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このレポートはAutism Speaksのウェッブサイトからダウンロードできる。
このレポートの目的は、
自閉症自体の治療ではなく、
自閉症の患者さんが
かかりやすい様々な病気についてわかりやすく解説することだ。
内容は、
1)自閉症とてんかん
2)自閉症と消化器の異常
3)自閉症と不眠
4)自閉症と食事
5)自閉症と精神衛生
6)自閉症と突然死
からなっており、
自閉症の方々に起こりやすい病気をあらかじめ知ってもらって、
できるだけ健康な生活を送ってもらうための情報を提供している。
私は自閉症の専門家では全くないが、
このレポートの前書に、
「自閉症を持つ人たちの平均寿命が36歳である」
と書かれているのに驚いた。
これを知ると、自閉症を全身疾患として捉え直し、
少しでも健康な生活を送ってもらうことを目的とする
このレポート重要性は計り知れない。
本来ならAutism Speaksの許可を得て紹介するのが筋だろうが、
日本の人にも正確な情報が届くなら、
おそらく問題にはなるまいと、
私の一存で紹介することにした。
てんかんの発症率は1-2%だが、
自閉症の方ではなんと発症率が20-33%で、
就学前と思春期に発症のピークが見られる。
自閉症の約1/3を占める
知的障害(IQ70以下)を併発するケースで発症率が高くなる。
21編の論文をまとめた最近の研究は、
てんかんが自閉症の死因の7~30%を占めることが示されており、
自閉症の健康を守るための最優先項目になっている。
症状としては、
1)何かをじっと見つめる発作、2)筋肉硬直、3)四肢の不随意発作
などが特徴的だが、
もともとてんかん自体は
多様な症状を示すので診断は専門家に相談することが最も大事だ。
てんかんが自閉症に多いことをしっかり認識するのが、
患者さんや家族にとって重要な点だ。
てんかんの治療については専門家に任せることになるが、
症状を抑える抗てんかん剤は約2/3の患者さんに効果がある。
効かない場合は、迷走神経刺激、
あるいはてんかん発作の引き金を脳領域を外科的に除去する場合もある。
最近自閉症とてんかんを誘導する
様々な遺伝的異常が明らかにされてきた。
それぞれは、特定の遺伝子の変異による特異的な病気だが、
共通のメカニズムがわかると、
多くの患者さんに利用できる治療法の開発が期待できる。
2014年、自閉症児は正常児と比べて8倍、
慢性の消化器症状を示すことが明らかにされた。
腹痛、腹部のガス、下痢、便秘、排便痛などが症状で、
一般的に自閉症の症状が重いほど、腹部症状も重い。
特に、コミュニケーションが取りにくい子供で
症状が重くなるので注意が必要。
自閉症児のお母さんの観察にヒントを得て研究が行われ、
細菌の毒素が消化管と脳をつなぐ迷走神経を刺激して、
脳に影響を及ぼすことを発見している。
すなわち、腸の細菌叢は自閉症児の行動異常を悪化させることがある。
今年、自閉症児の腸内細菌叢を調べた研究が発表され、
1)毒素を持つクロストリジウムのような細菌の比率が高いこと、
2)このような細菌の増殖と腸内での炎症反応が
セロトニンなどの神経伝達物質のバランスを変化させることが示された。
この結果を受けて、
正常児の細菌叢を移植する臨床治験が始まっている。
これらの例からわかるように、
自閉症のケアは
常に消化器の異常の可能性を念頭に置いて進める必要がある。
その例として、
慢性の便秘:一過性の便秘と異なり、持続的で腹痛を伴い、
場合により直腸裂傷、痔、脱肛などに発展する。
コミュニケーションがうまくとれない子供では発見が遅れ、
重大な結果につながることがあるため、
子供の様子がおかしいと思う場合
(背中をそらせて弓なりの体位をとる、お腹を押さえる、歯をくいしばる)
場合は医師に相談する必要がある。
便秘は腸内細菌叢を変化させ、
様々な行動異常を悪化させることもある。
原因としては、
1)無グルテン食や偏食により食物繊維がとれない、
2)リスペリドン(リスパダール)などの向精神薬、
3)行動異常に伴うトイレ習慣の乱れ、が主なものだが、
腸管の奇形や運動異常など器質的変化も常に考慮が必要。
(無グルテン食が
自閉症の症状を改善するというレポートが出されているが、
統計学的にしっかりと計画された治験で
ほとんど影響がないことが明らかにされている。
特殊なケースを除くと、
無グルテン食など制限食により食物繊維不足になる方が心配)
治療は、薬剤治療と行動治療を並行して行うが、
家庭としてはできるだけ食物繊維をとらせるよう心がける。
慢性下痢:下痢が続く場合は様々な疾患を考えることが必要。
自閉症の場合に注意が必要なのは、
便秘が原因で下痢が続くことがある点だ。
原因を特定することが重要で、
もちろん医師の指示に従う。
胃食道逆流症も自閉症児にはよく見られるので注意が必要。
喉に引っかかった感じや胸焼けを訴える場合は
この病気が隠れていることがある。
結果、食が細ったり、
就寝前の食事を避けるようになる。
また、会話が難しい子供は、
自損行動や反抗的な態度として現れることもある。
治療は制酸剤、
ヒスタミン阻害剤、プロトンポンプ阻害剤で治すことができる。
ヨーグルトなどのプロバイオの効果は、
まだ動物実験段階で、統計学的に信頼に足る治験は行われていない。
宣伝に惑わされないことが重要。
明日は睡眠障害、食事についての内容を紹介する。
[ NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン(AASJ)
論文ウォッチ 2017年5月2日より転載]
【エイジングスタイル http://www.agingstyle.com/2017/05/16002007.html?p=all 】
とても貴重な提言ですね。
とても勉強になります。 🌠
264万アクセス達成しております。
いつもご訪問にコメント感謝です。
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