2011年11月19日
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カテゴリ: 洋画 [アクション]

「Justice(正義)」を問うハリウッド的娯楽イベント作
ダークナイト

THE DARK KNIGHT
アメリカ(2008年) 152分

■ 監督 クリストファー・ノーラン
■ 出演 クリスチャン・ベイル/ ヒース・レジャー/ アーロン・エッカート
     / ゲイリー・オールドマン/ マイケル・ケイン



2010年のベストセラー書籍に
ハーバード大学教授 マイケル・サンデル 著書の
「(原題:Justice) これからの「正義」の話をしよう」
という哲学書が入っていた事で話題になりましたが

この本の中で特に眼を引いたのは
「一人を殺せば大勢が助かる状況であなたはその一人を殺せるか
そこに正義はあるのか」などの

哲学を知らない者にも分かりやすく同時に難しい
現代社会に突き付ける様な答え無き命題の数々で

この本の出版を期に
これらの命題を共に考えて現在抱える問題と皆んなで向かい合って行こうという
ある種の イベント的意識 が全米で拡がって行った所に

この本がベストセラーになった背景があった様に感じて
興味深く思ったものでした。


さて、

「多数の要求が少数を上回った時それは正義か否か」
がクライマックスで描かれる本作は

かつて無い高画質撮影による
ハリウッド的スペクタクルな超弩級アクションに圧倒されながら

「Justice(正義)」 の著者マイケル・サンデル教授の命題に
決断を迫られる様な感覚を覚える

「2時間半の旅」 を体験する壮大なイベントとも言える
娯楽アクション超大作作品です


監督は、夢の世界を刺激的な映像で描いた近未来サスペンス巨編
『インセプション』 の クリストファー・ノーラン


-STORY-


ゴッサムシティーに現れた犯罪者ジョーカーは
バットマンを挑発するかの様に悪行の限りを尽くし、
新たに派遣された正義感の強い検事ハーベイ・デントが真正面からジョーカーに立ち向かう。

デントに強く感銘したバットマンは自らの役割を終える決心をするが・・・


-解説-


ファンタジー路線をアクションに昇華させ一世を風靡した
ティム・バートン 監督による『バットマン』シリーズは
回を重ねるごとに興行成績を更新する大ヒットシリーズとなりましたが

ダークファンタジー路線を強固に推し進めるバートン演出に
上層部が難色を示した事で ティム・バートンが手を引き

その後制作された4作目
(97) 『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』

アクション・スターの アーノルド・シュワルツネッガー
ヴィラン(悪役)として起用し 子供向け路線に変更して制作されましたが

結果的にファンの支持を得られず興行的には失敗をします

この失敗で打ち止めと思われたバットマンシリーズは
21世紀に入り鬼才 クリストファー・ノーラン 監督によってリブートされ
第1作(05) 『バットマン・ビギンズ』 の大ヒットに続いて制作されたのが

シリーズ史上初めて「バットマン」が付かない
本作(08)『ダークナイト』でした


紆余曲折を遂げ辿り着いた同映画は
バートン版までの単なる娯楽アクション映画とは打って変わり

200億に近い莫大な制作費を湯水の如く使い
映像作家ノーラン監督こだわりの
通常のフィルムよりも4倍以上も大きいフィルムを使った
「IMAXカメラ」 で撮影された
超高密度な映像で描かれる超弩級アクションに加え

タイトルにある通りダークな切り口で深層心理に訴えかける様な
重々しくアメリカの命題を突き付ける迄に変貌した
新感覚アクション映画とも言うべき作品となりました

(※Blu-ray本編に所々上下の黒フチの無い映像が出てきますが
それがIMAXカメラで撮影された部分)



前作『バットマン・ビギンズ』で
極限まで鍛え抜かれた肉体と人智を越えた技を手にしたブルース・ウェインは

巨大企業を運営する資産家でゴッサムシティーの名士という昼の顔を持ち
夜にはゴッサムシティーに暗躍する犯罪を撲滅するため
犯罪集団一味と対決し街の平和を守る
「バットマン」という裏の顔を持った

極端なまでな二重生活を続けてきました

「アベンジャーズ」の様な超人では無く
大金持ちである他は普通の人と何ら変わりのない生身の身体のブルースは

湯水の如く金を掛けた強化スーツや武器で完全武装をしながらも
悪漢と戦ってはその都度怪我をするという

正に身も心もボロボロになって
街の安全の為に凶悪な敵と日夜戦い続けてきたのですが

法を無視した自警的行為によって犯罪者扱いをされるばかりか

悪人を葬る度 人々の絶賛を浴び注目される一方で、
バットマンに挑戦するかの様に更なる凶悪な悪人達を次々と街に呼び寄せ

「ジョーカー」という強大な悪すら生み出すというジレンマに陥り

バットマンで居続ける為、愛よりも孤独を選択し
更なる二重生活に疲弊する日々を送ってきたブルースが

バットマンで居続ける為に自分は悪を欲しているのかもしれない
と悩み始めるのが

本作で描かれる柱となる物語となります。


心身ともに鍛え上げ、ハイテクスーツに身を包み、莫大な資産家のブルースは
地上の人間の中では最強とも言える人物なのですが、

両親を悪人に殺された苦悩を怒りに変えて乗り越えた代わりに
心の奥に巨大な闇を抱えた脆弱な内面を持っているという弱点を持っており

バットマンの活躍に呼応する様に暗躍しながら現れた凶悪な敵「ジョーカー」に
付け入られる様に精神を裂かれながら

倫理なき正義と、敵を必要としている自分に苦悩し、それと対峙して行く
アンチヒーローとしてのバットマンとなった
ブルースの孤独な戦いを 深いタッチで描いて行きます



ハリウッド映画は往々にしてその年の関心事を 映画化する傾向にありますが
敵に備える為に生み出した巨大な力が結果的に更なる敵を生む構図というのは

建国以来アメリカが抱え続けて来た 最大の悩みでもあります


保守派路線を強硬に取り続けたアメリカが、
オバマ政権誕生前にこの様な映画を生み出しヒットをさせ、
サンデル教授の「Justice(正義)」 がベストセラーになるのは

これらの問題に向き合おうとする米国の関心の表れとも言える様な
必然的な事であったのかもしれないと考えると

実に興味深いものがあります。


そして本作のクライマックスでは、
・・・物語の根幹に関わる事なのでここでは書きませんが、

「とある多数」 と 「とある小数」 との間で ある決断を迫られます

サム・ライミ
監督作の(02) 『スパイダーマン』 にも似た様なプロットがありましたが
アチラはスーパーヒーローものらしい 漫画的ド派手な結末となり、

本作では先程の「Justice(正義)」の内容さながらに
主人公と我々観客が現代社会を背景にした答えの無い命題を突き付けられ

力が更なる敵を生むこの様な命題を前に映画は、
漫画的描写に逃げずに ある「解答」を示します


それは我々現代人が苦渋の決断を迫られる時の 「現実的」 と称する
「正義」 無き行為を問うものなのか、

何よりも「人道」を重んじて 「倫理感」 を叫ぶものなのか

ラストでバットマンが出した「答え」が
その問の正しい解答となったのかどうか

これは本作が映画という枠を超えて今世紀のはじめにハリウッド映画が到達した、
答えなき「Justice (正義)」を問いた一つの境地に
観客が立ち会った五感を刺激する壮大なイベントとしても

その結末は、参加したご自身の眼でご確認ください☆


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最終更新日  2017年05月17日 06時37分00秒
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