漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

漫画家・写真家玉地俊雄 紫煙のゆらぎ

2008.05.20
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カテゴリ: 紫煙のゆらぎ



幻の発狂盤・ウラニアのエロイカの盤面



紫煙のゆらぎ・ウラニアのエロイカ 前編 




ウィルヘルム・フルトヴェングラァー というドイツ音楽の巨人が昔昔おった。
長いので以後フルベンと表記する。

指揮棒を 振るとみんなが面食らう。
と、冗談を言われたお爺さんだった。

不思議な話だが、フルベンには絶対音感がなかったらしい。

彼が生前残したザルツブルグ音楽祭での映像。
W. A. Mozart の“ ドン・ジョバンニ ”。

登場時の動きも目つきもおかしい。
彼の頭の中ではすでに地獄の序曲が鳴りはじめている筈だ。
軽く1礼するも、頭の中は序曲が進行しているように、くるりと背を向け、
身構えた目は、少し狂人のようにヴィンナァーフィルハーモニカァーを威圧している。
長いので以後ウィーンフィルと表記する。

独特の長い指揮棒をゆっくりと振り下ろす。
ウィーンフィルは、激しく、最初の地獄の騎士の、重く・強く・うねるような音を
力いっぱい鳴り響かせる。

ゆっくりと指揮棒を振り下ろしているのに。

目の動きと流れはやはり狂人のようである。

途中まで数分の映像で見る限りスマートとは程遠い、どちらかというと無骨で力まず、
ウィーンフィルの音とちょっと違うようにも感じられる指揮棒の動きと怪しげな目つきが
次第に音楽を高揚させてくる。

白魔法である。

僕が目を閉じて指揮棒を振れば、出だしの振りはもっともっと強い。
すぐに左の手がもっと、モット音を出せと要求する。

フルベンは、目の不思議な威圧で持って嵐がブン殴るような音楽を悠然と、しかし、
不思議な指揮棒の動きで引き出している。

どちらかと言えば、変な指揮棒の動きをしている目つきのおかしい狂人だ。
しかし、出てくる音の塊りは強靭で凄い音楽だ。


フルベンが完全にブチ切れた録音はベートーベンに多い。
3番5番7番9番と奇数番号の交響曲にに多い。
ただしスタジオで慎重に作り上げた録音を僕は好きにはなれない。

LIVE で発狂するフルベンが大好きだ。

7番の終楽章は、音が強烈に悪くてひどい状態だが、
1秒でそんな事どうでもいいやの世界に引きずり込まれてしまう。

発狂して狂乱してあたりかまわず怒鳴りまくって……
どんな形相で指揮棒をブン回しているのか、想像するだに気が狂いそうになる。

眼をつぶって、ヴェルリンフィルハァーモニカァーのライブ演奏にくっついて、
成りきりフルベンの指揮棒を振ってみると、
脳出血を起こすのではなかろうかとの思いもブッ飛ばすほど、
発狂の狂人となってしまう僕は狂人である。

長いので以降ベルリンフィルと表記する。


果たしてドン・ジョバンニのような振り方では無いように思えるが、
この序曲では、あきらかにフルベンの指示とは違う、
音の塊と洪水が流れ出しているのが不思議で不思議だ。

第7交響曲は、“ 舞踏の昇華 ”と表され、ヂャンジャカジャンXXXXXXが、
何回も何回もXXと繰り返す、ダイナミズムの舞踏が跳ね回って飛び上がる。

フルベンはどんな形相でどんな動きで指揮棒をブン回していたのか。

それとも、ドン・ジョバンニのように、目つきの異常が演奏者をして狂気にさせていたのか。

白魔法である事には間違いが無い。

その

ヴィルヘルムフルトヴェングラァーが、ヴィンナァーフィルハァモニカァーと供に
1944年に残した、通称ウラニアのエロイカというLPがあった。

らしい。

らしい。
と言うのはあったにはあったのだが、誰も聴いた事が無く、あるらしいのだが、
入手不可能幻のLPだったからだ。

それは放送録音用に録音されたが、フルベンが出だしからブチ切れて、
興奮狂乱の空前絶後の怒鳴り張り倒しのような英雄交響曲だったらしい。

アメリカのウラニア社がフルベンの了解の無いまま発売しようとした。

フルベンは裁判を起こして発売を阻止しようとした。







成りきりフルベン大好き                     

  玉地 俊雄


        http://plaza.rakuten.co.jp/balitama/





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最終更新日  2008.10.03 12:03:20


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