります。私Uromasterの家族も、使い始めて、喉の炎症が収まったと喜んでいます。口腔内の乾燥がなくなることが、口腔内の健康につながっていると思います。 また、鼻呼吸を応用した、新型コロナウイルス感染症予防法も今試験中と聞いています。 今度紹介しましょう。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年02月05日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 実際の方法は? ◆◆ 前立腺がんのブログなのに、呼吸法と口腔内管理について、集中的に解説しています。 絶対のお勧めですから、どなたもぜひ、試してください。歯医者の先生は、鼻呼吸などの話は、あまりしてくれませんね。歯医者の先生の仕事が減る可能性がありますが、ご容赦ください。鼻呼吸と口腔内管理を徹底すれば、歯医者さんには申し訳ないですが、歯医者に行く理由が、激減する可能性が高いです。 鼻呼吸の利点、口呼吸の弊害を解説してきました。 また、口腔内管理の重要性、唾液の重要性も強調しました。 口腔内管理が悪ければ、歯周病を悪化させ、認知症やがんの引き金になるかもしれません。歯周病が悪化して、歯が抜けてしまえば、寂しい老後になってしまいます。美味しく食べられなければ、健康にも悪影響を及ぼします。 口呼吸から鼻呼吸への転換に加え、口腔内管理も考慮する必要があります。 口腔内管理で、重要な働きを担うのは、『唾液』です。睡眠中に、唾液はほとんど分泌されません。 口呼吸で、口腔内は、からからとなり、夜間睡眠中は唾液が出ないことから、『歯周病や虫歯は、寝ている間に、作られる』といっていいかもしれません。 口呼吸を防止し、鼻呼吸にする。これが、目標です。そして、口腔内の乾燥を防ぐことができれば、さらに良いということになります。 『口呼吸を防止し、鼻呼吸にかえ、口腔内乾燥を防ぐ』 私Uromasterが行っている実際の方法を説明します。 10年前に歯周病の悪化を指摘されていろいろ試した挙句に、当時見つけた、お勧めの方法は 1.夜間のマスク着用いろいろ試した挙句に、最終的には、夜間睡眠中にマスクを装着することが歯周病の改善にいいことがわかりました。口腔内の乾燥が、歯周病によくないと気付いたからです。 まず、睡眠前に、水分を十分補給します。夜中に目が覚めた時に口の中が渇いていれば、夜中でも水分を補給して、口腔内の乾燥を防ぎます。 この夜間のマスク着用をしばらく続けてみると、歯周病は、著明に改善し、歯医者の先生がびっくりするぐらい改善しました。 夜間にマスクをすることで、口腔内の乾燥は防ぐことができ、みちがえるように歯周病を改善することができました。 それは、口腔内管理による歯周病改善でした。 ただそれだけでは、口呼吸から、鼻呼吸への転換までは、ふみこむことはできません。 なにせ、睡眠中は、意識的に口呼吸から鼻呼吸への変更はできません。 2.鼻呼吸のための『口閉じテープ』ある方法を試してみました。これは数年前からのトライでした。『口閉じテープ』です。 当初、『口閉じテープ』は抵抗がありました。 よさそうに見えますが、睡眠中に『口閉じテープ』をした場合、 咳やくしゃみはできるだろうか?鼻が詰まったら息ができなくなるのではないか?口閉じテープをしても、どうせすぐとれるのではないか? 心配は危惧に終わりました。 『案ずるより行なうが易し』です。 鼻呼吸かつ口腔内乾燥防止を同時に行うためには、この方法が一番いいということがわかりました。 『口閉じテープ』と『鼻だしマスク』これが、現時点で最善の方法でした。 実際始めてみると、この『口閉じテープ』と『鼻だしマスク』いろいろな効用があることがわかります。すぐわかる変化として 1.いびきをかかなくなる。これは家族がびっくりします。いびきをかくというのは、下顎が落ちて、舌根が落ちこみ、気道が狭くなることを意味します。実際、いびきと『睡眠時無呼吸症候群』とは関連があるようです。いびきがうるさくて、夫婦家庭内別居という方、案外いるかもしれません。 2.朝まで両鼻が通り、呼吸が気持ちよく、爽快な気分になる。 口呼吸では、片方の鼻が詰まってしまうことが多い印象です。口閉じテープをすることで、鼻呼吸が当たり前になり、朝まで両鼻が通って、とても空気が美味しく感じられます。患者さんに勧めたところ、安眠できたせいか、夜中におしっこで、目が覚めなくなったという方がいました。 3.口腔内乾燥を防ぐことができる。口呼吸から鼻呼吸になれば、口唇は閉じ、必然的に、口腔内乾燥を防ぐことができます。口腔内乾燥を防ぐことができれば、歯周病や虫歯の予防に直結すると思います。 口閉じテープで、歯医者さんは、仕事が減る可能性があります。 少し長くなったので、実際の口閉じテープと鼻だしマスクの材料・方法は、次回に詳しく説明します。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年02月04日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 鼻呼吸への矯正方法! ◆◆ 今まで、鼻呼吸の利点、口腔内管理の重要性について話してきました。新型コロナウイルス感染症は、上気道感染が主体のようです。鼻呼吸により予防効果があるかもしれません。鼻呼吸への矯正法としては、いくつか方法はありそうです。 1.おしゃぶり2.ガムをかむ3.口閉じテープを口唇に貼る4.食事の際は、口を閉じ、1口30回程、両側で噛んで食べる5.『鼻孔拡大装置』を鼻にはめる6.睡眠時に、口マスクをする7.意識的に鼻呼吸にする8.市販の『鼻呼吸改善グッズ』を利用する9.『あいうべ体操』 ¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥1.おしゃぶりおしゃぶりをくわえて、日常生活を送る赤ちゃんでなくても、おしゃぶりは効果的です。少し抵抗はあるでしょうが、幼児から大人まで、家の中ではおしゃぶりを口にするという一見冗談のような方法も非常に効果的です(笑)。赤ちゃん用であれば、長くおしゃぶりを使うのがいいでしょう。鼻呼吸促進用おしゃぶりというのがあります。 2.ガムをかむ噛んでいる間は、鼻呼吸になります。砂糖を使わないキシリトールガムがいいですね。砂糖が入っていると糖分の取りすぎ、虫歯の原因になります。サッカー日本代表の長友選手ご存知ですか?ワールドカップで大活躍、海外でも活躍中です。そんな長友選手、試合中にガムをよく噛んでいます。"ガム噛みながら試合なんて無礼だ"なんて思われるかもしれません。サッカーは、グラウンドを走り回る、激しく酸素を必要とするスポーツです。口の中にガムを入れていると、単純に呼吸がしにくいのではないかと思いませんか。スポーツ選手がガムをかむのは、集中力を高めていいパフォーマンスをするのに有用という考えがあります。Uromasterはこの考え以外に次のような有用性があるのではないかと思います。ガムをかむと、口呼吸をせずに鼻呼吸に自然になります。長時間の激しいサッカーでは、酸素をうまく取り入れて、急激に消費します。長い距離走ることで知られている長友選手は、ガムをかむことの重要性を、意識的かどうかは別として知っているのではないでしょうか。