音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2022年05月16日
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テーマ: 洋楽(3407)
1980年代の活動の集大成的な秀逸ライヴ盤


 トム・ウェイツ(Tom Waits)は、1973年のデビュー以来、アサイラム・レコードと契約していたが、1980年代に入って、実験的な音作りを実践しようとレーベルを移籍し、アイランド・レコード所属となった。アイランドでは、いわゆる三部作(『 ソードフィッシュトロンボーン 』、『 レイン・ドッグ 』、『フランクス・ワイルド・イヤーズ』)などを吹き込んだが、ちょうどこの時期に相当する1980年代の活動の集大成的なライヴ・アルバムとなったのが、1988年の本盤『ビッグ・タイム(Big Time)』であり、同名のドキュメンタリー映画も制作された。

 本作は、トム・ウェイツのライヴ盤としては2作目ということにはなるのだけれど、最初のライヴ盤『 娼婦たちの晩餐 』は、スタジオに観客を入れてのライヴ演奏という変則的なライヴ盤だった。そのため、本当の意味でのライヴ演奏盤は、本作が初ということになる。収録された音源は、『フランクス・ワイルド・イヤーズ』のリリースに伴う、ヨーロッパとアメリカでのツアーのもので、1987年のロサンゼルスやダブリン、ベルリン、ストックホルムなどでのライヴ・テイクである。

 本盤を一言で表すならば、“とにかく圧倒的”である。1980年代当時のトム・ウェイツの勢いや制作意欲がそのままライヴで再現されている。アルバム作品で、ある種の統一感やコンセプトのある演奏を聴くのもいいのだけれど、本盤はもう少し広範囲にこの時期の彼の到達点とういか立ち位置をそのままストレートにライヴで表現していて、そしてその出来が秀逸というものである。

 全編をあたかも一つのライヴのように効くのがお勧めではあるが、敢えて聴きどころと言えそうな曲をいくつかピックアップしてみたい。1.「シックスティーン・シェルズ」は、“こんばんは(Good Evening)”という掛け声から始まり、ライヴの開始を告げる好演奏。奇をてらった演奏の一方で、案外じっくり聴かせる演奏があるというのも本盤のよさで、そういう意味では、4.「コールド・コールド・グラウンド」なんかは、推奨曲と言える。同じく“聴かせる”ナンバーとしては、8.「フォーリン・ダウン」も個人的には好みである。

 本盤が素晴らしいと思う点として、アルバムを通して聴いたとき、後半から終盤に向けて盛り上がりが高まっていく点だと感じる。無論、複数のライヴ会場の音源を組み合わせているので、実際のライヴ会場の盛り上がりとは異なるはずなのだけれど、そういう雰囲気がきちんと感じられる。11.「レイン・ドッグ」、12.「トレイン・ソング」(これは何とも言えないトム・ウェイツの名曲の一つ)、13.「イリノイ州ジョーンズバーグの町の歌」あたりの流れは、本当にライヴに居合わせているかのような気分を味あわせてくれる。15.「イスタンブールからの電話」や16.「クラップ・ハンズ」の盛り上がりがあった後、最終的に名バラードの18.「 タイム 」で全体を締めくくる(ちゃんと最後に“サンキュー、グッド・ナイト”と挨拶をしている)というのも、ライヴ感たっぷりと言える。

 今となって振り返れば、1980年代のトム・ウェイツは実に充実していた。そして、その充実ぶりをリアルに感じさせてくれるのが、このライヴ盤『ビッグ・タイム』だと言えるように思う。


[収録曲]

1. 16 Shells from a 30.06
2. Red Shoes
3. Underground
4. Cold Cold Ground
5. Straight to the Top
6. Yesterday Is Here
7. Way Down in the Hole
8. Falling Down
9. Strange Weather
10. Big Black Mariah
11. Rain Dogs
12. Train Song
13. Johnsburg, Illinois
14. Ruby's Arms
15. Telephone Call from Istanbul
16. Clap Hands
17. Gun Street Girl
18. Time

1988年リリース。




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Last updated  2022年05月16日 06時16分35秒
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