音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2019年07月11日
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テーマ: 洋楽(3407)
アメリカン・ロック界のボスによる初のカバー盤


 ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)と言えば、1970年代の 『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』 、1980年代の 『ボーン・イン・ザ・USA』 のようなロック・アルバム然とした作品が代表作と言えるのは確かである。とはいえ、米国ロック界の“ボス”と呼ばれる彼は、突如作風を変えたりする。自宅録音で弾き語り調の『ネブラスカ』(1982年)なんかはその例だったし、今回取り上げる『ウィ・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ(We Shall Overcome: The Seeger Sessions)』は、彼がロックの王道から外れた盤としては突出した例と言える。

 通りいっぺんの言い方をするならば、スプリングスティーンにとって初のカバー・アルバムである。取り上げているのは、フォーク・シンガーのピート・シーガー(1919~2014年)の楽曲である。公民権運動に関わったピート・シーガーのスタンスとか政治的・信条的な側面をスプリングスティーンと関連付けることもできるだろうが、実際にアルバムを聴いてみると、“音楽(音を楽しむ)”を地で行くような演奏や歌が何より印象的なアルバムに仕上がっている。

 とはいっても、アメリカン・ロック界のボスの歌声がスティール・ギターやバンジョーなどの中で軽快に踊っている姿は想像しにくいかもしれない。しかし、スプリングスティーンの根は結局のところ、フォークやカントリー、ブルーグラスといった米国トラディショナル音楽にあることを再認識させられる(今さらながら、ウッディ・ガスリーなんかの曲だってそういえば以前からスプリングスティーンは取り上げていた)。

 上述の“音を楽しむ”という観点を中心に考えながら、お勧め曲を挙げておきたい。1.「オールド・ダン・タッカー」、4.「オー、メアリー・ドント・ユー・ウィープ」、5.「ジョン・ヘンリー」、8.「マイ・オクラホマ・ホーム」、11.「ペイ・ミー・マイ・マネー・ダウン」といった楽曲は、こうした観点では本盤を代表するナンバーと言える。他方、おとなしくシンプルな曲調の哀愁漂うナンバーも見られる。あと、個人的な好みでは、10.「シェナンドー」と表題曲の12.「ウィ・シャル・オーヴァーカム」がいい。

 あと、筆者所有の盤(アメリカン・ランド・エディション)のボーナストラックにも魅力的な曲が並んでいる。14.「バッファロー・ギャルズ」は本編に収録して欲しかったと思うほどの出来。16.「ハウ・キャン・ア・プア・マン・スタンド・サッチ・タイムズ・アンド・リヴ」は、スプリングティーン節の歌や演奏と本盤の楽曲たちの接点が垣間見られるという意味で興味深い。18.「アメリカン・ランド」はニューヨークでのライヴ・テイクだが、本盤の雰囲気がそのままにライヴで演奏されている。

 本盤はブルース・スプリングスティーンの代表盤と言われることは決してないだろう。けれども、彼の音楽にある程度親しみ、その先(否、そのルーツなので“さかのぼる”と言った方が正確か)にあるものを垣間見たいと思った人には真っ先に勧めたくなる盤ということになる。その一方で、いわゆる“アメリカン・ロック”と“アメリカン・ルーツ・ミュージック”の関係を考えるとき、こういうところで実はつながっているのというのは、ヒット・チャートやメジャーどころのロック/ポップスだけを聴いていては決してわからない、そんな奥深い世界を垣間見させてくれるアルバムでもあると思う。


[収録曲]

1. Old Dan Tucker
2. Jesse James
3. Mrs. McGrath
4. O Mary Don't You Weep
5. John Henry
6. Erie Canal
7. Jacob's Ladder
8. My Oklahoma Home
9. Eyes on the Prize
10. Shenandoah
11. Pay Me My Money Down
12. We Shall Overcome
13. Froggie Went A-Courtin'

~以下、手持ちの盤(アメリカン・ランド・エディション)のボーナストラック~

14. Buffalo Gals
15. How Can I Keep from Singing?
16. How Can a Poor Man Stand Such Times and Live?
17. Bring 'Em Home
18. American Land

2006年リリース。





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ウィ・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ [ ブルース・スプリングスティーン ]




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Last updated  2019年07月11日 09時32分52秒
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