鼻呼吸により、温められ、加湿された空気を肺に十分取り入れることは、長時間の激しいスポーツでは、重要なことなのかもしれません。 3.口閉じテープを口に貼り、そのまま、日常生活をする口閉じテープを貼るのは、なんとなく不安で抵抗があります。くしゃみができるだろうか、咳やあくびは?たしかに、鼻呼吸に導きやすいと思います。 4.食事の際は口を閉じ、1口30回程両側で噛んで食べる今の大人は5回から10回程度しか噛まず、しかも片側で口唇を開いたまま食事をする人もいるので、子供もそれに習います。食事の作法を復活させましょう。 5.鼻孔拡大装置・鼻腔拡張グッズを鼻にはめるさまざまなグッズがあるようです。興味のある方は、ネットで検索してみてください。ブリーズライト、TO-PLAN トプラン 鼻スッキリO2アップ、鼻腔拡張 ハナケア等々。 6.睡眠時に口マスクをする鼻の部分は外に出して、口の部分だけにマスクをします。鼻呼吸がしやすいように、鼻の部分はマスクから出しておきます。口マスクにより、大きく口を開けることはしにくい状態になります。睡眠中無意識に、口が開いてもマスクが口腔内の乾燥を最小限に防ぎます。特殊なマスクもあるようです。 7.意識的に鼻呼吸にする水泳等の顔が水に濡れるスポーツや過激なスポーツの後は、ぜいぜいと口呼吸になっています。意識的に鼻呼吸にしましょう。冬季は、乾燥して冷たい空気が直接のど(扁桃腺や咽頭)にあたり、風邪やインフルエンザ(新型コロナウイルス感染症も?)の感染の原因になります。 8.市販の鼻呼吸改善グッズを利用するさまざまな鼻呼吸グッズがあるようです。興味のある方は、ネットで検索してみてください。『イムニタスマスク、口開け防止マスク、鼻呼吸 トレーニング 専用マスク、鼻呼吸を促す口閉じテープ、鼻呼吸を促す口閉じ器具 ブレストレーナー、Noise STOP(ノイズストップ)、ナイトサポーター スヤスヤ、マウスストラップ (いびき防止グッズ)等々』調べてみるとたくさんありますね。いびき防止を目的としたものも多いです。 9.『あいうべ体操』みらいクリニックの今井一彰院長が開発した口の体操が、「あいうべ体操」です。ホームページで紹介されていますので、引用します。 『口を閉じて鼻で呼吸するためには、口の周りの筋肉と舌を突き出す筋肉を鍛える必要があります。あいうべ体操のうち、「あいう」は口の周りの筋肉の、「べ」は舌を出す筋肉のトレーニングです。 まず、口を楕円形にして、のどの奥が見えるまで大きく開き、「あ~」といいます。つぎに、前歯をむき出しにして、首の筋が浮き出るくらい口をグッと横に開いて、「い~」といいます。「う」は口を閉じる筋肉の体操で、唇を尖らせて前に突き出して、「う~」といいます。最後の「べ」では、舌の付け根が引っ張られるくらい、思い切り舌を前に突き出して、「べ~」といいましょう。 「あいうべ」の4つの動作を1セットとして、1日30セットを目安に体操します。1セットは、おおむね5秒間くらいかけて行います。慣れるまでは、30セットを2~3回に分けて行ってもかまいません。もっと回数を増やしたいときには、1回30セットを朝晩や朝昼晩に行うとよいでしょう。』参考にしてください。グッズと違ってお金がかかりません。試す価値があります。¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥ 鼻呼吸は、健康維持に重要です。↑ を参考にしてください。 次回は、私Uromasterが実践している方法を紹介しましょう。 絶対にお勧めです! 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月30日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 歯周病はがんと認知症の発症と関連!? ◆◆ 今までお話しした呼吸法と口腔内管理について、まとめると ----------------------------------------------------------1.唾液は夜中でない。2.口呼吸では、特に夜間、口腔内は乾燥し、唾液の働きが抑えられる。舌根沈下し、いびきが出て、呼吸が浅くなる。3.口腔内乾燥により、虫歯、歯周病の進行と口臭の原因となる。口臭の原因は、口腔内の感染症、菌の増殖歯周病は夜作られる!4. 晩酌する人は、アルコールの利尿作用で、脱水傾向となり、夜間喉が渇き(口腔内乾燥)、口呼吸では、さらに口腔内乾燥に拍車がかかる。---------------------------------------------------------- ということで、夜間の口呼吸は避けるべきで、乾燥予防が重要 口腔内管理がうまく行かないと、歯周病や虫歯が進行し、最悪、抜歯→入れ歯になってしまいます。 歯周病は、実はそのほかの重大な病気を招いているかもしれません! 以前、歯周病と口腔内がんや食道がんの関係をここでお話したことがあります。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201707020000/ 以下は、昨年発表された、東京医科歯科大学からの研究結果です。 『食道がんと口中細菌に関係 患者では高い検出率』 https://www.47news.jp/5752812.htmlから引用――――――――――――――――――――――食道がんと診断された入院患者61人と、がんでない入院患者62人の口の中を診察して唾液と歯垢(しこう)を採取。そこに含まれるDNAを抽出し、PCR検査を使ってそこに含まれる7種類の代表的な歯周病の原因菌の数を推定した。 問診の結果では、食道がんの患者の方が歯周病の状態が悪く、喫煙率や飲酒の頻度が高いことが判明した。 さらに、歯垢に含まれるある種の細菌は、食道がん患者では16人で検出されたのに対して、その他の入院患者での検出は1人だけだった。この細菌は、食道がん患者では唾液からも高い確率で見つかった。 結果を統計的に解析すると、唾液中でこの菌が見つかると、食道がんリスクは約6倍に高まる計算になった。さらに、歯垢で別の菌が見つかると約33倍になることも分かった。―――――――――――――――――――――― その他に、『歯周病で食道がん、胃がんのリスクが上昇』https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200805-OYTET50002/つまり、歯周病は歯が抜けたり、入れ歯になったりする局所的な疾患ではなさそうです。 消化器系のがんの発生・合併とも関連している可能性があります。 がんだけではありません。認知症との関連も報告されています。歯周病がアルツハイマー病を誘発するかもしれないという研究結果です。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201708130000/ https://www.asahi.com/articles/ASNB544G9NB5TIPE003.htmlから引用。――――――――――――――――――――――武洲(たけひろ)・九大准教授(脳神経科学)は「歯周病菌が、異常なたんぱく質が脳に蓄積することを加速させてしまうことが明らかになった。