現実の、すこし近く。
風の音にぞおどろかれぬる。
2013年06月16日
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今朝は昨日の新聞で見たばかりのレシピでスープ。
『とうもろこしとトマトの卵スープ』
料理家ウー・ウエンさんのレシピである。(彼女のレシピ、大好き)

この一品のコツは「最後にぐらぐらとスープを煮たて」
「とき卵を落としたら絶対にかき混ぜたりしないこと」
「スープが濁ってしまいます」「卵はスープの対流で自然に広がるのです」
ということであるが、これは要するに卵汁全般についての心得であるとも言える。
そのクラゲのように拡がる様子はまさしく人生の刹那のよろこび。(大げさです)



昨日は音楽師匠のコンサートに行く。
師匠のチームの演奏は本当に至福。(メンバーの多くがプロやセミプロの方たちです)
至福の幕間にわたしたち素人チームはまったく音楽的でない会話を声の無駄使いのように繰り返し、
終演のロビーで師匠に「どの曲が一番よかったですか」と訊かれて 「え」 言葉がない。

どれだどれだどの曲だよかったのはどれだどれだった?
脳内の残響へ潜んでいけば更に言葉を失う。

そうだ演奏側としてはメニューのどれがいちばん観客に届いたのか知りたかっただろう。
プロであるならば猶更。
しかし哀しいかな私はその問いに言葉を失い曖昧な顔で停止しているのみ。
誰かが言っている「全部よかったです」と。
他の誰かが言う「自分たちの歌ったことのある曲が印象的でした」と。
「二部の最初の歌が綺麗でした」と。
そのようなあまり具体的でないような言葉も私は私の中にまるで見つけることができなかった。

美しくステージ衣装を纏った師匠とそこでお別れしてからずっと
「どれが一番よかっただろう」「鳥肌のたったのはどの曲だったろう」
「次回は絶対にそう訊かれたら少なくともまともに応じられるように聴こう」
と考えていた。
馬鹿だなあ私は。



歌われた曲の中で日本語のもの、その歌詞をひとつ覚書として記しおく。

  『燃えるもの・・・・蜘蛛』  (引用者編集あり)

  枝と幹のあいだ
  そよ風に自分の重さをかしこくゆだね おまえが張った蜘蛛の巣に
  けさは朝露がまぶしくひかる

  だがおまえがその糸でもとめていたものは
  おまえのなかにだけあったまぶしさだ

  はきだしてはきだして
  はきだしてはきだして
  おまえはおまえの内部をさぐる

  だれが垂らしたつり糸か
  はてしないこがれのように 
  たぐってもたぐっても終わらないこんなふしぎなつり糸を
  たしかに深くおまえの底へ
  ひそかに垂らしたものがいる

  その糸のさいごのさいごのはしに
  炎のようにもえるもの
  それをおまえは星とよび
  ねがいねがいつづけて
  ただ一途にたぐる
  たぐる






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最終更新日  2013年06月16日 11時35分50秒
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