いつも行っていた美容室のマダムは、
サービスのつもりで
耳元で世間話を大声でしゃべり続けるし、
うるさくてたまらなかった。聞くだけでくたびれる。
それで、美容室を変えた。

今日は、新しい美容室をみつけて行った。
私を担当してくれた美容師さんは４７才。

無口なのか、静かにシャンプー、カットとつづく。
中盤にかかって、私がちょっと水をむけてみると
彼女も、
はじかれたように話はじめた。

自分はこの美容室に５年ほど働いているが、
いまだにアルバイトの身分だ。
夫は、大工であるが、今、全く仕事が無い。
むくつけき男が５人、会社でじっと仕事を待つだけというのも辛く、
頭領が、
家で待機してくれと言ったそうで、
もう１０日ほどこたつの中でごろごろしているそうだ。
夫に仕事が無いといっても、小学生の娘が２人いるのだ。
妻は、子供の為だったら、夜だって働くぞと思っているが
夫は、何もしようとしない。
男って、何か、プライドがあるのか、つぶしがきかない。
ひ弱だ。
妻は、疲れ切って家に帰ってきても、
働かない夫がいるのをみて、
チクチク言いたくなって腹も立つ。
などなど…

可哀想に、
聞いていて、ほんとうに涙が出る思いだった。

髪の仕上がりは、だめだった。
暗い気持ちで
美容室を出た。

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