歯周病の治療や予防で、認知症の発症や進行を遅らせることができる可能性がある」と指摘した。――――――――――――――――――――――詳細は、↑のウェブサイトでみてください。 歯周病で、歯が抜けるだけでもいやなのに、胃腸のがんや認知症と関連するのであれば、ぜひ歯周病は、治療・予防したいものです。 次回は、実際の鼻呼吸や口腔内管理の実際・お勧めの方法についてお話します。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月16日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 唾液は重要! ◆◆ 私は、呼吸法と口腔内管理の重要性に、身をもって気付かされました。 口腔内管理の上で、最も重要な役割を果たすのは、 『唾液(だ液)』 です。 唾液は、いつも口の中を潤していてくれています。それが理想です。 唾液は唾液腺から分泌されます。唾液腺というのは、1.耳下腺、2.顎下腺、3.舌下腺 の3つです。 <唾液の分泌> 1.1日に出る量は 1〜1.5 リットル。 2.唾液の分泌量は、一定ではなく、安静時と刺激時で違う。 3.睡眠中には、ほとんど分泌されない。 (これが問題です) <唾液の成分(ウィキペディア参照)> 成分の99.5%が水分であり、無機質と有機質が残りの約半分ずつを占める。 デンプンをマルトース(麦芽糖)へと分解するアミラーゼを含む。 無機質:主要成分はNa+、K+、Ca2+、Cl-、HCO3-、無機リン酸であり、この他、Mg2+、亜硝酸イオンやF-が含まれる。 緩衝作用を持つもの:唾液に含まれる重炭酸塩やリン酸塩 有機物:殺菌・抗菌作用を持つもの:リゾチーム、ラクトフェリン、ヒスタチン、ペルオキシダーゼ(シアロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ)、アグルチニン、ディフェンシン、免疫グロブリンIgA、IgG、IgM 消化作用を持つもの:唾液に含まれる消化酵素 プチアリン(アミラーゼ)、マルターゼ、リパーゼ <唾液の役割> 自浄作用 唾液は、お口の中の汚れを洗い流す。自浄作用が落ちると、細菌が繁殖して虫歯や歯周病になりやすくなったり口臭がきつくなったりします。 免疫力を保つ 外から浸入してくる細菌などを防ぐ働き。唾液に含まれる「リゾチーム」は、その役割をするものの 1 つで「抗菌作用」を持った「酵素」です。 「リゾチーム」は唾液だけでなく、涙や汗、リンパ腺、鼻粘液、肝臓、腸管など生物体内に広く分布していて、色々な細菌感染から生体を守り、生命維持に欠かせないものなのです。また、唾液に含まれる 「ムチン」(唾液の中のネバネバ物質)は、菌を凝集させ、「菌塊」として口の内から排出する働きをしています。 さらに「ラクトフェリン」「ペルオキシターゼ」「IgA」などの殺菌物質も含まれています。 食塊(しょくかい)を、形成 食物を噛むことで、「唾液」が出ます。さらに飲み込みやすく塊にするために、唾液の中の「ムチン」の成分を利用し、泥団子のように唾液と食べ物を混ぜて1 つの湿ったカタマリである「食塊」にして、飲み込みやすくしています。 口腔内の粘膜の保護 お口の中には、硬い歯とやわらかい粘膜が同居しています。 しゃべったり、食べたりしても口の中が傷つかないのは、唾液が口の中を潤しているからです。ここでも「ムチン」が潤滑油として活躍します。せんべいを噛んだら、とがった部分が口の中にあたって痛いはずです。なぜ痛くないのか?唾液があるからです。そのクッションの役割をしているのは、唾液に含まれている「ムチン」の働きです。 消化を助ける 口は最初の消化器官。「アミラーゼ」という酵素が炭水化物を分解して、消化を助けます。 味覚を感じる 唾液がなければ、味を感じることはできません。 味覚には、味わいを楽しむ役割だけでなく、「食べ物が安全なのか?」を一瞬で判断する大切な役割もあります。極端にすっぱいもの、苦いものを口に含んだとき「ペッ」と反射的に吐き出したことはありませんか? 味覚が毒物と判断すると、反射的に大量の水のような唾液を出し、吐き出します。 無意識のうちに、そのような機能をしているのです。 その際に、唾液は欠かせないものなのです。 細菌の活動を抑える環境を整える(中和作用・緩衝作用) 通常の口腔内はph6.8~7.0で中性を保っています。 糖分を摂取するとPHは酸性に傾きpH5.5以下になるとエナメル質は生体内で最も硬い組織ですが、酸によって容易に溶解します。pHが酸性に傾いた環境を中和させる機能のことをpH緩衝作用といいます。緩衝作用の働きをする唾液中の成分が重炭酸塩やリン酸塩です。これらは酸を中和しpHを一定に保ち細菌の発生する酸や酸性食品から歯の溶解を防いでいます。口腔内は、食後すぐに酸性へと傾きますが、唾液により中和されるため食後30~40分程度でもとの状態まで回復します。pHが回復しない間に間食が多くなるとpHも酸性に傾いたまま推移するため虫歯が発生しやすくなります。 歯の保護と虫歯予防(再石灰化) 歯の成分はカルシウムが多いので、酸に対して弱く、酸性の状態が長く続くと歯の成分が溶け出し虫歯の原因となります。これを「脱灰(だっかい)」といいます。 唾液には脱灰した歯を再石灰化して、初期虫歯を治す役割も持っています。 パロチン 「若返りホルモン」といわれ、緒方洪庵の孫、緒方知三郎が発見したホルモンです。 成長ホルモンの一種で、体を若々しく保つ機能・骨や歯の再石灰化・新陳代謝を促すなどのアンチエイジング効果があります。 唾液は天然の殺菌消毒薬 NGF(nerve growth factor)とEGF(epidermal growth factor)が、顎下腺から単離されたことは有名ですが、簡単に言うと神経や上皮を修復、成長させる因子が唾液中にあるのです。 たとえば料理中にうっかり包丁で指を切って出血したらとっさに指をなめる。これは、唾液中に傷を治す力があることを、本能的に知っているからなのです。 動物が傷を負うとしきりに傷をなめまわしているのもそういうことなのです。 さながら唾液は「天然の殺菌消毒薬」といったところでしょうか。 唾液は、全身状態のバロメーター運動をした後や、飲酒後、利尿剤服用後(コーヒーやお酒も利尿作用があります)に、十分な水分補給を行わないと、唾液が知らせてくれます。のどがカラカラ、喉がかわく。水分補給が不十分だと、口腔内の唾液が教えてくれます。唾液が、出にくくなってしまうのです。これは、体内の水分量が足りないサインですので、早急な対処、水分摂取が急がれます。 唾液不足は、口喝は、水分不足のバロメーターです。 『唾液は夜間出ない』と、↑で説明しました。唾液が出ていない状況で、口呼吸を睡眠中行えば、口腔内は、乾いてしまい、細菌などの繁殖の独壇場となります。 このように唾液には、さまざまな有益な作用があることがわかっています。唾液を活用せずして、口腔内の健康は得られません。 今まで述べてきた中で、大事なのは、繰り返しますが『睡眠中には、唾液はほとんど分泌されない。』です。 睡眠中の口呼吸は、口腔内の乾燥を招き、唾液の有益な作用を、無駄にしている可能性があります。 