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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2009.10.12
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カテゴリ: 文芸

 それは、これまで私が読んできた村上作品は、
 そのどれもが、村上さん自身を投影したかのような主人公、
 つまり男性視点「ぼく」の物語だった。

 ところが、この作品は「すみれ」という女性メインで話が始まる。
 途中で、いつものように「ぼく」が登場することになるのだが、
 その後もしばらくは、「すみれ」ともう一人の女性「ミュウ」とのストーリー。
『ノルウェイの森』 の「直子」「レイコさん」の関係に近いものを二人に感じた。

しかし、『ノルウェイの森』の「直子」「レイコさん」の物語に比べると、
こちらのお話しは明るいトーンに満ち溢れ、軽快に心地よく進行していく。
「心の闇」といったようなものとは、全く無縁のような女性二人が眩しいほど。
ただし、それは途中までのこと。

「ミュウ」からの電話で「ぼく」がギリシャに行くことになったところ辺りから、
お話しの色合いが一転……そう、村上ワールドの始まり。
二人の女性の「心の闇」に「ぼく」は引きずり込まれていくことに。
「こちら側」と「あちら側」、二つの世界とそれらを隔てるもの。

   ***

 すみれの家のレコード棚にあった『モーツァルト歌曲集』。
 エリザベート・シュヴァルツコップフの歌と
 ヴァルター・ギーゼングのピアノ伴奏。
 母が大好きな曲で、その歌曲の名前「 すみれ 」を自分の娘につけた。

 「スプートニクの恋人」。
 それは、すみれがミュウのことを心の中で呼ぶようになった名前。
ジャック・ケルアック のことを思い出そうとして、
 「 ピートニク 」のことを「 スプートニク 」と言い間違えたから。

   ***

それでは、このお話の中で私が印象に残ったフレーズをいくつか。

  「あんまりにもすんなりとすべてを説明する理由なり論理なりには必ず落とし穴がある。
   それが僕の経験則だ。
   誰かが言ったように、一冊の本で説明されることなら、説明されないほうがましだ。
   つまり僕が言いたいのは、あまり急いで結論に飛びつかないほうがいいということだよ」(p.82)

これは、ぼくがすみれに言った言葉だが、なかなか示唆に富んでいると思う。
ところで「一冊の本で……」と言ったのは、誰なんだろう?

  「でも仕方がないわね。すてきなことはみんないつかは終わるもの」(p.168)

これはギリシャのコテージで、すみれがミュウに言った言葉。
ありふれた普通のやりとりのなかでの、普通の言葉なのだが、なぜか心に響いた。
旅も人生も、そうなんだなぁ……と。

  誰かが、何かが、ぼくの中から立ち去っていく。
  顔を伏せ、言葉もなく。
  ドアが開けられ、ドアが閉められる。
  明かりが消される。
  今日がこのぼくにとっての最後の日なのだ。
  これが最後の夕暮れなのだ。
  夜が明けたら、今のぼくはもうここにはいない。
  この身体にはべつの人間が入っている。(p.272)

この感覚こそが、村上ワールドそのものだという気がする。

   ***

ところで結末、本当にもう一度電話がかかってくるのかな?
私としてはちょっと、と言うかかなり心配なんですが……。
そして、村上さんは「先生」という職業について、
スーパーの警備員が発した言葉(p.278~)のように捉えているのかな?
まぁ、この作品が書かれた頃と現在とでは状況が随分違ってはいるのだが。





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Last updated  2009.10.12 12:28:53
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