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東京地検特捜部が1月、安倍派・二階派・岸田派幹部の立件を全員見送り、「トカゲのしっぽ切り」で捜査に幕を引いた時、東京地検の新河隆志次席検事が記者会見で奇妙な説明をした。
捜査は、安倍派幹部と会計責任者の職員が共謀して億単位の不記載を続けたとする市民からの告発を受けて行われたと報じられてきたが、特捜部は告発を受理していないので、派閥幹部の立件そのものを見送り、そもそも不起訴処分にもしていないというのだ。
大半のメディアが黙殺する中、1月20日付本紙朝刊だけは見出しを立てて特筆した。「あくまで特捜部が独自に捜査する過程で今回の事件に広がった。告発に基づいて捜査したわけではないため、必ず不起訴処分にする必要はない」という検察幹部の解説を紹介し、「共謀の有無は、不起訴処分の当否を審理する検察審の対象外となる可能性がある」と組織防衛優先の姿勢に疑問を呈している。
一方、昨年末から流布しているのは2021年11月に派閥会長になった安倍氏が、22年4月に突然幹部を集めて英明にも裏金中止を指示したのに7月に殺されてしまい、残された派閥幹部が言いつけを守らず裏金作りを続けていたというストーリー。賢人の遺言を守らなかった愚か者は誰だ、と犯人捜しに関心が集まった。
還流は二十数年前からあったとの証言が有力だ。長く集金の看板だった安倍氏が何も知らなかったとは解せない。 安倍氏は当時なぜ急に順法精神に目覚めたか。
地元支持者を「桜を見る会」に毎年招待し、報告書に記載しない裏金を費用の一部に充てていたとして、後援会代表の公設第1秘書が罰金100万円を命じられたのは周知の通り。 20年9月に首相を辞めてから1年以上無役だったのは、自らの不起訴処分が検察審で不起訴不当議決され、再び不起訴となるのを待っていたからだ。
安倍氏は3度目の首相の座を狙っていた。「桜」の泥を辛うじて拭った直後、「裏金」の沼に足を取られたらそれも遠のく。自分は立件されなくても、取り巻きが親分の名声で数億円をむさぼっていれば、腐敗権力のシンボルには違いない。持ち上げすぎるのは考えものだろう。
(専門編集委員)
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