睡眠時の口呼吸 → 唾液の枯渇+口腔内乾燥 → 細菌の繁殖 → 口腔内咽頭気道の感染症↑、歯周病(歯槽膿漏)、虫歯の進行 いくら毎日3度の歯磨きを行っても、また、毎月のように歯医者に行こうが、夜間の口腔内管理が悪ければ、病勢の進行は、毎日とくに睡眠中に進行してしまいます。 口腔内の管理の重要性や目標が、これで見えてきます。 特に夜間睡眠時の口腔内管理、乾燥を防ぐことが、口腔内の健康を維持するうえで重要なことがわかります。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月13日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 鼻呼吸とは? ◆◆ 私は、呼吸法と口腔内管理の重要性に、身をもって気付かされました。 呼吸法で、口呼吸については、お話ししました。今回は、鼻呼吸について解説します。 <鼻呼吸> 1.除塵人間の気道は、吸い込んだ空気の通り道です。鼻呼吸では、空気が最初に通る鼻腔の鼻毛や粘膜が、まず空気の除塵をしてくれます。 私たちが、吸い込む空気には、さまざまな細菌、真菌(カビ)、ウイルスなどの病原菌が含まれています。病原菌の50~80%は鼻の粘膜に吸着され、処理されます。鼻腔で、埃や雑菌やウィルスや花粉などをシャットアウトします。 2.加湿加温鼻腔は、吸い込んだ空気の加湿加温をしてくれます。 鼻呼吸の場合は、冷たくて乾いた空気でも、鼻腔で暖められ、湿度を含んだ状態で、のどまで到達します。乾燥した空気だと肺胞の粘膜になじみにくく酸素がスムーズに吸収されません。 3.口腔内乾燥予防、病原菌の繁殖抑制、歯周病予防、虫歯予防 4.口臭予防 ← 歯周病予防 5.臭いで危険を予知する鼻から空気を吸えば、当然へんな臭いはわかります。鼻づまりで口呼吸では、臭いはわかりません。 6.歯並びがよくなる。上あごのすぐ下、前歯の裏に『舌』が位置する状態が、口が引き締まっていいようです。その場所に舌がある状態が、舌根沈下予防や、歯並びにはいいそうです(歯医者さんから聞きました)。呼吸法は子供のころから重要です。 7.深い睡眠、十分な体内への酸素摂取身体の隅々まで、加湿され、温まり、除塵された十分な酸素がいきわたる。これ以上の健康法はありませんね。 口呼吸の弊害が起こらないことが、鼻呼吸の利点ということになります。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月11日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 こんな症状はありませんか? ◆◆ 私は、呼吸法と口腔内管理の重要性に、身をもって気付かされました。 下記のような症状や状態は、あなたに当てはまりませんか? ¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥1.きちんと歯を磨いているのに、歯周病(歯槽膿漏)がよくならない。虫歯もよくできる。歯茎が腫れていて、歯周ポケットがだんだん深くなっている。歯が痛んだり、歯茎が感染で腫れる。歯がぐらぐらして、抜歯を勧められている。自分の歯が少なくなっている。 2.いびきがうるさいと家族に言われる。いびきのため、やかましいからと夫婦別室で寝ている。自分のいびきで目が覚めることがある。 3.よく風邪をひく。扁桃腺炎や扁桃周囲炎になりやすい。抗菌剤を内服しても、すぐ再発する。肺炎になったことがある。 4.夜、安眠できない。頻尿になる(尿の回数が多い)。睡眠時無呼吸症候群かもしれない。 5.鼻が詰まっている。鼻づまりがひどい。空気が美味しくない。 6.夜中、口の中が、ねばねば、カラカラになって唾液が出ていない、乾燥している。さらさらした水のような唾液で口の中が満たされていない。 6.息がくさい。お孫さんや家族から顔をそむけられる。 7.乾燥に弱く、すぐに喉がいたくなる。 ¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥ どうでしょうか。 当てはまるものがありますか。 そうであれば、あなたの呼吸法と口腔内管理に問題があるのかもしれません。 そうであれば、このブログが参考になるかもしれません。面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月11日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 ◆◆ ↓ あなたは当てはまりませんか?面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月10日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 口呼吸の特徴 ◆◆ ヒトは生まれてから、呼吸を続けています。呼吸には『口呼吸と鼻呼吸』があります。今、あなたは口呼吸していますか?それとも鼻呼吸でしょうか? カエルが皮膚呼吸することは習った覚えがありますが、ヒトでは、『口呼吸と鼻呼吸』の2つだと思います。 運動しているときはどうでしょう。 寝てからはどうでしょうか? 2つの呼吸法の違いをみていきます。 口呼吸は、文字通り口から空気を吸って口からはくことをいいます。一方、鼻呼吸は、鼻腔から息を吸って鼻腔から息を吐く事をいいます。 まずは口呼吸の特徴をみていきましょう。1)感染症の増加病原菌や有害物質が、のど、扁桃腺、咽頭の粘膜に直接定着し、肺にも直接到達し、そこで繁殖して全身へ運ばれます。感染症の増加(風邪、インフルエンザ、コロナ、咽頭喉頭炎、肺炎、敗血症)が心配されます。加湿不十分な空気が肺に入る → 肺胞膜を痛める → 細菌の繁殖 → 傷ついた肺胞から体内へ。 そして病原菌が白血球の中に入り込み、全身に運ばれてしまいます。 2)インフルエンザの侵入部位冬にインフルエンザが流行するのは、ウイルスにとって都合のいい条件がそろっているからと考えられます。① 空気の乾燥感染した人の咳などで外に出ていったインフルエンザウイルスが、空気が乾燥すると、咳の水分が蒸発して、空中に漂いやすくなる。のどや口腔内の粘膜が乾燥して、のどや口腔内の粘液や唾液が乾燥して防御が弱くなって、ウイルスがくっつきやすくなる。② 温度の低下体温が下がるとウイルスは増殖しやすくなるといわれています。ワクチンは注射で身体に打つことで、体内のインフルエンザへの免疫を惹起します。しかし、インフルエンザが最初に体内に入る経路は“のど”“のどの粘膜”です。口腔内には、唾液の中にもともと殺菌物質や自然の抗体などで、細菌やカビなどを防御する仕組みは備わっています。予防接種で体内に免疫ができても、空気が乾燥していて、のども乾燥していれば、強力な防御とは言えませんし、なりえません。外からのウイルスの侵入を防ぐためには、口腔内の乾燥を防ぐ必要があります。口呼吸では、口腔内が乾燥した状態になります。まさに、インフルエンザウイルスが感染しやすい環境といえるでしょう。体力がない方、ステロイド剤(プレドニン)や抗がん剤の治療を行っている人はなおさら注意が必要です。