漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

2008.05.20
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カテゴリ: 紫煙のゆらぎ





             真空管の手作りアンプは音が柔らかくて心地よい響きがする。
ECC83を使ったマランツ7#のコピーを、12BH7Aと6FQ7の大型真空管に付け替え、銀の裸線やビタQ、B.ゲートの電解コンデンサやA.ブラッドレーの抵抗器等徹底改造プリアンプ。真空管の足等全てハンダ付けの無接点。


                紫煙のゆらぎ・坂越し( Sagoshi )の女







バリ島ウブドのマンダラケイコさんにはたいへんたいへんなお世話になった。

ビダニもユリアティにも、彼女の尽力が無ければ親しくなるきっかけが無かっただろう。
付き合いを許されて14年がたった。

彼女は毎日毎夜明日も昨日も来週も今日もガムランガムランガムランガムラン無らんで
むらむらしてきてたまらない。

たまにはクラッシックが聞いてみたい。
と、僕に打ち明けた。

この薄幸でありながら耐え続け、今は幸せに北の王宮プリ・カレランの王妃として、
プリアタンのバレル~ンに親子4人とオカダラムと暮す女性は、
大変お世話いただいた恩人の一人である。

えぇい。
持ってけマンダラケイコ。

僕はその時ウブドに持っていったほとんどのDVDとCDを貰ってもらった。

* ******「紫煙のゆらぎ・極楽の島。バリ島ウブド」 参照

13時間に及ぶオペラ「ニーベルンクの指輪」「魔笛」
J.シユトラウスの喜歌劇「こうもり」のDVD。

CDはウラニアのエロイカ・ベートーベンの弦楽四重奏曲1~6番・
モーッァルトの弦楽四重奏曲14~19番なんやらかんやらほとんど全部。

また大阪の中古屋で買えばいいや。

とても、言葉にすると嘘になるほど世話になった。
彼女にはかれこれどれそれひれもれ、300枚はゆうに超えるCDをバリ島まで
オーバーウエイト料金を払い、税関でチョコルダ大王とのツーショットを見せたりしながら、アルヴオペルト・現代・古典・グレゴリアンチャント・ショパンとヘートーベンの全集。
下妻物語スイングカールズドリフもピンクレディーもバカ殿のDVDまである。

おかげで僕の聴き終える事の出来ない、
不幸なCDの20%がバリ島で鳴っているかも知れない。
別荘の改築が終わったらCDコンサートを開く予定だ。

彼女は「玉地さんいつもありがとうごさいます重いのに大変でしょう」
としか言わないところが、流石苦労しただけの事はある王妃さんだ。



久しぶりに旧知の女性から電話が掛かってきた。
無駄に長電話になる人である。

彼女は僕にエェディット・ピァッフをイントロデュースしてくれた人である。
僕はピァッフの腹違いの妹、シモーヌ・ベルトゥーが残した伝記を読み、
感動して涙した事があり、その本は今も大切に書架に置いてある。

もう一度読みたい、とはトテモ思えないほど凄い人生を送った事は、
このブログにもほんの一部だけ書いてある。彼女はこの伝記を知らなかった。変だな?

* *******「紫煙のゆらぎ・音楽」 参照

CDの機械が手に入ったとかなんとか、今頃CD機とは不思議な話だったが、
あれやこれやとくだんの長話の中から、つい僕の良くない癖が出た。

「わかった。ぐだぐだ言うとらんで生のCDを50枚僕のアトリエまで持っといで。
 日本橋へ行ったら880円で売ってるから宅急便でもいいから送れ」

「そんなんわかれへんわ。日本橋の何処いったらあるの」

「ソフマップでもどこでも千円以下で売ってる」

堺市に住む彼女は

「遠いわ。わからへん」
「旦那が車もってるやろ行って買うてきてもらい」

何日かたって彼女は旦那と供に車でやって来た。
久しぶりの久しぶりはお互い年をとった風情を確認しあっていた。
旦那さんも白髪になっていた。僕もそうだが。

なんでも玉地さんにおまかせ。
でも注文の多い鑑賞者である。

中島みゆき・フィール1と2・イマージュ1と2
古今のピアノ協奏曲や交響曲、シェヘラザードなどの管弦楽曲と
レパアトリィーはおおぶろしきの八畳敷きだ。 

なにしろ全部ロハなんだから。

彼女はまたベートーベンの月光ソナタのアッダァージョを弾ける、
と言っていたが実際に聞かして貰った記憶は無いような気がする。

月光ソナタが弾けるのなら、あなたはハンマァークラビアソナタを知ってるかと聞いた。

29番の第3楽章は約17分。
ベートーベンが、情熱と情念を深く閉じ込めて淡々と語る、
静かであるが血の噴出しそうなアッダァージョである。
ベートーベンのソナタの中での白眉といえる名曲である。

聴いた事が無ければ論より音楽と、僕はハンマァークラビアソナタの第3楽章を、
手作り真空管アンプの音で聴かせてあげた。

「こんな悲しい曲きいてたら私なみだでてくるわ」
「いや、これは悲しい曲ぢゃ無くて、情念の爆発を、
 この静かな音の裏に押さえ込み秘め込んでるんや」

あまり感じている感じ方が違うのかもしれない。

手作り真空管アンプの音を聴きながら、ウラニアのエロイカやヌヴーの協奏曲、
綱渡りの曲芸でありながらミスタッチひとつ無いアルゲリッチのチャイコンとか、
どちらかと言うとヘヴィな曲とLPも30枚ほど渡して返した。

ただ、バッハとモーッァルトは宮廷音楽家だったからキライ
と言われたことにはとてもとても、とても驚きだった。

ほんたうはわかっているのだろうか?バッハとモーッァルトの無い曲集?


翌朝くだんの電話がなる。

「スラマッパギ玉地です」
「ありがとネうれしかったわぁ」
「ほやけどきのうもろた曲重すぎてきいてられへん」
「…………………………?」
「アルゲリッチのチャイコフスキー音悪いネ」
「ほんでLP音でえへんようになってたわ」
「真空管で聴いたから良かったんや。あの実況録音な、
 ホールの響きがこもってるけどうちではええ音してるで」

音楽は音が綺麗なのが良いのか、覚悟して聴き込む音楽が真実なのかどっちだろう。
彼女はきっと ”ながら ”音楽を欲しがっているのだろう。

「わかった。あと30枚宅急便で送ってくれ。LPコンポは日本橋で2万で売ってる」


またまた電話が来た。

「ありがとネ玉地さん。そやけど私の好きなショパンのコンチェルトはいってへん」
「あんた以前僕にもろたカセットあったゆうてゆうてたやろ」

僕がカセットテープを整理した時、モーッァルトやベートーベンのピアノ協奏曲全集や
もろもろといっしょに、多くの音楽を迷惑をもかまわず送った事が在った。

NAKAMICHI # 700 の機械が壊れてしまったからだった。

彼女は協奏曲の中の協奏曲、モーツァルトの全集を知人の女性に全部譲ったと言っていた。
もったいない事をした人だ。



結論として確認できた事はこうだった。

“ 価値観の違い ”

まったく之は漱石先生随筆集「硝子戸の中」坂越の女でござった。









ATRIE TAMAJI という硝子戸の中の住人           

                                   玉地 俊雄

you tube ***** balitamaji ( 日本語版 ) *** sakamotoakane ( English )
http://plaza.rakuten.co.jp/balitama/






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最終更新日  2008.10.03 11:57:05


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