アルタクセルクセスの王宮址遺跡

アルタクセルクセスの王宮址遺跡

2008年09月30日
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カテゴリ: 映画
 夕方S君と映画を見に行く。ドイツ映画「Mein Fuehrer」(邦題:「わが教え子ヒトラー」)である。ドイツ語圏の映画で、タブーとされてきた「(動く)人間ヒトラー」が初めて登場し話題となったのは2004年の「 Der Untergang 」(「ヒトラー最期の12日間」)だったが、これはさらに一歩踏み込んで、ヒトラーを扱ったコメディとして話題となった。漫画ではヒトラーを茶化した作品はだいぶ前からあり店頭にも並んでいるが(どれもこれもドイツ的ギャグというか、なんか内容が汚らしいんだよね)、映画では初めてだろう。
 監督は「 Alles auf Zucker !」などのコメディ作品があるダニー・レヴィだが、彼自身はユダヤ系ドイツ人である。主演は「 Das Leben der anderen 」(「善き人のためのソナタ」)で主演したウルリッヒ・ミューエだが、彼は惜しくも昨年7月にガンのため 急逝 したためこの映画が遺作となった。

(あらすじ)
 第二次世界大戦末期の1944年12月。首都ベルリンをはじめドイツの町の多くが空襲で廃墟と化し、ナチス・ドイツの敗勢は覆うべくもなかった。宣伝相ゲッベルス博士(ジルヴェスター・グロート)はドイツ国民を鼓舞すべく、久々に計画されている総統ヒトラー(ヘルゲ・シュナイダー)の年頭演説に賭けていた。しかし敗北と裏切りの連続で人間不信に陥ったヒトラーには往年の迫力も気力も感じられない。
 ゲッベルスは一計を案じ、かつてヒトラーに演説法を指導した有名な俳優のグリューンバウム教授(ウルリッヒ・ミューエ)に再び演説指導させることにする。グリューンバウムはユダヤ人で、ザクセンハウゼン強制収容所に入れられていた。最初は断ったグリューンバウムだが、家族を呼び寄せることを条件に承諾する。
 指導などいらない、ユダヤ人に用などないと最初は言っていたヒトラーだが、グリューンバウムの指導を受けるうち、彼にだけはその内面を見せるようになる。一方、迫害を受けるユダヤ人同胞のため、隙を見てヒトラーを殺そうとしたグリューンバウムだが、独裁者の孤独な内面に接するうち、二人の間には奇妙な友情のようなものが生まれていた。ヒトラーも演説にやる気を起こす。
 1945年1月1日、演説の時間が迫るが、ゲッベルスのこの計画にはさらに裏があった。そしてハプニングから、演説は思いもかけぬ方向へ・・・。

(感想)
 うーん。期待しすぎたのか、正直あまり面白くなかった。
「(ドイツにとって長年のタブーだった)ヒトラーを笑い飛ばす」という意図は分るのだが、あまりに単純に戯画化しすぎてしまっているように思う。コメディなんだから時代考証とかは言いっこなしなのだが、ヒトラーがチャップリン演じる「独裁者」そのままであるというか、あまりヒトラーに見えないというか。むしろもっと真に迫ったヒトラー像を出したり、冷酷・残酷な面を示したりしてブラックさがあれば「面白い」のだが。十分「滑稽」ではあったが。ドイツ人にコメディは無理なのか、あるいは題材がヒトラーではこれが限度なのか。出てくるヒトラー・ネタは大体想像の通りだった。実際のヒトラーはこの当時にはパーキンソン病が進行していたという証言もあるが、ラジオ演説を除きほとんど人前に出なくなっていた。現実は陰惨である。
 むしろヒトラーの周りの人々(ナチ党員)の描写や、ドイツ人の特性ともいうべき書類主義、官僚主義の描写が面白かった。ヒトラーに最も心酔し後追い自殺までしたゲッベルスが実はヒトラーを利用することしか考えてなかったり、戦後のニュルンベルク裁判で罪を認め、長年「良いナチ」の一人とされていた シュペアー 軍需相が一番ヒトラーに忠実だったりと、おそらく意図的なキャラクターの作り替えが随所に見られる。ナチスとかあの時代のことを知っていればそれなりに楽しめるし、知らなくても単なるコメディとして楽しむこともできるかもしれない。
 大真面目・大仰で歴史の教科書でも読まされているような「Der Untergang」と併せて見ると、面白さは際立つかもしれない(キャストは親衛隊長官ヒムラー役のウルリッヒ・ネーテンだけが共通している)。それともこのコメディは、戦後ドイツで繰り返されてきた(左右を問わず)生真面目な「ナチスを振り返る」風潮そのものを、連中は道化だよと風刺する意図があるのだろうか。


 まあそういう意味で画期的な作品ではあるのだが、もっとも驚いたのはベルリンの中心部にある旧博物館(現在はギリシャ・ローマ時代の遺物を展示)の前で、沿道に鉤十字の旗を振る群衆で満ち溢れるヒトラーの行進を撮影したことだろうか。よく当局が許可したね。それともCGなのだろうか。

 麻生現首相が民主党をナチスみたいだと評したり、亀井静香が小泉元首相(引退するそうですが)をヒトラーにたとえたり、民主党の国対委員長が現代日本の風潮をナチスの勃興期になぞらえたりしている。この人たちがどれだけナチスのことをよくご存知なのかは知らないが(まあ皆さんナチスが実際に存在した時代に生まれてはいらっしゃるんでしょうが)、ドイツ人の前でそういうたとえは使わないほうがいいですよ。
 悪という点では人後に落ちないとはいえ、60年前に滅んだ他国の政権が、我が国の選良(ぷぷ)によってこうも引き合いに出されるとは、ナチス、そしてヒトラーは伝説と化して永遠に生き続けるのだろうか。単純に殺した人の数(戦争除く)で比較するなら毛沢東やスターリンのほうが多いんだけどね。





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最終更新日  2008年10月01日 13時09分09秒
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