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていますが、口腔内からの感染がまず考えられます。 3)のどを乾燥させ、加湿不十分な空気が肺に入る のどには、温度、湿度の調節機能がないので、ほぼ吸い込んだときと同じ状態の空気がのどを直撃し、のどを乾かしたり、冷やしたりして、扁桃腺などのリンパ組織に損傷を与えます。乾燥した空気は、肺胞の粘膜となじみにくいので、酸素が吸収されにくくなります。慢性的な酸素不足になります。4)鼻腔や副鼻腔に細菌やウイルスが増殖しやすくなる空気が鼻腔を通らないと、鼻腔に汚れがたまり、鼻づまり状態で常にじめじめした状態になります。そこで、細菌やウイルスが繁殖します。 5)花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の引き金アレルギー源が容易に体内に侵入・付着します。 6)舌根沈下による大いびき、気道閉塞や無呼吸症候群、酸素摂取不足、睡眠障害、夜間頻尿舌根沈下が起きると、いびきをかきます。いびきをかいている人は、いびきをかいている時は、まちがいなく口呼吸です。睡眠障害を引き起こし、何度も目覚めることによる夜間頻尿、昼間の傾眠(耐えがたい眠気)酸素の取り込み不足になります。手術中に、舌根沈下が起こると、患者さんはいびきをかくことが多いです。呼吸不全と考え、医師は緊急に対処します。 7)口腔内乾燥 → 口臭、虫歯、歯周病の進行ドライマウスもしくは口腔内乾燥症という病態があります。これは、さまざまな原因によって唾液の分泌量が低下し口腔内が乾く、歯科疾患の一つです。口呼吸になると、分泌量の低下は起こらなくても、唾液が乾燥してしまって、結果的に、この『口腔内乾燥症』と同じ状態となります。『口腔内乾燥症』は、軽度であれば口腔内のネバネバ感といった不快感が出現します。う歯、舌苔、口臭、歯周病の原因となります。重度の場合、舌痛症や嚥下障害、構音障害、口内炎、口角炎、重度の口臭や虫歯(う歯)、歯周病をひきおこすので、見過ごされない状態です。また、唾液には自浄作用、緩衝作用、殺菌作用などがあります。唾液が十分口腔内に存在すれば、細菌や真菌(カビ)の活動増殖が抑制されます。さらに唾液中のカルシウムイオンやリンイオンにより(初期虫歯の)再石灰化が起こり、修復が行われます。口呼吸だと唾液が分泌されてもすぐに乾いてしまうため、細菌の活動などが抑制しきれず、再石灰化もできなくなり歯周病、歯槽膿漏、虫歯を進行させてしまいます。歯周病に悩み、歯槽膿漏で歯を失う原因の1つは口呼吸かもしれません。私自身は、歯周病の根本原因は、口呼吸にあると考えています。このことは、案外知られていません。私自身が、口呼吸で、歯周病が悪化し、歯を失いつつありましたが、鼻呼吸を心がけるようになって、歯医者の先生も驚く、回復ぶりを見せています。昨今、歯周病とアルツハイマー型認知症との関連が言われています。 8)味覚障害(舌の粘膜乾燥による)舌の乾燥のため、味が分からなくなります。 9)嗅覚障害鼻づまりのため、空気が鼻腔を通らないため、においがわかりずらくなります。 10)歯並びが悪くなる歯のかみ合わせが悪くなります。上の歯、舌の歯並びとも悪くなり、出歯になり、だらしない顔になります。 11)酸素の取り込みが悪くなる上の2)でも述べましたが、加湿不十分で、冷たい空気が直接、肺の肺胞と接触するため、体内への酸素の取り込みが悪くなります。口呼吸は、このように、さまざまな欠点がありますし、病気の原因・引き金となります。 12)大量の空気を出し入れできるスポーツ選手は、口呼吸で競技することが多い。逆に、免疫・感染という意味ではよろしくない!?口呼吸にいいことはあまりありません!さまざまな要因によって、免疫力は低下し、「免疫の混乱」と呼ばれるアレルギーも引き起こします。「免疫の混乱」の最たるものの、自分の組織を攻撃する自己免疫疾患の引き金にもなりかねません。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月09日
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◆◆ 呼吸法と口腔内管理 プロローグ ◆◆ 新年あけましておめでとうございます。 新春のお年玉(?)というわけではありませんが、『呼吸法と口腔内管理』というお題で、お話させていただきます。 腹部から下半身を扱う泌尿器科医なのですが、自分の危機的状況から、口腔内の管理の重要性に気付かされました。 10年以上前でしょうか、私Uromasterは、左上の奥歯の周囲に感染を起こし、膿がたまって、抜歯した嫌な思い出あり。その隣の奥歯も抜歯を勧められました。 当時、歯医者の先生は、 『このままでは、あちこちの歯が抜けるのは時間の問題です。レントゲン写真をみると分かりますが、歯の根元が溶けてしまっています。こんな土台ではインプラントもお勧めできません。』 このまま歯が全部抜けてしまっては大変です。歯がなくなれば、美味しく食事ができないばかりか、栄養不良の原因となります。 何とかならないか考えた末に、様々な方法を試してみました。 なかなかうまくいきません。試行錯誤と研究を重ねて、呼吸法と口腔内管理が大変重要ということに気付きました。その研究結果を、電子書籍にまとめて、発刊していた時期もあります。 ここでも、ときどき呼吸法や歯周病ということで、お話しています。 今日から、少しでも皆さんのお役に立てばと、いくつか解説しますね。 当時、やっていた事を列挙すれば、 1.夕食後のみ、『つぶ塩』歯磨きして、ヒノポロン軟膏でマッサージ △効果あったかも 2.夕食後のみ、抗生剤を1錠内服継続 × 継続不可能 3.乳酸菌製剤を1日1回1g内服 効果不明 4.口腔内管理・呼吸法を工夫 おそらく◎ 効果あり 数ヶ月~半年後経ち、様々な方法を試したのち、再度歯医者受診。以前ボロカスに言われた歯医者の先生(女医さんです)がいきなり『先生(Uromaster)は、私のこころの支えです!』詳細省略大変褒めてくれました。良くなった秘密はどうも口腔内管理、呼吸法にありそうです。以後も改良を重ねて、今に至っています。寝る前1回の歯磨きと工夫を重ねた方法で、10年前より改善はしても、悪化は認めていません。 歯茎に問題がある人、歯がなくなりつつある方、そうでない方もお年玉(?)ということで、参考にしてください。 『呼吸法と口腔内管理』ということで、数回に分けて、解説しますね。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2022年01月09日
