◆◆ 前立腺がんのオリゴ転移に対する治療戦略 ◆◆
久しぶりの、ブログ更新です。
申し訳ありません。
前立腺がん治療は、今激動期です。
Uromaster
も、最新の情報を提供し、
何とか、本当に効果がある治療を、
患者さんに提供したいと考えています。
今日は、『オリゴ転移』についてお話します。
<オリゴ転移前立腺がんとは>
『
オリゴ転移
』という言葉があります。
オリゴというのは、ギリシャ語で「少ない」という意味です。
オリゴ転移前立腺がんというのは、
『転移が少ない前立腺がん』
ということです。
オリゴ転移は、臨床上、数が限られた転移が検出され、
転移の数が、一般的には 1 ~ 5 個の場合をそう呼びます。
<
MDT
とは>
オリゴ転移の患者さんに対し、
オリゴ転移部位を、放射線などで叩くことにより、
全身治療開始を遅らせ、
全身治療の副作用を軽減することができる可能性があります。
転移部位への治療を、
MDT
(転移に対する治療)と最近よぶようになりました。
M は metastasis 、 D は directed 、 T は therapy (または treatment )
です。
MDT
:
Metastasis-directed therapy
日本語にすれば、『転移指向性治療』とでもよぶのでしょう。
前立腺がんのオリゴ転移に対しての治療の中心は、
MDT
転移部位への放射線療法でした。
オリゴ転移の、 手術による転移巣切除
の効果は、
どうなんでしょう?
私
Uromaster
は、まぐまぐの配信を毎月
4
回行っています。
2024
年3月は、オリゴ転移に対する
MDT
治療について、
詳しく最新情報を紹介しました。
2024/03/10 去勢感受性前立腺がんへの MDT (転移指向性治療)
2024/03/17 去勢抵抗性前立腺がんへの MDT (転移指向性治療)
2024/03/24
オリゴ骨転移に対するゾーフィゴ治療と
MDT
の併用
今まさに、オリゴ転移に対する
MDT
の効果の検証が行われています。
<腎臓がんの場合は?>
唐突ですが、 『腎臓がん』
の話をします。
腎臓がんも泌尿器科で扱う悪性腫瘍、がんです。
転移を伴う形で見つかる場合も多いです。
患者さんがお元気であれば、
たとえ転移があっても、
おおもとの腎臓の摘出手術をすることが一般的です。
腫瘍が小さければ、腎臓を 部分的 に切除します。
腫瘍が大きければ、まるごと腎臓を摘出します。
転移があっても、腎臓を摘出することで、
転移部位が小さくなったり、消失することが、稀ですが起こることがあります。
転移があっても、状況が許せば、腎臓摘除を行います。
手術により、
実際の腎臓がんの組織を確認することもできます。
腎臓がんの転移で多い部位は、 肺と骨 です。
腎臓がんは比較的ゆっくり進行するものも多くあります。
転移部位で多い肺への転移は、
1~2個であれば、手術を勧めることも多く、
手術による転移の切除でいい効果がでることが多いです。
腎臓がんの場合
、
進行がゆっくりで、患者さんの体調が良ければ、
そして、転移部位が手術できる場所であれば、
積極的に手術を推奨します。
進行腎臓がん診療の中では、
免疫チェックポイント阻害薬などで効果がある患者さんも多く、
転移の数が少なく、進行もゆっくりしたものは、
免疫チェックポイント阻害薬で落ち着いた時点で、
手術でのオリゴ転移の摘除が考慮されます。
転移巣摘除、英語では
metastasis
(転移)を摘除という意味で、
Metastasectomy
メタスタセクトミーという言葉が、
診療の場で用いられます。
腎臓がんでの肺転移は、肺における転移場所が末梢(端)、肺の端っこにあれば、
比較的安全に手術ができることから、手術が可能で、
患者さんが麻酔・手術に耐えられる状態であれば、
積極的に患者さんに勧める治療です。
もちろん、あちこちに転移がある場合は、
メタスタセクトミーは、効果は期待できません。
腎臓がんと違い、
今行われている、
前立腺がんのオリゴ転移に対する治療の中心は、
MDT
、放射線療法でした。
手術による、 Metastasectomy メタスタセクトミーは、
前立腺がんでは、標準治療とはまだいえない状況です。
高齢者が多い前立腺がんで、転移部位にもよりますが、
手術による、メタスタセクトミーは患者さんの負担が大きすぎます。
診断時でのオリゴ転移の場合は、
前立腺自体への放射線療法や前立腺全摘術の効果が期待されています。
ともあれ、前立腺がんのオリゴ転移のメタスタセクトミーは簡単ではありません。
理由の
1
つとして、
前立腺がんの転移部位として、
骨転移が多いことがあげられます。
骨転移部位を手術で摘出すると、
それが手であれ足であれ、生活の質
QOL
が落ちてしまいます。
摘出部位が、手であれ、足であれ、切除すれば、
手は使えなくなりますし、自由に歩けなくなります。
まして、
背骨(脊椎)の転移を切除摘出は、不可能に近いですね。
但し、オリゴ転移の数が1~2個で、
手術が可能な部位で、完全に摘出可能であれば、
そして、生活の質
QOL
に影響を与えない部位であれば、
患者さんによっては、考慮してもいいかもしれません。
こういうケースは、前立腺がんでは、実は、まれです。
しかし、
進行前立腺がんで、そしてオリゴ転移の患者さんで、
メタスタセクトミー(
Metastasectomy
)を受けることが可能な患者さんがいることは、
皆さんに知ってほしいと思います。
そして、メタスタセクトミー(
Metastasectomy
)で、
完治に近い恩恵を受けることができる患者さんがいることも、
知っていただきたいと思います。
まぐまぐの配信で、果敢にメタスタセクトミー(
Metastasectomy
)に
トライした患者さん
F
さんを紹介しています。
F
さんは、去勢抵抗性前立腺がんの診断でした。
DWIB 法で、リンパ節転移が判明しました。
主治医から
タキソテールの化学療法を勧められていたようです。
相談を受けた
Uromaster
は、
メタスタセクトミーを強く勧めました。
メタスタセクトミー後、手術後、
上昇した PSA が、劇的に、低下しました。
メタスタセクトミーにより、明らかに、
予後(生存期間)を改善したと考えられる患者さんです。
F さんが、メタスタセクトミーした部位は、病理診断で、
やはり、前立腺がんの転移でした。
F
さん
は、
PSA
も低下し、今後の治療に、今後の生活に、
非常に前向きになれたと、連絡してくれ、
感謝していただけました。
もちろん
PSA
が劇的に低下したことは、
明らかにメタスタセクトミーの効果でした。
前立腺がんは、比較的高齢者の疾患です。
手術を含め、強い治療は、
身体を傷めることから、
メタスタセクトミーの選択の判断は、簡単ではありません。
しかし、できる治療を、適切な時期に行う判断、選択は、
非常に重要です。
まぐまぐでは、
果敢に挑戦した横浜の
F
さんの詳細を紹介しています。
私
Uromaster
も、患者さんを通して、
勉強させていただいていることを、
強く実感させていただきました。
興味がある方は、是非、
まぐまぐに目を通していただければと思います。
お勧めした
メタスタセクトミーを受ける決心をした、
F
さんの勇気には、正直、びっくりしました。
そして、
Uromasterの意見を素直に耳を傾けてくれたことには、
感謝しかありません。
今後の治療で、
F
さんがますます前向きに前立腺がんに向き合えることを、
切に願います。
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