ゆりママのヒミツ

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治療の経過【3】



私は前述の排卵誘発剤の投与の他に、「通水」と呼ばれる検査及び治療を受けた。卵巣と子宮をつないでいる卵管(卵子、精子の通り道)が詰まっていないかどうかを調べ、詰まっていたらそれを通りやすくする治療である。

検査で左右とも通りが悪いことがわかり、左の卵管はT医師の施術のおかげで通りやすくなったが、右の卵管は反応がない。日を空けて卵管造影(卵管に造影剤を通し、撮影する検査)をした結果、右の卵管は腸に癒着していて使えないことがわかった。盲腸炎などの下腹部の手術により癒着が見られることがあるそうだが、私は手術経験がない。先天的なものかもしれないが、はっきり断定できない、と医師は言った。いずれにしろ、この検査で私の不妊の度合いはなおいっそう重いということがわかった。

この治療は長時間内診しているようなもので、造影剤などが注入された瞬間に痛みが走る。治療後、病院からの帰宅途中のバスの中で冷や汗が出て、腹部の言いようのない鈍痛と闘いながら這うようにして家に戻った。2回目の時は、治療後待合いのソファーで横にならせてもらい、時間をおいてから帰宅した。

こうして転院してから3年。私の不妊治療は行き詰まってきていた。
T医師は「体外受精」を考える時期に来ていると言った。
この病院ではできないので、大学病院に紹介する、という話だった。
当時、費用は50万円前後。体外受精による妊娠の確率は約20%との説明を受けた。(1990年頃のことで、現在のデータとは違うと思います。)
これまでにも治療に費用がかかっていたこと、【2】で述べたように私が精神的に行き詰まっていたことなどから、夫と相談して「とりあえず」1度はチャレンジしよう。2回目以降はいつ「くぎり」をつけるか相談しながら治療を受けるかどうか決めよう、と話し合った。

私にとって長期に渡る治療のもうひとつのつらいことは、通院の日程だった。
排卵誘発剤の注射を受けるのには、平日、休日、祝日を問わない。
病院が休院のときは、休日外来の門をたたくことになる。(費用も平日より高い)他にも肝疾患の治療等によるインターフェロンの注射を受ける人達(この方々にも休祝日はない)と共に順番を待つ。皆、予約時間が決まっているが、急患があったりするので、時には半日がかりとなることもある。たまの休みに夫婦でリラックスすることなども大事なのだが、注射のスケジュールによってそうもいかない。
さすがの私も新年元日前後の通院はやめた。当然治療もひと月、先送りになる。私自身も年をとるのでそんな「ぜいたく」をしていていいのかと思わないでもないが、新年ぐらい通院のわずらわしさなく、迎えたかった。


その年、平成5年も押し迫った師走のころ12月に、私は下腹部に少し異変を感じた。
→つづく


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