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◆◆ 個別化医療への先駆け ◆◆ 最近の前立腺がんの診断・治療の話題の中心は、個別化医療(プレシジョンメディシン)です。 『個別化医療』というのは、患者さんやがん組織の状態を調べて、患者さんそれぞれに適した治療を行うというものです。 テーラーメイド治療、和製英語でオーダーメイド治療とも言われます。 前立腺がんといっても、単一の疾患ではありません。前立腺がんは、人それぞれで顔が違うように、多様な顔を持っています。前立腺がんの組織はHeterogeneity(不均一性)を持っていて、おとなしいがんもあれば、急激に増殖・転移・進行する放っておけないがんも発生します。同じ患者さんの前立腺の中にも性質が異なるがん組織が多発していることもよく見られます。 前立腺がんの種類により、―――――――――――――――――――――――内分泌療法の効果が十分長期間期待できるもの内分泌療法の奏功期間が短いもの、全く効かないもの抗がん剤治療での効果が期待できるもの前立腺がんで用いられる治療で効果がないもの前立腺がん治療に一般的には用いられない抗がん剤治療で、効果が期待できるもの ―――――――――――――――――――――――これらを治療前に、前もって知ることができれば、無駄な寄り道をせずに治療を受けられます。 今までは、平均点の高い治療をまず行って、効果がなければ、次の治療を試すという状況でした。良ければ、『結果オーライ』というわけです。 しかし、一般的な治療に抵抗し、急速に悪化進行するタイプの転移性前立腺がんの患者さんは、ゆっくり治療する時間がないかもしれません。自分の前立腺がんにあった治療法が見つかる前に手遅れになっては困ります。 個別化医療が進めば、効果が期待できない治療は、行う必要がなくなります。効果が期待できる治療を、時間の無駄なく選択することができるようになります。 患者さんは、人それぞれで顔が違うように、遺伝子情報、体質、個性を持っています。前立腺がんも、個別の遺伝子情報、個性を持っています。 患者さんを個別に、そして、前立腺がん組織を個別に精査して、いちばん効果が出やすい治療を選択するのが、『個別化医療』とよばれるものです。前立腺がんに関しては、残念ながら言うのは簡単ですが、実際は簡単ではありません。しかし近年、ようやく『個別化医療の先駆け』といわれるものが登場してきました。 1.BRCA遺伝子変異-リムパーザ(一般名:オラパリブ) 2.MSI-High - キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ) 3.PSMA陽性 - 177Lu/225Ac-PSMA治療 日本でまだ受けられない治療もありますが・・・ 前立腺がん以外の臓器のがんでは、かなり以前から、個別化医療は進んでいます。 まだ始まったばかりで、安価で簡易にできる検査とはいえません。しかし、ハイスピードで臨床応用できる体制が整えられてきています。 たしかに、個別化医療を受けることができる患者さんの数は多くはありません。 患者さんの数は限られていますが、ものすごく効果が出ている患者さんがいるのも事実です。 BRCA遺伝子変異陽性やMSI-HighやPSMA治療など個別化医療の展開はこれからますますひろがっていくと期待できます。あなたに当てはまる可能性は、まったくないわけではないのです。期待しましょう!興味がある方は、電子配信を参考にしてください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2021年11月21日
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◆◆ アンジェリーナ・ジョリーさんと前立腺がん ◆◆ 最近の前立腺がんの話題の中心は、個別化医療(プレシジョンメディシン)がんゲノム医療です。 今までの治療は、前立腺がんをひとくくりにして、平均点の高い治療を選択していました。前立腺がんが見つかって、治療を行う場合、患者さんの状態、がんの進展状況で、その時点での平均点で効果が期待できる順番に、治療を選択していました。 『個別化医療』というのは、患者さんやがん組織の状態をそれぞれ調べて、患者さんに適した治療を、個別に判断するというものです。 前立腺がん以外の臓器例えば肺がんなどでは、かなり以前から、個別化医療は進んでいます。がんの患者さん自身、もしくはがん組織の性質を調べて、それぞれに適した治療を行おうというものです。 男性のがんである前立腺がんと女性である米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんと一体どういう関係があるの?と思われるかもしれません。これから説明しますね。 <患者さんの遺伝子情報(生殖細胞系列細胞変異)>がんの患者さん自身、もしくはがん組織の性質といいましたが、患者さんの持って生まれた性質、遺伝情報は、親から引き継いだものです。このような遺伝子情報を、生殖細胞系列細胞変異と呼びます。母親と父親から受け継いだ遺伝子、生殖細胞系列細胞変異とがんの発生の関連がわかってきました。親から受け継いだ遺伝子には、他人とはちがう個性があります。一部の遺伝子は、親から引き継いだ後、病気、あるがんの発症と関連していることが、だんだんわかってきました。遺伝という言葉ですぐ思いつくのが、血液型ですね。A型の夫婦からはB型の子供は生まれません。 優性遺伝、劣性遺伝ということばもあります。引き継ぐと必ず現れるものが優性遺伝ですし、一定の条件で現れるのが劣性遺伝です。最近は、遺伝形式を表す「優性遺伝」「劣性遺伝」という医学用語を「顕性遺伝(優性遺伝)」「潜性遺伝(劣性遺伝)」に言い換えるようです。優性、劣性という言葉が誤解や偏見を招きやすいということでしょう。がんと関連するこのような遺伝子変異で有名なのは、米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんの話です。アンジェリーナ・ジョリーさんは、遺伝子検査で、BRCA遺伝子変異陽性と診断されました。このBRCA遺伝子変異陽性は顕性遺伝(優性遺伝)といわれています。子供の半分以上はBRCA遺伝子変異陽性となる計算です。アンジェリーナ・ジョリーさんは、遺伝子「BRCA」に生まれつき異常があり、何もしなければ87%の確率で乳がんに、50%の確率で卵巣がんになると診断されました。 ジョリーさんの母親は49歳で卵巣がんと診断され、乳がんも発症し、56歳で亡くなっています。つまり、ジョリーさんは、高い確率で、将来的に、乳がん、卵巣がんになると診断されたわけです。がんが発症して、手遅れになる前に直そうというわけで、まず、両側の乳房摘出を行いました。また、ジョリーさんの母方の祖母が卵巣がん、叔母も乳がんで亡くなっており、卵巣に初期のがんの兆候がみられたこともあって、卵巣・卵管の予防摘出手術に踏み切ったということです。 3人の実子と3人の養子の存在も決断に大きく影響を与えたようです。自分の遺伝子を調べて、将来なりやすいがんを知ることで、先手を打ったというわけです。これは当時、話題になりました。病気・がんにもなっていないのに、そこまでやっていいのかというわけです。まだ病気・がんにもなっていないのに治療していいのかということです。 実は、ジョリーさんの同じ、「BRCA」に生まれつき異常があると、男性においても、乳がんや膵臓がんや前立腺がんになる確率が高くなります。BRCA遺伝子変異陽性がある男性は、前立腺がんなどのがんになる確率が高いので、健診などを早めに行うことが推奨されるようになりました。BRCA遺伝子変異陽性の前立腺がんでは、悪性度が高く、進行がんが多く、治療もなかなかうまくいかない患者さんが多いと報告されています。一部の前立腺がんで、BRCA遺伝子変異との関連がわかってきました。但し、前立腺がんのすべてにこのBRCA遺伝子変異がみられるわけでは、ありません。最近使えるようになった、『オラパリブ』は、BRCA遺伝子変異陽性の前立腺がんに効果が認められています。というわけで、がん関連の学会では、いまゲノム医療、個別化医療という話でもちきりになっています。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2021年10月24日
