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本書は豊川市主婦殺人事件や
佐世保女子高生殺害事件などといった
未成年の凶悪犯罪に携わってきた臨床心理士や精神科医が、
医療少年院へ直接取材を行い、
少年たちの生の声から
発達障害者が凶悪犯罪を起こしてしまう
「プラスα」の原因を探っている。
そもそも発達障害とは、
「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、
学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、
その障害が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」
と定義されており、アスペルガー症候群は、
近年自閉症スペクトラム障害と呼ばれるようにもなった。
自閉症スペクトラム障害は
「対人関係(社会性)の特異性」という特性があるため、
孤立しやすく、
友人との間にトラブルが生じることも多いのだといわれている。
そして、精神科医・杉山登志郎氏の論文によれば、
あいち小児保健医療総合センターで
自閉症スペクトラム障害治療を受けている
265人(平均年齢9歳±6歳)を調査した結果、
行為障害と診断された者や犯罪で警察に逮捕されたことがある少年は
2016年の「犯罪白書」に記されている
10歳以上の少年10万人あたりの刑法犯検挙人員(少年の人口比)と比べて、
約12倍も多かったのだそう。
こうしたデータをもとに田淵氏は、
自閉症スペクトラム障害にきちんとした医療的・教育的な対応がなされないと、
極端な少年犯罪に結びつく可能性があるのではないかとの仮説を立てている。
その参考データとしてあげられているのが、
三重県立子ども心身発達医療センター長である西田寿美医師が
当時勤務していた県立小児心療センターあすなろ学園で調査した、
虐待に関する調査である。
それによれば、
虐待によってあすなろ学園へ入院治療していた子ども36人のうち、
注意欠陥障害や多動性障害、自閉症スペクトラム障害のある子どもは
53%にも上ったのだという。
このデータから分かるのは、
発達障害は虐待のリスク要因になっており、
発達障害を持つ子どもは
いわれのない暴力や虐待を受けている可能性が高いということだ。
そして、我が国は児童精神医療においては後進国であるため、
虐待で心に傷を負った子どもに対して、
適切な対処ができているとは言いがたい。
こうした悪循環こそが、
発達障害と少年犯罪の間にある
「プラスα」なのではないかと田淵氏は指摘している。
「ごく普通の真面目な生徒」による凶悪殺人。
それはいわば、彼らの心の悲鳴であるともいえるのだ。
田淵氏が考えた仮説は三重県伊勢市にある
宮川少年院に収容されている少年たちの生の声により、さらに真実味を増す。
ここに収容されており、
自閉症スペクトラム障害の可能性がある少年たちはみな、
事件前に友達からのいじめや親による虐待を受けていたり、
居場所がないと感じたりしていたのだ。
そして、どの子も田淵氏に自分の過去を話し終えた後は、
安堵の表情を浮かべていたのだそう。
こうした取材から読み取れるのは、
自閉症スペクトラム障害を持っている子どもたちが抱えている孤独の深さだ。
自閉症スペクトラム障害の子は、
ある一定のことに強くこだわったり、
他者とのコミュニケーションがうまく行えなかったりすることも多い。
そのため、彼らは「分かってもらえない」、
「気持ちをどう伝えればいいのか分からない」
と悩んでしまう。
こうした彼らの苦しみこそが、
発達障害と犯罪を結びつけてしまうのではないだろうか。
もちろん、犯罪を起こすのはいけないことであり、
発達障害と付き合いながらまっとうに生きている方もたくさんいる。
しかし、少年犯罪という形でしか、
心の涙やSOSを表せなかった子どもたちがいることも事実だ。
だからこそ、私たちは罪を犯さなくてもいいよう、
彼らに温かい視線を向けたり、
頼れる場所を与えてあげたりする必要がある。
好き好んで犯罪者になる人は、この世のどこにもいない。
「たくさん笑って生きたい」
――それは犯罪を起こしてしまった少年も抱いていた願いなのではないだろうか。
悲惨な殺人を起こしてしまった子どもたちは、
「人を殺してみたかった」という言葉を口にすることも多い。
この言葉はただの狂気として受け取られることが多いが、
彼らの心の奥には彼らなりの苦しみが詰まっていることもある。
本書の論はあくまでも田淵氏による仮説であるが、
発達障害を正しく理解し、受け止めていくことは、
凶悪な犯罪を食い止める第一歩になるのではないだろうか。
【ダ・ヴィンチニュース】
発達障害と少年犯罪 (新潮新書) [ 田淵 俊彦 ]
発達障害の有無に関わらず、
最近は無様な事件、また増えてきていますね。 🌠