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「秘密は雑踏の中にあって保たれる」遂に我々の目の前その姿を現した「凛」、まるで秘密が探られるのを嫌うかのような小路に店を構えているものの、店構え自体はなんと言う事は無い、至って普通のこじんまりとした清潔な焼肉店と言った風情である、しかし真の天才とは凡庸を装うもの、この凛にもどんな罠が仕掛けられているのか分かったモノではない...我々精鋭部隊は慎重かつ大胆に、そしてもはや押えの効かない千鳥足で店内に足を踏み入れた、狭い店には4~6人がけの机が5卓、30人も入れば満席となる、既に3つの卓には客が腰を落ち着け歓談に耽っている、まだ肉兵器の出されている様子はない、「いらっしゃいませー」我が部隊の姿を認めたのか、奥から年の頃50代と言った女将が顔を覗かせた、先だって仕入れた情報によれば、この「凛」の名物女将と言う事であるが...「ぬおっ!」その姿に我々精鋭部隊はいきなり度肝を抜かれる、ドレス、はたまたメイドのコスプレと見紛う純白のヒラヒラエプロン!し、しまった目が!およそ焼肉店の女将とは思えない清潔極まる格好だ!いきなりの目潰し先制攻撃に皆ただ無防備かつ呆然と立ちすくむ!どの程度時間が経過したのであろうか...恐らく実時間にすれば5秒にも満たないであろうその時間が、我々には永遠にも感じられた...「あの、予約はお取りでいらっしゃますか?」「はっ!」その一言で一同が我に返る、そうだ、18:50からの予約である、「あの、18:50から予約を取った者なのですが...」「ああ、○○さんね、こちらへおかけ下さい」そう言って女将が指し示した席は、入り口入ってすぐ脇の6人がけテーブルである、見れば何と!予約部隊向けのセットであろうか、テーブル上には既に意外な程小さな鉄板、サンチュ、刻みネギ、スライスにんにく、そして先鋒肉兵器であろう名物塩つくねの皿が綺麗に陳列しているではないか!!ぬうう、なんたる手際の良さ!これ以上のダメージの蓄積を避けるため女将からは極力目を逸らし全員が着席する、いよいよ戦闘開始である!まずは飲み物の注文である、「とりあえずビール」を女将に伝達、程なくして5名分のビールが卓上に並ぶ、ここからがいよいよ本番である、全員がはやる気持ちを押え女将の指示攻撃に備える、「凛」は基本的に部隊が好き勝手に肉兵器を退治して良い環境には無い、まずはジェネラルたる女将の指令に従う必要があるのだ、その指令内容は懇切丁寧かつ簡潔明瞭にして的確、肉兵器の扱いに慣れぬ新兵でも最高の焼き加減戦闘を可能にする、そう、「凛」とはまさにサンダース軍曹も真っ青の焼肉戦闘訓練場なのである、郷に入れば郷に従え、我々焼肉戦闘経験豊かなつわもの部隊も女将の指示に従う事にした (続く)
2002年07月01日
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