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◆◆ 訪問していただきありがとうございます。◆◆ ブログの更新を怠っているにもかかわらず、一昨日9/13は約1,000人の方が、昨日9/14は約800人の方がこのブログに来てくださっています。 重ね重ねありがとうございます。 読んでくれているブログのベスト5を調べてみると ――――――――――――――――――1.2013年12月15日◆◆ PSA高値(100以上)で見つかった前立腺がんの方の生存率 ◆◆ 9/13のアクセス 19トータルのアクセス 26618 2.2013年11月24日◆◆ 前立腺がんの骨転移の病態と治療 ◆◆9/13のアクセス 18トータルのアクセス 13686 3.2017年09月24日PSAが高値(1000以上)で見つかった前立腺がんの患者さんは?9/13のアクセス 15トータルのアクセス 21173 4.2019年11月10日PSAが1000以上で見つかった前立腺がんの解析9/13のアクセス 14トータルのアクセス 6618 5.2013年11月18日◆◆ PSAの値と前立腺がんの骨転移 ◆◆9/13のアクセス 11トータルのアクセス 22508 かなり古いブログ記事を、さかのぼって読んでいただいていることがわかります。 読まれている記事は、『進行前立腺がん』『転移性前立腺がん』の話題が多いようです。おそらく進行前立腺がんの患者さんやご家族の方が、きちんとした情報を求めているのだと思います。 前立腺がんは死なない病気といわれています。 そうでしょうか。 ステージ4でみつかれば、現時点では、根治は困難です。ステージ4の患者さんでは、5年生存率は6割前後となり、長期間生存できるステージ1~3から、急激に生存率は悪くなります。 私Uromasterの病院で調べた、PSA100以上でみつかった前立腺がんの患者さんは、古いデータですが、5年生きる確率は約50%でした。今はもう少し長くなっているかもしれませんが・・・ 進行前立腺がんの患者さんが闘病されていて、治療に悩まれて、ネットで私Uromasterのブログにたどり着いているものと推察します。 できるだけ客観的なデータをもとにブログを書いてきました(そうでないテーマもありますが・・・)。 進行前立腺がんの治療選択肢は増えていて、患者さんには朗報です。しかし、進行前立腺がんであれば、残念ながら、現時点で根治療法はありません。簡単に言えば“治らない”、“死ぬまで付き合わなければならない”ということになります。 個別化医療が確立されていない状況で、患者さんにとって、最善の治療法を選択することは、簡単ではありません。 実は、泌尿器科の主治医にとっても治療の選択、順番は、実は難題です。 患者さん、そして、ご家族の方は、それでも当人にあった最適・最善な治療を探されていると思います。 私Uromasterは、コロナ下ですが、仕事であちこちに行く機会があります。その折、患者さんと積極的にお会いして、相談に乗るようにしています。 そのときよく感じるのは、主治医との意思疎通の問題です。もう1つは、言いたくありませんが、主治医の勉強不足です。 言い訳にはなりますが、泌尿器科医は前立腺がんの治療だけに携わっているわけではありません。腎がん、腎盂尿管膀胱がん、精巣腫瘍、副腎がん、後腹膜腫瘍、前立腺肥大症、腎不全、透析、腎移植、尿路結石、排尿障害、神経因性膀胱、過活動膀胱、尿路感染症(性病も)、先天性疾患(停留精巣など)、男性不妊症などなど。 泌尿器科医すべてが、前立腺がん専門医ではないのです。 泌尿器科医は基本的に外科医です。 病院では、毎日のように手術を行い、術前術後の管理に集中しています。そのようの毎日の中で、前立腺がんの患者さんをみていかなければなりません。 一方で、前立腺がんの診断治療は、日進月歩です。昨今では、遺伝子検査も治療選択に必要となっています。 そうです、前立腺がんの診断治療は、簡単ではありません。 前立腺がんの進行状態、病態が1つではないこと、患者さんそれぞれで、年齢も、併存疾患も、人生観、価値観も、置かれている社会的環境も違う。 病気と闘い、病気に専念し、できるだけ長生きしたいという方もいれば、今の生活を、仕事をおろそかにしない生き方、生活の質を重視した生活を求める方もいます。 その中で、患者さん自身が満足できる治療選択は容易ではありません。病状が悪化していればなおさらです。治療選択で難しいのは、治療してみなければ、効果がわからない、予測できないことです。 大きな病院の外来で、ゆっくり主治医の先生と話す機会がないことが皆さんの悩みなのはよくわかります。 私自身、たくさんの外来の患者さんに、多くの時間は費やせません。午後からは、手術や処置が予定されています。緊急を要する患者さんは別ですが、落ち着いた患者さんには5分診療となってしまいます。 電子配信を始めてから、自分の患者さん以外の全国の様々な患者さんの相談にのることが多くなりました。私Uromasterもできるだけ、直接お会いして、できるだけのアドバイスができたらと思っています。 多くの患者さんで、自分の病態、病識がないことがよくありました。治療期間が長いにもかかわらず、グリソンスコアという言葉さえ知らない患者さんがいます。主治医からの詳細な説明がなかったか、理解できなかったのだと思います。自分が『進行前立腺がん』であるという認識がない患者さんもいます。自分の治療法が理解できていない方も多いです。 高齢な方が多いのも前立腺がんの特徴で、なかなか理解が困難なのもよくわかります。 私は、『前立腺がん』という病名を患者さん本人にはっきり言いますが、リュープリンなどの注射を定期的に受けていながら、自分が『前立腺がん』であることを知らない患者さんにも遭遇しました。前立腺がんは高齢者の病気ですから、そういう状況もあり得ます。そういう場合、家族に病院に来てもらいます 家族のサポートが重要です。 今後は、できるだけ、ブログや電子配信、さらには直接、患者さんご本人やご家族とお会いして、できるだけのアドバイスと情報発信に努めたいと考えています。 電子配信を通じて、患者さんとお話しする機会を設けています。相談は無料です。是非、Uromasterを活用してください。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2021年09月15日
