トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2007/02/07
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カテゴリ: 音楽
bgm
02 Music Plans
03 Rap Phenomena
04 Happy End
05 1000 Knives
06 Cue
07 U.T
08 Camouflage
09 Mass
10 Loom

■発売日に買ったクチである。最初に聞いた時の失望感はかなり大きかった。「BGM」とするなら彼らの曲はそれこそ大運動会の花形種目に被さる高揚感を演出するものというイメージだったし、深夜の麻雀のノリノリ感を誘発する起爆剤というイメージだった。「ライディーン」や「ナイスエイジ」がそうであったように。

■しかし、このアルバムには緩んだ何かを同じ方向に向けるような号令的な楽曲は皆無で、ひたすら個に向けて発信されるノイズにも似た内省的な音楽に終始している。な、身体が動くだろ、ってみんなして踊っちゃうテクノポップではなかったということだ。

■当時のみんながYMOに求めていたものは間違いなくこんな音楽ではなかった。それまで発表されてきた4枚のアルバムの流れからみても、裏切られたという感じは拭い去れなかった。だからわたしは3回だけ聞いてしばらく(何年か)このアルバムを封印することになった。

■その後、教授は「B2ユニット」で同じように歪んだ音楽を鳴らし、ユキヒロは「ニウロマンティック」で退廃的なサウンドを鳴らし、細野は「フィルハーモニー」で宇宙みたいな音楽を奏でた。結局どれも始まりはこの「BGM」だったんじゃないか。

■ニューウエイブ以降、音楽の鳴り方がとても聞こえにくいものになって、ヘッドフォンを使って個人の頭に向けて発信されだした時、私たちが求める音楽の種類はいくらか変容していったのだと思う。そこに求められるのはある種の処方箋のような個人の病に対する治癒を目的とするものに変わっていった側面もある。

■わたしにとって「BGM」の再評価はそうやって少し遅れてやってきた。M1「Ballet」のもたらすムードが不安よりもむしろ仄かな明るさに変わっていき、M4「Happy End」のつかみどころの無さは心の解放かもしれないなんて感じるようにもなった。それは「Mass」から「Loom」に至る終盤の流れにしても同じだ。

■制作当時坂本龍一は極度のスランプに陥っていたと聞く。わたしにとって、YMOの魅力の大部分は彼の編曲とメロディセンスだった。それが突出しない感じで出来上がったこの「BGM」は全てにおいてバランスがとれている。特にユキヒロの楽曲ならびドラムスが旧作よりも輝いているのだが、必ずしも前に出すぎている印象はない。

■「BGM」とはよく言ったものである。その音量はTPOによって最大に振れたり、最小に振れたり、自由だ。ただこの音楽はマスに向けて与えられるものではなく、ひたすら個人に向けて発信されたドラッグに近い。

■三夜連続YMO祭りは終了。もう当分、このバンドのことは書かない。でもそれぞれのソロアルバムなら、まだまだネタは尽きないのである。





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Last updated  2007/02/08 12:49:24 AM
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Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…
Mr.Zoku@ Re:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) 今年出た[Deluxe Edition]は聴かれました…

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