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◆◆ 空をみて ◆◆ 私Uromasterは、14階のマンションに住んでいます。外出のたびに、またベランダからも空が見渡せます。 田舎の町ですから、周りに高いビルはなく、空が澄んでいれば、北は背振山地、南は、遠く長崎の雲仙岳まで見渡せます。 晴れたり曇ったり、雨だったり、毎日一つとして同じ景色はありません。そのため、空の景色に、その造形に驚かされます。 時々変な感覚に襲われます。 ここは地球という惑星の空・・・こんな景色を見ることができる自分 なんという奇跡の存在(少し大げさですが)。 こんな景色を見られる自分は、ひとりのちっぽけな人間ですが、もしかして素晴らしい幸運の元、奇跡の存在、幸運な生き物ではないか、何と言ったらいいのでしょう。 たまたま、この地球に生を受けて、こんな景色を感激できる理解できる自分がとてもいとおしくなります。 一人の男性が、一人の女性と結婚して、2人の子供ができたとします。 その場合、男性としては、生きている間に生産された限りない精子、限りない可能性(遺伝子情報)の中で、結局、たった2個の精子を使ったことにしかなりません。女性としてもたった2個の卵子を使ったに過ぎないのです。 ほとんどの精子と卵子は、使われずに終わってしまいます。私の単純な計算では、一人一人の生命は、約83兆2500億分の1の確率、組み合わせのなかで生まれています。宝くじが当たるどころの確率ではありません。 そんなすごい確率を勝ち抜いて、生を受け、私たちは今生きて、空を見ています。 この地球の空の景色を見ながら、この時間が、すぐに終わらないことつい願ってしまいます。 いつか見られなくなる時が来るのでしょう。 他の惑星で、こんな景色をみて、同じように感じている生き物がいるのでしょうか?この空の景色を見ることができなくなる自分をなかなか想像できません。 死んでしまえばこの景色は、みることはできないのです。 一人ひとりが持っている時間は限られていて私個人も、人類も、地球も、太陽系も、そして、この悠久の宇宙も、必ずいつか終わりの時がきます。 私の祖父母も両親も、亡くなって久しくなります。 次は私の番です。 順番は守らなければなりません。 死について文章にしたことがあります。死は恐ろしく、生を受けた一人の人間として、無視できない避けられないことと理解しています。 逃れるすべは今のところありません。 私Uromasterは、医業を生業としていて、たくさんの方の『死』をみてきました。 家族の前で、脈のないことを確かめ『ご臨終です』と時計を見ながら、何回告げたでしょうか。 年を重ねると、老化が起き、疾病で、自分の『死』を意識し、そして、自分の『死の後』を、考えなければなりません。 人間にとって、自分の死や、死んだ後の世界を考えることほど、つらい作業はありません。 家族や友人との別れ遺産相続医学生への解剖提供脳死・献腎移植のドナー 自分の死んだ後の世界を想像することほど、つらい『試み』はありません。 しかし、残念ながら、自分の『死』は、必ずやってきますし、悠久の宇宙の時間の中では、一瞬の出来事です。 必ずいつか終わることを知っているから、人間は、死をおそれます。そこが動物と人間の違いです。https://plaza.rakuten.co.jp/tennisoyabaka/diary/201602210000/ そうはいっても、様々な組み合わせの中で、素晴らしい奇跡の結果で人間として生れ出た私たち。地球という、生き物が住める貴重な惑星に生まれた奇跡。人間として生を受けた奇跡。両親から、途方もない可能性の中から生を受けた幸運な私たち。 奇跡の存在と言えるでしょう。 知性のある私たちは生まれた喜びに浸る間もなく、死の恐怖に苛まれます。 生と死の繰り返しの中で、今を生きている幸せをかみしめる時間が少ない私たち。 残り少ない時間。老化と病気。 死を恐れるが故に、生きることに執着する私たち。 死の恐れをいだくことができる人間に生まれたことが恐怖の根源とはいえ、生を受けた奇跡を喜ぶことを忘れてはいけないと思います。 生を受けた奇跡を喜ぶことをどう示すか。 そして、病気などで、『死』を、そして残された時間が予測できた時の苦しみは、悲しみはどう対処したらいいのでしょう。 たくさんの『死』をみてきたはずなのに、自分の『死』が近づいてきた“今”、『死』とどう向き合っていけばいいのか、私も、答えはもちろん持ち合わせていません。 皆さんも、『死』と『生』にまさに向き合っていると思います。生を受けた私たちにとっては、避けられない『死』ではありますが、 『生を受けた私、 今』を享受・感謝したい 享受・感謝の仕方は、人それぞれでしょう。 簡単ではありませんが。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2021年08月11日
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◆◆ 西郷輝彦さんがシドニーに出発 ◆◆すでにご存じでしょうか?歌手で俳優の西郷輝彦さんが、前立腺がんの治療のためにシドニーに向かわれました。ご本人がユーチューブに動画で発表されています。西郷輝彦公式チャンネル Telstar Vega 私Uromasterは詳しい事情は分からないのですが、おそらく日本では、受けられない治療と思います。『PSMAの放射線同位元素による治療』と思います。 以前から私Uromasterもこの治療に注目してはいました。当初は、劇的な治療効果で、びっくりして、このブログや電子配信でも、かなりの回数取り上げてきました。このブログで、最初に解説したのは、2016年11月です。『 ◆◆ 画期的診断治療法か!? ◆◆ 』電子配信でも、たびたび紹介解説しています。最初は、2016年12月に4回にわたって、配信しています。 この治療は、日本では、いまだに行われていない治療ですが、欧米や一部のアジア地域では、すでに、認められた治療です。2016年当時に、素晴らしい治療効果が発表されて、私Uromasterもそれ以降、注目して、2018年11月2019年10月2020年1月と2月にも解説しています。 私Uromasterの電子配信の読者で、この治療を受けられた患者さんのご家族(奥様)と、以前、数人、直接お会いして、相談にのったことがありました。 どの患者さんもオーストラリアでの治療でした。西郷さんもおそらく、この『PSMA放射線同位元素治療』を受けられるのではないでしょうか。西郷さんが言われているように、現在、日本では受けられない治療です。治療費や滞在費や旅費が高く、普通の患者さんには、現時点では難しい治療です。西郷さんは、ご家族とオーストラリアに長期滞在して、この治療に取り組むようです。 まずは治療に専念されてください。 お元気に戻ってきて、ご本人が言われるように新たなご活躍を祈ります。私たちに勇気と希望を与えてくれることを心から願っています。 面白かった、ためになったという方は、クリックしていただけると嬉しいです。 前立腺がん治療の最前線の電子配信この配信は、進行前立腺がん、転移性前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、再発性前立腺がんの方を対象にしています。ご希望であれば、過去のバックナンバーも見ることができます。
2021年05月23日
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